ばせどうびょう(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
若い女性に多く、甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌される病気。症状は汗、動悸、手の震え、体重減少、下痢が多く、眼球突出は3割ほどの人に起こる
16人の医師がチェック 154回の改訂 最終更新: 2018.11.02

バセドウ病の薬の効果と副作用は?抗甲状腺薬、アイソトープ治療など

バセドウ病の治療は手術のほか薬とアイソトープ治療があります。注意点として、妊娠中や授乳中は避けるべき薬があり、放射線を使うアイソトープ治療も適していません。あわせて症状を楽にする薬やその注意点も説明します。

バセドウ病を治療しようとしている人を思い浮かべてください。

40代女性の鈴木さんは、目がギョロっとしてきたのに気が付き、病院に行ってバセドウ病と診断されました。
最近疲れやすかったりイライラするのも更年期障害ではなくバセドウ病の症状かもしれないと言われ、治療することにしました。
治療法は薬がいいと言われたので薬を飲もうと思うのですが、なぜ薬を勧められたのか気になります。
バセドウ病の薬はどんないいところがあるのでしょうか?

1. バセドウ病の薬はどんな薬?抗甲状腺薬について

バセドウ病は甲状腺(こうじょうせん)という臓器が働きすぎて、甲状腺ホルモンが多くなりすぎる病気です。詳しくは「バセドウ病の原因は?年齢、性別、タバコと眼球突出などの関係」で説明しています。

バセドウ病で病院に行ったとき出される薬は、抗甲状腺薬(こうこうじょうせんやく)と言って、甲状腺が甲状腺ホルモンを作るのを抑える薬です。甲状腺ホルモンについては「甲状腺ホルモンとは?甲状腺の働きと血液検査の読み方」で説明しています。

主にチアマゾールとプロピルチオウラシルという2種類の薬があり、症状や体質などを考慮して使い分けがされています。

薬を飲み続ける期間は普通1年以上になります。

チアマゾール(商品名:メルカゾール®

チアマゾールは抗甲状腺薬の中でも特に高い効果があり、第一選択薬(最初に使うべきとされている薬)として使われている薬です。

チアマゾールの副作用は?

甲状腺ホルモンを減らす作用はかなり高い一方で、薬の成分の一部が胎盤を通過し胎児へ移行することがわかっています。妊娠中にチアマゾールを使用すると、まれに胎児の甲状腺が十分働かなくなったり、甲状腺腫などを引き起こす可能性があります。

そのため近い将来妊娠を希望しているときには、ほかの薬が適しています。妊娠にバセドウ病が与える影響については「バセドウ病の人は妊娠できるの?遺伝はしない?」で説明しています。

チアマゾールは母乳に移行することもわかっています。チアマゾールを使用中は授乳を避けてください。

他の副作用としては、非常にまれですがチアマゾールが無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)を引き起こす可能性があります。無顆粒球症は、免疫が弱くなり、細菌などに対しての抵抗力が弱くなってしまう病気です。万一の無顆粒球症には緊急で対応する必要があるので、チアマゾールを使っているときに発熱や寒気を感じたら、すぐに処方したお医者さんに知らせてください。

プロピルチオウラシル(商品名:チウラジール®、プロパジール®

プロピルチオウラシルは、チアマゾールと同様の仕組みによって甲状腺ホルモンが過剰につくられるのを抑える薬です。チアマゾールの方が強い作用がありますが、プロピルチオウラシルはより安全性が高い薬になっています。

プロピルチオウラシルの副作用は?

副作用として、非常にまれに無顆粒球症などがあらわれる可能性もありますので注意は必要です。

プロピルチオウラシルは妊娠・授乳していても使える?

プロピルチオウラシルはあまり胎盤を通過しないので、近い将来妊娠を希望する女性に適しています。授乳はできれば避けたほうがいいのですが、希望するときは処方したお医者さんに相談してください。

抗甲状腺薬を使うときの注意

抗甲状腺薬は効きすぎに注意が必要です。効果を出して症状を抑えながら、効きすぎにもならないようにするため、通常は症状の改善を見ながら薬を徐々に減らしていく「漸減」(ぜんげん)という方法を使います。漸減はテーパリングとも言います。

さらに無顆粒球症などが起こらないか監視するために定期的に血液検査をします。

バセドウ病と言われたら、薬を出される前に、いま妊娠しているか、近い将来妊娠を希望するかを伝えてください。

お医者さんも副作用などによく注意していますが、副作用に最初に気付くことができるのは自分です。

治療中にもし突然の高熱、寒気、のどの痛みといった症状を感じたら、早めに処方したお医者さんや薬剤師に相談してください。

2. バセドウ病を放射線で治すアイソトープ治療とは?

バセドウ病では甲状腺が働きすぎているので、甲状腺の働きを抑える治療にアイソトープ治療があります。

バセドウ病の治療に使うアイソトープとは、放射性ヨウ素のことです。主に放射性ヨウ素が入ったカプセルを飲むことによって治療を行います。

甲状腺はヨウ素を取り込む性質があるので、放射性ヨウ素を飲むと甲状腺に放射性ヨウ素が集まります。放射性ヨウ素は甲状腺の中から放射線を出して、甲状腺の組織の一部を減らします。

アイソトープ治療により、腫れている甲状腺を小さくしたり、過剰につくられている甲状腺ホルモンを減らして症状を収める効果が期待できます。

甲状腺ホルモンが減りすぎることに対策が必要です。また、放射線を使うので妊娠中や授乳中にはできません。

アイソトープ治療が向いている人は?

「放射性ヨウ素内用療法に関するガイドライン」でアイソトープ治療を進んで行うべきとされている場合について説明します。

  • 抗甲状腺薬で副作用を認めた場合
    • 副作用が出た薬はストップして、ほかの治療を試すのがいいでしょう。
  • 抗甲状腺薬でコントロール不良の場合
    • 薬の効果が十分に出ないときは、ほかの治療を試すのがいいでしょう。
  • 外科的甲状腺手術(亜全摘、片摘)後の再発
    • 手術をしても再発したときは、ほかの治療を試すのがいいでしょう。
  • 患者が手術、抗甲状腺薬の治療を希望しない場合
    • バセドウ病の治療にはそれぞれ一長一短があります。主治医に「アイソトープがいいです」と伝えれば、アイソトープ治療が合っているか積極的に考えてもらえます。
  • 心肺疾患(心不全不整脈他)、周期性四肢麻痺などにより確実なコントロ ールを必要とする場合
    • 重症のバセドウ病では心臓や手足の運動機能にも症状が出ます。確実に治療しなければ危険がある場合、アイソトープ治療が重要な手段になります。

アイソトープ治療をしてはいけない人は?

「放射性ヨウ素内用療法に関するガイドライン」にはアイソトープ治療をしてはいけない人も挙げられています。

  • 妊娠または現在妊娠の可能性がある女性
  • 授乳婦

アイソトープ治療は放射線を使うので、妊娠中、授乳中は子供に影響する恐れがあります。妊娠中などは同じ理由でアイソトープ検査もできなくなります。詳しくは「バセドウ病の診断方法は?症状、甲状腺の検査でわかることと検査NGの人」で説明しています。

また、18歳以下の人はアイソトープ治療を慎重に行うべきとされています。18歳以下で、なんらかの理由により他の治療法が選択できない時は、アイソトープ治療をするべきかお医者さんとよく相談してください。

アイソトープ治療の効果を出すために気を付けること

アイソトープ治療では、効果をしっかり出すために気を付けることがあります。

  • 治療前の一定期間、ヨウ素を多く含む昆布やひじきなどの海藻類などを食べたり、ヨウ素が入ったうがい薬(例:イソジンガーグル液)を使うのは控えてください。
  • すでに抗甲状腺薬による治療を行っている場合、アイソトープ治療の少し前から薬をお休み(休薬)してください。

食べ物と甲状腺ホルモンの関係について「バセドウ病にいい食事はある?甲状腺とヨードの関係」で詳しく説明しています。

食事制限や休薬が必要な期間は病気の状態などによっても異なるため、お医者さんから期間をしっかり聞いておきましょう。

アイソトープ治療の悪影響を出さないために気を付けること

アイソトープ治療で飲んだ放射性ヨウ素のうち、甲状腺に取り込まれなかったもののほとんどは尿によって排出されます。微量の放射線が体の中から、また尿や便、唾液などからも出ているため、治療後しばらくは周りの人に影響しないように、注意することがあります。

  • 数日間は早くアイソトープを体外へ出すために十分な水分を摂る。
  • 数日間はトイレで尿や便を飛び散らせないよう配慮する。例えば、水は念のため2回流す、男性は便座に座った状態で排尿するなど。
  • 数日間はお風呂は最後に入る。家族と一緒に入らない。
  • 数日間はキスやセックスは避ける。
  • 数日間はタオルをほかの人と共有しない。
  • 数日間は衣類の洗濯は別にする。同じ洗濯機を使うときは2回に分ける。
  • 数週間は子供や妊婦の近くで長時間過ごすことを避ける。添い寝などはしない。
  • 6ヶ月間は避妊する。

アイソトープ治療は入院が必要?

バセドウ病のアイソトープ治療は多くの場合で入院になります。軽症なら日帰りでアイソトープ治療ができることもあります。

入院するときにも、しないときにも、気を付けることを守ってください。

入院と関係して注意事項が変わってくる場合もあるので、治療を担当するお医者さんに、注意することを尋ねておいてください。

放射線の影響は?

バセドウ病の治療に使う放射性ヨウ素は放射性物質で、放射線を出します。放射線は大量に浴びると害があります。胎児や成長途上の子供は放射線の影響を受けやすいので、妊娠中や授乳中は放射性ヨウ素を使うべきではありません。

しかし、妊娠や授乳をしていない成人は、悪影響を出さないための注意を守って使う限り、バセドウ病のアイソトープ治療をしても安全です。注意点の中でも特に、子供や妊婦に接触しすぎないことと、避妊することに気を付けてください。

アイソトープ治療後に使う薬とは?

アイソトープ治療は甲状腺の働きを抑えてバセドウ病を治療します。効果が出ると甲状腺ホルモンが減るのですが、甲状腺ホルモンが減りすぎて症状が出ることはかなり多いです。

このためアイソトープ治療のあとは甲状腺ホルモンを飲んで量を調整し、バランスを取ります。

甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種類があり、T4製剤としてチラーヂン®SやレボチロキシンNa「サンド」、T3製剤としてチロナミン®があります。

甲状腺ホルモン製剤の副作用は?

甲状腺ホルモン製剤は元々体内にあるホルモンと同様ですので、副作用が出ることはまれです。念のため注意する点としては、製剤に含まれる添加物(デンプンなど)などが身体に合わないといった可能性はゼロではありませんので、万一息苦しさなどを感じたときはすぐに処方したお医者さんに知らせてください。

3. バセドウ病の目の症状にステロイドが効く?

バセドウ病でまぶたが腫れる、物が二重に見える、目の奥が痛むなどの症状に対して、ステロイド内服薬が有効です。

アイソトープ治療後に一時的に眼の症状が悪化することがあり、予防的にステロイドを使う場合もあります。アイソトープ治療後に目の症状が続く場合にもステロイドが有効です。

ステロイド内服薬は用量を守ることがとても大切で、急にやめたり処方された用量を変えて飲んだりすると、体内のホルモンバランスが崩れてしまい危険です。

副作用にも注意が必要です。処方した医師や薬剤師から注意点や副作用が出たときの対処をよく聞いておき、正しく使ってください。ステロイド内服薬の副作用についてはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」で詳しく説明しています。

4. バセドウ病の症状を和らげるβ遮断薬とは?

バセドウ病では甲状腺に働く薬以外にも、動悸(どうき)、手の震えなどの症状に対する薬が有効です。

β遮断薬という薬は、主に狭心症不整脈、高血圧などの病気で使われている薬で、心臓の拍動をゆっくりにし、血圧を下げる作用があります。β遮断薬の作用により、動悸や震えの症状を改善することが期待できます。バセドウ病に使われているβ遮断薬の例としてプロプラノロール(商品名:インデラル®など)などがあります。

抗甲状腺薬の効果があらわれて、動悸がなくなればβ遮断薬はやめることができます。

β遮断薬の副作用は?

β遮断薬を元々の血圧が低い人が使う場合には、血圧低下によるめまいやふらつきなどに特に注意が必要です。またβ遮断薬には気管支を収縮させ空気の通り道を狭くする作用もあるため、喘息などの持病により使うことができないケースもあります。

5. バセドウ病に効く漢方薬とは?

バセドウ病による動悸、手足の震え、暑がり、汗をかく、イライラするなどの症状には漢方薬が有効な場合があります。バセドウ病の症状に効果が期待できる漢方薬をいくつか挙げて説明します。

炙甘草湯(シャカンゾウトウ)

疲れやすく、動悸や息切れがあるような症状に対して効果が期待できる漢方薬です。

脈が速い、動悸、息切れ、貧血などに加えて、疲労感、手足のほてり、口の渇きなどが伴う症状に対して適しています。

炙甘草(シャカンゾウ)という生薬が主な成分です。炙甘草は多くの漢方薬に含まれる甘草(カンゾウ)をあぶったものです。他にも地黄(ジオウ)、麦門冬(バクモンドウ)、桂皮(ケイヒ)など計9種類の生薬を含んでいます。

注意したいのは、麻子仁(マシニン)という下剤作用をあらわす生薬を含むため、お腹が緩くなる可能性があります。便秘気味な人には適しますが、お腹の下りには注意が必要です。

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

比較的体力があり、動悸、不安やイライラ、肩こりなどがあるような症状に効果が期待できる漢方薬です。

抗ストレス作用がある柴胡(サイコ)、不安や不眠、胃痛などに効果が期待できる牡蠣(カキ)の貝殻が原料となった生薬の牡蛎(ボレイ)などを含みます。

白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)

比較的体力があり、ほてりや喉の渇きがあるような症状に効果が期待できる漢方薬です。

汗をかいたり、のぼせ、熱感、発疹などの皮膚症状がある場合に適するとされていて、バセドウ病においても汗が多く、暑がったりするような症状改善に有用となることが考えられます。

体内の熱や口の渇きなどを改善する働きをあらわす石膏(セッコウ)、脱水を抑え渇きを改善する働きをあらわす粳米(コウベイ)などの生薬成分を含んでいます。

石膏などによる下痢や食欲不振などの胃腸症状があらわれる場合があり、胃腸が弱い人は注意が必要です。

苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

立ちくらみのようなめまいやふらつきなどの症状に効果が期待できる漢方薬です。体力が中等度からやや不足気味の人に使われ、動悸や息切れ、脱力感など、バセドウ病であらわれる症状に対しても効果が期待できます。

尿を出しやすくする茯苓(ブクリョウ)、水分の流れを改善する蒼朮(ソウジュツ)などの生薬を成分として含みます。

漢方薬の注意点は?

上で挙げたほかにも、体力が虚弱気味で疲れやすく動悸、息切れなどへの柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)などがバセドウ病の症状改善に使われることがあります。

一般的に漢方薬は副作用が少なく、体質や症状に合った薬を使った場合の安全性は非常に高い薬です。ただし、副作用が全くないわけではなく自然由来の生薬成分自体が体質や症状に合わなかったりすることもあります。また、生薬成分の適正な量を超えて服用した場合などでは好ましくない症状があらわれることもあります。

特に甘草(カンゾウ)は、漢方薬の約7割に含まれる生薬成分で、炙甘草湯、苓桂朮甘湯、白虎加人参湯、柴胡桂枝乾姜湯にも含まれていますが、他の病気で既に漢方薬を服用している場合や甘草の成分(グリチルリチン酸)を含む製剤(グリチロン®配合錠など)を服用している場合などでは、甘草の過剰な摂取に繋がる可能性もあります。これにより偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)による高血圧や筋力低下といった症状が起こる可能性もあり注意が必要です。

万一漢方薬による症状があらわれたとしても多くは漢方薬を中止することで解消できます。適切な漢方薬を使うためには、自身の体質や症状、現在使用している薬などをしっかりと医師や薬剤師へ伝えることが大切です。

6. バセドウ病の治療には手術もある

バセドウ病の治療法のうち、薬とアイソトープ治療について説明しました。ほかの治療法に手術があり、妊娠中の女性や早く治したい人には手術が合っています。「バセドウ病は手術で治る?甲状腺の手術に向いている人と待つべき人」とあわせてご覧ください。