けつゆうびょう
血友病
血を止めるのに必要な凝固因子という体内物質が不足して、出血が止まりにくくなる病気
6人の医師がチェック 88回の改訂 最終更新: 2022.07.04

血友病の治療について

血友病の治療は凝固因子の補充が基本となります。凝固因子の補充による治療を受けることによって「出血を防ぐこと」ができ、健康な人と変わらない生活を送ることができます。ここでは出血したときの治療や手術時の対応、出血していない時の対応などをケースごとに説明します。

1. 出血時の対応

症状の軽い血友病A(軽症から中等症)の人の出血に対しては、デスモプレシンという薬が最初に使われます。デスモプレシンは尿崩症という病気に対して使われる薬ですが、凝固因子8を増加させるため治療に応用されています。一方で、繰り返し投与すると効果が弱まってくるため注意が必要です。

重症の血友病に対してはデスモプレシンはあまり有効ではありません。そのため、凝固因子の補充が必要となります。

血友病A、Bともに凝固因子の補充が有効な治療方法で、出血の状況、補充後の凝固因子活性(出血を止める機能をみる検査の値)の目標値に合わせて投与量が決まります。

2. 手術時の対応

出血が止まりにくいことがわかっている人が出血を伴う手術を受ける場合には、不安も大きいと思います。手術中の出血を増やさないために、手術前には凝固因子の補充を行います。大きな手術(関節手術、開腹手術、開胸手術、開頭手術など)の際は、手術中に凝固因子を持続的に点滴する方法がとられることもあります。

3. 非出血時の対応

重症の血友病と分かっている人は、出血していないときも治療が行われます。出血のリスクを抑えるために、重症であるほど出血予防目的の凝固因子の補充が必要で、ツロクトコグ アルファ ペゴル(商品名:イスパロクト)などが用いられます。また、2018年から血友病Aに対してエミシズマブ(ヘムライブラ®️)という薬が使用できるようになりました。これは遺伝子組換えモノクローナル抗体と呼ばれる薬で、凝固因子(活性型凝固因子9と凝固因子10)を刺激することで出血を予防できます。

4. 治療の効果がだんだん低下してしまう人について:インヒビターのある場合の治療

血友病に対して凝固因子の補充治療を繰り返しを行ううちに、効果が薄れていくことがあります。その理由の一つに凝固因子の働きを弱めてしまうもの(インヒビター)の存在があります。治療を行うと必ずインヒビターができてしまうわけではありませんが、血友病Aで5%程度、血友病Bで4%程度の人がインヒビターを持っているとの報告があります。凝固因子を補充しても出血による症状がみられてしまう時は、インヒビターにより補充した凝固因子の効果が弱まっている可能性があるのでお医者さんに相談してください。インヒビターが作られた人には以下のような別の治療が検討されます。

インヒビターが見られた人にはどんな治療を行うのか

インヒビターのある人も、基本的にはインヒビターのない人と同じように、出血している時や手術などの出血が予想される時、あるいは出血による症状が重い時に治療を受けることになります。行われる治療は主に次のものになります。

  • バイパス療法
  • 中和療法

「バイパス療法」では血友病で問題となる凝固因子8、9以外の凝固因子を使って止血しやすくします。従来のバイパス療法では凝固因子7、10を補充します。2018年からインヒビターがある血友病Aの人にもエミシズマブ(ヘムライブラ®️)という薬が使用できるようになりました。

「中和療法」では大量の凝固因子8、凝固因子9製剤を投与することで、止血しやすくします。インヒビターによる効果の減衰を量でカバーする方法です。

また、他にも免疫寛容療法と呼ばれる治療が行われることがあります。これは凝固因子を長期的に投与し身体を慣らすことでインヒビターが作られることを防ぐ方法です。