たかんしょう
多汗症
汗を必要以上にかいてしまう病気
5人の医師がチェック 71回の改訂 最終更新: 2023.06.01

多汗症が気になる人に知っておいて欲しいこと

多汗症が心配な人はさまざまな悩みや疑問を持っているとよく耳にします。ここでは治療前に知っておいて欲しいことと、多汗症にまつわる疑問についてまとめました。

1. 多汗症の治療をするかどうか迷っている人に知っておいてほしいこと

汗は誰でもかくものなので汗の多さが病的なものなのかの判断は難しいものです。そのため、多量の汗で悩んでいても、医療機関の受診をためらう人は少なくありません。ここでは多汗症で受診を迷っている人に知っておいて欲しいことをまとめます。

多汗症は自分でチェックできるのか

多汗症の診断は自覚症状をもとにして行われます。

具体的には、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月以上認められ、以下の6項目のうち、2項目以上にあてはまる人が多汗症と診断されます。

  • 最初に症状が出たのが25歳以下である
  • 対称性に発汗が見られる
  • 睡眠中に発汗が止まっている
  • 1週間に1回以上多汗のエピソードがある
  • 家族に多汗症の人がいる
  • 多汗によって日常生活に支障をきたす

上の質問で2項目以上該当する人は多汗症である可能性が高いです。一方で、これだけでは多汗症の程度や治療の必要性の判断はできないので、医療機関で相談することをおすすめします。

自分でできる多汗症の対策はあるのか

自分でできる多汗症対策として、制汗剤があります。市販の制汗剤は、多少の汗は抑えることができますが、びっしょりとしたたるほど大量の汗への効果は小さいです。そのため、多汗症の人の症状は制汗剤で抑えることが難しく、専門的な治療が必要なことが多いです。制汗剤で抑えきれない汗に困っている人は医療機関で症状を抑える方法について相談することをお勧めします。

多汗症は病院で治療した方がよいのか

暑い環境で過ごしたり、緊張する場面などでたくさん汗をかくことは誰でも起こりうる反応なので、多汗症を心配しすぎることはありません。一方で、日常生活に影響が出るほど頻繁に多量の発汗があって困っている人は、多汗症の可能性があります。多汗症の専門的な治療は医療機関でしか受けることができません。日常生活への悪影響が大きい人や、治療しようかどうか迷っている人は、一度受診をして相談してみてください。

多汗症は何科を受診すればいいのか

多汗症の専門的な診療を行えるのは皮膚科です。多汗症について相談したい人は皮膚科を受診してください。また、多汗症は原因が不明なものがほとんどですが、中には甲状腺機能亢進症バセドウ病)や褐色細胞腫といった病気が原因になっていることもあります。この場合は、内科(内分泌内科)で診療が行われます。

2. 多汗症のQ&A:子ども・サプリメント・ワキガとの違い・遺伝など

汗の悩みは人に相談しづらく、医療機関にかかるのは大げさと考えがちなため、多汗症が思い当たる人はさまざなま疑問を持つとよく耳にします。ここでは、多汗症のQ&Aとして、気になる話題を取り上げて説明します。

子供の多汗症はどうすればいいのか

多汗症は大人だけではなく子どもにも起こる病気です。多汗症が子どもに起こると、「手を握れない」、「汗が気になって遊べない」といった精神面での影響が、大人より強く現れることがあります。学校生活や対人関係に支障が出る前に小児科や皮膚科で相談してください。

多汗症に効果のあるサプリメントはあるのか

多汗症に効果があると謳うサプリメントはいくつかありますが、効果が科学的に確認されたものは現在のところありません。このため、多汗症をサプリメントだけで治そうとするのはお勧めできません。多汗症は皮膚科で専門的な治療を受けることができます。心配な人はまず受診してください。

多汗症とワキガ(腋臭症)の違いについて

多汗症とワキガは違う病気です。2つの病気は汗を出す汗腺(汗を出す器官)に違いがあります。汗腺にはエクリン腺とアポクリン線があります。多汗症は主にエクリン腺からの汗による病気で、ワキガはアポクリン腺からの汗による病気です。エクリン腺からの汗の臭いは強くはありませんが、アポクリン腺からの汗には強い臭いがあります。汗が多いからと言ってワキガを過度に気にしすぎる必要はありません。ただし、多汗症とワキガは同時に起こる場合もあります。多汗症にしてもワキガにしても、治療は医療機関で行えるので、心配があるならば、まずはお医者さんに相談することをお勧めします。

多汗症は遺伝するのか

多汗症が遺伝するかはまだはっきりとは分かってはいません。一方で、多汗症の人の家族には多汗症にかかっている人が多くいることは分かっており、何らかの遺伝的な要因が発症に関与しているとも考えられています。

【参考文献】

原発性局所多汗症診療ガイドライン2023

・UpToDate:Primary focal hyperhidrosis. Authors:C Christopher Smith, MD David Pariser, MD