しきゅうたいがん(しきゅうないまくがん)
子宮体がん(子宮内膜がん)
子宮の内側を覆っている子宮内膜からできるがん。子宮内膜がんとも言われる。
8人の医師がチェック 157回の改訂 最終更新: 2024.02.20

子宮体がんの症状について

子宮体がんは「不正性器出血」をきっかけにしてみつかる人が多いです。また、多くはありませんが、不正性器出血以外にも症状がいくつかあります。ここでは、子宮体がんの「自覚症状」に加えて「転移した場合の症状」「末期の場合の症状」についても説明します。

1. 子宮体がんの主な症状について

子宮体がんの主な自覚症状は次のものです。

【子宮体がんの主な自覚症状】

これらの症状がみられる人は子宮体がんを念頭に入れて検査を受ける必要があります。お医者さんも子宮体がんを見逃さないようにしっかりと調べています。一方で、これらの症状がみられても、原因が他にあることは少なくありません。上記の症状が見られたからといって原因を子宮体がんと考えるのは早計です。

ここからはそれぞれの症状について詳しく説明します。

不正性器出血(不正出血)

不正性器出血とは、「月経(生理)、分娩(お産)、産褥期(出産直後)以外に起こる性器の出血」のことです。子宮体がんが見つかった人の90%以上に「不正性器出血」が見られると考えられており、子宮体がんが見つかるきっかけになる症状です。一方で、不正性器出血は他の病気でも見られる症状です。不正性器出血があるからといって子宮体がんである、と単純に結びつけて考えることはできません。次のように不正性器出血を起こす原因はさまざまです。

【子宮体がん以外の不正性器出血の主な原因】

不正性器出血の原因には、子宮頸がんのように子宮体がんと同じく生命に関わる病気もあれば、萎縮性膣炎といった加齢の影響によって誰でもなりうるものまで幅広くあります。 また、持病(脳梗塞心筋梗塞など)の治療で「血液を固まりにくくする薬」を飲んでいる人は不正性器出血が起こりやすいです。 不正性器出血の原因を特定するには、診察や検査を受けなければなりません。出血がみられる人は医療機関を受診してください。

不正性器出血の詳しい内容は「こちらのページ」でも詳しく説明しています。

排尿痛や排尿困難

子宮と膀胱は接しています。子宮体がんが膀胱に広がると、膀胱に刺激が起こって「排尿時の痛み(排尿痛)」や「尿の出にくさ(排尿困難)」が現れます。ただし、排尿痛や排尿困難は膀胱炎過活動膀胱が原因で起こることがはるかに多いです。心配になりすりぎることはありませんが、症状が長く続く人には原因を問わず治療が必要な可能性が極めて高いので、医療機関を受診してください。

性交時の痛み

多くはないですが、子宮体がんによって性交時の痛みがみられることがあります。他の主な性交痛の原因は萎縮性膣炎子宮内膜症子宮筋腫などです。性交痛には病気が隠れていることがあり、性生活への影響も大きいです。自覚がある人はお医者さんに相談してください。

おりものの異常

おりもの(帯下)は子宮や膣から出る分泌物のことで、子宮の粘膜を守ったり汚れを排出する役割があります。子宮体がんによる影響で帯下に変化が起こることがあります。具体的には、量が増えたり、色が変化(赤みを帯びたり)します。

帯下の変化は子宮体がんの影響で起こる一方で、性感染症淋菌感染症クラミジア感染症、膣トリコモナス症など)も原因の1つです。治療が必要な原因が隠れていることが多いので、いつもと違う帯下に気がついたら医療機関を受診してください。

2. 子宮体がんが転移した場合の症状について

子宮体がんは転移をすることがありますが、現れる症状は転移をした部位によって異なります。 例えば、骨に転移をした場合は、痛みやしびれなどが現れますし、肺に転移をした場合には、息苦しさや呼吸困難が現れます。がんの治療中に今までになかった症状が現れた場合は転移が原因の可能性があるので、かかりつけのお医者さんに相談してください。

一方、転移をしてもがんが大きくなければ、特に症状を現さないことがあり、定期的な通院で無症状のうちに転移が見つかることも少なくありません。転移が無症状で見つかった場合は抗がん剤治療放射線治療で症状が現れる前に治療を始めることもあります。

3. 子宮体がんの末期の症状について

子宮体がんに限らず「がんの末期」に明確な定義はありません。そのため、ここで言う末期は、抗がん治療(手術や抗がん剤治療、放射線治療)が行えない状態を指すことにします。

末期では進行したがんの影響で、悪液質(あくえきしつ)と呼ばれる状態が引き起こされます。悪液質の状態に陥ると、がん細胞に栄養が奪われてしまい、倦怠感や食欲の低下を自覚します。また、食欲がなくなって食事がとれなくなると、栄養がますます不足していきます。身体の栄養が足りなくなると、身体がむくんだり、肺やお腹に水分がたくさん貯まるようになり、身体を少し動かすのも簡単ではなくなります。

末期の症状は治療で緩和できる場合があります。苦痛に思うことはお医者さんに伝えてください。また、精神的なサポートとして、家族や友人といった顔を知った人がそばにいると、患者さんは落ち着きます。患者さんにとって過ごしやすい雰囲気をつくることができればなおよいです。雰囲気をつくると言っても頑張って何かしてあげなくてはいけないわけではなく、ただそばにいてあげるだけでもよいです。患者さんに「自分は1人ではない」という安心を感じ取ってもらえることが大切です。

がんの緩和治療や末期の過ごし方の詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

参考文献

・日本婦人科腫瘍学会/編, 「子宮体がん治療ガイドライン2018年版」, 金原出版, 2018
・国立がん研究センター内科レジデント/編, 「がん診療レジデントマニュアル」, 医学書院, 2016
・日本産科婦人科学会/編集・監修, 「産婦人科研修の必修知識2016-2018」, 2016
・National Comprehensive Cancer Network, Inc., 日本婦人科腫瘍学会/監訳,  「NCCNガイドラインー子宮体がん