[医師監修・作成]坐骨神経痛の原因:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、感染、腫瘍と妊婦 | MEDLEY(メドレー)
ざこつしんけいつう
坐骨神経痛
坐骨神経が圧迫されることで、足の痛みやしびれが生じる状態の総称
13人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2022.05.23

坐骨神経痛の原因:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、感染、腫瘍と妊婦

坐骨神経痛の原因として、骨や筋肉によって神経が圧迫されている場合があります。感染や腫瘍が関わっている場合は早く治療する必要があります。妊娠とも関係しています。

1. 坐骨神経痛の原因一覧

坐骨神経痛の原因として以下の病気や状態が挙げられます。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
  • 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)
  • 腫瘍
  • 感染
  • 妊娠

それぞれの特徴と治療法を説明します。

2. 腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の症状と治療

画像:椎間板と脊髄の位置関係の図。椎間板ヘルニアで近くの神経が圧迫されると坐骨神経痛などの症状が現れる。

腰椎椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛の原因になる代表的な病気です。

腰のあたりの背骨(腰椎)の間には椎間板(ついかんばん)というクッションが挟まっています。椎間板が何らかの原因で本来の場所からずれて飛び出してしまうことを椎間板ヘルニアと言います。

腰椎の近くには坐骨神経につながる神経も通っていて、腰椎の椎間板ヘルニアのために神経が影響されることで、坐骨神経通の原因になります。

腰椎椎間板ヘルニアの症状は?

腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の症状を挙げます。

  • お尻や足のしびれ
  • お尻や足の麻痺
  • お尻や足の痛み

腰椎椎間板ヘルニアでは痛みがないこともあります。無痛性腰椎椎間板ヘルニアと言います。

腰椎椎間板ヘルニアの治療は?

腰椎椎間板ヘルニアの主な治療を挙げます。

  • 手術
  • 神経ブロック注射
  • 装具(コルセットなど)
  • 温熱療法
  • 牽引(けんいん)療法
  • 認知行動療法

治療方針は手術をするかしないかで大きく違います。手術で改善が見込めるのですが、必ずしびれがなくなるとは限りません。さまざまな可能性を考えて、一人一人に適した治療法を選ぶ必要があります。

詳しくは「病院やクリニックではどのような治療をする?ヘルニアやギックリ腰に手術はやるべきか?」で説明しています。

3. 脊柱管狭窄症による坐骨神経痛の症状と治療

脊柱管狭窄症は、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなることで、坐骨神経痛の原因になります。

脊柱管狭窄症の症状は?

脊柱管狭窄症による坐骨神経痛で出やすい症状を挙げます。

  • お尻や足のしびれ
  • お尻や足の麻痺
  • お尻や足の痛み
  • 間欠性跛行(かんけつせいはこう)

脊柱管狭窄症が原因の場合は間欠性跛行が特徴です。

間欠性跛行とは?

間欠性跛行とは、少し歩くと足がしびれたり痛くなったりして歩けなくなり、少し休むと歩けるようになる症状です。

脊柱管狭窄症の特徴的な症状に間欠性跛行があります。

脊柱管狭窄症の治療は?

脊柱管狭窄の主な治療に次の方法があります。

  • コルセット(サポーター)
  • 手術

手術をしない治療法(保存療法)と手術治療で治し方が大きく違います。しびれや痛みが激しいときは手術が勧められます。

4. 筋肉が原因の坐骨神経痛:梨状筋症候群

梨状筋症候群という、筋肉が硬くなって神経を圧迫している状態が、坐骨神経痛の原因にもなります。

梨状筋という筋肉はお尻にあります。梨状筋が硬くなったり、お尻にある骨(仙骨)の動きが悪くなったりすることで梨状筋症候群が起こります。

坐骨神経は、梨状筋の近くを通っているので、筋肉が硬くなった影響を受けて坐骨神経痛を起こすことがあります。

梨状筋症候群の治療

梨状筋症候群による坐骨神経痛は、筋肉が軟らかくなると改善することがあります。

マッサージなどで筋肉を軟らかくしたり、筋肉の表面を覆う筋膜の状態を整えることができます。

5. 腫瘍が原因の坐骨神経痛:神経鞘腫、骨転移など

腫瘍によって坐骨神経が圧迫されたり、腫瘍の周りに炎症が起こったりすることで、坐骨神経痛の原因になることがあります。

腫瘍の種類によって次のように治療が違います。

  • 神経そのものや、神経を覆う膜の腫瘍:手術で取り除く
  • 神経の近くの骨の腫瘍:抗がん剤治療化学療法)など

神経の腫瘍の治療

神経自体や周りの組織の腫瘍は主に手術で治療できます。次のような腫瘍が坐骨神経痛の原因になります。

神経の近くの骨の腫瘍の治療

がんが骨に転移して坐骨神経痛の原因になっている場合、抗がん剤などの治療法があります。

坐骨神経痛以外の症状として、強い痛み、骨がもろくなって骨折するなどがあります。

骨に転移があるがんは普通、手術ができません。主な治療に次のものがあります。

  • 化学療法(抗がん剤治療)
  • 放射線療法
  • 痛みを抑える薬(モルヒネなど)

ほとんどの場合、上の治療で根治は期待できず、余命を伸ばすことや痛みを抑えることが治療の目的になります。

6. 感染が原因の坐骨神経痛:化膿性椎間板炎など

骨やその周囲に細菌が感染して坐骨神経痛の原因になっている場合、抗生物質を使った治療が必要です。

化膿性椎間板炎(化膿性椎体炎)の治療

感染によって起こる坐骨神経痛の原因として、化膿性椎間板炎(かのうせいついかんばんえん)あるいは化膿性椎体炎(かのうせいついたいえん)という病気があります。背骨や椎間板に細菌が感染している状態です。感染が進行すると骨が破壊されていきます。

抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使った治療が必要です。

硬膜外膿瘍の治療

硬膜膿瘍(こうまくがいのうよう)は、脊髄の周りにが溜まった状態です。硬膜外膿瘍が神経を圧迫したり、感染が広がると坐骨神経痛の原因になります。

硬膜外膿瘍の治療には抗菌薬が必要です。細い針を刺して膿を吸い出す治療を行うこともあります。

7. 妊婦に坐骨神経痛が出る原因は?

妊婦では次の原因で腰痛や坐骨神経痛が起こりやすくなります。

  • 子宮が大きくなることで腰に負担がかかる
  • お腹を支えるために腰を反らすので腰に負担がかかる
  • 姿勢が変わって筋肉が硬くなり神経を圧迫する
  • ホルモンバランスが崩れて痛みやしびれを感じやすくなる
  • 心の状態が不安定になり痛みを感じやすくなる

ただでさえ妊娠中は非常にストレスが多いうえに、腰痛や坐骨神経痛の症状が加わります。痛みがあると日常生活に必要な動作がしにくくなることや、出産のときにいきめなくなることもあります。

8. 妊婦の坐骨神経痛の治療法は?

妊婦に坐骨神経痛が現れたときの主な治療法を挙げます。

  • 無理に動かない
  • ストレッチ
  • 温熱療法
  • 固定ベルト、コルセット
  • 痛み止めの薬
  • 神経ブロック注射

無理に動かない

坐骨神経痛の症状が出たらまずは無理に動かないで、できるだけ休養を取ってください。

妊娠中でもまだ仕事や家事をしていると、休むのも簡単ではないかもしれません。しかし、ただでさえ負担がかかる妊娠期間を乗り切るには、家族や周りの人に助けてもらって、体を休めることも大切です。

ストレッチ

ストレッチは妊婦に限らず坐骨神経痛に対する治療になります。詳しくは「坐骨神経痛(座骨神経痛)に効くストレッチ方法とは?」で説明しています。

妊婦ではお腹が出ているので、ストレッチをするにも取れない体勢があります。個々の状況に合わせて様々なストレッチ方法があるので、お医者さんやリハビリの先生に相談してみてください。

温熱療法

腰や太ももの裏を温める温熱療法が坐骨神経痛の治療法として知られています。

固定ベルト、コルセット

骨盤ベルトは妊娠中の腰痛を予防することで坐骨神経痛を予防します。

妊娠中には骨盤が不安定になることが坐骨神経痛の原因になります。骨盤ベルトは不安定な骨盤を安定させる役割があります。骨盤が安定させることで腰への負担も減らし、坐骨神経痛も改善できます。

妊婦の坐骨神経痛に使える薬

妊娠中に使う薬には注意が必要ですが、安全性の高い痛み止めの薬もあります。医師に相談して、妊娠中でも使える薬を処方してもらってください。

神経ブロック注射

神経ブロックも妊娠中でも使えます。詳しくは「坐骨神経痛(座骨神経痛)の治し方とは?手術とブロック注射について解説」で説明しています。

9. 肥満、冷え、ストレス、ランニング、帯状疱疹は坐骨神経痛の原因か?

坐骨神経痛は原因不明の症状として始まることも多く、何が原因だったのかと気になります。いくつか例を挙げて説明します。

肥満は坐骨神経痛の原因か?

肥満は坐骨神経痛に関係していますが、肥満だけで坐骨神経痛は説明できません

ある医学研究によると、肥満の人では坐骨神経痛の診断、坐骨神経痛による入院が若干多かったというデータがあります。

参考文献: 

冷えは坐骨神経痛の原因か?

冷えが坐骨神経痛の原因とは言えません。ただ、治療中に体力を温存する意味では、なるべく冷えを感じない過ごしやすい環境を作るほうが望ましいでしょう。

ストレスは坐骨神経痛の原因か?

ストレスは腰痛に関係しています。坐骨神経痛との関係については、うつ症状が強く出ている人は坐骨神経痛の症状も強かったという研究結果があります。

参考文献: 2013 Mar

ランニングは坐骨神経痛の原因か?

ランニングで坐骨神経痛の原因は説明できません。身体運動を活発にする人では坐骨神経痛の発生が少なかったとする研究データもあり、坐骨神経痛を恐れて運動を控える必要はないでしょう。

ただし、すでに坐骨神経痛が出ているときには無理な運動は避けてください。

参考文献: 2016 Apr 18.

帯状疱疹は坐骨神経痛の原因か?

帯状疱疹は正確には坐骨神経痛ではありませんが、症状が似ていることがあります。

帯状疱疹はピリピリした痛みとともに水ぶくれが出る病気です。症状は全身どこにでも出るので、お尻や足にピリピリした感じが出て坐骨神経痛に似た症状になることもあります。

さらに、帯状疱疹の痛みは水ぶくれよりも数日先に出ることが多く、坐骨神経痛かと思ったら水ぶくれが出て帯状疱疹だったと気付くことはありえます。

10. 危険な坐骨神経痛の見分け方

坐骨神経痛の症状を感じたときに、以下の特徴があれば感染や腫瘍、特にがんの転移などの危険な病気が隠れているかもしれません。

  • 原因に覚えがないのに急に痛みやしびれが出る
  • 痛みやしびれが非常に強い
  • 原因不明の発熱がある
  • 体重が減る
  • がんの治療を受けたことがある

ひとつでも当てはまるときは、早めに医療機関で相談してください。