ヘリコバクター・ピロリ感染症に起こりやすい症状とは
ヘリコバクター・ピロリ菌
1. 診断されたときは無症状のことが多い
ピロリ菌感染と診断される人の多くは健康診断や人間ドックなどでの検査がきっかけとなります。そのため、診断されたときには何の症状もないという人が多いです。
ピロリ菌感染の多くは幼少期に起こり、大人になるまで感染が続きます。ピロリ菌が感染した胃粘膜は長い時間をかけて慢性胃炎の状態になり、これを「萎縮性胃炎」と呼びます。大人になってピロリ菌感染が判明した人はすでに萎縮性胃炎の状態になっており、診断されたときには特別な症状が見られないことがほとんどです。
2. 慢性胃炎の症状
自覚しにくいとはいえ、慢性胃炎(萎縮性胃炎)の人にまったく症状が出ないわけではありません。ピロリ菌感染によって機能性ディスペプシア(Functinal dyspepsia: FD)に似た症状が見られることがあります。機能性ディスペプシアでは胃の運動機能低下や知覚過敏、胃酸過多によって次のような症状が見られます。
【機能性ディスペプシアで見られやすい症状】
- 食後のもたれ感
- 食べ始めてすぐお腹いっぱいになる(早期膨満感)
- みぞおちの痛み(心窩部痛)
- みぞおちの焼けるような感覚(心窩部灼熱感)
- 吐き気
ピロリ菌感染によってこれらの症状が引き起こされることを「ヘリコバクター・ピロリ関連ディスペプシア」と呼んでいます。ピロリ菌の除菌治療を行うことでディスペプシアの症状が改善することがあります。
3. 急性感染の症状
まれではありますが、大人になってからピロリ菌に初めて感染することがあります。ピロリ菌がまさに感染したタイミング(急性感染)には急性胃炎のような症状が見られます。
【急性胃炎で見られやすい症状】
- 胃もたれ
- 食前、食後の腹痛
- 吐き気
ただし、これらの症状はピロリ菌に限らずさまざまな原因によって起こりますので、強い症状が続くときには医療機関を受診して調べてもらってください。
参考文献
・日本ヘリコバクター学会
・日本消化器病学会:「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A一覧
(2020.5.8閲覧)