まいこぷらずまはいえん
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマという細菌が起こす肺炎で熱、咳、皮疹などの症状が出る。20代以下の若者に多いが高齢者にもうつるので注意が必要
16人の医師がチェック 137回の改訂 最終更新: 2022.04.19

マイコプラズマ肺炎の治療法:抗生物質(抗菌薬)は効くのか?漢方薬、市販薬は?

マイコプラズマ肺炎の治療には抗生物質抗菌薬)が用いられます。しかし、通常の肺炎で使う抗菌薬とは少し異なりますので注意が必要です。また、症状を和らげる目的で抗菌薬以外の薬が用いられることもあります。

1. マイコプラズマ肺炎に使う抗菌薬の種類

マイコプラズマ肺炎に対して有効な抗菌薬は多くありません。肺炎球菌肺炎のような一般的な細菌性肺炎に対して有効であるペニシリン系抗菌薬とセフェム系抗菌薬は全く無効です。

この3種類の抗菌薬がマイコプラズマ肺炎に有効になります。これ以外の抗菌薬は効きませんので注意が必要です。

マクロライド系抗生物質(クラリス®、ジスロマック®、エリスロシン®など)

マクロライド系抗菌薬は日本で非常に多く使われている抗菌薬です。クラリスロマイシン(商品名クラリス®など)、アジスロマイシン(商品名ジスロマック®など)、エリスロマイシン(商品名エリスロシン®など)などが代表的な薬剤になります。細菌が持つタンパク質を合成する器官(50Sリボソーム)の働きを抑えることで、細菌を増殖させなくします。

マクロライド系抗菌薬が必要でないのに使用してしまっているケースが国内に多いという問題があります。抗菌薬を使用すればするほど抗菌薬の効かない細菌が増えるというジレンマがあるため、本当に必要な場面だけマクロライド系抗菌薬を使用することが大切です。この現状を打破する目的で、厚生労働省は2020年までに国内のマクロライド系抗菌薬の使用量を半分にしようという目標を打ち出しています。

とは言え、マイコプラズマ肺炎に対してマクロライド系抗菌薬を使うのは適正な使用方法です。マイコプラズマ肺炎と診断した場合やマイコプラズマ肺炎が疑われた場合に使用できる抗菌薬のうちの一つです。一方で、近年マクロライド系抗菌薬の効かないマイコプラズマニューモニエが増えていることが問題になっています。有効性が高いからこそ使用が必要な場面を見極めることが大切な抗菌薬です。

マクロライド系抗菌薬で注意するべき主な副作用は以下になります。

  • 胃腸:吐き気、下痢、腹痛
  • 不整脈動悸頻脈(脈拍100/分以上)、徐脈(50/分以下)、胸苦しさ、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる
  • 肝臓の障害:食欲不振、だるさ、皮膚が黄色くなる、眼が黄色くなる
  • 皮膚の障害:発赤、水ぶくれ、皮がむける、痛み、かゆみ、唇や口の中のただれ

参考文献:河合泰宏, マクロライド耐性マイコプラズマの疫学と抗菌薬の有効性に関する検討, 日化療会誌 62 (1): 110-117, 2014

 

ニューキノロン系抗生物質(クラビット®、シプロキサン®など)

ニューキノロン系抗菌薬も日本で非常に多く使われています。ニューキノロン系抗菌薬も2020年までに使用量を半分にするという目標が立てられています。

ニューキノロン系抗菌薬は細菌のDNAが作られるのを妨害することで細菌が増殖するのを抑えます。マイコプラズマ肺炎の治療でも、マイコプラズマニューモニエのDNAを作らせないようにすることで効果が発揮されます。一方で、DNAが作られるのを妨害することから、妊婦が使うのはできるだけ避けるようにする必要があります。

ニューキノロン系抗菌薬は非常に多くの細菌に対して有効であるため多くの場面で使われますが、マクロライド系抗菌薬と同じく細菌の耐性化が問題となっています。また、ニューキノロン系抗菌薬は単独で結核に使用すると発見が遅くなったり死亡率が高くなったりすることがあるので注意が必要です。ニューキノロン系抗菌薬を使うときには、今の症状が結核によるものではないことを確認することが大切です。

参考文献:Dooley KE, et al. Empiric Treatment of Community-Acquired Pneumonia with Fluoroquinolones, and Delays in the Treatment of Tuberculosis. Clin Infect Dis. 2002 Jun 15;34(12):1607-12. 

ニューキノロン系抗菌薬で注意するべき主な副作用以下になります。

  • 胃腸:吐き気、下痢、腹痛、食欲低下
  • 不整脈:動悸、頻脈(脈拍100/分以上)、徐脈(50/分以下)、胸苦しさ、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる
  • 肝臓の障害:食欲不振、だるさ、皮膚が黄色くなる、眼が黄色くなる
  • 皮膚の障害:発赤、水ぶくれ、皮がむける、痛み、かゆみ、唇や口の中のただれ
  • 血液の障害:息が切れる(貧血)、血が止まらない(血小板減少)、感染にかかりやすくなる(無顆粒球症
  • 頭の障害:眠れなくなる、気が遠くなる、意識を失う、けいれんする

薬を飲んでからこれらの症状が出てきたら必ず医療機関に相談して下さい。

テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン®、ビブラマイシン®など)

テトラサイクリン系抗菌薬は、細菌が持つタンパク質を合成する器官(30Sリボソーム)の働きを抑えることで、細菌を増殖させないようにします。国内ではマクロライド系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬ほどは医療機関で処方されていませんが、家畜の感染症の予防や治療に大量のテトラサイクリン系抗菌薬が用いられています。

テトラサイクリン系抗菌薬はマイコプラズマ肺炎に対して有効です。一方で、テトラサイクリン系抗菌薬には以下の副作用が出現しやすいことが分かっています。

  • アナフィラキシーショック(命に関わることがあるので要注意):じんま疹、顔やのどの腫れ、冷汗、手足のしびれ、血圧の低下、ゼーゼー息苦しい、ぼーっとする
  • SLE様症状:筋肉や関節の痛み、体や顔が赤くなる、熱が出る、リンパ節が腫れる
  • 皮膚・粘膜障害:発疹、発赤、水ぶくれ、皮がむける、痛み・かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血
  • 血液成分の異常:皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向
  • 肝臓の症状:だるい、吐き気、食欲の低下、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色になる
  • 急性腎不全むくみ血尿、尿が少ない・出ない、だるい、吐き気、頭痛、血圧上昇
  • 間質性肺炎:痰の絡まない咳(空咳)、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱
  • 膵炎:吐き気、嘔吐、背中の痛み
  • 大腸炎:激しい腹痛、下痢、発熱、血液便
  • めまい、フワフワとした感じ、頭痛
  • 光線過敏症
  • 歯が黄色くなる(8歳未満の子ども)

歯が黄色くなる副作用に関しては、8歳未満の子どものみならず胎児への影響を考えると妊婦も使わないようにして下さい。

2. マイコプラズマ肺炎の抗菌薬治療期間はどの程度か?

マイコプラズマ肺炎の治療で抗生物質を使用する期間は2週間が目安になります。(アジスロマイシンを用いた場合は5日間が目安)重症の場合は3週間ほど治療するという意見もありますが、正確に治療期間を何日にすると良いのかに関する一定の見解はありません。2週間治療しても治らない人は追加の治療が必要なのかどうかについて医療機関で相談して下さい。

3. マイコプラズマ肺炎には必ず抗菌薬治療が必要なのか

マイコプラズマ肺炎は抗菌薬で治療することのできる病気です。しかし、実は抗菌薬治療をしなくてもほとんどの場合で自然治癒します。そのためマイコプラズマ肺炎に抗菌薬を使うメリットのある場合のみ抗菌薬治療を行います。

抗菌薬治療を行うことのメリット

マイコプラズマ肺炎に抗菌薬を使うメリットは次のことが考えられます。

  • マイコプラズマ肺炎の重症化を防ぐ
  • マイコプラズマ肺炎の原因菌であるマイコプラズマニューモニエを周囲に広げない

マイコプラズマ肺炎が重症化しやすい人免疫力の低下している人肺に持病がある人)に対しては特に抗菌薬を使用することが推奨されます。

なお、ここで言う「免疫力の低下している人」とは、HIVに感染している人、ステロイド内服薬による長期治療中の人などを指します。持病がない人で元気に生活できていれば免疫力低下が問題になることはほとんどありません。

4. マイコプラズマ肺炎に使う咳を和らげる薬

マイコプラズマ肺炎は咳の目立つ感染症です。抗生物質以外にも、咳に対して鎮咳薬(ちんがいやく:咳止め)がしばしば使われます。

咳は細菌やウイルスなどの外敵や痰を体外へ出すための生体防御反応です。その一方で、咳によって体力の消耗や不眠が長期的に続くことで体力が落ちてしまい、状態が悪化する場合もあります。

鎮咳薬(ちんがいやく)は咳を止めることで身体の消耗を防ぐことが期待できます。

咳止め(鎮咳薬)

鎮咳薬には様々な種類があります。

やや難しい話になりますが、咳は脳の延髄(えんずい)にある咳中枢というところからの指令によって引き起こされます。細菌などによる感染や気道の炎症が存在すると、気道が敏感になったり気道が狭くなったりして、咳中枢に刺激が到達しやすくなることで咳が起こりやすくなります。

デキストロメトルファン(商品名:メジコン®など)、ジメモルファン(アストミン®など)、クロペラスチン(フスタゾール®)、ベンプロペリン(フラベリック®)などは主に咳中枢に作用し咳を鎮める薬です。

咳中枢に作用する鎮咳薬としてはコデインという薬も使われています。コデインはオピオイドと呼ばれる種類の薬で、中枢神経(脳や脊髄)にあるオピオイド受容体という咳や痛みなどに深くかかわる物質に作用することで、咳を鎮めてくれる薬です。

コデインはコデインリン酸塩やジヒドロコデインリン酸塩といった成分で使われていて、単独成分の製剤だけでなく、複数の成分を含む配合製剤もあります(例として、ジヒドロコデインリン酸塩に交感神経刺激薬と抗ヒスタミン薬を合わせたフスコデ®配合錠など)。コデインは咳止めとして以外に痛み止めや激しい下痢を抑える薬としても使われている有用な薬の一つです。

ただし、コデインは使う量や期間、体質などによって注意が必要です。下痢止めとしても使われることもあることから、使用中の便秘には注意が必要です。また中枢への作用などから咳を抑える一方で、呼吸困難などを引き起こすリスクが考えられます。

コデイン類の体内における代謝に関わる酵素の遺伝的な違いによってはコデインの血液中の濃度が過度に上昇してしまうという可能性もあり、特に小児(子供)においては注意が必要とされています。日本人では当てはまるケースが少ないとされていますが、2017年7月に厚生労働省からコデインリン酸塩やジヒドロコデインリン酸塩を含む医薬品を12歳未満の小児に使用させないようにするための添付文書改訂などを関係者に求める通知が出されています。(この通知に関してはニュース記事「咳止めの薬で呼吸抑制?ジヒドロコデインリン酸塩が12歳未満禁止へ」でも紹介しています。)もちろん他の咳止めにおいてもなんらかの副作用が現れる可能性はありますが、コデインに関してはその有用性と合わせて副作用などにも注意したい薬剤のひとつといえます。

その他、麦門冬湯(バクモンドウトウ)や小青竜湯(ショウセイリュウトウ)といった漢方薬なども鎮咳薬として使われる場合があります。漢方薬については下で詳しく説明します。

咳は身体に異物を入れない防御反応です。鎮咳薬で咳を抑えることは、異物を体外に排出しにくくなることにもなります。鎮咳薬を処方された時は、その使い方や使うタイミングなどをしっかりと医師や薬剤師から聞いておくことが大切です。

去痰薬

去痰薬は、痰の粘り気を下げて気道のつまりを改善したり、痰と一緒に細菌やウイルスなどを体外に排出しやすくする薬です。また、気道の線毛運動を促すことで痰を排出しやすくする作用が期待できる薬剤もあります。

薬の成分によっても作用が異なるため場合によっては複数の去痰薬を同時に使う場合もあります。

主に痰の粘性を下げる作用をあらわす薬としてカルボシステイン(商品名:ムコダイン®など)、アセチルシステイン(商品名:ムコフィリン®吸入液など)、フドステイン(クリアナール®、スペリア®)などがあり、主に気道の分泌物を促進して線毛運動を促す薬としてアンブロキソール(商品名:ムコソルバン®など)、ブロムヘキシン(商品名:ビソルボン®など)、生薬のセネガやキョウニンなどが使われています。

ところで、カルボシステイン製剤のムコダイン®、アンブロキソール製剤のムコソルバン®、アセチルシステイン製剤のムコフィリン®(液剤を機械を使って霧状にして吸う吸入製剤)といったようによく似た名前の薬があります。

名前は似ていますが、ムコダインには痰の粘り気をとりサラサラにする作用や気道の炎症を抑える作用などがあり、ムコソルバンには肺や気道の分泌液を増やして線毛運動を促すことで痰を排出しやすくする作用などがあります。これらを一緒に使うことでより効果が得られる可能性も考えられます

特に飲み薬のムコダイン®とムコソルバン®は一緒に使われることも多く、また服用方法も同じであることも多いなど紛らわしいところもありますが、できるだけ処方された指示の通りに適切に服用することが大切です。

鎮咳去痰薬

咳を鎮め、痰を排出しやすくする薬です。

エプラジノン(商品名:レスプレン®)、チペピジン(商品名:アスベリン®)などの薬が使われています。

相乗効果などを期待して、去痰薬のアンブロキソールやカルボシステインなどと一緒に使うことも多い薬です。

5. マイコプラズマ肺炎に用いられる解熱鎮痛薬

マイコプラズマ肺炎の主症状に発熱(特に38度以上の場合が多い)があります。熱が出た場合には解熱鎮痛薬を用いることがあります。解熱鎮痛薬は熱を下げる薬です。

しばしば用いられる解熱鎮痛薬にはアセトアミノフェン(カロナール®など)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があります。NSAIDsの中にはロキソプロフェン(ロキソニン®など)やジクロフェナク(ボルタレン®など)、セレコキシブ(セレコックス®)などがあります。

しかし、熱が出たら必ず解熱鎮痛薬を使うという考えはおすすめできません。どうしておすすめできないのでしょうか。もう少し詳しく説明していきます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とはどんな薬か

NSAIDsは非常によく使用される解熱鎮痛薬です。

体内ではアラキドン酸という物質からシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の作用などによってプロスタグランジン(PG)という物質が生成されます。プロスタグランジンは炎症や痛みを引き起こす原因となるほかにも、脳の視床下部にある体温調節中枢に指令を伝え、体温を上げる作用(発熱作用)も有しています。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)はCOXを阻害してプロスタグランジンを作らせないようにすることで、痛みや発熱などを抑えます。一方で、胃腸障害や腎障害、肝障害などの副作用があるので注意が必要です。

NSAIDsはライ症候群という危険な病気を引き起こすことがあります。これは主にインフルエンザなどのウイルス感染症に使用した場合に起こります。マイコプラズマ肺炎ではライ症候群が起こることはありませんが、マイコプラズマ肺炎とウイルス感染症の区別がつきにくいときには非常に注意が必要です。ライ症候群になると治療は大掛かりになりますし、後遺症が残る可能性もあります。余計な副作用の危険性を避ける意味でも、必要ないのであればNSAIDsを使わないようにすることが大切です。

アセトアミノフェンとはどんな薬か

アセトアミノフェンは安全性が高いことが魅力の薬です。子供から高齢者まで幅広い年齢で使えます。妊婦への負担も少ないとされ、「医師の診断の下で使用に対して有益性が危険性を上回る場合」などの条件はつきますが、妊婦にも使用可能な解熱鎮痛薬になっています。

まれですが肝障害が副作用として起こることがあり、もともと肝機能の悪い人は特に注意が必要です。

通常アセトアミノフェンがライ症候群を起こすことはありません。

マイコプラズマ肺炎に解熱鎮痛薬を用いる際に気をつけること

発熱がある人が解熱鎮痛薬を使用するメリットは熱による消耗を回避できることです。多くの人は熱にうなされた経験があると思います。高熱になると身体の負担は大きくなります。こうした場面では解熱鎮痛薬は重宝されます。一方で、熱はあるけれど元気な人に対して解熱鎮痛薬を使う必要はありません。余計な副作用を増やす危険性も増えますし、むしろ飲まないほうが良いと思われます。

6. マイコプラズマ肺炎に使う漢方薬

細菌性の肺炎に対する治療の中心は抗菌薬(抗生物質)ですが、咳や痰、息切れといった症状に対して漢方薬が有用となることもあります。

漢方医学では患者個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわし、これに合った薬を選択するのが一般的です。(「証」についてはコラム「漢方薬の選択は十人十色!?」で詳しく解説していますので参考にして下さい)

また、咳などの症状が現れてからすぐに適している漢方薬と症状が長引いている時に適する漢方薬があります。

ここでは咳や痰などの症状に効果が期待できる代表的な漢方薬を解説します。

麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)

咳や痰などの症状があらわれてから初期に、激しい咳、発汗や熱っぽさ、口の渇きなどがあるような時に適するとされます。

口渇や体全体の熱感に効果が期待できる石膏(セッコウ)や去痰薬作用の期待できる杏仁(キョウニン)などの生薬を含み急性の気管支炎喘息などの治療に使われています。

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

咳などの症状があらわれてから初期に、咳、くしゃみ、水っぽい鼻水や痰があるような証に適するとされます。

急性の気管支炎喘息アレルギー性鼻炎などの治療に使われ、花粉症の治療薬としても有用です。

麦門冬湯(バクモンドウトウ)

顔が赤くなるような激しい咳があり、粘性があって切れにくい痰を伴うような証に適するとされます。

比較的初期の頃から咳や痰が長引く慢性期に渡って効果が期待でき、慢性の気管支炎喘息百日咳肺炎の解熱後の咳などの治療に使われています。

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

体力は虚弱で悪寒があるような微熱、咳、水っぽい鼻水、手足の冷えや頭痛などを伴うような証に適するとされます。

名前の由来になっている通り、交感神経を興奮させ気管支を広げる作用などをあらわす麻黄(マオウ)、手足の冷えや関節痛などの改善が期待できる附子(ブシ)、熱や痛み、咳などを鎮める作用をあらわす細辛(サイシン)といった3種類の生薬からできている漢方薬です。

清肺湯(セイハイトウ)

咳が長引き、粘性があって切れにくい痰が多く出て、時々血の混じった痰を伴うような証に適するとされます。

清肺湯という名前は「肺の熱をさます」ことに由来します。呼吸器症状に有用であることをイメージしやすい漢方薬です。慢性的になった気管支炎咽頭炎気管支拡張症喘息肺炎など多くの呼吸器疾患に対して効果が期待できます。ダスモック®などの名前で市販薬(OTC医薬品)としても販売されています。

この他、比較的長引く咳があり精神不安や喘鳴ぜんめい:呼吸するとゼエゼエする)を伴う時に効果が期待できる柴朴湯(サイボクトウ)、慢性的な咳や痰があって不眠や食欲不振などを伴うような証に効果が期待できる竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)などが咳や痰に対する漢方薬として使われています。

一般的に漢方薬は安全性が高く、体質や症状に合う薬を使えば有益な効果が期待できます。ただし、副作用が少ないといっても全くないわけではなく、自然由来の生薬成分自体が体質や症状に合わなかったりすることもあります。

例えば、高血圧や心臓の病気を持っている人が麻黄(マオウ)を含む漢方薬を使った場合、血圧の変動や動悸などが現れやすくなることが考えられます。また頻度は非常に稀ですが、小柴胡湯(ショウサイコトウ)などの漢方薬によって間質性肺炎が引き起こされたという報告もあります。

自身の体質や症状に合った漢方薬を適切に使うことが大切です。

7. マイコプラズマ肺炎に市販薬は効くのか?

マイコプラズマ肺炎を治すために必要な薬は抗菌薬です。しかし、抗菌薬は国内で市販されていません。抗菌薬の乱用を避けなくてはならない背景もあり、医師の処方が必要です。つまり、マイコプラズマ肺炎を根治するために必要な抗菌薬は医療機関を受診しないと手に入りません。

一方で、症状を和らげる薬は市販薬として売られています。主な例が次に挙げられるものです。

  • アセトアミノフェン
  • NSAIDs
  • 咳止め
  • 漢方薬

これらの薬はよくよく使い方を知っておく必要があります。そのため、市販で購入する際には薬剤師の説明をきちんと聞くようにして下さい。自分の状況や使うべき薬の判断が難しい場合は、医療機関を受診して処方薬を用いるほうが無難です。

8. 肺炎に薬を使う前に考えるべきこと

ここまでマイコプラズマ肺炎の治療薬について述べてきました。これらの治療薬は有用なものが多いですが、一方で副作用の心配もあります。薬を使う場合は、使う前にこの薬は本当に必要があるのかということについて考えるようにして下さい。薬を使わなくても肺炎が自然に治る状態であれば、薬を使わない方が良いと判断できます。