Beta 強直性脊椎炎のQ&A
強直性脊椎炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。
強直性脊椎炎の原因はまだはっきりわかっていません。HLA(ヒト白血球抗原)B27型の陽性率が高く(患者の90%)、また家族内発生もあるため、何らかの遺伝的な素因が考えられています。ここに細菌感染などが加わり免疫異常が生じた結果、靭帯の付着部や靭帯に炎症が生じ、さらに骨化が起こることで脊椎や関節の動きが悪くなると考えられています。脊椎や仙腸関節の障害が多く、四肢の関節が侵されることもあります。
強直性脊椎炎は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?
本邦では人口の0.04%の発生率と報告されています。男性に多く、男女比は9:1-5:1と報告されています。好発年齢は10代後半-20代と言われています。
強直性脊椎炎と関節リウマチの違いについて教えて下さい。
どちらも原因不明で脊椎や関節に慢性炎症が生じる病気ですが、強直性脊椎炎は靭帯の骨への付着部、関節リウマチでは滑膜組織(関節内にあり関節液を作る組織)に炎症が生じます。前者では脊椎や仙腸関節、四肢の大関節(肩、股関節など)といった体の中心部に症状が多く、後者では手足など四肢の末梢の部位に症状が多いといった違いがあります。
強直性脊椎炎は、他人にうつる病気ですか?
ある種の細菌が発症の原因になると考えられていますが、強直性脊椎炎そのものが人にうつることはありません。
強直性脊椎炎は、遺伝する病気ですか?
家族内発症が多く、遺伝の関与が考えられています。強直性脊椎炎患者の90%でHLA-B27が陽性であり、HLA-B27は親から子へ50%の確率で遺伝します。しかしながらHLA-B27を持つ全員が強直性脊椎炎を発症するわけではありません。いずれか一方の親が強直性脊椎炎である場合、子供が強直性脊椎炎を発症する確率は1/6程度と言われています。
強直性脊椎炎は、どんな症状で発症するのですか?
全身のこわばりや疲労感、特に背中や腰・臀部の症状から始まる人が多いようです。症状は朝に強く、安静にするよりも体を動かすことで軽くなることが特徴的と言われています。
強直性脊椎炎の、その他の症状について教えて下さい。
坐骨神経痛や肋間神経痛、アキレス腱付着部(踵)の痛みや大転子(太ももの付け根の外側)の痛みが出ることがあります。体重減少や微熱といった全身症状が出ることもあります。
激しい痛みが数日続いた後に、翌日にはケロっと治ることがあり、周囲に詐病(病気のフリをしているだけ)と誤解されることもあるようです。
強直性脊椎炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?
様々な部位での炎症が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に進行し、持続的な脊椎や関節の痛み、運動制限が出現します。脊柱の後弯変形(上体が前傾する)が生じ、重症例では全脊柱の強直(10−20%)に至り頚も動かせなくなるため、前が見られないといった訴えも聞かれます。
強直性脊椎炎は、どのように診断するのですか?
関節のこわばりや腰痛といった非特異的な症状が多いため、診断に難渋することが多い病気です。腰痛や腰椎の運動制限、レントゲンでの仙腸関節病変などの診断基準を満たすことで診断されます。採血にて前述のHLA-B27が陽性であったり、脊椎のレントゲンにてbamboo spine(竹様脊椎)を認めた場合も強直性脊椎炎を疑います。
強直性脊椎炎と診断が紛らわしい病気はありますか?
仙腸関節病変を生じる様々な疾患(Reiter症候群、乾癬性脊椎炎、腸疾患合併関節炎)の除外が必要であり、専門医の診察が必要です。
強直性脊椎炎の治療法について教えて下さい。
原因がわかっていない病気であり、治療も対症療法が主体となります。すなわち、痛みが強いときには消炎鎮痛剤を内服し、また理学療法や運動療法を行うことで症状の軽減を目指します。 近年では、リウマチに使用される生物学的製剤の適応が承認され、約60%の患者で有効性が証明されています。 脊椎の後弯変形が高度な場合には矯正固定術、関節の強直が高度な場合には人工関節置換術が行われることがあります。
強直性脊椎炎に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。
強直した脊椎では、軽微な外傷に伴って骨折が生じやすいと言われています。また脊椎が1本の骨のようになっているため、一度骨折が生じると治療が困難であり、また脊髄損傷の可能性も高くなります。転倒などには十分な注意が必要です。
強直性脊椎炎の合併症にはどの様なものがありますか。
眼のぶどう膜炎、膀胱炎や前立腺炎といった尿路疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸疾患、その他循環器疾患や呼吸器疾患の合併が報告されています。
強直性脊椎炎は、完治する病気ですか?
残念ながら完治は困難な病気です。しかしながら多くも方は就労可能であり、また適切な薬物治療や運動療法等を行うことで病気の進行予防が期待できます。強直性脊椎炎と診断されたら、かかりつけの医師に定期的に診察を受けることが重要でしょう。