ばせどうびょう(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
若い女性に多く、甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌される病気。症状は汗、動悸、手の震え、体重減少、下痢が多く、眼球突出は3割ほどの人に起こる
16人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2022.12.22

バセドウ病の初期症状は? 甲状腺の腫れ、目、首、震え、汗、生理にも注意

バセドウ病の特徴的な症状は甲状腺の腫れと眼球突出です。しかし、眼球突出があらわれる人は3割程度にすぎず、初期症状で病気に気付くには、体重・体温・脈拍の変化、手の震え、生理不順にも注意してください。症状は更年期障害などと似ています。手術や薬で治療すれば妊娠・出産もできます。

1. バセドウ病になりやすい人の特徴

バセドウ病は若い女性に多い病気です。

バセドウ病はすべての人のうち200人に1人から400人に1人くらいが経験します。20代と30代発症する人が半分以上で、次いで40代から50代がバセドウ病になりやすい年齢です。また、バセドウ病にかかる女性の人数は男性の4倍ほどです。

2. バセドウ病の主な症状一覧

バセドウ病で出ることがある症状を下にまとめます。

  • 目の症状
    • 目が飛び出す(眼球突出
    • まぶたが閉じきれなくなる
    • まぶたが腫れているように見える
    • ものが二重に見える(複視
    • 眼が痛くなる
    • 眼が赤くなる
    • まぶしく感じる(羞明)
    • 物がゆがんで見える、視野が悪くなる
  • 首が腫れる(甲状腺が腫れる)
  • 生理(月経)の異常
    • 生理不順、生理が止まる
  • 皮膚の症状
    • かゆみ、蕁麻疹
    • 毛が抜ける、細くなる
    • 皮膚が黒くなる
  • 筋肉の症状
    • 筋力低下
    • 手足が震える
    • 突然手足の力が入らなくなり、しばらくすると戻る(周期性四肢麻痺
  • 心臓の症状
    • 脈が早くなる頻脈、1分に100回以上)、乱れる(心房細動
    • ドキドキする(動悸
    • 息切れ
    • 血圧が上がる
  • 胃腸の症状
    • 食欲が増す/落ちる
    • 口が乾く
    • 便の回数が増える、腹痛、下痢
  • 心の症状
    • イライラする
    • 集中力が落ちる
    • 落ち着かない気持ちになる(不穏
    • 眠れなくなる
    • 一時的に周りの状況などを理解できなくなる(せん妄
  • その他の症状
    • 暑がりになる、汗をかく、多汗
    • 疲れやすくなる
    • だるさ
    • 体重が減る(食欲は旺盛)
    • 性欲減退
    • 女性化乳房

代表的なものについて以下で説明します。

3. 目が飛び出す(眼球突出)

バセドウ病は目が飛び出てくる症状が有名です。実際にはこんなふうに症状に気付きます。

40代女性の鈴木さんは、最近体調が悪いと思っていたところ、ある日鏡を見て、顔つきがいつもと違っているのに気が付きました。
目がギョロっと大きく開いています。
鈴木さんは、テレビで見た「目が飛び出す病気」のことを思い出して、鏡を合わせて横顔を見てみました。
目はギョロっとしていますが、飛び出しているようには見えません。これでも病気でしょうか?

ただし、バセドウ病の人で眼球突出など目に症状が出る人の割合は3割程度です。眼球突出は印象に残ってしまう症状ですが、眼球突出がない人のほうが多いのです。

バセドウ病でなぜ眼球突出になる?

バセドウ病は、甲状腺ホルモン(こうじょうせんホルモン)という身体を元気にするホルモンが過剰な状態です。過剰になった甲状腺ホルモンは眼球を動かす筋肉を太く肥大させたり、眼球の後ろに脂肪を蓄積させたりするため、目が飛び出してきます。

また、バセドウ病になると、実際に目が飛び出していなくても飛び出しているように見えることがあります。それは過剰な甲状腺ホルモンがまぶたの筋肉を緊張させる、つまり常に目を見開いた状態にしてしまうことが原因です。目を大きく開いているので、目が飛び出ていなくても目が飛び出ているように見えたりします。

眼球突出以外にも目の症状がある

バセドウ病になると、眼球突出以外にも眼に症状が出てきます。

【バセドウ病の目の症状(眼球突出以外)】

  • まぶたが閉じきれなくなる
    • まぶたの筋肉が緊張して、まぶたが閉じきらなくなります
  • まぶたが腫れているように見える
    • まぶたに脂肪が蓄積することでまぶたが腫れているように見えます
  • ものが二重に見える(複視)
    • 両眼がバランスよく動かなくなり、物が二重に見えることがあります
  • 眼が痛くなる
    • 眼球が突出したりまぶたが閉じきらなくなることで、ドライアイになったり角膜に傷がついて眼が痛くなります
  • 眼が赤くなる
    • 眼球が突出したりまぶたが閉じきらなくなることで、ドライアイになったり角膜に傷がついたりすることで眼が充血します
  • まぶしく感じるようになる
    • 眼球の後ろにある神経が圧迫されることで、特に強い光がなくてもまぶしく見えることがあります
  • 物がゆがんで見える、視野が悪くなる
    • 眼球の後ろにある神経が圧迫されることで、物がゆがんで見えたり視野の一部が見えなくなったりします

このように、バセドウ病になるとさまざまな症状が眼に出てきます。思い当たる症状があれば、首の前の面が太くなっていないかもチェックしてください。

4. 首が腫れる(甲状腺が腫れる)

バセドウ病は甲状腺の病気です。甲状腺が腫れるのが大きな特徴です。甲状腺とはどこにあって、どうやって調べればいいのか説明します。

甲状腺の場所は?

甲状腺という臓器は、のどぼとけのすぐ下にあります。図で見て大体の位置をイメージしてください。

甲状腺の場所の画像:甲状腺は首の前側、のどぼとけの下、気管の前面で左右の頚動脈の間にある

甲状軟骨(こうじょうなんこつ)というのが男性で言う喉仏(のどぼとけ)です。女性でものどに触ると軟骨の手触りがあります。甲状腺は甲状軟骨のすぐ下から左右に広がっています。

甲状腺の腫れをチェックする方法

甲状腺の腫れ

バセドウ病になって甲状腺が腫れるとのど元が太くなってきます。正常な甲状腺は薄く軟らかく、触ってもよほど注意しないとわかりません。

鏡などを使って横から見たときに甲状腺の部分が盛り上がって見えたら腫れています。触ってみても、周りより膨らんでいると感じたら腫れています。甲状腺が腫れると、軽度のうちはあまり気付くことはないですが、段々と自覚するようになってきます。

特に多い自覚症状は以下のものになります。

  • 鏡で見ると首が太くなってきたのを感じる
  • 首を左右前後に動かすとのど元が突っ張る感じがする

甲状腺は年をとると段々と小さくなっていきます。そのため、腫れているという感覚も感じにくくなります。

のど元を見て触ってみて、腫れていないと思ったらその見た目と手触りを覚えておいてください。ときどき見て触って正常な状態を覚えておくことで、変化があったときに気が付きやすくなります。

バセドウ病と甲状腺腫瘍の手触りの違い

バセドウ病では甲状腺全体が右も左も同じぐらい腫れてきます。びまん性甲状腺腫大と言います。バセドウ病で腫大した甲状腺は正常な甲状腺よりやや硬い程度で、硬い塊はありません。

甲状腺腫瘍を触ってわかるときは、右側か左側の片方に、硬い塊(しこり)として感じられます。硬い塊があることを結節性甲状腺腫大と言います。

5. バセドウ病の症状は目と首だけではない

バセドウ病になると、目が飛び出たり首が腫れたりする以外にさまざまな症状が出てきます。特に出やすい症状は以下のものです。

  • 頻脈(脈が早くなる)
  • 発汗
  • 疲労、倦怠感
  • イライラ、興奮
  • 体重減少
  • 手足の震え
  • 下痢

上の症状は眼球突出よりも多いので、「目が飛び出していないからバセドウ病ではない」と思う前に、当てはまるかどうかチェックしてください。

6. バセドウ病でかゆみが出る原因は?

誰にでも出る症状ではありませんが、バセドウ病による皮膚の炎症は、かゆみの原因になります。

皮膚の症状は、バセドウ病の原因である自己抗体が皮膚の組織に含まれる線維芽細胞を刺激してグリコサミノグリカンを分泌させることにより起こるとする説があります。

参考文献:『ロビンス基礎病理学 第7版』, 森亘・桶田理喜監訳, 廣川書店, 2004

7. バセドウ病が悪化したときの症状は?

バセドウ病が悪化すると、心臓に悪影響が出る場合や、甲状腺クリーゼと言って甲状腺が極端に破壊される場合がまれにあり、命に関わります。

次の症状が出たら、状態が悪化しているかもしれません。

  • 動くといつもより明らかに息切れがする
  • いつもよりひどい動悸がする
  • 38℃以上の高熱が出現する
  • 意識がもうろうとする
  • なにをやっていても眠くなる

甲状腺クリーゼは以下の状況で多いとされます。

  • のど元をぶつけた
  • 感染がある
  • 手術を受けた

上記の症状があらわれた場合は、速やかに病院を受診してください。

8. バセドウ病と似た症状のある病気は?

バセドウ病と似た症状として、たとえば動悸と手の震えがあるときには以下が考えられます。

典型的にはアルコール依存症は飲酒が多い人にあらわれ、過換気症候群は呼吸が激しくなる症状に続いて起こるという特徴があります。過換気症候群による手足のしびれ、パニック発作で起こるめまいや吐き気なども手がかりになります。ほかにも自律神経失調症糖尿病など、多様な症状をあらわす病気では、いくつかの症状がバセドウ病に似て見えることも考えられます。

症状が軽いときには特に特徴がはっきりせず、病院で検査しなければ診断は難しいことが多いです。

「グレーブス病」はバセドウ病と同じ?

バセドウ病は、1835年にアイルランドの医師のロバート・ジェームズ・グレーブスが報告しました。1840年にはドイツの医師のカール・アドルフ・フォン・バセドウも報告しています。

そのため同じ病気が英語圏ではグレーブス病と呼ばれている一方、ドイツ医学の影響を受けた日本ではバセドウ病と呼ばれています。

10. 目が飛び出しているように見える病気は他にもある?

眼球突出(眼が飛び出しているように見える症状)は以下の病気で起こります。

  • バセドウ病
  • 眼窩の蜂巣炎
    • 眼球の後ろ(眼窩)にある脂肪などの組織が感染などにより炎症を起こし腫れることで、眼球が押し出されます。
  • 眼窩の腫瘍
  • 外傷
    • 骨折などにより眼球が押し出される場合があります。
  • 頸動脈海綿静脈洞瘻
    • 眼窩の近くにある動脈と静脈が破れてつながってしまった状態です。外傷や脳動脈瘤の破裂で起こります。心臓の拍動に一致して、眼球が拍動して見えること(拍動性眼球突出)が特徴です。

一番多いのはバセドウ病です。ほかの原因と見分けるために、甲状腺の検査や頭の画像検査が必要になります。