りょうせいほっさせいとういめまいしょう(びーぴーぴーぶい)
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
頭の位置や傾きが変わることをきっかけに、ぐるぐるとした数十秒間のめまいが生じる病気
26人の医師がチェック 138回の改訂 最終更新: 2021.12.15

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の検査と治療について

めまいの原因を調べるために検査を行う時は、脳が原因になるめまいの区別が最も重要です。行う検査について見ていきましょう。良性発作性頭位めまい症の診断後は、どのような治療を行うのかもあわせて見ていきましょう。

1. 良性発作性頭位めまい症になったらどんな検査をするのか

めまいの原因は大きくわけて2つあります。脳などが原因で起こる中枢性めまい(ちゅうすうせいめまい)と、脳ではなく耳などが原因になる末梢性めまい(まっしょうせいめまい)です。耳は聞こえを担当するほか、体のバランスを感知する機能もあります。耳の病気では、体のバランスを取りづらくなり、めまいも起こします。

中枢性めまいの代表は、脳出血脳梗塞などで、緊急で治療が必要な病気です。末梢性めまいの代表は良性発作性頭位めまい症や、メニエール病前庭神経炎などです。

めまいの中から、すぐに治療が必要な中枢性めまいを見つけることが、最も重要なことです。中枢性めまいを見つけるための診察や検査を行い、中枢性めまいではなく、末梢性めまいの可能性が高いと判断された場合には、追加で耳の検査などをおこないます。

問診

めまいで病院に受診した時は、はじめにめまいの状況などについて詳しく聞かれます。めまいの診断では、めまいの状況によって診断をある程度、予想することができます。しかし、めまいが起きた時は、気持ち悪かったり、不安や恐怖で、よく覚えていないと思います。覚えている範囲で話してください。

  • めまいの発症の仕方
    • めまいが起きた時間はいつか?:朝、昼、夕など
    • どこでめまいが起きたか?:寝床の中、会社など
    • めまいが繰り返し起きているか?
  • めまいの持続時間
    • めまいはどのくらい続いたか?:30秒、3分、3時間など
      • 発作的に大きなめまいが何回かあった場合でも、1回のめまいは30秒程度であれば、持続時間は30秒と答えてください。
  • めまいと一緒に起こる症状
    • 耳鳴り、難聴、耳のつまった感じなどの症状があるか?
    • 手足のしびれや、動かしにくさ、話しにくさなどの症状があるか?
  • めまいの誘因
    • 寝返りなど横の動きがあったか?
    • 立ち上がり時や、長時間の立ち仕事の時など、縦の動きがあったか?
  • 既往歴(かかったことのある病気)
    • 高血圧、糖尿病、心臓病などがあるか?
      • 内服薬によって起こることもあるので内服薬があれば必ず知らせてください。

身体診察

まずは脳出血脳梗塞などが原因となる中枢性めまいの症状がないかを診察します。その後

に、耳の病気がないかどうかの診察を行います。耳は耳鏡という道具を使って、耳の穴に光を当てて鼓膜を観察します。病状によっては、バランスの検査も行います。

■神経診察:中枢性めまいの可能性がないかを調べる身体診察

  • 目の視野で見えにくい部分がないか
  • 眼の動きが正常か、ものが二重に見えることがないか
  • 顔のしびれ、動かしにくさがないか
  • 口蓋垂(こうがいすい、のどちんこ)の周りの動きが左右で同じか
  • ろれつが回るかどうか
  • 手や足の動かしにくさや、しびれがないか

■耳の診察:耳の病気がないかを調べる身体診察

平衡機能検査:バランスの機能が保たれているかを調べる身体診察

  • 両足を揃えて、目を開けた状態と、閉じた状態で、立っていられるかどうか
  • 片足ずつで立って、目を開けた状態と、閉じた状態で、立っていられるかどうか
  • 目を閉じた状態で、足踏みを50回か100回して、移動や回転をしないかどうか

眼振検査(がんしんけんさ)

眼振検査はめまいを起こしやすい姿勢をとり、眼振が出るかを観察する検査です。

眼振とは眼球の揺れや回転のことです。眼振が出ている時は、自分で眼球を動かしている感覚はありません。眼振には病気によって起こるものと、正常な反応で起こるものがあります。めまいの自覚症状がある時は、眼振が出ていることが多く、診察で観察することができます。眼振の種類によって、めまいの原因が脳なのか耳なのかを、推定できます。

眼振検査は、注視眼振検査(ちゅうしがんしんけんさ)と、頭位眼振検査(とういがんしん

けんさ)、頭位変換眼振検査(とういへんかんがんしんけんさ)などの種類があります。

注視眼振検査以外は、フレンツェル眼鏡という道具を使って検査をします。フレンツェル眼鏡をかけると、目の焦点が合わなくなります。目の焦点が合わなくなると、眼振が起きやすくなり、眼振をわかりやすく観察することができます。目を閉じてしまうと、眼振を観察することができないため、検査中はなるべく目を開けておくようにします。瞬きはしても構いません。

良性発作性頭位めまい症では、頭位眼振検査や、頭位変換眼振検査で、特徴的な眼振が出るため、診断には欠かせません。検査はめまいが起きやすい姿勢をとるため、検査中にめまい

が起きることもあります。めまいが起きると、検査台から落ちそうな感覚になったり、気持ち悪くなったりして、思わず目をつぶってしまうかもしれません。しかし、目をなるべく開けて、眼球の動きを観察してもらうと、診断に結びつきますので、できる範囲で検査を行います。もちろん、気持ち悪くて、吐きそうな場合は、遠慮なく医師に伝えてください。

■注視眼振検査

じっとモノを見つめた状態で、目を動かして眼振が出るかを見る検査です。

指先やボールペンの先をじっと見つめたまま、正面、左、右、上、下の5方向に目を動かして、眼振が出るかを観察します。

■頭位眼振検査

フレンツェル眼鏡をかけて、座った状態か、仰向けに寝た状態で、ゆっくりと頭の位置を変

えて、頭の位置の変化によって、眼振が出るかを観察します。

座ったままの検査では、正面、前、後、右、左に首を傾けます。

仰向けに寝て行う場合は、正面から、首だけ右を向く姿勢と、左を向く姿勢をとります。

外側半規管型の良性発作性頭位めまい症では、頭位眼振検査で眼振が観察できます。外側半規管型という分類については「良性発作性頭位めまい症の原因」のページで説明しています。

■頭位変換眼振検査

フレンツェル眼鏡をかけて、急激な頭の位置の変化で、眼振が出るかを観察します。Dix-Hallpike法(ディックス・ホールパイク法)とも呼ばれる検査です。頭位変換眼振検査は首が悪い場合(頚椎症など)には負担になるので行いません。

座ったまま右に首をひねり、そのまま仰向けに横になる動作をして、眼振を観察した後に、起き上がって、再度、眼振を観察します。

後半規管型の良性発作性頭位めまい症では、頭位変換眼振検査で眼振が観察できます。後半規管型という分類については「良性発作性頭位めまい症の原因」のページで説明しています。

頭部CT検査・頭部MRI検査

脳出血脳梗塞などの脳の病気によるめまいの場合は、早めの治療が必要です。問診、身体診察や眼振検査などで、脳の病気が疑われた場合は頭部の画像の検査を行います。画像の検査にはCT検査とMRI検査があります。大まかに言うと、CT検査で脳出血の有無を確認して、MRI検査で脳梗塞の有無を確認します。

CT検査は放射線を用いて、脳を輪切りにして写真を撮る方法です。短時間で撮影することができ、脳出血があればわかりやすく写ることが多いです。脳梗塞はCTではわかりにくいのですが、大きい脳梗塞や、脳梗塞になってから時間がたった部分はしばしばCTだけでも診断することができます。MRI検査は磁石の力を利用して撮影する方法です。脳梗塞を調べるのに役立つ検査です。

必要に応じて、CT検査にMRI検査を追加します。脳梗塞が起こったばかりの場合はMRI検査でも診断できないことがあります。症状などから脳梗塞の可能性がある場合は、時間をあけて再度検査をします。

純音聴力検査(じゅんおんちょうりょくけんさ)

純音聴力検査は音の聞こえを判断する検査です。狭い静かな部屋に入って、ヘッドフォンをして、音がしたらボタンを押して聴力を調べます。

良性発作性頭位めまい症では聴力の悪化はありません。一方、メニエール病突発性難聴に伴うめまいの場合には聴力が悪化します。聴力低下を伴うめまいかどうかを判断するために、聴力検査を行います。

平衡機能検査

平衡機能検査とは、体のバランスを評価する検査です。体のバランスは目、耳にある前庭系、足の感覚の3つの情報をあわせて保たれています。このどれか1つがかけても、めまいやふらつきなどの症状がおこります。急に暗い所に入るとふらふらするのは、3つのうち、目からの情報がなくなるためです。

平衡機能が正常であれば、平衡機能検査で倒れたり、転んだりすることはありません。いつも同じ方向に倒れてしまう場合は、倒れる方向の前庭機能(耳の中のバランスの機能)が悪くなっている可能性があります。足踏み検査でも同じ方向に回転してしまう場合には、回転した方向の前庭機能が悪い可能性があります。

平衡機能検査を行うと、平衡機能が悪くなっている原因の部位の評価ができます。そのほかに、めまいやふらつきといった感覚を、検査で目に見える形で評価したり記録したりできる利点があります。平衡機能検査の中にも細かい種類があり、ここではめまいの診断の際によく行われる検査について説明します。

検査は目を開けた状態と目を閉じた状態で行います。目を閉じた状態では、倒れたり、転びそうになる感覚になることがあります。検査中は、転びそうになった時に支えられるように、周囲に人がいるので、安心して検査を行ってください。

■重心動揺検査

めまいで耳鼻咽喉科を受診すると行うことが多い検査です。重心動揺計という機械を使って検査をします。素足で重心動揺計の台に乗り、目をあけた状態で60秒間、目を閉じた状態で60秒間、重心の動きを記録します。重心の動きの大きさやスピードなどを評価します。

■両脚起立検査

両足をそろえて立って、目をあけた状態で60秒間、目を閉じた状態で60秒間立っていられるかを評価します。

■Mann検査(マン検査)

両脚を前後の一直線にそろえて立つ検査です。片方の足のつま先を、もう一方の足のかかとにつけて、目をあけた状態で30秒間、目を閉じた状態で30秒間立っていられるかを評価します。

■単脚起立検査

片足だちができるかどうかを調べる検査です。目をあけた状態で30秒間、目を閉じた状態で30秒間立っていられるかを評価します。

■足踏み検査

目を閉じた状態で、同じ位置で50歩もしくは、100歩の足踏みを行います。足踏みをはじめた位置から、どれくらい移動や回転をしたかを評価します。

2. 良性発作性頭位めまい症の治療にはどんなものがあるか

良性発作性頭位めまい症は、治療をしなくても自然に治ることが知られています。そのため、めまいの治療は、早く治るようにするための治療と、めまいに伴って起きる気持ち悪さや吐き気の症状を軽くさせる治療になります。

早く治すための治療には理学療法、気持ち悪さや吐き気を軽くする治療には薬物療法があります。再発を減らすための運動についても一緒に説明します。

ごくまれに、1年以上良性発作性頭位めまい症の症状が続く場合で、日常生活の支障が大きいときには、手術治療を考慮することがあります。

理学療法:頭位治療、耳石置換法(じせきちかんほう)

理学療法とは、運動やその他の物理的手段による治療のことです。

良性発作性頭位めまい症では、半規管に迷入した耳石が半規管内を動いたり、半規管内で体の傾きを感知する部分に、耳石が付着することでめまいが起こります。迷入した耳石がなくなれば、めまいが起こらなくなります。

良性発作性頭位めまい症に対する理学療法は、頭や体を動かすことで、迷入した耳石を半規管の中を動かして、耳石を所定の位置に戻す治療方法です。頭位治療や、耳石置換法とも呼ばれます。耳石を半規管から出す治療なので、根本的な治療になります。

ただし頭や体を動かすため、治療を行っている時は、めまいの症状が強くなり、気持ち悪さや吐き気が悪化します。症状が強い場合には、無理をして理学療法をせず、安静にしてめまいの症状がある程度軽くなってから理学療法を行うこともできますし、理学療法はしないで自然に治るのを待つこともできます。

理学療法は主に病院で行いますが、自宅で行うことをすすめられる場合もあります。病院で理学療法を行っても、めまいが残る場合には、自宅で理学療法を行うと、めまいの症状が早く改善することもあります。耳石がどの半規管に入ったかで、行う治療も異なります。行う場合は医師にどの理学療法が良いのか聞いて行ってください。

以下では自分でできるものを含めて理学療法の方法を説明します。左右の違いが大事なので、見分けやすいように「みぎ」「ひだり」と書くことにします。

後半規管型BPPVの理学療法:Epley法、Semont法、Brandt-Daroff法

三半規管のうち、後半規管に耳石が迷入して起こるものを、後半規管型良性発作性頭位めまい症と呼びます。良性発作性頭位めまい症の中でも頻度が多いものです。典型的には、上を向いたり、靴を履こうと下を向いたりした時にめまいを感じます。

後半規管型の良性発作性頭位めまい症に対する理学療法は、Epley法、Semont法、Brandt-Daroff法の3つがあります。この3つの方法を比較した研究によると、Epley法とSemont法のめまい消失や、眼振がなくなる割合は同じでした。Epley法とBrandt-Daroff法を比べた場合には、Epley法の方が有効とされています。

Epley法は自然治癒に比較して、短期間で症状が改善することが報告されています。Epley法を1回行うと、80%で自覚症状が消失することが知られています。

参照:Cochrane Database Syst Rev. 2012 Apr 18. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 8.

【Epley法:エプリー法】

後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合に行う、最も一般的な理学療法です。下記の手順で行います。各ステップの体位は、めまいの症状がなくなるまでか、約2分間同じ姿勢をとります。

・みぎ後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合

  1. 座った姿勢(座位)のまま、顔はみぎ45度を向きます。
  2. 顔はみぎ45度を向いたまま、仰向けに首を後ろに伸ばす頭位(懸垂頭位:けんすいとうい)にします。懸垂頭位は、ベッドの端から頭を出して20-30°頭を下げるか、肩のあたりに枕を入れます。めまいが起きた場合には、めまいの症状が軽くなるまで、同じ姿勢をとります。
  3. めまいの症状が軽くなったら、懸垂頭位のままひだり45度に頭を回転します。
  4. さらにみぎ肩をあげて、ひだり向きの姿勢をとります。この時、顔のみうつ伏せになり、ベッドに顔をつけるようにします。
  5. 座る姿勢に戻り、最後に顔を下に向けて、めまいの症状が消えるまで、もしくは1-2分そのままの姿勢を保ちます。

・ひだり後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合

  1. 座位のまま、顔はひだり45度を向きます。
  2. 顔はひだり45度を向いたまま、仰向けに首を後ろに伸ばす頭位(懸垂頭位:けんすいとうい)にします。懸垂頭位は、ベッドの端から頭を出して20-30°頭を下げるか、肩のあたりに枕を入れます。めまいが起きた場合には、めまいの症状が軽くなるまで、同じ姿勢をとります。
  3. めまいの症状が軽くなったら、懸垂頭位のままみぎ45度に頭を回転します。
  4. さらにひだり肩をあげて、みぎ向きの姿勢をとります。この時、顔のみうつ伏せになり、ベッドに顔をつけるようにします。
  5. 座る姿勢に戻り、最後に顔を下に向けて、めまいの症状が消えるまで、もしくは1-2分そのままの姿勢を保ちます。

参考:Otolaryngol Head Neck Surg. 1992 Sep;107(3):399-404.

【Semont法:セモン法】

後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合に行う方法です。

めまいが出てきたら、1日1-3回行います。この治療を行った後は就寝時まで、なるべく横に

ならないようにします。せっかく所定の位置に戻した耳石が動いてしまうからです。

・みぎ後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合

  1. まずベッドの縁に腰掛けます。
  2. 上半身をみぎに倒します。この時、みぎの後頭部をベッドにつけて、顎を上にするようにします。
  3. ゆっくり上半身を起こして、一気に反対側へ横になります。この時、おでこをベッドにつけるようにします。
  4. 起き上がって、座ります。

夜寝る時は、ひだりを下にして寝るようにします。

・ひだり後半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合

  1. まずベッドの縁に腰掛けます。
  2. 上半身をひだりに倒します。この時、ひだりの後頭部をベッドにつけて、顎を上にするようにします。
  3. ゆっくり上半身を起こして、一気に反対側へ横になります。この時、おでこをベッドにつけるようにします。
  4. 起き上がって、座ります。

夜寝る時は、みぎを下にして寝るようにします。

参考:Adv Otorhinolaryngol. 1988;42:290-3.

【Brandt-Daroff法:ブラント-ダロフ法】

Brandt-Daroff法は、Epley法やSemont法とは異なり、運動を繰り返すことで、半規管内にある耳石を所定の位置に戻そうとする方法です。この体操を繰り返すことで、耳石がたまりにくくなります。それぞれの姿勢はめまいの症状がなくなるか、30秒経つまで維持します。頭位間の体位変化は素早く行います。

次の1-4を1セットとし、5-20セット行うことが良いと言われています。

  1. ベッドに腰掛けます。
  2. 上半身をみぎへ倒します。顔はひだり斜め上を見ます。
  3. 起き上がって、ベッドに腰掛けます。
  4. 上半身をひだりへ倒します。顔はみぎ斜め上を見ます。

参考:Arch Otolaryngol. 1980 Aug;106(8):484-5.

外側半規管型BPPVの理学療法:Lempert法、Gufoni法

外側半規管型良性発作性頭位めまい症でもっともよく行われるのが、Lempert法です。その他にGufoni法についてもお話します。

【Lempert法:レンパート法】

外側半規管型の良性発作性頭位めまい症と診断された場合に行う方法です。

・みぎ外側半規管型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 仰向けで横になった状態から、顔のみ90°ひだりを向く
  2. 顔も体もうつ伏せになる
  3. 体はうつ伏せのまま、顔だけ90°ひだりを向いて、みぎが下の頭の位置にする
  4. 起き上がり座る

・ひだり外側半規管型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 仰向けで横になった状態から、顔のみ90°みぎを向く
  2. 顔も体もうつ伏せになる
  3. 体はうつ伏せのまま、顔だけ90°みぎを向いて、ひだりが下の頭の位置にする
  4. 起き上がり座る

参考:Laryngoscope. 1996 Apr;106(4):476-8. Neurology. 1993 Dec;43(12):2542-9.

【Gufoni法】

外側半規管型の良性発作性頭位めまい症に対する治療です。半規管内を耳石が浮遊する半規管結石型と、クプラに耳石が付着するクプラ結石型の両方で効果がある理学療法です。

<半規管結石型BPPV

・ひだり外側半規管の半規管結石型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 座った状態から、みぎ側へすばやく体を倒して、2分間その姿勢を維持する。
  2. その後、素早く首を45°みぎに回して下を向き、その姿勢を数分間維持する。
  3. 素早く元の座位へ戻り、2分間姿勢を維持する。

・みぎ外側半規管の半規管結石型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 座った状態から、ひだり側へすばやく体を倒して、2分間その姿勢を維持する。
  2. その後,素早く首を45°ひだりに回して下を向き、その姿勢を数分間維持する。
  3. 素早く元の座位へ戻り、2分間姿勢を維持する。

<クプラ結石型BPPV

・ひだり外側半規管のクプラ結石型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 座った状態から、ひだり側へすばやく体を倒して、2分間その姿勢を維持する。
  2. その後,素早く首を45°みぎに回して上を向き、その姿勢を数分間維持する。
  3. 素早く元の座位へ戻り、2分間姿勢を維持する

・みぎ外側半規管のクプラ結石型の良性発作性頭位めまい症の場合

  1. 座った状態から、みぎ側へすばやく体を倒して、2分間その姿勢を維持する。
  2. その後,素早く首を45°ひだりに回して上を向き、その姿勢を数分間維持する。
  3. 素早く元の座位へ戻り、2分間姿勢を維持する

薬物療法

良性発作性頭位めまい症に対する薬物治療は、めまいの症状や吐き気を抑える薬が使われます。耳石を溶かす薬などはないため、あくまで症状を和らげる薬が主になります。薬で気持ち悪さなどを軽くした後に、理学療法を行うことで、早くめまいの症状が改善します。

めまいの発症直後は、気持ち悪さや吐き気が強いため、安静に加えて、症状を抑える薬を使います。めまいが強いと、不安や恐怖を強く感じ、更に気持ち悪さや吐き気の症状を強めるため、不安を抑える薬を使うこともあります。

気持ち悪さや吐き気に対して、メトクロプラミド(プリンペラン®️)や、ヒドロキシジン(アタラックス®️-P)などが用いられます。

不安や恐怖は気持ち悪さを悪化させるため、不安をやわらげる薬を使います。ジアゼパム(ホリゾン®︎、セルシン®︎)や、エチゾラム(デパス®︎)などは、自覚症状を改善するという報告があります。

点滴で使用されるめまいの治療薬として、7%炭酸水素ナトリウム(メイロン®︎)があります。効果は大規模な研究で証明されたものではないものの、めまいの神経のある内耳の血流を増加して、めまいの症状を和らげるのではないか、と考えられ使用されています。

めまいの症状を和らげる薬として、ベタヒスチン(メリスロン®)や、ジフェニドール(セファドール®)が使われますが、良性発作性頭位めまい症では、耳石が原因であるため、あまり効果はないかもしれません。

ジメンヒドリナート(ドラマミン®)は良性発作性頭位めまい症の吐き気に一定の効果があるとされています。

運動(めまい体操)

頭の位置を動かす運動を行うことで、耳石がたまりにくくなり、再発を少なくすることができます。運動中にめまいを感じる場合には、姿勢を変えずに少し時間を置いて、めまいがおさまってから次の姿勢にうつってください。可能な範囲で、1日1-5セットくらいを繰り返すと有効です。

強いめまいを感じた場合には、体操中に気持ち悪くなったり、ベッドや椅子から落ちてケガをすることがありますので、症状が落ち着いてからめまい体操をしてください。

・寝起きの運動

仰向けに寝た状態から、座る状態に体を起こし、また寝る動作を繰り返します。手を使ってゆっくり動いて構いません。

・上や下を向く運動

椅子に座った状態もしくは、床の上に正座して行います。最初に、膝のあたりまでかがんで床を見た後、体を起こして天井を向く運動を繰り返します。椅子の場合は、落ちないようにゆっくり行います。首を痛める場合がありますので、無理はしないでください。

・寝返りの運動(ゴロゴロ体操)

左右の寝返りの運動を繰り返します。

首のみを左右に動かす方法もしくは、体全体で右を向いたり、左を向いたりする方法を行います。首が痛いなどの症状がある場合には、体全体を使って寝返りをしてください。

手術

良性発作性頭位めまい症は、通常は自然経過で改善するめまいです。稀ではありますが、めまいが1年以上継続して、普段の生活に支障がでる場合があります。このような場合には、手術治療を考慮することがあります。

半規管結石型の良性発作性頭位めまい症には、耳石が迷入する半規管に耳石が入り込まないように詰める手術を行います。

後半規管のクプラ結石型良性発作性頭位めまい症では、めまいを感じる神経を遮断する手術が行われます。

手術の合併症として、手術後に難聴が起こる場合があります。手術で得られるめまいの改善というメリットと、難聴が起こるかもしれないデメリットについて、よく主治医と相談して決めてください。