血友病の症状について
血友病は出血を止める役割を担う凝固因子という体内の物質が欠乏し、出血しやすくなる病気です。重症でない人は
1.血友病になっても症状がないことがある?
血友病は凝固因子の欠乏によって起こり、凝固因子の欠乏の程度によって軽症、中等症、重症の3つに分けられます。そのうち軽症や中等症の人は日常生活の中で下記にあるような血友病に特徴的な出血による症状を自覚することは少ないです。普段出血による症状がない軽症や中等症の人も、けがや手術の時には出血が止まりにくいことがあるので注意が必要です。
2.最初に気づくことが多い出血症状
軽症や中等症の人は、日常生活で出血による自覚症状がないことが多いですが、重症の人はけがなどのきっかけがなくても出血による症状が起こる場合があります。
重症であればあるほど生まれてから早い時期に出血による症状に気づくことが多いです。重症度が非常に高いと、生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)に以下のような症状がみられることがあります。
- 頭の周囲の
血腫 (血のかたまり)による頭のこぶ - 頭蓋内出血(頭の中の出血)による活気のなさ、嘔吐、けいれんなどの症状
また、生まれたときに症状がなくても、年齢を重ねるうちに以下のような症状がみられることがあります。
- 皮膚のあざ
- 関節内の出血による腫れ、痛み
- 筋肉内の出血による腫れ、痛み
- 口内の出血
- 鼻血
- 赤い便や黒い便(食べ物の通り道である
消化管 の出血による) 血尿 (腎臓、膀胱などの出血による)
このように重症の人はさまざまな出血による症状がみられます。もしこのような症状が見られるときは原因をはっきりさせるために医療機関を受診してください。
3. 診断されてしばらく経ってから起こる症状
血友病と診断されてからしばらくして、新たな症状がみられることがあります。病状が進行してみられる症状や治療の影響を受けて見られる症状がそれにあたります。具体的には以下のような症状に気をつける必要があります。
- 関節の
炎症 や破壊による痛み - インヒビターという物質が作られ、治療が効きにくくなること
- 肝炎
ウイルス 、HIV などの感染症 の症状
病気と付き合っていくうちにどのような症状が起こる可能性があるか知っておくと、日々の生活の中で対策が取りやすくなります。上にあげた症状についてもう少し詳しく説明します。
関節の炎症や破壊による痛み
関節の出血が繰り返されると、関節が痛むようになり、しまいには関節の破壊が起こるようになります。関節に血腫(血のかたまり)ができて炎症が起こることが原因です。関節の出血は凝固因子を補充することで防げます。つまり、関節の症状を繰り返す人は、症状を見逃すことなくお医者さんに相談して適切な治療をしてもらうことが大事です。
インヒビターという物質が作られ、治療が効きにくくなること
凝固因子の投与を繰り返されると、凝固因子に対するインヒビターという物質が身体の中でつくられ、治療の効果が薄れていくことがあります。血友病の治療中に、凝固因子を補充しても出血を止める効果が発揮されなくなってしまった時は、インヒビターの存在が疑われます。インヒビターがあるかどうかは血液検査で確認することができ、血友病Aの人の5%程度、血友病Bの人の4%程度でこの現象がみられるといわれています。
また、インヒビターは治療を繰り返すことで作られると考えられていますが、過去に治療したことのない人でもインヒビターがみられることがあります。そのため、初めて凝固因子による治療を受けた人であっても、出血による症状が改善しない場合にはお医者さんに相談してください。
肝炎ウイルス、HIVなどの感染症の症状
凝固因子の補充に用いられる治療薬のことを血液製剤と呼びます。昔の血液製剤は他人の血液から作られていたため、感染症が問題となることがありました。こうした過去があるため、血液製剤を使用することについて不安に思う人もいるかもしれません。
現在使用されている血液製剤には、「ヒトの血液から作られるもの」と「遺伝子組み換えによるもの」があります。ヒトの血液から作られるものにはHIVや肝炎ウイルスなどの感染リスクがありますが、ヒトの血液から血液製剤を作る過程で微生物を除去しているうえに、作ったあとにもウイルスの有無を調べる精密検査を行っているため、感染するリスクは低いと考えられます。また、遺伝子組み換えで作られたものの場合には、ヒトの血液を用いないため、感染するリスクは極めて低いと考えられます。
4. 保因者の場合にも症状があるのか
血友病には保因者という状態があります。これは血友病を
保因者とは
血友病は人間の遺伝情報が書き込まれている
女性はX染色体を2本持っていますが、男性はX染色体を1本のみ持っています。女性の持っているX染色体に問題があっても、2本あるうちのもう1つのX染色体が正常であれば血友病を発症しません。この状態を保因者といいます。
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上の図にあるように、男性にはX染色体が1本しかないため、男性のX染色体に問題があれば保因者とならず症状が見られるようになります。つまり、保因者は女性のみになります。
保因者にみられる症状
保因者では2つのX染色体のうち1つが問題がみられます。つまり、遺伝子の半分に問題があるので、血友病を発症していなくても健康な人より出血を止める働きが弱い可能性があると言われています。頻度はまれですが、中等度の血友病と同じくらい出血を止める働きが低下していることもあります。上で説明した出血による症状に加えて、女性特有の症状として、月経時の出血が多いことや、出産時に出血しやすいなどの症状があります。これらの症状について不安のある人は医療機関で相談してください。