痔核(いぼ痔)の検査について:身体診察、肛門鏡検査など
痔核(いぼ痔)が疑われた人はいくつか診察や検査を受けます。中でも肛門鏡による検査が重要で、痔核の位置や大きさが分かります。また、痔核とよく似た
1. 痔核の診察や検査について
痔核が疑われた人には主に次の診察や検査が行われます。
問診 :身体診察の前に行われる状況確認- 身体診察:視診、触診など
- 肛門鏡検査
下部消化管内視鏡検査
診察や検査の目的は「症状の原因が痔核によるものかどうか」や「痔核の状態(できている場所大きさなど)」を調べることです。痔核の専門的な診察や検査は、肛門科や消化器内科、消化器外科などで行われます。
2. 問診
問診は患者さんの症状や背景(持病・
【痔核が疑われる人への問診例】
- どんな症状があるか
- 症状はいつからあるか、急に出現したかどうか
- 症状が出やすい状況はあるか(排便時、重いものを持った時など)
- 過去に同じような症状を経験したことはあるか
- 症状に対して市販薬などを試したか
- 普段の排便の状況について
- 便の性状(硬い、下痢っぽいなど)
- 便の回数
- 1回の排便にかかる時間はどうか(強くいきむことが多いか)
- 仕事の内容について(長時間の座り仕事、重いものを運ぶ仕事など)
- 精神的なストレスがあるか、疲れがたまっているか
- 妊娠の経験があるか
- 持病や過去にかかったことのある病気はあるか
- 内服中の薬はあるか
- 家族に痔や腸の病気の人がいるか
- 喫煙習慣の有無や程度
- 飲酒の習慣の有無や程度
肛門の痛みや出血といった症状は痔核以外の病気でも現れます。問診を通して、お医者さんは他の病気の可能性を除外したり診断のあたりをつけています。
3. 身体診察:視診、触診など
身体診察とは、お医者さんが患者さんの身体を観察したり触れたりして、全身の状態を調べることです。痔核が疑われた人は主に肛門周囲の診察が必要になります。具体的には、お医者さんが肛門の周りを観察したり、指を肛門に挿入して痔核の有無や状態を調べます。 身体診察では肛門を観察しやすい姿勢になる必要があります。ベッドに横向きに寝て膝をかかえ、背中を丸くしてお尻を突き出す姿勢をとることが多いです。他には、四つん這いになってお尻を突き出す姿勢や、仰向けになって膝を立て足を広げる姿勢もあります。
また、腹に力をかけることで肛門の外側にいぼが飛び出す場合もあるので、診察中にお腹に力を入れる(いきむ)ように指示されることもあります。
4. 肛門鏡検査
肛門鏡と呼ばれる器械を肛門から挿入して、肛門の内側の様子を観察します。診察に引き続いて行われることが多いです。肛門鏡を使うと、いぼのできている場所や大きさなどを指診より詳しく調べられます。
5. 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)では、
痔核を観察するには、内視鏡検査よりも肛門鏡検査のほうが適しているため、痔が疑われる人に必ず下部消化管内視鏡検査が行われるわけではありません。次の条件に当てはまる人には、痔核の他に腸の病気が潜んでいる可能性があるため、大腸カメラが勧められます。
【痔核の疑いがあって下部消化管内視鏡検査が勧められる人】
- 肛門からの出血や
血便 がある人 - 痔核以外の症状(下痢や便秘、腹痛などの症状)がある人
- 過去に一度も下部消化管内視鏡検査を受けたことがない人(とくに50歳以上)
大腸カメラについての詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
参考文献
・日本大腸肛門病学会/編. 「肛門疾患(痔核・痔痩・裂肛)・直腸脱
・幕内雅敏/監、杉原健一/編. 「大腸・肛門外科の要点と盲点(Knack & Pitfalls)第3版」, 文光堂, 2014
・Nesselrod Jp. Pathogenesis of common anorectal infections.Am J Surg 88:815-817t 1954 18)
・佐原力三郎. 痔痩の病因,分類、外科. 77:644-647, 2015
・肛門疾患診療のすべて. 臨床外科増刊. vol.63 No.11, 医学書院, 2008