甲状腺がんの症状は? プランマー病などの甲状腺腫瘍との見分け方
甲状腺がんの症状は、
目次
1. 甲状腺がんの症状は?
甲状腺がんはごく小さければ症状がないものがほとんどです。数mm以上になると触ってわかるようになります。通常は左右どちらか一方にだけできます。甲状腺全体が腫れるときは甲状腺がん以外の病気の可能性が高いです。
甲状腺がんが進行すると声がかすれたり、ものが飲み込みにくくなったりします。詳しくは甲状腺がんの症状のページで説明しています。
以下では甲状腺がんの中でも危険度の高い
「しこり」とは?
「しこり」というのは、身体の一部が周りより硬くなっている症状のことです。「かたまり」のことだと思ってください。「かたまり」と言うと手のひらでつかめるぐらいの大きさを想像するかもしれませんが、がんの「しこり」には1cm以下で見つかるものもあります。
また、「しこり」の中には肩こりぐらいの硬さの「しこり」も、石のように硬い「しこり」もあります。甲状腺がんの「しこり」は周りの皮下脂肪と続けて触るとやっと区別できるぐらいの硬さのことがあるので、微妙な手触りに注意してください。
甲状腺乳頭がん(こうじょうせんにゅうとうがん)の症状
甲状腺乳頭がんは、甲状腺がんの中で一番多いタイプのがんです。甲状腺がん全体の80%くらいが乳頭がんです。乳頭がんというのは組織を顕微鏡で見ると乳頭のような形をしているという意味で、胸にある乳頭とは関係ありません。
甲状腺乳頭がんは数mm以上に成長していれば甲状腺に触ったときにしこりがわかります。
甲状腺乳頭がんは、がんとはいえ進行がゆっくりなため、手術、
甲状腺濾胞がん(こうじょうせんろほうがん)の症状
甲状腺濾胞がんは、甲状腺がんの中で乳頭がんの次に多いがんです。甲状腺がん全体の10%弱が甲状腺濾胞がんです。甲状腺にしこりがあり、特に硬くて凸凹しているときに甲状腺濾胞がんの疑いが強くなります。首のリンパ節が腫れることは少ないです。
甲状腺濾胞がんの進行はゆっくりで、手術とアイソトープ療法で早期に治療すれば完治することがほとんどです。
甲状腺髄様がん(こうじょうせんずいようがん)の症状
甲状腺髄様がんは、甲状腺がんのうち1-2%と少ないがんです。甲状腺にしこりができます。甲状腺髄様がんの約1/3は遺伝します。
遺伝による甲状腺髄様がんは、褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)や副甲状腺機能亢進症と一緒に出現することがあります。褐色細胞腫は血圧が急激に変動する、副甲状腺機能亢進症は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により骨折するなどの特徴があるため、甲状腺のしこりと同時に高血圧や骨折があれば甲状腺髄様がんの疑いが強くなります。
甲状腺髄様がんは手術で治療します。アイソトープ療法は効きません。
甲状腺未分化がん(こうじょうせんみぶんかがん)の症状
甲状腺未分化がんは、甲状腺がんの中で1-2%と少ないがんです。進行が非常に速く、治療は困難です。甲状腺未分化がんの症状の特徴は、甲状腺のしこりが急速に大きくなる・声がかすれる・飲み込みにくくなる・のどが痛くなるなどです。
甲状腺未分化がんの治療法には手術、
甲状腺悪性リンパ腫の症状
甲状腺悪性リンパ腫は甲状腺がんの中で数%ほどにあたります。橋本病の人にできやすいがんです。甲状腺が腫れるのですが、触ると軟らかいことが多く、ほかの甲状腺がんでは硬くなることが多いので触って予想がつくこともあります。
放射線治療と抗がん薬治療によってかなりの延命効果が期待できます。
2. 甲状腺がんと間違いやすい甲状腺腫瘍とは?
甲状腺にできる
甲状腺がんと見分ける必要がある、
甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)の症状
甲状腺腫はがんではありません。
甲状腺に数mmから数cmのしこりができます。まれに
甲状腺腫が大きくて邪魔なとき、甲状腺機能亢進症が目立つときは手術で切除すれば治ります。
腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)の症状
腺腫様甲状腺腫はがんではありません。腺腫様甲状腺腫には最初は症状はありません。数cmまで大きくなったら首にしこりを自覚します。
腺腫様甲状腺腫が甲状腺ホルモンを作って、発熱、下痢、脈が速くなるなど甲状腺機能亢進症の症状が出ることがあります。
腺腫様甲状腺腫は基本的に治療の必要はありませんが、首の腫れが目立って気になる場合や甲状腺機能亢進症の症状が強い場合は手術でとってしまうこともできます。
甲状腺嚢胞(こうじょうせんのうほう)の症状
大きい甲状腺嚢胞は触ると首のしこりとして感じます。
治療には、皮膚の上から針をさして、袋に入っている中身を吸い出します。
吸い出した中身を検査することで、袋の中に甲状腺がんがないかも調べられます。がんの疑いがあれば手術で取り除きます。
3. これは甲状腺腫瘍?
甲状腺がんと甲状腺の良性腫瘍は症状である程度区別できます。甲状腺を触るなどして観察すると、ほかの甲状腺の病気として代表的なバセドウ病や橋本病ともある程度区別できます。
ほかの病気と甲状腺腫瘍、特に甲状腺がんを見分けるために気を付けたいポイントを説明します。
甲状腺に触ってみる
甲状腺腫瘍はある程度の大きさがあれば甲状腺を触ったときの変化としてわかります。一度自分や周りの人の甲状腺に触ってみて、何もないときの甲状腺の手触りを確かめておいてください。
甲状腺腫瘍ができたときの手触りの特徴を説明します。
- 甲状腺にしこりがある
- 甲状腺が硬くなっている
- 甲状腺がでこぼこしている
- 甲状腺の左右どちらか片側が腫れている
甲状腺に触ってみて明らかな変化があれば代謝内分泌内科などで診察を受けてください。実は軽い病気だったとしても、検査で甲状腺がんと見分けることは大切です。
4. 甲状腺の周りの症状にも注意
甲状腺のしこり以外にも、甲状腺がんを見分けるポイントはあります。甲状腺の周りの変化に注意してください。
- 首を動かすと突っ張る
- 甲状腺は多少変化があってもあまり違和感が出てきません。しかし、首を前後左右に動かしてみると、甲状腺に突っ張るような違和感が出ることがあります。突っ張る感じは甲状腺腫瘍以外にも甲状腺が腫れる病気で出るため、甲状腺に何らかの病気があるかもしれないと考えるサインになります。
- 甲状腺に熱を感じる
- 甲状腺に腫瘍や
炎症 があった場合に熱く感じることがあります。甲状腺がんとそれ以外を区別する手段にはなりませんが、甲状腺に何らかの病気があるサインです。甲状腺の皮膚に変化を伴うこともあります。
- 甲状腺に腫瘍や
- 首のリンパ節が腫れる
- 高血圧と骨折がある
5. 家族に甲状腺がんの人がいたら
甲状腺がんの一部は遺伝が関係します。
家族に甲状腺乳頭がんか甲状腺髄様がんができた人がいて、自分にも甲状腺のしこりができたら要注意です。
6. 甲状腺腫瘍かもしれないと思ったら
甲状腺腫瘍の特徴に当てはまると思ったら、代謝内分泌内科などの病院・クリニックに行きましょう。
あらかじめ頭の中で整理しておくと良いでしょう。