[医師監修・作成]ドライアイ(乾性角結膜炎、涙液減少症)の治療について:目薬、手術など | MEDLEY(メドレー)
どらいあい(かんせいかくけつまくえん、るいえきげんしょうしょう)
ドライアイ(乾性角結膜炎、涙液減少症)
涙が減り、目の表面が乾くことで様々な症状を引き起こしてしまう状態
4人の医師がチェック 116回の改訂 最終更新: 2021.06.18

ドライアイ(乾性角結膜炎、涙液減少症)の治療について:目薬、手術など

ドライアイの治療は目薬をさして症状を和らげることが中心になります。症状が重い人に対してには涙が出ていく場所を塞ぐ手術も行なわれます。治療とともにドライアイを悪化させている原因を特定して改善することも大切です。

1. 目薬(点眼薬)

目薬はドライアイの治療の中心です。

目薬をさすことで涙の代わりができたり涙の分泌を促したりすることができます。ドライアイの治療に用いられる目薬は次の4つがあります。

【ドライアイの治療に使われる点眼薬

  • 人工涙液
  • ヒアルロン酸ナトリウム
  • レバミピド
  • ジクアホソルナトリウム

以前は水分を補う点眼薬が中心でしたが、今は「涙の分泌を促すもの」や「目の粘膜の傷の修復に有効なもの」があり、症状などに合わせて用いられています。次にそれぞれの特徴について説明します。

人工涙液

人工涙液は涙に似せて作った液体のことで、涙の代わりをすることで目の乾きをとって症状が改善します。市販薬としても手に入れることができます。その一方で、コンタクトレンズを使っている人に悪影響を及ぼす防腐剤が含まれているものもあるので、購入の際には注意が必要です。コンタクトレンズをつけたまま使うことを考えている人は悪影響がある防腐剤などが含まれていないかを確認してみてください。自分での判断が難しいときには薬剤師さんに聞いてみるとより確実です。

ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン®︎)

保水効果が高いヒアルロン酸が主成分の点眼液です。水分の蒸発を防ぐ働きがあり、点眼することで目の表面の潤いを保ってドライアイの症状を軽減します。後述するレバミピドやジクアホソルナトリウムに比べて刺激が少ないので使いやすいとされています。

なお、ヒアルロン酸ナトリウムの点眼薬には主成分の濃度の違いによって0.1%と0.3%の規格があります。また防腐剤であるクロルヘキシジングルコン酸塩を含む通常タイプと、シェーグレン症候群や防腐剤アレルギーがある場合などに有用となる防腐剤を含まない使い捨てタイプ(主な商品名:ヒアレイン®ミニ)があり、病態や体質などに合わせた選択が可能です。

レバミピド点眼薬(ムコスタ®︎点眼液)

レバミピドは胃の粘膜保護剤として用いられていた薬です。ムチンという物質の産生を促すことで涙の量と質を改善する作用があります。水分の蒸発を防ぐ作用しかないヒアルロン酸ナトリウムに比べて高い効果が得られると考えられています。また、点眼は6時間に1回が勧められており、後述するジクアホソルナトリウムに比べると点眼する回数が少ない点で優れています。

デメリットしては点眼後に目のかすみや口の中に苦味を感じるなどの副作用があることです。目のかすみが起こると視野が悪くなることがあるので、点眼後は車の運転は避けるようにしてください。また、コンタクトレンズを装着したまま点眼すると目にくっついてしまうことがあるので、コンタクトレンズを使用している人は避けるのが望ましいとされています。

ジクアホソルナトリウム(ジクアス®︎点眼液)

ジクアホソルナトリウムは目の水分量を増やすとともにレバミピドとは異なった作用機序でムチンという物質の分泌を促します。レバミピドに比べると刺激や直後の目のかすみなどの副作用が少ないとされています。また、ジクアホソルナトリウムにはコンタクトレンズに悪影響を与える物質が使われていないので、コンタクトレンズを装着したまま使える点も優れています。一方で、点眼は4時間から5時間に1回が勧められているので、レバミピドに比べるとやや点眼を行う手間がかかります。

2. 手術(涙点プラグ挿入術):涙の出口を塞ぐ治療

症状が重いドライアイの人には手術が検討されることがあります。手術は涙点プラグ挿入術と呼ばれるもので、涙を目の表面にとどまらせる効果があります。

涙の流れについて

涙点プラグ挿入術の説明の前に涙の流れについて説明します。

涙はの外側にある涙腺という場所で作られて目を覆います。その後、涙は目の内側にある涙点という場所に集まり鼻へ流れ出ます。つまり、涙点は涙の出口のような場所にあたります。

涙点プラグ挿入術の実際と効果

涙点プラグ挿入術は涙点にプラグを挿入することで、涙点に蓋をして涙が目の表面から出ていきにくくします。涙点プラグの挿入には身体を切ったりする必要はありませんので、痛みはほとんど問題になりません。プラグの挿入は外来で行うことができ数分で終えることができます。涙点プラグを挿入した後は目を覆う涙が増えるのでドライアイの症状が軽減します。

涙点プラグ挿入術の注意点

涙点プラグを挿入後にはいくつか注意することがあります。

涙点に挿入されたプラグは通常の生活では外れることは少ないですが、目をこすったりすると外れることもあるので、なるべく目はこすらないようにしてください。

涙点は涙だけではなくて目についた不要な物質を外へ流し出す出口でもあるので、涙点プラグを挿入すると不要な物質が目の表面に溜まりやすくなります。

目の表面の清潔を保つために、涙点プラグを挿入後には目薬などを使って目を洗い流すケアが必要になります。

また、涙点に蓋をした効果が強く出すぎて涙が多くなって目から溢れてしまうこともあります。その際にはプラグを外したり他の治療に変えたりする必要があるので、治療を受けた医療機関で相談してみてください。

3. ドライアイを悪化させる環境要因や生活習慣の改善

ドライアイの症状は目薬や涙点プラグ挿入術によって改善できます。症状を和らげる治療とともに、ドライアイの原因となっている環境要因や生活習慣がないかを見直して改善することも大切です。

ドライアイを悪化させる環境要因としては次のものが知られてます。

  • コンタクトレンズの使用
  • 長時間の集中作業:パソコン・スマートフォンの使用や車の運転
  • 乾燥した環境

適切な治療を行ったとしてもドライアイに悪影響を及ぼす環境要因や生活習慣がそのままであれば治療の効果は不十分になってしまいます。治療とともに、自分の環境や生活習慣を見直すことをお勧めします。

環境要因や生活習慣がどのようにしてドライアイに悪影響を及ぼしているかやその対策については「ドライアイの原因」や「ドライアイの人が知っておくといいこと」で詳しく説明しているので参考にしてください。

4. ドライアイの治療に使われる漢方薬はあるのか

ドライアイの治療ではヒアルロン酸ナトリウム(主な商品名:ヒアレイン®)やジクアホソルナトリウム(商品名:ジクアス®)などの点眼薬(外用薬)によって目の乾燥を改善したり不足している涙液を補う治療などが主に行われていますが、場合によっては漢方薬が有用であることも考えられます。

ドライアイを引き起こす要因としてはコンタクトレンズやスマートフォンの使用などの外因的なものだけでなく、なんらかの病気や体質などによるものも考えられます。例えば、涙液だけなく唾液などの体液が減少するシェーグレン症候群更年期障害糖尿病や腎疾患など全身の病気が起因となることもしばしばです。

漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわし、一般的にその「証」に適した漢方方剤が選択されます。また、漢方医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を使って生命活動や体内の状態を表現することがあります。シェーグレン症候群の主な症状でもあるドライアイや口渇(ドライマウス)などの乾燥や渇きを訴えるような状態では体内の血(血液や血流など)や水(血液以外の体液)の不足や流れを改善する漢方薬を使うことによって改善が期待できることもあります。

例えば、麦門冬湯(バクモンドウトウ)は一般的に風邪(感冒)による咳や気管支炎などに使われる漢方薬ですが、唾液分泌促進作用などが期待できることからもシェーグレン症状群などによる乾燥状態の身体に潤いを与えることが期待できるとされています。この他、人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)などの漢方薬もシェーグレン症候群などによる乾燥状態の改善に有用とされています。

更年期障害は冷えやほてり、便秘や下痢、不眠などの様々な症状を引き起こしますが、ドライアイや眼精疲労などの眼症状があらわれることもあります。これは卵胞ホルモンであるエストロゲンの減少により、眼球の乾燥などが引き起こされることが要因のひとつとされていて、女性ホルモンのバランスを整える漢方薬によってドライアイなどの眼症状の改善が期待できることがあります。桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)をはじめとし更年期障害に対して使われる漢方薬は様々で個々の証に合わせて適する方剤が使われています。更年期障害に使われる漢方薬の中でも例えば温経湯(ウンケイトウ)は、唇の乾燥や肌荒れなどがあるような冷えや月経不順などに対して適するとされ、構成生薬として麦門冬(バクモンドウ)や阿膠(アキョウ)といった潤いを与える成分を含むことからも女性によくみられる皮膚のかさつきや目の乾燥などの症状改善が期待できる漢方薬とされています。

この他、八味地黄丸(ハチミジオウガン)や牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)などの漢方薬によってかすみ目などの眼症状が改善されることもあります。ドライアイや白内障などが原因となり、かすみ目などの眼症状が引き起こされることも考えられ、特に腎機能や加齢が関係するような眼症状に対してはこれらの漢方薬が有用とされています。

八味地黄丸は生薬の構成の面でみると、六味丸(ロクミガン)という漢方薬に桂皮(ケイヒ)と附子(ブシ)という生薬を加えたもので、八味丸や八味腎気丸などとも呼ばれます。八味地黄丸は排尿異常、下半身の冷え、しびれ、痛みなどの改善に使われる漢方薬ですが、かすみ目や白内障などの眼症状にも改善効果が期待できます。牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は、八味地黄丸に牛膝(ゴシツ)と社前子(シャゼンシ)という生薬を加えた漢方薬で、こちらも排尿異常、冷え、痛みなどの他、かすみ目や白内障などの眼症状に対しても改善効果が期待できます。

また一般用医薬品(市販薬)には杞菊地黄丸(コギクジオウガン)という漢方薬があり、これは八味地黄丸の元にもなっている六味丸に枸杞子(クコシ)と菊花(キクカ)という目に対して有用とされる生薬を加えたものです。排尿困難や頻尿などの症状の他、かすみ目やつかれ目などの眼症状に対しても改善効果が期待できる漢方薬です。

◎漢方薬にも副作用はある?

一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」の一つですので、副作用がおこる可能性はあります。

例えば、生薬の甘草(カンゾウ)の過剰摂取などによる偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)や黄芩(オウゴン)を含む漢方薬でおこる可能性がある間質性肺炎や肝障害などがあります。しかしこれらの副作用がおこる可能性は非常に稀であり、万が一あらわれても多くの場合、漢方薬を中止することで解消されます。

また漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわしますが、漢方薬自体がこの証に合っていない場合にも副作用があらわれることは考えられます。

ただし、何らかの気になる症状が現れた場合でも自己判断で薬を中止することはかえって治療の妨げになる場合もあります。もちろん非常に重篤な症状となれば話はまた別ですが、漢方薬を服用することによってもしも気になる症状があらわれた場合は自己判断で薬を中止せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

5. ドライアイの人は眼科に行った方がよいのか

ドライアイが心配な人は眼科を一度は受診することをお勧めします。症状が軽いうちはひとまず眼科にいかずに様子をみようと考えるかもしれませんし、市販の薬などで症状が和らぐかもしれません。

しかし、ドライアイの中には病気が原因になっている場合や服用している薬が原因になっている場合もあります。原因が明らかになればそれに応じた治療を受けることで症状がよくなることもありえます。原因の有無についての判断を自分でするのは簡単ではないので、もし受診を迷っているのでしたら診察を受けることをお勧めします。

【参考文献】

・UpToDate Dry eyes Author : Roni M Shtein, MD This topic last updated: May 02, 2018.