[医師監修・作成]脱肛の治療について | MEDLEY(メドレー)
だっこう
脱肛
肛門や直腸の粘膜が、肛門からはみ出てしまう病気
4人の医師がチェック 105回の改訂 最終更新: 2020.02.28

脱肛の治療について

脱肛は痔核が肛門の外に飛び出した病気ですので、脱肛の治療は痔核の治療でもあります。まずはじめに生活習慣や排便習慣の見直しを行い、それでも痛みや出血などの症状が良くならない場合には薬物治療を行います。薬物治療でも十分に改善しない人には外科的治療が必要になります。脱肛の治療は消化器内科や消化器外科、肛門科などで行われます。

1. 日常生活で気を付けること

脱肛は排便時に起こることが多く、日常生活の中でも排便習慣を見直すことは重要です。特に長時間トイレに座っていきむと肛門に負担がかかり、痔核ができやすくなったり痔核が脱出しやすくなりますので注意が必要です。

排便習慣では次のようなことに気をつけてください。

  • トイレで長くいきまない(いきむのは3分以内にする)
  • 便秘や下痢になりにくい生活をする
    • 規則正しく食事を摂る
    • 食物繊維の多い食物を食べる
    • 水分を十分に摂る   など
  • 肛門周囲を清潔に保つ

また、排便習慣以外の日常生活では次のような点に気をつけてください。

  • 長時間座らない
  • 重いものを持ち上げる動作をできるだけ避ける
  • ストレスを減らす

長時間座ったままでいると肛門周囲の血液の流れが悪くなり痔核ができやすくなると言われています。また、重いものを持ち上げる時にいきむことで脱肛が起こりやすくなります。

日常生活での注意点について、コラム「痔に悩む人に知ってほしい7つの習慣」でも詳しく解説していますので、参考にしてください。

2. 薬物治療

痛みや出血などの症状がある場合に薬物治療を行います。治療薬には外用薬(塗り薬、座薬、注入薬)と内服薬の2種類があります。薬物治療の目的は痔核の炎症を取り除き、痛みや出血などの症状を和らげることです。

外用薬

脱肛の治療ではまず外用薬が用いられます。肛門の外に痔核が脱出した状態では軟膏やクリームなどの塗り薬を使用し、肛門の中の痔核に対しては注入薬や座薬を用います。

ステロイドを含む薬剤は、治療初期の腫れや痛み、出血の強い場合に有効です。長期間使用すると皮膚炎真菌(カビ)感染などの合併症を起こすことがありますので、通常は2週間程度の使用にとどめ、その後ステロイドを含まない薬剤に切り替えます。

内服薬

外用薬でも十分に症状がおさまりきらない人には内服薬を併用することがあります。

3. 外科的治療

生活習慣の見直しや薬物治療を行っても十分に症状がよくならない人には外科的治療が行われます。また、強い痛みを伴う脱肛や痔核からの出血が止まらない場合などには、はじめから注射や手術などの治療が行われることがあります。脱肛や痔核の状態によってはいくつかの治療法を組み合わせることもあります。

痔核結紮切除術

痔核をメスで切り取る手術で、さまざまなタイプや大きさの痔核を治療することができます。手術時間は15-30分で外来で行われることが多いですが、病状によっては入院をすすめられる場合もあります。

ゴム輪結紮法

痔核を専用の輪ゴムでしばって取る方法です。ゴムで縛られた痔核は血流が悪くなり、1週間ほどで自然にとれてなくなります。ほとんどの場合外来で治療を行います。痛みが少なく簡便な治療法ですが、ゴムで縛れる痔核の大きさに限度があります。

硬化療法

痔核に薬を注射する治療法です。ATLA(硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸)という薬剤が多く使われており、四段階注射法と呼ばれる方法で治療を行います。注射後、痔核は縮んで硬くなり肛門から脱出しにくくなります。まれですが発熱、直腸潰瘍、下腹部痛、血圧低下などの合併症が起こることがあります。出血が多い痔核に対しては5%フェノールアーモンドオイルを注入することもあります。主に外来で治療を行います。

PPH療法(Stapled hemorrhoidopexy)

PPH療法(Stapled hemorrhoidopexy)とは特殊な器具を用いて痔核よりも奥にある直腸粘膜を切除する治療法です。痔核を釣り上げて肛門の外へ脱出しづらくするとともに、痔核を縮小する効果が期待できます。手術時間は約30分で、入院で行われることが多いです。まれですが直腸穿孔(穴が開く)などの合併症が起こることがあります。

4. 脱肛のガイドラインはあるのか?

脱肛だけを対象としたガイドラインはありませんが、痔核を含めた肛門の病気についてのガイドラインが発行されています。

  • 日本大腸肛門病学会/編集, 「肛門疾患(痔核・痔瘻裂肛診療ガイドライン2014年版」, 南江堂, 2014

ガイドラインはこれまでの研究で得られたデータを集めて、病気に対する標準的な治療法を専門以外のお医者さんにもわかりやすいように解説したものです。病気の診療においてとても参考になるものですが、ガイドラインに書かれていることが全ての患者さんに当てはまるわけではありません。担当のお医者さんはガイドラインを参考にしたうえで、一人ひとりの患者さんの病状に合った検査、治療を選択しています。