はっけつびょう
白血病(総論)
骨髄で異常な血液細胞が増殖する病気。「血液細胞のがん」にあたる
12人の医師がチェック 183回の改訂 最終更新: 2019.11.01

白血病の治療について

白血病を手術で治すことは難しく、治療は抗がん剤治療化学療法)がメインになります。一口に抗がん剤といってもさまざまな種類があり、白血病の種類に応じて適切な抗がん剤を組み合わせて治療を行います。また、人によっては同種造血幹細胞移植骨髄移植の一種)を抗がん剤治療と組み合わせます。ここでは化学療法と造血幹細胞移植による治療について説明します。

1. 急性白血病と慢性白血病の治療の流れ

白血病には大きく分けて急性白血病と慢性白血病があります。ここでは2つに分けて、それぞれの治療について説明します。

急性白血病の治療

急性白血病には、急性骨髄性白血病急性リンパ性白血病の2種類があります。いずれの急性白血病に対しても、治療は寛解導入療法と寛解後療法に分けられます。

  • 寛解導入療法:白血病細胞をできる限り少なくする治療
  • 寛解後療法:白血病を抑えるための追加の治療

それぞれについて詳しく説明します。

○寛解導入療法

白血病の治療では「完全寛解」という状態を目指します。白血病における「完全寛解」とは、血液中に白血病細胞が見られず正常の細胞が十分にあることと、骨髄検査で見られる白血病細胞の割合が5%以下であることです。そのための化学療法を寛解導入療法といいます。

○寛解後療法

寛解導入療法により完全寛解になっても、身体の中には白血病細胞がある一定数残ってしまいます。そこで、残った細胞の増殖を抑えるために行われるのが寛解後療法です。寛解後療法は化学療法を追加で行うこともあれば、造血幹細胞移植を行うこともあります。

慢性白血病の治療

慢性白血病には慢性骨髄性白血病と、慢性リンパ性白血病の2種類があります。それぞれの治療の方針について説明します。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病は自覚症状のない状態で見つかることが多いですが、未治療のままでは、急性白血病のような状態になってしまうこと(急性転化)が知られています。そのため、病気の進行を抑えるための治療が行われます。治療にはチロシンキナーゼ阻害薬という白血病細胞の増殖を抑える薬が使われます。

○慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病はゆっくりと進行することが多く、初期には症状がないことが多いです。病気が進行して、症状が出てきたときに抗がん剤を使った治療が検討されます。

2. 白血病の薬物治療について

白血病の治療ではさまざまな薬を使います。薬は大きく4種類に分けられ、これらをうまく組み合わせて治療を行います。

  • 細胞障害性抗がん剤
  • 分子標的薬
  • キメラ抗原受容体T細胞療法
  • ステロイド薬

それぞれついて詳しく説明します。

細胞障害性抗がん剤

細胞障害性抗がん剤は一般的に「抗がん剤」と言われている薬です。この薬にはがん細胞を攻撃して増殖を抑える効果があります。しかし、正常細胞にも影響を与えるので、吐き気、粘膜障害(口内炎など)、白血球減少、貧血血小板減少などの副作用が出てしまうことがあります。

吐き気などには症状を和らげる薬を使ったり、貧血や血小板減少に対しては輸血で対応したりと、副作用への対策をして安全に治療が受けられるようにします。

白血病の治療でよく使われるものに、イダルビシン(イダマイシン®)、ダウノルビシン(ダウノマイシン®)、シタラビン(キロサイド®)、シクロホスファミド(エンドキサン®)、ビンクリスチン(オンコビン®)、メトトレキサートなどがあります。

分子標的薬

分子標的薬はがん細胞と正常な細胞との違いを利用して、がん細胞を狙って攻撃する薬です。分子標的薬にはいくつかの種類があります。

これらについて説明します。

○イマチニブ(グリベック®)、ニロチニブ(タシグナ®)、ダサチニブ(スプリセル®)、ボスチニブ(ボシュリフ®)、ポナチニブ(アイクルシグ®)

これらの薬はフィラデルフィア染色体と呼ばれる9番染色体と22番染色体の転座によって作られるタンパク質を抑えて治療する薬です。フィラデルフィア染色体が見られる慢性骨髄球性白血病の人や急性リンパ性白血病の人に使われます。

○トレチノイン(ベサノイド®)、三酸化ヒ素(トリセノックス®)

トレチノインと三酸化ヒ素(亜ヒ酸)はともに、急性前骨髄球性白血病の人に使われる薬です。急性前骨髄球性白血病は染色体の変化(15番染色体と17番染色体の転座)により、白血球の分化が前骨髄球の状態で止まってしまい「がん化」する病気です。トレチノインと三酸化ヒ素は、問題のある染色体が原因でできるタンパク質に選択的に働きかけて効果を発揮します。副作用として発熱、胸痛、呼吸困難などの分化症候群が起こる可能性があります。

○ゲムツズマブ オゾガマイシン(マイロターグ®)

ゲムツズマブ オゾガマイシン(マイロターグ®)は急性骨髄性白血病が再発した人に使われることが多いです。白血病細胞の表面にあるタンパク質(CD33)を認識し、選択的に効果を発揮する薬です。

○ギルテリチニブ(ゾスパタ®)、キザルチニブ(ヴァンフリタ)

ギルテリチニブ(ゾスパタ®)とキザルチニブ(ヴァンフリタ)は急性骨髄性白血病が再発した人に使われることが多いです。急性骨髄性白血病の中には、ある特定の遺伝子異常が見られることがあります。これらの薬はいくつかある遺伝子の中で、FLT3という遺伝子の異常が見られる白血病に有効であると言われています。

○イブルチニブ(イムブルビカ®)

イブルチニブ(イムブルビカ®)は慢性リンパ性白血病の人に使われる薬です。イブルチニブは腫瘍細胞の生存に必要なタンパク質の働きを抑えることで効果を発揮します。

○アレムツズマブ(マブキャンパス®)

アレムツズマブ(マブキャンパス®)は慢性リンパ性白血病の人に使われる薬です。白血病細胞の表面にあるタンパク質(CD52)を認識し、白血病細胞を死滅させる効果を発揮します。

○オファツムマブ(アーゼラ®)

オファツムマブ(アーゼラ®)は慢性リンパ性白血病の人に使われる薬です。白血病細胞の表面にあるタンパク質(CD20)を認識し、白血病細胞を死滅させる効果を発揮します。

キメラ受容体T細胞療法(キムリア®)

キムリア®は2019年に日本でも使えるようになった急性リンパ性白血病の治療法です。他の治療薬と異なり、患者さんの血液から作られた細胞を使って治療を行います。簡単に治療の流れを説明します。

【キメラ受容体T細胞療法の流れ】

  1. 患者さんの血液からT細胞を取り出します
  2. 取り出したT細胞に操作を加えて、がん細胞を認識し攻撃できるようにします(このようにして作られた細胞をCAR-T細胞と呼びます)
  3. CAR-T細胞を十分な数まで増殖させます
  4. CAR-T細胞投与前に化学療法で患者さんの白血球の数を少なくします
  5. CAR-T細胞を患者さんに戻します

キムリア®は白血病細胞の表面にあるCD19というタンパク質を認識し、白血病細胞を少なくする効果を発揮します。

キメラ受容体T細胞療法では、白血病細胞が壊されて細胞の中身が血液の中に放出されることが原因で「サイトカイン放出症候群」という副作用が起きることがあります。軽症の場合には発熱や筋肉痛などが現れ、解熱薬、アレルギー薬などで治療をします。一方、重症になると血圧低下や呼吸困難感がみられ、治療ではトシリズマブ(アクテムラ®)という薬が使われることがあります。

ステロイド薬

ステロイド薬は白血病自体の治療目的でも使われますが、薬の副作用の予防や治療のために使われることがあります。ステロイド薬にはいくつかのタイプがありますが、飲み薬や点滴薬が使われることが多いです。ステロイド薬の量や投与する期間は目的や化学療法の種類によっても異なります。

◼︎ステロイドの副作用について

特に気をつけなければならない副作用は、易感染性(感染症にかかりやすくなること)と血糖値の上昇です。ステロイドの副作用を防ぐために、予防的に薬を飲むことがあります。例えば感染予防のためには抗生物質が使われます。また、糖尿病の人はステロイド薬で血糖値が上がってしまうことが多いので糖尿病薬の調整をしたり、普段インスリンを使っていない人も一時的にインスリンを使い血糖値をコントロールすることがあります。

3. 骨髄移植(同種造血幹細胞移植)について

造血幹細胞移植は骨髄移植とも呼ばれ、こちらの名前で聞いたことがある人も多いかもしれません。造血幹細胞とは血液細胞(白血球、赤血球、血小板)のもとになる細胞のことです。

造血幹細胞移植の前には、患者さん(レシピエント)の造血幹細胞を病気の細胞もろとも排除する「前処置」が行われます。その後、提供してもらった造血幹細胞を輸注します(提供してくれる人をドナーといいます)。この治療によって、血液細胞は輸注された造血幹細胞から作られるようになります。いくつかある骨髄移植の方法の中で、白血病の治療で行われるのは同種造血幹細胞移植と呼ばれる方法です。大まかな流れは以下のようになります。

【同種造血幹細胞移植の大まかな流れ】

  • ドナー選び
  • 前処置
  • 造血幹細胞輸注
  • 輸注後から生着まで
  • 免疫抑制剤による治療

これらについて詳しく説明します。

ドナー選び

骨髄移植で骨髄を提供してくれる人をドナーといいます。ドナー候補は白血球の型(HLAといいます)が患者さんと一致している必要があります。血縁者(兄弟姉妹)、骨髄バンクに登録している人、臍帯血バンク(赤ちゃんが生まれる時に採取されるもの)の中でHLAが一致しているドナーから骨髄細胞を移植します。

前処置

前処置とは、造血幹細胞を投与する前に行う治療のことです。患者さんの体内に残っている白血病細胞をできるだけ少なくする目的で、通常の化学療法より強い抗がん剤を使います。同時に放射線も使うことが多いです。副作用として貧血や血小板減少があるので、採血で頻繁に状態を確認し、必要に応じて輸血を行います。

造血幹細胞輸注

前処置終了から1、2日後に、冷凍保存しておいた造血幹細胞を解凍し、輸血と同じような方法で点滴で輸注します。輸注の時は心電図を確認したり、バイタルサイン(血圧や脈拍など)を定期的に計測したりしながら、副作用がないことを確認しつつ慎重に行います。

輸注後から生着まで

輸注された幹細胞が骨髄に定着して造血(骨髄で白血球、赤血球、血小板をつくること)を始めることを「生着」と言います。生着は輸注から2週間程度かかるため、それまでの期間は造血が安定しない状態が続きます。白血球が少ない状態が続くと、細菌ウイルスに感染しやすくなってしまうので、移植中は無菌室で生活します。また、感染の予防のために抗菌薬や抗ウイルス薬を内服します。赤血球や血小板の値が低いと貧血や出血による症状が出ることがあるので、必要時は輸血が行われることもあります。

免疫抑制剤による治療

骨髄移植を受けた人は免疫抑制剤を一定期間使う必要があります。これは、移植された細胞が身体を攻撃することによる副作用(移植片対宿主病)を予防するためです。難しい言葉なのでここで説明します。

◎移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)とは

GVHDは免疫細胞が引き起こす副作用です。免疫細胞は体外から入ってきた異物を認識し排除する細胞です。移植されたドナー由来の細胞が、患者さんの身体を異物と認識して攻撃してしまうことでGVHDが起こります。GVHDの予防のため、免疫を抑制するシクロスポリン(ネオーラル®など)やタクロリムス(プログラフ®など)などの薬剤を使うことが多いです。予防のための免疫抑制剤はGVHD症状がないことを確認しながら、少しずつ減量していき最終的に飲む必要がなくなります。

◎GVHDの治療について

GVHDが起きた場合には免疫抑制剤で治療します。軽症の皮膚症状に対してはステロイド薬の塗り薬を使うことが多いです。その他の症状に対しては、予防に使われるシクロスポリン(ネオーラル®)やタクロリムス(プログラフ®)の量を増やしたり、ステロイド薬を使ったりして治療します。その他、免疫を調節する薬として、ヒト間葉系幹細胞(テムセル®)や抗胸腺細胞グロブリン(サイモグロブリン®)などが治療に使われることがあります。

4. 補助療法

白血病の人では白血病細胞の異常な増殖により正常の血液細胞が作られなくなります。そのうえ、抗がん剤治療を行うと、白血病細胞が少なくなると同時に正常の血液細胞も一時的に少なくなってしまいます。その結果、感染症にかかり易くなったり、貧血、血小板減少による症状が見られることがあります。これらに対する対応について下記で説明します。

感染の予防と治療

白血病の治療により感染症にかかり易くなるので、あらかじめ抗菌薬(抗生物質)を内服しておきます。また、急性リンパ性白血病では白血球(特に好中球)が低下した時に白血球数を上昇させる薬(G-CSF)を使い、感染を予防することが多いです。

発熱などの感染を疑わせる症状がみられた時は、原因を調べると同時に抗菌薬を用いて治療します。白血球の中でも好中球が低下した状態で発熱が起きることを「発熱性好中球減少症」といいます。これは治療しないと生命に関わる状態なので、速やかに治療をはじめます。

輸血

白血病そのものや治療が原因で、赤血球や血小板の量が減少してしまうことが多いです。赤血球の減少による貧血や、血小板の減少による出血を予防するため、輸血で補うことがあります。輸血に使われる赤血球や血小板は血液製剤と呼ばれます。血液製剤によるHIV、肝炎ウイルスの感染は今でもしばしば話題になります。しかし、結論から言うと、現在の輸血では感染症が問題となることはほとんどありません。

参考文献

・日本血液学会/編, 「血液専門医テキスト」, 南江堂, 2015
・日本血液学会 「造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版