多汗症の治療について:手や足に電流を流す治療や塗り薬、注射、手術、漢方薬など
多汗症には「全身から多量の汗が出る全身性多汗症」と「手のひらや足の裏、腋などのある一部分のから多量の汗が出る局所性多汗症」の2つがあります。全身性多汗症は、
1. 多汗症の治療について
多汗症(局所性多汗症)の治療法には次のものがあり、汗の多い部位を踏まえて選ばれます。
- 手や足に電流を流す治療:イオントフォレーシス
- 塗り薬:塩化アルミニウムの外用
- 注射:A型ボツリヌス毒素の局所注射療法(ボトックス)
- 手術:
交感神経 遮断術 - 飲み薬
それぞれの治療について個別に説明していきます。
手や足に電流を流す治療:イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは手のひらや足の裏の汗が多い人に行われる治療です。具体的には、手のひらと足の裏を水道水の入った容器の中に浸して、電流を流します。手のひらを治療する場合は手のひらを陽極(プラスの電極)にして足の裏を陰極(マイナスの電極)にします。反対に足の裏を治療する場合は、足の裏を陽極にして手のひらを陰極にします。1回の治療には30分程度かかり、これを10回程度繰り返すとだんだん汗の量が減ってきます。
塗り薬:塩化アルミニウムの外用薬、ソフピロニウム臭化物(エクロックゲル)、グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォートワイプ)
塗り薬としては3種類が利用可能です。脇や手のひら、足の裏の汗が多い人に塗り薬(
■塩化アルミニウムの外用薬、ソフピロニウム臭化物(エクロックゲル)
10%から35%の塩化アルミニウムが含まれた薬を汗が多い部位に塗ります。また、腋窩(脇)の多汗症にはソフピロニ効果が出るまで数週間かかるので、それまでは毎日塗り続けます。効果が出てきたら、薬を塗る回数をだんだん減らすことができます。ただし、中止してしまうと再発することがあるので、中止して良いかどうかはお医者さんと相談してください。 また、副作用で薬を塗っていた場所が
■グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォートワイプ)
誰にでも使える薬というわけではなく、多汗症スコアで重症と診断された人が対象になります。また、前立腺肥大症や緑内障といった持病を持つ人には副作用の影響を鑑みて使うことができません。
注射:A型ボツリヌス菌毒素製剤の局所注射療法
イオントフォレーシスや塗り薬の効果がない時には、A型ボツリヌス菌毒素製剤の注射が検討されます。ボツリヌス菌毒素はボツリヌス菌が作り出す毒素のことで、発汗の司令を出すアセチルコリンを抑える効果があると考えられています。ボトックスという名前で説明されることがありますが、ボトックスはボツリヌス毒素の薬剤名の1つです。
ボツリヌス菌毒素の注射には効果がある一方で、注射時の痛みや筋力が一時的に低下する副作用があります。痛みに対しては注射した部位を冷やすことで和らげることができ、一時的な筋力の低下は、自然に回復することがほとんどです。
手術:交感神経遮断術
イオントフォレーシスや薬の効果が乏しい「手のひらの多汗症」に対しては、手術(交感神経遮断手術)が検討されます。手のひらの発汗を司る
飲み薬
多汗症の
2. 多汗症の治療ガイドラインはあるのか
多汗症の
一方で、ガイドライン通りに治療することが最適だとは限りません。医療は日進月歩で次々と有効な治療がみつかります。進歩についていくために、ガイドラインも数年に1回は改訂が行なわれますが、改訂前に新しい治療が浸透することもあれば、不明だった治療の効果が明らかになって治療法が変わることもあります。
また、ガイドラインは患者さん一人ひとりの身体の違いを鑑みて作られているわけではありません。一人ひとりに最適な治療を行えるように、最新の知見や患者さんの状態を加味し、アレンジして使うことでガイドラインはよりその力を発揮することができます。
参考:
・原発性局所多汗症ガイドライン 2015年改訂版
・UpToDate:Primary focal hyperhidrosis Authors:C Christopher Smith, MD David Pariser, MD