へりこばくたーぴろりかんせんしょう
ヘリコバクター・ピロリ感染症
胃の粘膜にピロリ菌が感染した状態。胃腸などの様々な病気の原因となることが分かっている。抗生物質などを使って治療可能
16人の医師がチェック 168回の改訂 最終更新: 2024.02.20

ヘリコバクター・ピロリ感染症で知っておくと良いこと

ピロリ菌はどこから感染するのか、症状がなくてもピロリ菌検査をしたほうがよいのか、胃がんとの関係は?など、ヘリコバクター・ピロリ感染症についてよくある疑問について答えます。

1. ピロリ菌の感染経路とは?

ピロリ菌は人から人へ感染する細菌と言われています。家族内で感染が起こることが多く、両親や祖父母から子どもに感染が起こります。

衛生環境が整っていない国や地域では、不衛生な水や食べ物からピロリ菌感染が起こります。このような場所ではピロリ菌に感染している人の割合が多いため、家族内感染だけでなく家族以外の人との交流の中でピロリ菌に感染することがあります。

ピロリ菌は乳幼児期に感染することがほとんどで、青少年や成人してからの感染は少ないと言われています。

2. ヘリコバクター・ピロリ感染症はどのような人に多いのか?

日本では戦後の衛生環境の改善によってピロリ菌感染者が減っており、感染者の多くは高齢者です。ピロリ菌の感染率は70歳以上の人で40%超、40歳代で約20%、30歳代で約10%とされています(2020年現在)。それよりも若い世代ではさらに感染率が低いことが予想されます。

3. ピロリ菌に感染しているかどうかセルフチェックする方法はある?

残念ながらピロリ菌に感染しているかどうかをセルフチェックで調べる方法はありません。ピロリ菌に感染していても自覚症状がない人がほとんどですので、症状からピロリ菌感染を疑うのも難しいです。

感染の有無を調べるには医療機関で検査を受ける必要があります(詳しくはこちらのページでも解説しています)。

4. ピロリ菌と胃がんの関係は?

ピロリ菌に感染するとほとんどの人が慢性胃炎萎縮性胃炎)の状態となります。萎縮性胃炎の人は胃がんになりやすいことが分かっており、ピロリ菌に感染していない人に比べて15倍以上胃がんになりやすいというデータもあります。

ピロリ菌を除菌すると胃粘膜の炎症は数年かけて徐々に改善していきます。萎縮性胃炎が改善することで胃がんの発生を予防することができ、これまでの研究ではピロリ菌を除菌していない人に比べて胃がんのリスクが0.4-0.6倍に低下すると言われています。

5. ピロリ菌検査や除菌はいつするのが良いのか?

ピロリ菌を検査・治療する主な目的は、ピロリ菌感染による慢性胃炎(萎縮性胃炎)の状態を改善して胃がんのリスクを減らすことにあります。胃がん予防のためには、人生のなるべく早い時期にピロリ菌感染の有無を調べて除菌を行うことが有効と考えられます。また、ピロリ菌は両親から子どもへと家族内で感染するため、親になる前に検査・治療を受けることで次世代への感染対策につながります。

ピロリ菌に感染していてもほとんどの人は無症状ですので、自覚症状がないからといってピロリ菌感染がないとは言えません。ピロリ菌感染が心配な人は一度お医者さんに相談してみてください。

なお、健康保険を使ったピロリ菌の検査・除菌治療は次のような手順で行います。

胃内視鏡検査や胃X線検査などの画像検査で慢性胃炎があるかどうかを調べる
慢性胃炎が見つかった人は次にピロリ菌の検査を行う
③ピロリ菌検査陽性の人は除菌治療を行う

これ以外に人間ドックや健康診断で自費で検査する方法もあります。

6. 除菌治療はどのくらいの期間がかかるのか?お酒は飲んでもいいのか?

ピロリ菌除菌治療には1週間(7日間)かかります。2種類の抗菌薬と1種類の胃酸分泌抑制薬の計3種類を、1日2回(朝、夕)内服します。計14回の内服をきちんと行うことで、90%前後の人がピロリ菌除菌に成功します。

除菌治療中の飲酒は禁止されていませんが、治療期間の1週間はできれば飲酒を避けたほうがよいでしょう。なお、二次除菌で処方される抗菌薬であるメトロニダゾールは、内服中にアルコールを摂取すると腹痛、嘔吐、ほてりなどの症状が現れることがあります。二次除菌の間はアルコール摂取を避けるようにしてください。

また、除菌治療中に喫煙すると除菌成功率が下がるという報告があります。除菌薬を内服している期間は禁煙を心がけてください。