[医師監修・作成]腎盂腎炎(腎盂炎)の症状:発熱・悪寒・腰背部痛など | MEDLEY(メドレー)
じんうじんえん
腎盂腎炎
腎臓と尿管のつなぎ目にあたる「腎盂」に炎症が起こった状態。原因のほとんどは細菌感染である。
13人の医師がチェック 190回の改訂 最終更新: 2022.01.28

腎盂腎炎(腎盂炎)の症状:発熱・悪寒・腰背部痛など

腎盂腎炎は腎臓の腎盂という場所に細菌などが感染する病気です。腎盂腎炎の症状は発熱や悪寒、腰背部痛などが典型的です。腎盂腎炎は膀胱炎と同じく尿の通り道の感染症です。腎盂腎炎と膀胱炎の症状の違いについても解説します。

1. 腎盂腎炎に前兆はあるのか?

図:腎臓の各部分の名前。

腎盂腎炎には前兆と言えるような症状は乏しいです。

腎盂腎炎の症状はさまざまであり、「この症状がでたら腎盂腎炎」という頼りになる症状はありません。腎盂腎炎では以下のような症状があらわれます。

  • 腎盂腎炎の典型的な症状
    • 発熱
    • 悪寒戦慄(寒気・震え)
    • 腰背部痛
    • 側腹部の叩打痛(叩くと痛む)
    • 吐き気・嘔吐
  • 腎盂腎炎でときどき現れる症状
    • 頻尿
    • 排尿時痛
    • 血尿

発熱や吐き気・嘔吐などの症状が腎盂腎炎以外でなくてもあらわれます。他の病気でもあらわれる症状が目立つときには腎盂腎炎を疑うのはなかなか難しいです。

受診を考えるのはいつなのか?

前兆に乏しい腎盂腎炎ですが、医療機関の受診を考えるのはいつが適切なのでしょうか。もし過去に腎盂腎炎を経験していてその時と似た症状があるならば速やかに医療機関を受診した方が無難でしょう。

腎盂腎炎を経験したことのない人の場合は、受診の適切なタイミングを図るのはさらに難しいです。少なくとも発熱や悪寒、腰背部痛の症状が強くなってきたときは、病院を受診することが望ましいと思います。

なお、発熱、悪寒戦慄、腰背部痛などは腎盂腎炎に限った症状ではありませんが、他の緊急性が高い病気を発症していることは十分に有り得ます。今までに経験した発熱とは少し違うと感じたら医療機関を受診するのは正しい姿勢です。

腎盂腎炎は進行が速いので速やかな対応が大切

腎盂腎炎は進行が速い病気です。最初は軽かった症状が、数時間〜1日で急速に進行します。腎臓は血管のかたまりのような臓器です。そのため、腎盂腎炎が悪化すると細菌などが血管の中に入りこんで、菌血症などの危険な状態に陥ることもあります。

腎盂腎炎はなるべく早い段階で治療を開始することが、のちのちの順調な回復につながります。腎盂腎炎かもしれない、いつもの発熱とは様子が違う、と思ったときには迷わずに速やかに医療機関を受診してください。例え腎盂腎炎ではないと判断されたとしても、安心して様子をみることができると思います。

参考文献
・福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第5版, MEDSi, 2017

2. 腎盂腎炎の典型的な症状:発熱・悪寒・腰背部痛・吐き気など

腎盂腎炎に典型的な症状は発熱や悪寒、腰背部痛、吐き気などです。これらの症状は腎盂腎炎でしかでない訳ではありませんが腎盂腎炎を疑う重要な材料になります。

参考文献
・福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第5版, MEDSi, 2017
・サパイラ 身体診察のアートとサイエンス, 医学書院, 2013

発熱

腎盂腎炎を発症すると高熱が出ます。

腎盂腎炎は強い炎症が起こります。強い炎症が体の中で起こると発熱します。腎盂腎炎の発熱は2−3日の間続くことが多く解熱には時間を要します。腎盂腎炎の治療を開始しているにも関わらず発熱がなかなか落ち着かないこともあります。その場合は腎盂腎炎がさらに進行して腎臓やその周りにのたまりをつくる腎膿瘍や腎周囲膿瘍に発展している可能性を考えます。

腎膿瘍や腎周囲膿瘍に進行していると抗菌薬治療に加えてたまった膿を抜く処置が必要になることがあります。処置は主に身体に針を刺して膿を外に出すための管を挿入します。

悪寒・戦慄(おかん・せんりつ)

悪寒はぞくぞくとする寒気のことで、戦慄は震えることです。

急に寒気がして身体がガタガタ震える、温めようとしても毛布にくるまっても震えがとまらないことは多くの人が経験したことがあると思います。悪寒や戦慄は高熱の存在を示唆する症状と考えられています。腎盂腎炎は高熱が出ることが多いのでそれにともなって悪寒や戦慄の症状も現れることが多いです。

腰背部痛

腎盂腎炎では背中から腰にかけて痛みがでることがあります。腎臓は背中側にある臓器です。腎盂腎炎の炎症が強いと周りに影響して腰背部痛として感じます。

側腹部の叩打痛(肋骨脊柱角叩打痛:CVA tenderness)

腎盂腎炎の症状の一つに腎臓の位置にあたる背中の部位を叩くと痛みが増すというものがあります。側腹部の叩打痛(こうだつう)として医師の間ではよく知られた症状です。

側腹部の叩打痛は腎盂腎炎の診察にも用いられる方法です。叩打痛があると腎盂腎炎の可能性が高くなる証拠にはなりますが、叩打痛がないからといって腎盂腎炎を否定できる訳ではありません。

吐き気・嘔吐

腎盂腎炎では吐き気や嘔吐があらわれることがあります。腎盂腎炎では強い炎症が起こります。強い炎症が腎臓の前側にある腸に影響すると吐き気や嘔吐が現れます。

3. 腎盂腎炎でときどきあらわれる症状

発熱や悪寒・戦慄、腰背部痛などは腎盂腎炎によくある症状ですが、他にもときどきみられる症状があります。

頻尿

頻尿(ひんにょう)は、排尿回数が極端に多くなることです。頻尿は膀胱炎の症状であることが多く、腎盂腎炎ではあらわれないこともあります。しかし腎盂腎炎と膀胱炎が一緒に起こっていることもあるので腎盂腎炎のときの症状の一つとして認識されることがあります。

排尿時痛

排尿時痛は、排尿時に痛みが出る症状のことです。頻尿と同様に排尿時痛は膀胱炎の症状であることが多く、腎盂腎炎ではあらわれないこともあります。

腎盂腎炎は膀胱炎を伴うことがありそのときには排尿時痛があらわれることがあります。

4. 腎盂腎炎と膀胱炎の症状の違い

腎盂腎炎と膀胱炎は尿の通り路に起こる感染症としての共通点を持ちますが症状には違いがあります。

膀胱炎に比べて腎盂腎炎は重い状態のことが多いです。このために症状はしっかりと分けて理解しておく必要があります。2つの病気の症状には違いがあります。

【腎盂腎炎と膀胱炎の症状の主な違い】

  腎盂腎炎 膀胱炎
発熱
悪寒戦慄
腰背部痛
吐き気・嘔吐
頻尿
排尿時痛

◎=よくある、◯=しばしばある、△=ほとんどない

腎盂腎炎の症状は多様です。排尿時痛や頻尿など膀胱炎でよく現れる症状も現れることがあります。膀胱炎で現れる症状が強くでることもあり、膀胱炎と考えてしまうこともありえます。しかし、発熱や腰背部痛は膀胱炎で現れることは多くはありません。この違いは重要です。膀胱炎と思っていても発熱や背部痛が現れたときには膀胱炎ではなく腎盂腎炎かもしれないと思うことはとても大切です。

腎盂腎炎は急速に悪化することがあり、悪化したときの合併症は命に危険を及ぼすほどの場合もあります。腎盂腎炎は早く診断して早く治療を開始することが重要です。

症状には十分に注意を払い「熱があるけれど尿を出す時に痛みがあるし膀胱炎かな」などと考えて医療機関の受診を先送りにしないように心がけてください。