あいじーえーけっかんえん(へのっほしぇーんらいんしはんびょう)
IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)
アレルギー反応により全身の毛細血管に炎症が起こり、全身にむくみが起きたり、内出血が起こる病気。多くの場合は、自然に治る。
18人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2022.03.24

IgA血管炎の治療について:自然に良くなることも多いが、薬物治療をすることもある

IgA血管炎は特に治療をしなくても自然と良くなることが多い病気です。しかし、なかには自然になかなか良くならない、症状が強いといった人がいて、その場合にはレクチゾール、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬による薬物治療を行います。

1. IgA血管炎の治療

IgA血管炎は血管に炎症が起こることで、紫斑や腹痛、関節痛を引き起こす病気です。これらの症状は数日で自然と良くなります。そのため、症状が軽い人は治療を行わずに様子を見ていくことが多いです。

ただし、IgA血管炎の症状があるうちは激しい運動を控える必要があります。というのも運動により症状が悪化することがあるためです。また、しばしば嘔吐や下痢、腹痛などの症状を伴うことがあるので、脱水にならないよう適度に水分を摂取する必要があります。嘔吐や下痢をすると水分だけでなく栄養素も失ってしまうので、オーエスワン®やポカリスエット®のような栄養素も含んだ飲料水を飲むと良いです。柑橘系のジュースや炭酸水、牛乳などは吸収が悪かったり刺激的だったりするため避けるようにしてください。もし、水分が全くとれない場合には点滴で水分を補充する必要があるので、病院を受診するようにしてください。

自然になかなか良くならない人や、症状が強い人には、症状を取るために以下の薬を使うことがあります。

  • レクチゾール
  • 非ステロイド性抗炎症薬
  • ステロイド薬

それぞれの薬の特徴について、以下で説明していきます。

2. レクチゾール

レクチゾール®は、活性酸素や免疫細胞からの炎症物質の産生を抑えることで、炎症を改善する薬です。IgA血管炎の発疹に対して用いられることが多いです。血液障害(白血球減少、貧血)、肝障害が副作用として報告されているので、適宜血液検査を行い、これらの副作用が出ていないか確認する必要があります。

3. 非ステロイド性抗炎症薬

ロキソニン®などの非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs:エヌセイズ)もIgA血管炎の治療に用いられます。非ステロイド性抗炎症薬は名前の通り、炎症を抑える作用がある薬剤です。関節痛などのの症状を緩和することができます。一方で、症状を早く取りたいあまり非ステロイド性抗炎症薬を飲みすぎてしまうと、腹痛や腎機能障害などの副作用があらわれることがあります。腹痛や腎機能障害はIgA血管炎でもあらわれる可能性がある症状であり、時として原因を見分けることが難しくなります。そのため、非ステロイド性抗炎症薬の飲み過ぎには注意しつつ、副作用があらわれないようにする必要があります。

ロキソニン®使用時の注意点については「副作用は胃痛、胸やけだけじゃない!? ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン® など)について」でも詳しく説明しています。

4. ステロイド薬

レクチゾールや非ステロイド性抗炎症薬で良くならない人や、腎臓に障害が及んでいる人にはステロイド薬を用いることがあります。ステロイド薬には強い抗炎症作用(炎症を抑える作用)があります。代表的なステロイド薬としてはプレドニン®メドロール®リンデロン®などがあります。

ステロイド薬は高いIgA血管炎に対して高い効果がある一方で、副作用に注意が必要な薬剤です。ステロイド薬の副作用としては、以下のようなものがあります。

  • 感染症にかかりやすくなる
  • 血糖が上昇する
  • 血圧が上昇する
  • 体重が増加する
  • 顔が丸くなる
  • コレステロールが上昇する
  • 眠れなくなる
  • 気分が落ち込む、または高ぶる
  • 骨がもろくなる

このように副作用が多い薬剤でもあるので、もしステロイド薬を内服中に体調変化があった場合には、担当のお医者さんと相談するようにしてください。ステロイド薬の副作用については「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

5. IgA血管炎のガイドラインはある?

近年、どこの病院でも一定水準以上の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対して治療の指針が作成されています。これをガイドラインと言います。IgA血管炎のガイドラインは2019年に発表されています。

このガイドラインでIgA血管炎の薬をどのように使い分けるか、治療が有効でない場合に、どのように治療薬を変更していったら良いかなどが紹介されています。