[医師監修・作成]腰痛はどうやって診断するのですか? | MEDLEY(メドレー)
ようつうしょう
腰痛症
さまざまな原因により、腰が痛くなる病気の総称
13人の医師がチェック 116回の改訂 最終更新: 2020.12.25

腰痛はどうやって診断するのですか?

腰痛の診断により、治療法は変わります。そのため、適切な検査のもとどのような原因で腰痛が起きているかを判断することが大事です。ここでは、腰痛の診断について検査内容とともに解説します。

こんな場面を思い浮かべてみましょう。

田中さんは30代の男性です。子どもの運動会で綱引きをしたら、急に激しい腰痛が始まり、診察を受けることにしました。病院に向かう途中で、診察が始まったら何を話せばいいか考えています。でも、痛くて考えに集中できません。

腰痛の問診ではどんなことを聞かれるのでしょうか?検査はあるのでしょうか?その結果からどんなことがわかるのでしょうか?

腰痛はよくある症状で、多くの人が悩まされています。一般的な腰痛は、重篤な状況を招く可能性は低いものの、症状が強かったり、神経を障害する症状が重なった場合には要注意となります。詳しくは、「腰痛と一緒に現れやすい症状にはどんなものがありますか?」の項に記載しています。

腰痛の原因の大半は不明ですので、どうして腰痛が起こっているかを特定することは非常に難しいです。そのため、様々な側面から総合的に判断していくことになります。

では、腰痛やその原因となっている病気をどのように診断してくのでしょうか。

腰痛の診断に必要な検査は以下の4つに大きく分けられます。

  • 問診(腰痛の状況や生活の状況などを会話で聞いていくこと)
  • 身体診察(腰痛の状態や腰痛以外の症状を観察する)
  • 画像検査(レントゲン検査やCT検査、MRI検査等)
  • 生理学的検査(エコー検査等)

中でもまず大事なのは、問診と身体診察です。画像検査や生理学的検査といった詳細な検査については、原因となる病気によって重要になってきます。それぞれの内容について、解説していきます。

1. 問診

腰痛には多くの場合症状に波があったり、特徴があったりします。それらの状態を把握することで、腰痛の原因を探っていくことができます。具体的にどんなことを意識して聞くことが重要なのかを説明していきます。

腰痛を発症した時期

いつから腰痛があるかを見ることで、腰痛が急性/亜急性/慢性のいずれに当てはまるのかがわかります。また、激痛が急に起こった場合は、危険なサインの可能性があるので、その点についても発症時期を知ることは大事です。

腰痛はどんな痛みでどのくらい強いのか

一般的に痛いと表現しても、押されるような痛みであったり、刺されるような痛みであったり、その性質は様々です。また、痛みの強さも軽いものから全く動けないほどのものもあり、その状態によって原因が変わってきます。

腰の痛み以外に症状はあるか

腰以外に症状があるかどうか、またその症状がどういった症状であるのかも診断には大事な情報です。腰痛の原因がわかることもあります。

どんな時に痛みが出やすいのか

腰痛がどんな時に出るかを知ることは大事です。腰痛が出る状況や動きを知ることで、腰痛が姿勢や体のバランスの問題なのか、内臓の問題なのか、など原因が異なってきます。職業やいつも行う作業を確認することも重要です。

ストレスや不満があるのかどうか

腰痛とストレスは大きく関わっていることがわかっています、詳しくはコラム「その腰の痛み、実はストレスからきてる!?腰痛の原因について解説 」をご覧ください。ストレスや社会背景を含めた現在の心理状況がどのような状態なのかを把握することは非常に重要です。

2. 身体診察

身体の様子を把握するのに欠かせないものが身体診察です。腰痛以外にどんな症状があるか、どのようなことで腰痛が悪化するかを、具体的に診察しながら判断していきます。

腰痛の検査と診断に必要な触診の画像

触診

痛い部位が実際にどこなのか、触ったり押したりして判断します。同時に、筋肉の硬さや張り、萎縮が起きていないか、皮膚の感覚(痛みの感覚、熱の感覚、触られた感覚など)の異常がないかを確認します。

体を動かした時の痛みの有無の確認

どんな体勢や作業により、どこにどのような腰痛が出るのかを見極めます。

下肢伸展挙上テスト

神経を障害していないかを確認する検査に下肢伸展挙上テストというものがあります。仰向けになり、膝を伸ばしたまま脚を少しずつ上に挙げていくテストです。腰椎椎間板ヘルニア(腰椎の中でも足側の方)であった場合、足を約30度より高く上げると太ももの裏に痛みが出ることがあります。

大腿神経伸展テスト

神経を障害していないかを確認する検査に、大腿神経伸展テストというものがあります。大腿神経は太ももの前の方を通る神経です。うつ伏せになって膝を曲げ、膝を曲げた脚を上に引っ張るテストになります(つまり、太ももの前の神経が伸ばされるということです)。腰椎椎間板ヘルニア(腰椎の中でも頭側の方)であった場合、太ももの表側に痛みが走ることがあります。

田中さんが問診に答えて、身体診察が終わると、お医者さんに「お疲れさまでした、診察はおしまいです」と言われました。田中さんはあれっと思って聞いてみました。

「先生、レントゲンは撮らなくていいんでしょうか?」

3. 画像検査

腰痛に対する画像検査について説明します。まず知っておきたい事項として、実は腰痛に対する単純X線検査(レントゲン写真)やCT検査などの画像検査は、すべての人に対して行うことは推奨されていません(「腰痛診療ガイドライン2012」)。その理由は、画像検査を行うデメリットの中に、放射線被曝、場合によっては痛みが出る、検査の費用といった問題があるためです。画像検査によって得られるメリットが高くなければ、行う価値が高くはないと考えられるのです。

実際、問診と身体診察により腰痛に潜む危険なサインが見られた場合に、そのサインが危険な病気によるものであるかを調べるために画像検査を用いることが多いです。

それでは、画像検査の内容について説明していきます。

単純X線検査(レントゲン写真)

最もコストが安く、被曝量も少ない検査です。その反面、得られる画像は写真1枚なので、病気の原因の所在を見分けるのが難しいとされています。

重症であることが疑われるほどの強い痛みが出ていない場合には、検査の価値が低いため、撮影されないこともあります。とは言え、腰椎の並びや骨の変形を見るためには比較的適した検査ですので、腰の深刻な病気以外でも腰椎に問題が疑われるような場合では、撮影することが望まれます。

CT検査

CT検査は断面図を見ることができる点が特徴です。位置をずらしたたくさんの断面を一度に撮影できます。そのため、単純X線写真よりも詳しく調べることができます。

検査の特性上、骨を調べることが得意です。そのため、実際には単純X線写真と同じように、腰椎に問題がある病気を疑った場合に撮影することが多い検査になります。

また、血管が原因の腰痛(大動脈解離大動脈瘤など)の場合は、CT検査で容易に発見できます。従って、動脈硬化の進んでいる方で、突然腰痛が出た時には、CT検査を行う価値が高まります。

MRI検査

神経や筋肉を評価しやすい検査です。特に原因がわからない腰痛を調べる場合は、効果を発揮すると言われています。

腰椎の変形している状態や神経の圧迫される状態を確認し、もしそのような状態があった場合には腰痛の原因のひとつとして診断することができます。しかしその一方で、MRI検査で異常が見つかったとしても、腰痛がない方もいます。そのため、MRI検査でこの異常があれば腰痛の原因だと決めることは難しく、総合的に判断していく必要があります。

エコー検査(超音波検査)

エコー検査の最大の特徴は、放射線に被曝しない検査であることと痛みが出にくい検査であることです。ただし、骨のような硬い物体があると使いにくくなくなってしまいます。そのため、腰痛の原因が腰椎(腰の骨)にあると考えられる場合は、検査として適していません。

一方、内臓が原因の腰痛に対しては、効果を発揮します。水腎症などにおいては、身体が放射線に被曝してしまうような検査(X線検査、CT検査など)よりも有用な点もあります。

椎間板造影検査

椎間板造影検査は、あまり聞きなれない検査であると思います。実際にすべての施設で行っている検査ではありません。この検査は、椎間板の様子を把握しやすい検査であると言われています。実際に検査をする際に痛みを伴うことも多いので、どうしても椎間板の病気が疑わしい、かつ原因を追求する必要性がある場合に検査することになるかもしれません。

4. 生理学的検査

腰痛の原因を調べる生理学的検査として以下のものが挙げられます。

腰痛のエコー検査の画像

筋電図検査

筋電図検査は、腰の回りの筋肉の異常を調べることができる検査です。広範囲において腰痛に伴う神経の障害が起こっている場合に、その異常を発見しやすいと考えられています。また、リハビリテーションを行う際にその効果を判定するために用いられることもあります。一方で、腰痛の診断に用いる検査としてはあまり適していないと報告している研究も多いのが現状です。

以上のように、画像検査は特定の病気を疑ったときにだけ、見分けたい病気に適したものが使われます。田中さんは問診と身体診察から、画像検査で確かめるべき病気の疑いは小さいと判断されたので、画像検査がなかったのです。

5. こんな背景のある人は要注意

以上の問診や様々な検査を踏まえて腰痛を診察することになりますが、もう一点注意するべきことがあります。それは、腰痛の中に危険な状態に発展しやすい背景があるということです。

腰痛の危険な症状に関しては、「腰痛と一緒に現れやすい症状にはどんなものがありますか?」の項で説明しましたが、ここでは注意すべき背景を示します。

  • 20歳以下の人に腰痛が出現した場合
  • 55歳以上の人に腰痛が出現した場合
  • 腰痛に胸の痛みが伴う場合
  • がんを抱えている人に腰痛が出現した場合
  • ステロイドを長期的に飲んでいる人に腰痛が出現した場合
  • HIV感染している人に腰痛が出現した場合
  • 栄養失調の人に腰痛が出現した場合
  • 体重が減ってきている人に腰痛が出現した場合

いずれの背景も深刻な状態に悪化しやすいため、腰痛が出てきた場合は自分が該当していないかを確認しましょう。もし該当する場合は、検査を行う必要があるので医療機関を受診してください。