ばせどうびょう(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
若い女性に多く、甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌される病気。症状は汗、動悸、手の震え、体重減少、下痢が多く、眼球突出は3割ほどの人に起こる
16人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2022.12.22

甲状腺がんの症状は? プランマー病などの甲状腺腫瘍との見分け方

甲状腺がんの症状は、甲状腺の硬い塊のほか、声がかれるなどがあります。ほかの甲状腺腫瘍甲状腺がんを区別するには検査が必要ですが、症状も参考になります。プランマー病などの甲状腺腫瘍との症状の違いを説明します。

1. 甲状腺がんの症状は?

甲状腺がんはごく小さければ症状がないものがほとんどです。数mm以上になると触ってわかるようになります。通常は左右どちらか一方にだけできます。甲状腺全体が腫れるときは甲状腺がん以外の病気の可能性が高いです。

甲状腺がんが進行すると声がかすれたり、ものが飲み込みにくくなったりします。詳しくは甲状腺がんの症状のページで説明しています。

以下では甲状腺がんの中でも危険度の高いがんと危険度の低いがんの違いを説明します。

「しこり」とは?

「しこり」というのは、身体の一部が周りより硬くなっている症状のことです。「かたまり」のことだと思ってください。「かたまり」と言うと手のひらでつかめるぐらいの大きさを想像するかもしれませんが、がんの「しこり」には1cm以下で見つかるものもあります。

また、「しこり」の中には肩こりぐらいの硬さの「しこり」も、石のように硬い「しこり」もあります。甲状腺がんの「しこり」は周りの皮下脂肪と続けて触るとやっと区別できるぐらいの硬さのことがあるので、微妙な手触りに注意してください。

甲状腺乳頭がん(こうじょうせんにゅうとうがん)の症状

甲状腺乳頭がんは、甲状腺がんの中で一番多いタイプのがんです。甲状腺がん全体の80%くらいが乳頭がんです。乳頭がんというのは組織を顕微鏡で見ると乳頭のような形をしているという意味で、胸にある乳頭とは関係ありません。

甲状腺乳頭がんは数mm以上に成長していれば甲状腺に触ったときにしこりがわかります。

リンパ節転移を起こしやすく、首の左右にあるリンパ節1個から数個、1cm以上に腫れます。

甲状腺乳頭がんは、がんとはいえ進行がゆっくりなため、手術、アイソトープ療法などで完治することが多いです。転移しているような進行がんを含めても85%以上が10年以上生存することがわかっていますし、早期に発見して手術で取り切っていれば寿命を左右されることはないと考えてよいです。

甲状腺濾胞がん(こうじょうせんろほうがん)の症状

甲状腺濾胞がんは、甲状腺がんの中で乳頭がんの次に多いがんです。甲状腺がん全体の10%弱が甲状腺濾胞がんです。甲状腺にしこりがあり、特に硬くて凸凹しているときに甲状腺濾胞がんの疑いが強くなります。首のリンパ節が腫れることは少ないです。

甲状腺濾胞がんの進行はゆっくりで、手術とアイソトープ療法で早期に治療すれば完治することがほとんどです。

甲状腺髄様がん(こうじょうせんずいようがん)の症状

甲状腺髄様がんは、甲状腺がんのうち1-2%と少ないがんです。甲状腺にしこりができます。甲状腺髄様がんの約1/3は遺伝します。

遺伝による甲状腺髄様がんは、褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)や副甲状腺機能亢進症と一緒に出現することがあります。褐色細胞腫は血圧が急激に変動する、副甲状腺機能亢進症骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により骨折するなどの特徴があるため、甲状腺のしこりと同時に高血圧や骨折があれば甲状腺髄様がんの疑いが強くなります。

甲状腺髄様がんは手術で治療します。アイソトープ療法は効きません。

甲状腺未分化がん(こうじょうせんみぶんかがん)の症状

甲状腺未分化がんは、甲状腺がんの中で1-2%と少ないがんです。進行が非常に速く、治療は困難です。甲状腺未分化がんの症状の特徴は、甲状腺のしこりが急速に大きくなる・声がかすれる・飲み込みにくくなる・のどが痛くなるなどです。

甲状腺未分化がんの治療法には手術、放射線治療、抗がん薬治療があります。

甲状腺悪性リンパ腫の症状

甲状腺悪性リンパ腫甲状腺がんの中で数%ほどにあたります。橋本病の人にできやすいがんです。甲状腺が腫れるのですが、触ると軟らかいことが多く、ほかの甲状腺がんでは硬くなることが多いので触って予想がつくこともあります。

放射線治療と抗がん薬治療によってかなりの延命効果が期待できます。

2. 甲状腺がんと間違いやすい甲状腺腫瘍とは?

甲状腺にできる腫瘍には、甲状腺がん以外にも危険度の低い良性腫瘍があります。甲状腺の良性腫瘍によって死に至ることはまずありません。

甲状腺がんと見分ける必要がある、良性甲状腺腫瘍の症状を説明します。

甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)の症状

甲状腺腫はがんではありません。

甲状腺に数mmから数cmのしこりができます。まれに甲状腺ホルモンを過剰に作って、発熱、下痢、脈が早くなるなどの症状(甲状腺機能亢進症)を起こします。甲状腺ホルモンを作る甲状腺腫のことをプランマー病(Plummer病)と言います。

甲状腺腫が大きくて邪魔なとき、甲状腺機能亢進症が目立つときは手術で切除すれば治ります。

腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)の症状

腺腫様甲状腺腫はがんではありません。腺腫様甲状腺腫には最初は症状はありません。数cmまで大きくなったら首にしこりを自覚します。

腺腫様甲状腺腫が甲状腺ホルモンを作って、発熱、下痢、脈が速くなるなど甲状腺機能亢進症の症状が出ることがあります。

腺腫様甲状腺腫は基本的に治療の必要はありませんが、首の腫れが目立って気になる場合や甲状腺機能亢進症の症状が強い場合は手術でとってしまうこともできます。

甲状腺嚢胞(こうじょうせんのうほう)の症状

嚢胞とは液体の溜まった袋のことです。甲状腺嚢胞は、甲状腺の中にできた嚢胞です。甲状腺嚢胞のほとんどはがんではありませんが、ごくまれにがんが潜んでいるので、検査で甲状腺嚢胞が見つかったときはさらに詳しい検査があります。

大きい甲状腺嚢胞は触ると首のしこりとして感じます。

治療には、皮膚の上から針をさして、袋に入っている中身を吸い出します。

吸い出した中身を検査することで、袋の中に甲状腺がんがないかも調べられます。がんの疑いがあれば手術で取り除きます。

3. これは甲状腺腫瘍?

甲状腺がんと甲状腺の良性腫瘍は症状である程度区別できます。甲状腺を触るなどして観察すると、ほかの甲状腺の病気として代表的なバセドウ病や橋本病ともある程度区別できます。

ほかの病気と甲状腺腫瘍、特に甲状腺がんを見分けるために気を付けたいポイントを説明します。

甲状腺に触ってみる

甲状腺腫瘍はある程度の大きさがあれば甲状腺を触ったときの変化としてわかります。一度自分や周りの人の甲状腺に触ってみて、何もないときの甲状腺の手触りを確かめておいてください。

甲状腺の場所の画像:甲状腺は首の前側、のどぼとけの下、気管の前面で左右の頚動脈の間にある

甲状腺腫瘍ができたときの手触りの特徴を説明します。

  • 甲状腺にしこりがある
    • 甲状腺に硬いしこりがある場合、特に左右の片側だけにしこりがある場合は、甲状腺腫瘍の可能性が高いです。良性腫瘍の場合が半分以上ですが、甲状腺がんではないか調べるため病院で診てもらいましょう。
  • 甲状腺が硬くなっている
    • 甲状腺が硬くなることも要注意のサインです。甲状腺がんの輪郭がはっきりせず、硬い塊というより甲状腺全体が硬くなったように感じることがあります。甲状腺がん以外の病気で甲状腺が硬くなることはあまりありません。
  • 甲状腺がでこぼこしている
    • 甲状腺がんはでこぼこしています。甲状腺がん以外の病気で甲状腺がでこぼこしてくることはあまりありません。
  • 甲状腺の左右どちらか片側が腫れている
    • バセドウ病や橋本病では、甲状腺の全体が腫れてきます。甲状腺腫瘍は普通は1か所にできるので、左右どちらかだけに変化が現れます。甲状腺の片側が腫れていたら甲状腺腫瘍の可能性があります。ただし甲状腺腫瘍が相当に大きくなって甲状腺の左右に跨がると、甲状腺全体が腫れます。

甲状腺に触ってみて明らかな変化があれば代謝内分泌内科などで診察を受けてください。実は軽い病気だったとしても、検査で甲状腺がんと見分けることは大切です。

4. 甲状腺の周りの症状にも注意

甲状腺のしこり以外にも、甲状腺がんを見分けるポイントはあります。甲状腺の周りの変化に注意してください。

  • 首を動かすと突っ張る
    • 甲状腺は多少変化があってもあまり違和感が出てきません。しかし、首を前後左右に動かしてみると、甲状腺に突っ張るような違和感が出ることがあります。突っ張る感じは甲状腺腫瘍以外にも甲状腺が腫れる病気で出るため、甲状腺に何らかの病気があるかもしれないと考えるサインになります。
  • 甲状腺に熱を感じる
    • 甲状腺に腫瘍や炎症があった場合に熱く感じることがあります。甲状腺がんとそれ以外を区別する手段にはなりませんが、甲状腺に何らかの病気があるサインです。甲状腺の皮膚に変化を伴うこともあります。
  • 首のリンパ節が腫れる
    • 甲状腺がんが首の左右にあるリンパ節に転移して、首のリンパ節が腫れることがあります。ただし、リンパ節が腫れる原因はほかにも数多くあるので、1cm未満なら気にしないでください。リンパ節が1cm以上に腫れていてもほとんどは感染症の影響です。甲状腺のしこりなどがあるときに、同時に首のリンパ節も腫れているときは甲状腺がんの疑いが強くなります。
  • 高血圧と骨折がある

5. 家族に甲状腺がんの人がいたら

甲状腺がんの一部は遺伝が関係します。

家族に甲状腺乳頭がん甲状腺髄様がんができた人がいて、自分にも甲状腺のしこりができたら要注意です。

6. 甲状腺腫瘍かもしれないと思ったら

甲状腺腫瘍の特徴に当てはまると思ったら、代謝内分泌内科などの病院・クリニックに行きましょう。

問診では「どんな症状が出ているのか」「いつから症状が出ているのか」や「過去にどんな病気にかかっているのか」「家族に甲状腺の病気の人はいるのか」「飲んでいる薬はあるか」を聞かれます。

あらかじめ頭の中で整理しておくと良いでしょう。