じかく(いぼじ)
痔核(いぼ痔)
肛門や直腸の内部の血管が一部うっ血し、こぶのように腫れた状態をさす。
8人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2021.06.04

痔核(いぼ痔)の症状について:出血、いぼの飛び出し、かゆみなど

痔核は肛門や直腸の粘膜が腫れてできたいぼのことです。痔核があると排便のたびに鮮やかな赤い血が出たり、いぼが肛門の外に飛び出すといった症状が現れます。

1. 肛門からの出血、血便

肛門からの出血や血便は痔核の人によくある症状で、排便時が多いです。肛門から出る血液は鮮やかな赤い色をしていて、便器の中に血液がしたたり落ちたり、お尻を拭いた時にトイレットペーパーに血液がついて気づく人が多いです。痔核からの出血であれば多くの場合、比較的すぐに出血がおさまりますが、まれに大量出血を起こす人もいます。出血が止まらない場合はただちに医療機関を受診するようにしてください。

また、便に血液がまじる血便と呼ばれる症状もあります。痔核でみられる血便では、便の表面に鮮血が付着しています。一方、赤い血が便に混じり込んでいる場合や暗赤色の血便がみられた人では、腸炎や大腸がんが潜んでいる可能性があるので、すみやかに医療機関を受診してください。

2. 肛門から痔核が飛び出る

痔核が腫れたりたるんだりすると、排便のたびに肛門の外側にいぼが飛び出して強い痛みを自覚するようになります。排便時だけではなく、お腹に力がかかる場面(運動時や重いものを持った時など)でも痔核が飛び出ることがあるので、痔核がある人は急に力を入れように工夫してください。

痔核が肛門から飛び出たとしても、はじめのうちは指で押し込めば痔核は肛門の中に戻ります。しかし、悪化すると次第に指で押し込んでも戻りにくくなり、肛門から痔核が出たままになってしまいます。痔核がでたままになると、痛みに加えて、便や粘液で下着が汚れたり悪臭がするなど、日常生活に支障をきたします。

3. 肛門のかゆみ

痔核があると便や粘液が肛門周りの皮膚についたままになりやすいです。便や粘液が皮膚に刺激を起こしてかゆみのもとになるので、肛門の周囲を清潔に保つのがかゆみの予防になります。ただし、汚れを気にして肛門を洗いすぎても、皮膚の表面に細かい傷がつき、かゆみがひどくなることもあるので注意が必要です。可能であれば、排便後の汚れは温水洗浄便座で優しく洗い流すようにして、ゴシゴシこすり過ぎないようにするとよいです。

なお、肛門周囲のかゆみを専門的には肛門掻痒症と呼びます。肛門掻痒症の原因には、痔核のほかにも細菌真菌(カビ)の感染などいくつかあります(詳しくはこちらのページを参考にしてください)。かゆみが気になる人は、一度医療機関を受診することをおすすめします。

4. 肛門の痛み、腫(は)れ

痔核が肛門の中に収まっている時には痛みはほとんどありませんが、肛門から痔核が飛び出すと、痛みが自覚されます。また痔核を持つ人に肛門に強い痛みや腫れが急激に現れた場合、次の状況に進行している可能性があります。

  • 血栓性(内)外痔核
  • 嵌頓(かんとん)痔核

それぞれについて説明します。

血栓性外痔核

血栓性外痔核とは外痔核の中に血液の塊(血栓)ができたものです。また、外痔核は痔核の中でも肛門の出口に近い部分にできた痔核のことです(専門的には歯状線より外側の痔核を外痔核と呼び、内側の痔核を内痔核と呼びます)。

血栓性外痔核になり、痔核の中の血液の塊が急激に大きくなると、強い痛みを感じます。痛みはすぐに消えることはなく、多くの場合、1日から4日ほど続きます。血栓が潰れると出血します。

薬物治療で症状が落ち着くときもありますが、ときとして手術が必要になります。痛みが強い時はできるだけ早めに受診するようにしてください。

嵌頓(かんとん)痔核

痔核は肛門から飛び出ることがありますが、ほとんどの場合、痔核を押し戻すと、肛門の内側に引っ込みます。一方で、飛び出た痔核が肛門で締め付けられて元に戻らなくなことがあり、この状態を嵌頓痔核と言います。痔核の根元が圧迫されて血液の流れが急激に悪くなるため、痔核に血栓や潰瘍(えぐれること)ができて、大きく腫れ上がり、激しい痛みがあらわれます。

症状が強い嵌頓痔核ですが、まずは薬で炎症を抑えながら様子をみることが多く、すぐに手術になることはほとんどありません。

5. 痔核(いぼ痔)の症状を繰り返さないために

痔核(いぼ痔)は繰り返すことがあります。痔核の症状は治療によって改善しますが、肛門への負担などをきっかけに症状が悪化することは少なくありません。症状悪化を予防するためには、普段の生活から肛門に負担をかけないようすることが大事で、まずは便秘や下痢にならないようにも気をつけてください。具体的な方法はコラム「痔に悩む人に知ってほしい7つの習慣」で紹介しています。

参考文献

・日本大腸肛門病学会/編. 「肛門疾患(痔核・痔痩・裂肛)・直腸脱 診療ガイドライン 2020年版(改定第2版)」, 南江堂, 2020
・幕内雅敏/監、杉原健一/編. 「大腸・肛門外科の要点と盲点(Knack & Pitfalls)第3版」, 文光堂, 2014
・Nesselrod Jp. Pathogenesis of common anorectal infections.Am J Surg 88:815-817t 1954 18)
・佐原力三郎. 痔痩の病因,分類、外科. 77:644-647, 2015
・肛門疾患診療のすべて. 臨床外科増刊. vol.63 No.11, 医学書院, 2008