[医師監修・作成]肝血管腫の治療について:外科的手術・カテーテル治療などについて | MEDLEY(メドレー)
かんけっかんしゅ
肝血管腫
肝臓にできる良性の腫瘍。血管の組織の異常によりできる、血液が豊富に流れる腫瘍。基本的に治療は行わないでよい
9人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2021.07.16

肝血管腫の治療について:外科的手術・カテーテル治療などについて

肝血管腫とは肝臓にできた良性腫瘍で、血管が異常に増えて塊になったものです。がんになることはなく、症状を感じることもめったにないため、ほとんどの人で治療は不要です。しかし、まれに治療が必要となることがあります。ここでは、治療が必要な人と、どのような治療法があるか説明します。

1. 肝血管腫ではどのような人に治療が必要か

症状がなければほとんどの人に治療は行われません。肝血管腫で治療が必要な人は下記のような人に限られます。

【肝血管腫の治療が必要な人】

  • 肝血管腫が大きく症状がある人
  • 肝血管腫が破裂した人、破裂しそうな人
  • 全身に出血による症状がある人

肝血管腫が大きく症状がある人

肝血管腫の大多数が5cm以下の小さなものです。しかし、まれに10cmを超える大きさになることもあります。大きくなると、「お腹の張り」「食欲不振」「吐き気」といった症状が出ることがあり、これらの症状が日常生活に支障をきたす人には治療が勧められます。

肝血管腫が破裂した人、破裂しそうな人

肝血管腫が破裂することはほとんどありません。しかし、破裂すると大量に出血して危険な状態になる人も、なかにはいます。大量に出血し重篤な人は緊急の治療が必要です。また、急激に肝血管腫が大きくなってきた人は、そのままにすると破裂する可能性があるため、治療を提案されることがあります。

全身に出血による症状がある人:カサバッハ・メリット症候群

大きな肝血管腫では、出血を止める機能が働かなくなるカサバッハ・メリット症候群が起こることがあります。カサバッハ・メリット症候群では、鼻血血便、皮膚のあざなど、全身に出血による症状がみられます。出血が大量になるときや、脳内が出血したときは、命にかかわる状態になるので治療が必要です。全身の出血による症状に気づいた肝血管腫の人は、速やかにお医者さんに相談をしてください。

2. 肝血管腫にはどのような治療があるのか

肝血管腫の主な治療法はカテーテル治療と手術です。それぞれの治療の具体的な方法や、どのような人に向いているのかについて説明をします。

カテーテル治療:肝動脈塞栓術

カテーテル治療では、肝動脈という血管を塞いで肝血管腫に流れる血流を止めます。肝動脈をふさぐので「肝動脈塞栓術」とも呼ばれています。

◎カテーテル治療の手順

まず、カテーテルという細長い管を、足の付根にある血管(大腿動脈)に刺し込みます。続いてカテーテルの先端を肝動脈まで進めます。その後、カテーテルから血管をふさぐ物質を注入し、肝血管腫に流れる血流を止めます。

◎カテーテル治療はどのような人に向いているのか

カテーテル治療は手術と比べて合併症が少なく、緊急時の応急処置として行われることが多いです。たとえば、肝血管腫が破裂して出血しているときや、カサバッハ・メリット症候群で効果があったと報告されています。しかし、カテーテル治療だけでは肝血管腫が完全に無くなることはありません。そのため、カテーテル治療で急場をしのいでも、後日手術で肝血管腫を除去をすることが多いです。

手術

肝臓を切除し肝血管腫を取りきる方法です。

◎手術の方法について

外科的手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡手術の2種類があります。開腹手術と腹腔鏡手術の大きな違いは傷口の大きさです。お腹に数cmの穴を複数開けて手術の機材を挿入する腹腔鏡手術のほうが傷が小さくて済むので、手術後の身体の回復が早いという利点があります。しかし、肝血管腫の位置や、過去の患者さんの腹部手術の有無などによっては、お腹を十数cm切り開いて行う開腹手術のほうが安全にできる場合があります。

◎手術はどのような人に向いているのか

手術ではカテーテル治療より大きな傷口となるため身体に負担がかかります。しかし、手術をすれば肝血管腫は切除され完全になくなるため、カテーテル治療よりも症状を抑える効果が高いです。

肝血管腫の破裂やカサバッハ・メリット症候群などの緊急時に、カテーテル治療をして効果が不十分であった人には手術が提案されます。また、カテーテル治療で急場をしのいだとしても、今後再燃しないよう根治させることが必要なので、全身状態が回復してきたところで手術が提案されます。

肝血管腫が大きくて、腹部圧迫感などの生活に支障をきたす症状がある人には、肝血管腫全体を取り除くことが必要なため、手術が選ばれることが多いです。

3. 治療ガイドラインはあるのか

ほとんどの肝血管腫の人に治療は必要ではなく、肝血管腫の治療に特化した国内のガイドラインは今のところありません(2019年5月現在)。

参考文献

・Ketchum WA et al. Management of Symptomatic Hepatic ''Mega''Hemangioma. 2019 Apr;78(4):128-131