月経困難症で知っておくと良いこと:痛み止め使用時の注意、鍼や指圧
生理痛(月経痛)や頭痛など、生理に伴う
目次
1. 月経困難症は治るのか?
「風邪が治る」などのように月経困難症が治るかというと、一概には言えません。子宮や
一方、目に見える異常が見当たらない月経困難症では、痛み止めやピル、漢方薬を上手に使って症状を和らげていくことになります。
参考文献
・日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会, 産婦人科
2. 生理痛で毎月薬を飲むのはよくないのか?
「自然な痛みなのに、薬に頼るのはよくないのでは?」と思うかもしれません。しかし、ひどい生理痛を薬で楽にするのは悪いことではありません。痛みをただ我慢するのは大変なだけですし、毎月痛みに耐えなくてはならないのは辛いものです。また、学校や会社の活動にも影響します。生活の質を上げるためには、痛みを軽くしてくれる薬を使うことに価値があります。
生理痛に使う薬にも副作用はありますが、深刻な副作用が出ることはまれですし、医師や薬剤師に相談することで適切に対応できます。
また、安全性などの観点から、痛み止めの成分としてアセトアミノフェンが選ばれる場合もあります。アセトアミノフェンであれば、
どんな薬であっても、万一アナフィラキシーなどの重い副作用を疑う症状が出た場合には、すぐに医療機関を受診してください。
3. 痛み止めの薬を飲んでいたら飲酒は避けるべきなのか?
市販の痛み止めの服用前後は飲酒しないでください。お酒で症状が悪化することや、副作用が出やすくなることにつながります。
4. 痛み止めの薬が効かない生理痛には病気が隠れている?
生理痛に対し痛み止め薬を飲んでも効果が十分に感じられないことがあります。そのような場合の原因として以下が考えられます。
- もともとの痛みが非常に強い
- 薬が合っていない
- 生理痛の背景に病気が隠れている
痛みが非常に強かったり、薬があっていない場合には薬を変更することで対応が可能かもしれません。一方で、別の病気が隠れていた場合はほかの治療が必要となることがあります。考えられる主な病気は下記の通りです。
【月経困難症の原因になる病気】
- 子宮内膜症
- 腹痛や腰痛があります。特に生理周期ごとに強くなる痛み、性交時や排便時の痛みが特徴です。
- 子宮筋腫
- 生理の出血が多いなどの症状があります。
- 子宮腺筋症
- 生理の出血が多いなどの症状があります。
- 子宮後傾後屈症
- 腰痛などを起こします。
こうした病気が原因の場合、痛み止めの薬だけでは効果不十分になることがあります。特に子宮内膜症は不妊の原因にもなる恐れがあり、早期治療が必要です。
また、上記の症状はあくまで一部のものであり当てはまらない場合もあります。正確に診断するには検査が必要です。痛みがひどい時には我慢せずに、産婦人科などの病院で診察を受けることをお勧めします。
参考文献
・Schliep KC, et al. Pain typology and incident endometriosis. Hum Reprod. 2015 Aug 11.
5. ひどい生理痛に鍼・指圧は効くのか?
月経困難症の中でも、病気が原因となっている場合(
一方で、原因がない場合(機能性月経困難症)については、薬などで痛みを和らげることが主な治療になります。
また、月経困難症に対して広く勧められる治療にはなっていませんが、ツボ(経穴)を狙う鍼や指圧のように、体表を刺激して改善しようとする方法も、効果があるのではないかという観点から研究が行われています。三陰交(内くるぶしの頂点から指4本分上の位置)というツボを刺激する方法などが試され、中にはある程度の結果を示した報告もあります。
ここでは鍼(はり)や、指圧、温熱療法などについて行われた研究の結果の例をいくつか紹介しますが、いずれも医療機関で通常検討される治療を置き換えられるものではありません。そのため、まずは産婦人科などの診察を受けたうえで、こうした方法を試してよいかお医者さんに相談してください。
鍼は効果があるか
過去の研究データを集めた論文によると、機能性月経困難症に対して、NSAIDsと比べても鍼のほうが痛みが軽くなったという研究結果があります。ただし、この結果は不確かなものと判定されています。また、東洋医学の理論に沿って行われる鍼治療と、鍼治療に似せた偽刺激(ツボではない場所を刺すなど)を比較した研究では、本物の鍼治療と偽の鍼治療で差を確認できないという結果でした。ただし、この結果も不確かなものと判定されています。つまり、現状では鍼に効果があるかどうかははっきりしていません。
指圧は効果があるか
過去の研究データを集めた論文によると、機能性月経困難症に対して、指圧によって痛みが軽くなったという研究結果があります。ただし、この結果は不確かなものと判定されています。また不確かながら、NSAIDsと比べると指圧よりもNSAIDsのほうが痛みが軽くなったとする報告もあります。
その他の体表を刺激する治療は効果があるか
体表から刺激を行う方法としては温熱療法、電気刺激療法などの
参考文献
・Some physiotherapy treatments may relieve menstrual pain in women with primary dysmenorrhea: a systematic review. J Physiother. 2014 Mar;60(1):13-21.
・Acupuncture for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 18;4:CD007854.
6. 月経困難症に効くサプリメントはあるか?
月経困難症に対して栄養成分のサプリメントが何らかの効果を現すという意見もあるのですが、研究データからは確実とは言えないものが多く、誰にでも行われる治療とはなっていません。
ここでは不確かでも有効とするデータがあるものの例をいくつか紹介します。過去の研究報告を集めた論文によると、サプリメントの効果について以下の結果が出ています。
【月経困難症に対するサプリメントの効果の研究】
ビタミン E:データから有効とは確認できない- フェヌグリーク、魚油、ビタミンB1、ショウガ(生姜)、バレリアン、ザタリア、硫酸
亜鉛 :有効とするデータがある - カモミール:NSAIDsよりも効果が大きいとするデータがある
いずれも確かとは言えないものですが、有効とするデータがあるものは何らかの効果を持つ可能性が考えられます。
ただし、サプリメントについてのデータを通常の食事にも当てはめられるとは限りません。たとえば魚油の成分やビタミンB1を含む食べ物は身近にありますが、こうした成分を含む食事について同じように考えてよいかどうかは、上記のような結果からはわかりません。
また一般的な注意として、サプリメントを飲むとしても通常の栄養バランスを崩さないことが前提となります。サプリメントを大量に飲んだり不適切なものを飲んだりすることで害が現れる場合も考えられます。ほかの病気の治療中など心配な点がある場合は特に、サプリメントが自分に合っているかどうかは医師などに相談してください。
7. 月経困難症にヨガは効果があるか?
ヨガについては、機能性月経困難症で痛みを軽くする効果があったとする研究報告があります。
その研究では、18歳から22歳の女性がヨガを行ったところ、その前に比べて痛みの強さと持続期間が改善し、またヨガを行わなかった場合と比べても改善があったという結果が出ています。
この1件だけでは確かとは言えませんが、ヨガに何らかの効果がある可能性があります。
8. 月経困難症にウォーキング・ジョギングは効果があるか?
ヨガ以外の運動では、月経困難症に対してウォーキングとジョギングの効果を試した研究もあります。
ウォーキングとジョギングによる運動療法を週に3回、1回30分行ったところ、月経に関する症状のスコアが軽くなったという結果が出ています。
この1件だけでは確かとは言えませんが、ウォーキング・ジョギングに何らかの効果がある可能性があります。
参考文献
・Brown J, Brown S. Exercise for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Feb 17;(2):CD004142.