いんふるえんざ
インフルエンザ
インフルエンザウイルスに感染することで、高熱やのどの痛み、関節・筋肉の痛みなどが引き起こされる感染症。毎年冬場に流行する
39人の医師がチェック 294回の改訂 最終更新: 2018.02.13

インフルエンザの知識:症状、予防接種、潜伏期間、検査、薬、予防法など

インフルエンザワクチンは毎年打っていますか?流行が始まったら、できるだけ人混みを避け、こまめに手洗いをしてください。病院に行く必要がない場合もかなりあります。

1. インフルエンザの症状は?

インフルエンザの代表的な症状は発熱です。高熱が出ることもあります。

ほかの症状が出ることもあります。予防接種をしている方がかかると微熱程度で済む場合もあります。しばしば見られる症状は次の通りです。

  • 発熱
  • 寒気
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 鼻水
  • 喉の痛み

以下で詳しく説明します。

インフルエンザに発熱以外の前兆や初期症状はある?

インフルエンザは発熱が最初の症状になることが多く、熱が出始めてから1日以内に38度以上に上がることもよく見られます。急激に症状が現れるのが典型的ですが、治るまで症状が軽いままの人もいます。特にワクチンを打っている人では、インフルエンザに特徴的ではない軽い症状が現れることがあります。

インフルエンザA型とB型で症状は違う?

例年インフルエンザA型は12月から1月頃に、B型は2月から3月頃に流行します。A型とB型における症状の差についてはさほど明確なデータはありませんが、B型の方が下痢や吐き気などお腹に関係する症状が出やすいという意見もあります。

風邪とインフルエンザの違いは?

風邪とは鼻や喉など空気の通り道(上気道)にウイルスが感染した状態を指し、急性上気道炎とも呼びます。インフルエンザも上気道にインフルエンザウイルスが感染した状態なので、インフルエンザは風邪に含まれます。つまり、インフルエンザと風邪は同じものということです。

インフルエンザと、インフルエンザウイルス以外による風邪を症状だけで完全に見分けることはできません。大まかな傾向として次のことは言えます。

  • インフルエンザでは38度以上の高熱が出やすい
  • インフルエンザは発症から熱のピークに至るまでの時間が短い
  • 咳、喉の痛み、鼻水など上気道の症状以外に、怠さや筋肉痛、関節痛など全身の症状が出やすい

症状としては上記のようなことが参考になります。実際にインフルエンザを診断する際には、いまインフルエンザが流行しているか、インフルエンザの人と接触があったかも重視されます。

参照文献:Pediatr Infect Dis J. 2015 Oct

子供のインフルエンザは症状が違う?

子供のインフルエンザでは大人のインフルエンザと比較して下記のような特徴があります。

  • 熱が高くなりやすい
  • 下痢や嘔吐など、お腹関係の症状が出やすい
  • 首などのリンパ節の腫れが目立ちやすい

子供の首にグリグリ(リンパ節の腫れ)ができると「がんではないか」と心配になるかもしれませんが、インフルエンザが原因ならばすぐに治るので問題ありません。

参照文献:Pediatr Infect Dis J. 2009 May

2. インフルエンザは怖い?

インフルエンザは健康な成人であれば通常は自然に治る病気です。しかし元々何かしらの持病がある人や高齢者では入院や、稀ではありますが死亡につながることがあります。

インフルエンザに関連する死亡の80-90%は65歳以上の高齢者です。若い人でも、インフルエンザが肺炎急性呼吸窮迫症候群ARDS)といった病状につながって重症化し、命の危険が及ぶ場合もありますが、ごくまれです。高齢者、免疫不全患者、心臓や肺に持病のある人、子どもでは注意が必要と言えるでしょう。呼吸が非常に苦しそうな場合や意識がもうろうとするような場合には、早めの受診をお勧めします。

インフルエンザで肺炎になる?

インフルエンザによって肺炎が起こることがあります。ただし頻度は高くありません。

インフルエンザによる肺炎の原因は以下のように分かれます。

  • インフルエンザの影響を受けて痛んだ肺に、新たに細菌が感染を起こして生じた肺炎細菌性肺炎
  • インフルエンザウイルスそのものによる肺炎(ウイルス性肺炎

細菌性肺炎は特に高齢者に多く、その起炎菌としては、肺炎球菌黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、インフルエンザ桿菌(かんきん)が中心です。非常にややこしいネーミングですが、インフルエンザ桿菌というのはインフルエンザウイルスとは全く別の病原体で、ウイルスではなく細菌に分類されます。

インフルエンザウイルスによるウイルス性肺炎は、頻度は少ないものの重症になる場合が多いことが知られています。

参照文献:JAMA 2013 Jan 16, Emerg Infect Dis 2006 Jun, MMWR 2007 Apr 13

インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザウイルスの感染によって、脳に異常が生じてしまうのがインフルエンザ脳症です。5歳以下の子どもで見られることがありますが、かなりまれな状態です。次のような症状があります。

  • けいれん
  • 意識障害
    • 意識がなくなる
    • 異常行動

NSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる種類の解熱薬は、インフルエンザ脳症のリスクを増やします。以下の薬はNSAIDsの一種です。

  • ジクロフェナク(商品名:ボルタレン、ナボールなど)
  • メフェナム酸(商品名:ポンタール、ルメンタールなど)
  • ロキソプロフェンナトリウム(商品名:ロキソニンSなど)
  • イブプロフェン(商品名:イブA錠、ブルフェンなど)
  • アスピリン(商品名:バファリンA、バイアスピリン、アスピリンなど)
  • サリチルアミド(商品名:PL配合顆粒、ピーエイ配合錠など)

中でもアスピリン(アセチルサリチル酸)などサリチル酸系の解熱薬は、ライ(Reye)症候群と呼ばれる脳症の原因にもなります。したがって、インフルエンザにかかったときは、特に小児ではNSAIDsを避ける必要があります。子どもがインフルエンザになったときには、解熱薬の中でもアセトアミノフェン(商品名:アンヒバ、アルピニー、カロナール、コカールなど)ならば、インフルエンザ脳症やライ症候群を引き起こすリスクが小さいと言われています。

ライ症候群は、インフルエンザ以外に水痘水ぼうそう)などのウイルス感染症でも起こります。ほかの病気の治療でアスピリンを飲んでいる子どもは注意しなくてはなりません。特に川崎病のお子さんは常用薬としてアスピリンを飲む場合も多いので、インフルエンザや水痘にかかった場合はかかりつけの医師に相談してください。

参照文献:Clin Infect Dis 2003 Mar 1

ギラン・バレー症候群とは?

インフルエンザによってギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群が引き起こされることがまれにあります。次のような症状が現れます。

  • 筋力低下
  • 顔面神経麻痺
  • 自律神経の異常
  • 四肢の感覚障害や痛み

完全に回復するケースも多いですが、後遺症が残ったり、心臓や呼吸の異常で亡くなるケースもある難病です。上記の症状に当てはまるような場合には内科を受診しましょう。内科の中では神経内科が専門となります。

子供のインフルエンザでの合併症は?

子供のインフルエンザによる合併症に次のものがあります

通常は子供のインフルエンザも1週間以内に自然に治ります。重い合併症はめったに現れません。万が一、意識がぼんやりしたりおかしな行動を始めたら、早めに病院に連れて行ってください。

参照文献:J Infect Dis 2004 Oct 15, Pediatr Infect Dis J 2009 Jul, J Pediatr 2007 Mar, Pediatrics 2004 Nov, Pediatr Infect Dis J 2006 Nov, Pediatr Infect Dis J 2008 May, Pediatrics 1976 Feb, Pediatr Nephrol 1997 Jun, J Infect Dis 2014 Mar 1, JAMA 2015 Oct 13

子供のインフルエンザは入院になる?

子供がインフルエンザで入院になることはあります。幼い子どもほどインフルエンザで入院が必要になるケースが多く、早産児や免疫不全などもともとの病気がある子どもでは入院率が非常に高くなります。

参照文献:J Pediatr 2010 Nov, Lancet Respir Med 2015 Feb, N Engl J Med 2006 Jul 6

インフルエンザで死亡することはある?

インフルエンザで死亡することはあります。特に高齢者で危険が高くなります。

インフルエンザに伴った肺炎や、持病がインフルエンザに伴って悪化して亡くなるケースが多いです。このようなインフルエンザに関連した死亡を全て合わせると、日本で年間1万人前後の死亡者が出ており、その9割近くが65歳以上の高齢者です。

3. インフルエンザを自己診断するには?

インフルエンザかなと思ったら、次のポイントをチェックしてください。

  • インフルエンザが自分の周囲で、あるいは全国的に流行している
  • 38度以上の高熱がある
  • 寒気、頭痛、関節痛、筋肉痛といったインフルエンザに特徴的な症状のどれかがある

全部に当てはまればインフルエンザの可能性は高いでしょう。ただし自己診断は正確ではありません。当てはまらないインフルエンザもありますし、他の原因でもインフルエンザに似た症状は現れます。

次のような場合はあまり考え込まずに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 息苦しさがある
  • 意識がぼんやりする

インフルエンザを診断する上で最も信頼できるのは、診断に慣れた医師による診察です。外来で行われる簡易検査キットの信頼性はさほど高くありません。症状から見てインフルエンザらしいと判断されれば検査は省略されます。

また、仕事の都合などでインフルエンザの診断書が必要ということであれば、医療機関を受診せざるをえないと思います。本来は家で休んでおけば大半が治る病気の風邪の一種であるインフルエンザに関して、病院を受診して診断書を書いてもらうことを要求するシステムは不合理な面もあるのですが、システム上必要であれば仕方がないでしょう。救急外来などでは診断書は即時発行できず、再度病院に診断書を受け取りに行く必要が出てくるケースも多いことにはご留意ください。

4. インフルエンザの治し方は?

インフルエンザに有効と考えられる治療法を以下に挙げます。

  • 安静にして体力を温存する
  • 水分を十分に摂取する
  • 漢方薬を使う
  • 抗インフルエンザ薬を使う

インフルエンザの対処としては、安静のほうが病院に行くよりも効果的な場合があります。

インフルエンザで解熱薬は使うべき?

解熱薬にインフルエンザを治す効果はありません。熱がつらく、症状を楽にしたいときに解熱薬が役に立ちます。

発熱そのものは悪いことではないので必ずしも解熱薬で熱を下げなければいけないとは言えませんが、熱によって疲弊している場合には解熱薬を使います。

一方で、子供がインフルエンザにかかったときは、解熱薬の一部によって脳症が引き起こされることがあります。解熱薬の中でもNSAIDs(エヌセイズ、非ステロイド性消炎鎮痛薬)と呼ばれる次のような薬は、子供のインフルエンザには使うべきではないでしょう。

  • ジクロフェナク(商品名:ボルタレン、ナボールなど)
  • メフェナム酸(商品名:ポンタール、ルメンタールなど)
  • ロキソプロフェンナトリウム(商品名:ロキソニンSなど)
  • イブプロフェン(商品名:イブA錠、ブルフェンなど)
  • アスピリン(商品名:バファリンA、バイアスピリン、アスピリンなど)
  • サリチルアミド(商品名:PL配合顆粒、ピーエイ配合錠など)

特にアスピリン(アセチルサリチル酸)などサリチル酸系の解熱薬は、ライ(Reye)症候群と呼ばれる脳症の原因にもなります。したがって、インフルエンザにかかったときは、特に小児ではNSAIDsを避ける必要があります。子どもがインフルエンザになったときには、解熱薬の中でもアセトアミノフェン(商品名:アンヒバ、アルピニー、カロナール、コカールなど)ならば、インフルエンザ脳症やライ症候群を引き起こすリスクが小さいと言われています。

解熱剤なしで熱を下げられる?

インフルエンザは基本的に自然に治る病気です。発熱がある期間は数日程度です。

熱くて苦しいときは氷嚢水枕で首のまわりや足の付け根を冷やすと少し楽になるかもしれません。

熱が出て寒気がするときは温かくしてください。

インフルエンザはすぐ病院に行くべき?

インフルエンザは病院に行かなくていい場合が多いです

病院では下記のような抗インフルエンザ薬を処方されたり、点滴されることがあります。

  • オセルタミビル(商品名:タミフル) 内服薬
  • ラニナミビル(商品名:イナビル) 吸入薬
  • ザナミビル(商品名:リレンザ) 吸入薬
  • ペラミビル(商品名:ラピアクタ) 点滴薬

抗インフルエンザ薬は効果が非常に高い薬ではありません。インフルエンザの症状が出始めてから48時間以内に使用すると効果がありますが、その効果は発熱などの症状がある期間を半日から1日程度短くするだけです。発症してから48時間以上経ったインフルエンザを早く治す方法はありません。

冬の混んでいる救急外来に行って、何時間も待って体力を消費するくらいならば、自宅でしっかり休養をとって体力を温存するというのは十分に合理的な選択です。症状が出てから2日以上経っているならばなおさらです。

なお、点滴の抗インフルエンザ薬は、基本的に内服や吸入が難しい患者さんで主に入院中に使用されます。内服薬や吸入薬と比較して効果が優れているということは特にありません。

参照文献:Lancet 2015 May 2

インフルエンザに漢方薬が効く?

インフルエンザに対して麻黄湯(マオウトウ)を使うと、発熱する期間が短くなったという報告があります。麻黄湯を使用することで吐き気、食欲低下、発疹動悸、発汗過多などの副作用が起こることがありえますが、インフルエンザに対して有効な治療と考えられます。市販もされているので、入手しやすいのも利点です。ただし、吐き気や動悸などの副作用を感じた場合には服用を中止して、医師や薬剤師に相談しましょう。

参照文献:J Infect Chemother 2012 Aug

インフルエンザでは水分を取るべき?

インフルエンザによって熱が出たり、食欲がなくなったりすると、体が脱水状態に陥ってしまうことがしばしばあります。脱水状態では体力が落ちて症状もつらく感じるため、水分は意識して小まめに取ってください。ただし、水を飲めば早く治るというわけではありません。

5. インフルエンザの種類とは?

インフルエンザウイルスにも様々なタイプがあります。病院で速やかにできる検査としては、インフルエンザA型とB型を検出する検査があります。以下では、インフルエンザの型について個別に説明します。

インフルエンザA型とB型はどう違う?

病院で使用する検査キットでインフルエンザA型とB型は比較的容易に区別ができますが、対策に大きな差はありません。出やすい症状や、抗インフルエンザ薬の効き具合が多少異なるという意見はありますが、患者さん目線では同じようなものと考えてよいでしょう。

インフルエンザC型とは?

インフルエンザウイルスにはA型とB型のほかにC型もあります。

C型はA型やB型のように激しい症状や流行を起こしません。このためC型インフルエンザウイルスは一般的に重視されません。病院の検査キットはC型ウイルスには対応していません。

インフルエンザH5N1とは?

インフルエンザウイルスA型はウイルスが持つ特徴的な物質によってさらに分類されます。分類に用いられる物質には、赤血球凝集素(H)とノイラミニダーゼの血清型(N)というものがあります。例えばH5N1、H1N1、H3N2、H7N9などの種類があります。H5N1やH7N9は、主に鳥に感染する鳥インフルエンザです。鳥インフルエンザが変異して人にも感染する事例が近年現れています。

鳥インフルエンザとは?

鳥インフルエンザは、もともとヒトに感染せず、鳥の間だけで感染していた種類のインフルエンザです。A型(H5N1)やA型(H7N9)が特に有名です。

人が鳥インフルエンザに感染すると重症になることが分かっています。H5N1は1997年に香港でヒト感染が認められて以降、アジアを中心に患者が発生しています。2015年9月の時点で、ヒトで発症が認められたのが844名、うち449名が亡くなっています。

H7N9は2013年3月、上海で初めてヒトへの感染が報告されました。こちらも同じく重症化しやすく、同様に数十%程度の致死率が報告されています。現時点まで日本国内でのヒト感染はありません。国内の鳥類から鳥インフルエンザウイルスが検出されることはありますが、ヒトに感染する遺伝子変異を持つものは見つかっていません。  

参照文献:N Engl J Med 2005 Jan 27, 厚生労働省「鳥インフルエンザ(H5N1)発生国及び人での確定症例(2003年11月以降)」,  WHO "Human infection with influenza A(H7N9) virus in China", N Engl J Med 2008 Jan 17, Ann Intern Med 2005 Sep 20, J Infect Dis 2015 May 1

鳥インフルエンザを予防するには?

鳥インフルエンザの予防には、流行地域を訪れないようにするのが第一です。

旅行や出張などで海外に行くときには、行き先の感染症情報もチェックするようにしてください。

流行地域では以下のとおり、鳥インフルエンザ感染の原因になる行為を避けてください。

  • 鳥類に直接触れない
    • 生きている鳥、死んでいる鳥、食肉用の鳥を含む
  • 鳥類の糞便や血液などで汚染されているものに直接触れない
  • 鳥類の生肉や、十分に火の通っていない肉を食べない
    • 冷凍や冷蔵の鶏肉でもウイルス量が劇的に少なくなるわけではありません。
    • 鳥肉は安全な製造者から購入してください。
    • 鳥肉は十分に加熱して食べてください。
  • 原因不明の呼吸器症状が出ている人と濃厚接触しない
  • 鳥肉が売られたり屠殺されたりしている市場に行かない

ヒトが鳥インフルエンザウイルスに感染する場合、ウイルスに感染した鳥類(あるいはその死骸)と密に接触することが感染の原因となります。

通常のインフルエンザ感染症のように人から人へ劇的な拡がりを見せることはまだありませんが、数が少ない例として、鳥インフルエンザ感染症 (H5N1) で人から人への感染が強く疑われる(または否定出来ない)例が報告されています。

今後、ウイルスが変異することによって、人から人へ感染が拡がりやすくなるリスクがあります。

参照文献:J Infect Dis 2009 Jun 15, Emerg Infect Dis 2006 Dec, MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2006 Apr 28, N Engl J Med 2005 Jan 27, J Infect Dis 2007 Aug 15, N Engl J Med 2006 Nov 23, N Engl J Med 2014 Feb 6

新型インフルエンザとは?

「新型インフルエンザ」という決まったものはありません。

2009年に流行したH1N1型インフルエンザは当時「新型インフルエンザ」と呼ばれました。当時は新型でしたが、現在は何年かごとに流行するウイルスのひとつになっています。 インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変化しているので、細かく言えば「新型インフルエンザ」は毎年現れています。しかし気を付けることは同じです。  

インフルエンザ菌(インフルエンザ桿菌)はインフルエンザとは関係ない?

インフルエンザ菌(インフルエンザ桿菌)はインフルエンザとは関係ありません。インフルエンザの原因はインフルエンザウイルスです。インフルエンザ菌に紛らわしい名前がついている理由は、インフルエンザ菌が発見された当初、インフルエンザの原因と誤解されたためです。

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)はインフルエンザ桿菌(かんきん)とも言います。桿菌とは顕微鏡で見ると棒のような形をしているという意味です。

インフルエンザ菌は肺炎中耳炎などを起こします。子供にもよく感染します。

予防接種にある「ヒブワクチン」はインフルエンザ菌の一種に対するワクチンです。インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)を略して「Hib」つまり「ヒブ」と呼んでいます。Hibは子供に髄膜炎(ずいまくえん)という重い病気を起こします。しかしインフルエンザの原因ではありません。もちろんHIVとも関係ありません。

6. インフルエンザワクチンは打ったほうがいい?

インフルエンザにはワクチンがあります。

ワクチンは有効ですが、打てば必ずしも安心とは言い切れません。

インフルエンザワクチンの効果は?

インフルエンザワクチンでインフルエンザにかかることをある程度は予防できます

18-64歳の健康成人については、ワクチンによって70-85%程度のインフルエンザ発症を予防できたとする報告があります。子どもや65歳以上の高齢者では予防効果はもう少し低いとする報告が多く、いずれも20-50%程度のインフルエンザ発症を予防できたというような報告が目立ちます。

麻疹はしか)のワクチンなどとは異なり、インフルエンザワクチンによる発症予防率は決して高くありません。しかし、インフルエンザワクチンを接種しておくと、インフルエンザにかかった際の症状が軽くなると考えられています。特に高齢者、免疫不全患者、心臓や肺に持病のある人、子どもはワクチンを打っておくメリットが大きいと言えるでしょう。健康な若い人はインフルエンザにかかっても滅多に重症化しませんが、自分が予防接種を受けておくことでインフルエンザ感染を予防し、インフルエンザにかかると危険な人たちへの感染を間接的に防いであげる効果があります。これを集団免疫と言います。上記に挙げたような、予防接種をしておくべき人と同居している方も、予防接種は打っておくと安心でしょう。

参照文献:JAMA 2000 Oct 4N Engl J Med 1995 Oct 5, Vaccine 2011 Feb 17

インフルエンザワクチンの副作用は?

インフルエンザワクチンの接種後に以下の症状が現れることがあります。

  • 注射した場所の症状
    • 赤く腫れる
    • 熱くなる
    • 痛む
    • かゆい
  • 全身の症状
    • 発熱
    • 寒気
    • 頭痛
    • だるい
  • アナフィラキシーによる症状(まれだが危険)

これらはワクチンの副作用(副反応)と言えます。ほとんどの副作用は数日間で自然に改善します。

アナフィラキシーはインフルエンザワクチンに対する強いアレルギー反応です。アナフィラキシーが現れることはめったにありませんが、他のあらゆる薬と同じように、インフルエンザワクチンに対するアナフィラキシーが起こることもゼロではありません。

参照文献:厚生労働省「新型インフルエンザに関するQ&A」Vaccine 2009 Mar 26  

インフルエンザワクチンを打ってはいけない人は?

以下の方はインフルエンザワクチンを打つことができません。

  • 6ヶ月未満の乳児(免疫がつかず、かつ、過去の経験が十分でないため)
  • インフルエンザワクチンそのもの、もしくはワクチンの成分に対して、命に関わるアレルギー反応をおこした経験のある方

また、以下の方はインフルエンザワクチンを打つ際に、医師に相談する必要があります。ワクチンを接種してはならないということではありませんが、リスクを理解した上で接種すること、接種後の経過観察時間をしっかり確保すること、日を改めて接種することや、場合によっては接種を見合わせることなどを相談します。

  • 卵やワクチンの成分に対してアレルギーのある方(インフルエンザワクチンの精製時に、鶏卵を使用するため)
  • ギラン・バレー症候群をおこした経験のある方
  • 当日に気分の優れない方  

7. インフルエンザの感染力は?

インフルエンザは家族など近くの人からうつります。咳やくしゃみ、唾液などに対策が必要です。症状が始まってから2日間が最も感染力が高い時期です。

家族のインフルエンザはうつる?

インフルエンザの感染経路は空気感染ではありませんので、同じ空間にいるというだけで感染することはありません。しかし、咳やくしゃみを通じた飛沫感染、そして唾液や鼻水などが間接的に手に付着することなどによる接触感染の2つの経路で感染しうる病気です。

したがって、インフルエンザの方、家族の方ともに、以下のような点に気をつけることが望ましいと言えます。

  • こまめに手洗いをする
    • インフルエンザの方は、特に口、鼻、眼周囲を触れた後
    • 同居の方は、食事前や共有物に触れた後 などを中心に
  • タオルや食器の共有は避ける
    • 洗濯、洗浄後であれば可
  • インフルエンザの方は咳エチケットを心掛ける
  • 鼻をかんだティッシュはどこにも置かずにそのまま捨てる

インフルエンザは赤ちゃんにうつる?

インフルエンザは赤ちゃんにもうつります。1歳未満の乳児は体力が弱いので、家族からうつさないよう特に気を付けてください。

症状が出ている家族はできれば赤ちゃんには接触しないでください。接触する必要があれば、手をよく洗うようにしてください。

インフルエンザの感染経路は?

インフルエンザの感染経路は飛沫感染と接触感染です。

インフルエンザウイルスは、気道の粘膜から体内に入ってきます。気道とは、鼻の中、口の中、のど、気管支などの空気が通る部位です。ウイルスの付着した手で口元を触ったり(接触感染)、近くの人がした咳・くしゃみからウイルスを含んだ唾液のしぶきを吸い込んだりすることで(飛沫感染)、インフルエンザの感染が拡大します。

インフルエンザがうつる期間は?

インフルエンザが周囲に感染する期間は、症状の出始めの1日前から7日後までが目安です。感染力が最も強いのは、発症してから24-48時間の間です。 インフルエンザの症状は、ウイルスが体に入ってから数日(平均3日ほど)経った後に出始めます。

学校保健安全法では感染力が強い時期には出席が望ましくないということで、「症状が出てから5日間」かつ「解熱してから2日間(幼児は3日間)」を出席停止期間と定めています。

参照文献:N Engl J Med 2010 Jun 10, Emerg Infect Dis 2010 May, J Infect Dis 2010 May 15, Am J Epidemiol 2010 Jun 1

8. インフルエンザを予防するには?

どのような手法を取っても、感染を100%防ぐことは困難です。しかし、一般的に効果があるとされている対策には、以下があります。

  • インフルエンザワクチンの接種
  • 咳エチケット(咳やくしゃみの際に、口元を覆うこと)、マスクの着用
    • 周囲への感染拡大予防効果があります
  • 手洗い
  • 自宅や職場の加湿
  • 人混みや、感染者が多い箇所(病院など)をなるべく避ける

咳エチケットとは?

自身のインフルエンザを予防するという意味ではありませんが、咳エチケット(咳やくしゃみの際に、口元を覆うこと)は周囲への感染拡大を防ぐために有効です。 自分の手にくしゃみをした後にその手で周囲のものを触ると、そこにウイルスが付着しますので、咳エチケットの後にはできるだけすぐに手を洗うことが勧められます。

マスクでインフルエンザは予防できる?

市販されているマスクではインフルエンザウイルスの侵入を完全に防ぐことは出来ないと考えられます。ウイルスはマスクの生地の穴よりも十分に小さいので、呼吸とともにマスクを越えて出たり入ったりすることができるからです。

N95やN99と呼ばれる特殊なマスクは、ウイルスの侵入を理論上は大幅にカットすることができます。しかし、これらはあくまでも医療者などが短時間作業をする場合を想定して作られたマスクです。これらの特殊なマスクは正しく装着していると息苦しさが強く、日常生活には向きません。また、正しく装着するためには、訓練を受けた人が使い、フィットテストと呼ばれる確認方法をとるべきとされます。

市販のマスクでも、咳やくしゃみなどの飛沫を遮断する効果はあると考えられ、着用が望ましいと思われますが、どの程度の効果があるのかは実は十分に分かっていません。

インフルエンザ予防には手を洗うべき?

ウイルスの接触感染を防ぐために、手洗いは大切です。

たとえば外出したあとや、食事の前(特に手づかみで食べるパンやおにぎりなど)などには手洗いを行うことで、一定の感染リスクを下げることができます。

また、自身の感染を周囲に拡大させないという意味では、咳・くしゃみをする際に口元を覆った後(咳エチケット)、鼻をかんだ後などは、周囲のものに触れる前に手を洗うことが勧められます。鼻をかんだティッシュを机の上に放置するなども好ましくありません。

手を洗う際には石けんを使用して、流水でしっかりと洗うようにしましょう。

またインフルエンザウイルスにはアルコール消毒が有効であるため、アルコールを手に擦り込むことは有効でしょう。

参照文献:Influenza Other Respir Viruses 2013 Sep

インフルエンザの予防薬とは?

インフルエンザの治療に使う薬をあらかじめ飲んでおくことで予防効果も得られます。薬の種類にもよりますが、インフルエンザに対しては70-90%程度の予防効果が報告されています。 ただし、誰にでも勧められる方法ではありません。予防効果は短期的です。また、副作用もありえます。

高齢者や慢性疾患のある人がインフルエンザ感染者と濃厚接触があったときなどで、接触後48時間以内に薬の予防使用が推奨されます。

抗インフルエンザ薬の予防使用では保険が効かないため、全額自己負担(自由診療)になります。また、通常の治療の際とは異なるスケジュールで抗インフルエンザ薬を使うことになる薬もあります。

参照文献:MMWR Recomm Rep 2011 Jan 21

インフルエンザに免疫はつかない?

一度かかっても、2度目以降の感染がありえます。同じシーズンで2回かかることもあります。インフルエンザウイルスには多くの種類があるだけでなく、同じシーズンの中でも細かい変化を続けているため、複数回感染することがあると考えられています。

インフルエンザ予防には湿度を上げるべき?

加湿器を使用するなどして、乾燥を予防することは効果的と思われます。

空気が乾燥しているとウイルスが環境中を漂いやすいなどの理由で、空気乾燥はインフルエンザに感染するリスクと考えられます。湿度をどの程度にすると良いかはわかっていません。一般的に快適とされる湿度40-60%程度を目安としてみてはいかがでしょうか。

9. 今年のインフルエンザの流行情報は?

インフルエンザの流行情報は国立感染症研究所が毎週報告しています。

今年のインフルエンザの症状は?

ウイルスの細かいタイプは毎年変わりますが、インフルエンザの症状としては例年いずれも大差ありません。以下のような一般的なインフルエンザの症状が見られます。

  • 発熱
  • 寒気
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 鼻水
  • 喉の痛み

インフルエンザが流行する時期は?

例年、国内では12月ごろから流行が開始します。流行期間はおおよそ3月まで続きます。

1-2月が流行のピークになることが多いです。

インフルエンザは夏にもかかる?

夏にもインフルエンザは少ないですが発生することがあります。

特に沖縄県では年中インフルエンザが散発しています。東南アジアなど熱帯地域でもインフルエンザ感染者が年中見られます。また、南半球では冬にあたる6-8月にインフルエンザが流行します。

参照文献:J Infect Dis 2012 Sep 15, Curr Opin Infect Dis 2010 Oct

インフルエンザで学級閉鎖になる基準は?

学級閉鎖に基準はありません。学級閉鎖は、学校保健安全法第20条に基づいています。

(臨時休業)第二十条  学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。

条文で「学校の全部又は一部の休業」とされているのが学級閉鎖にあたります。法令で学級閉鎖の基準は決められていません。

自治体によって、あるいは学校によって、インフルエンザによる欠席者数などに独自の基準を決めている場合もあります。学級閉鎖の見通しについてはそれぞれの学校に問い合わせてください。

10. インフルエンザの潜伏期間は?

潜伏期間とは、すでに感染しているが症状が出ていない期間のことです。

インフルエンザの潜伏期間は一般的には1-4日の範囲です。平均をとると数日程度とされています。 小児や免疫不全状態の方で、特に初めての感染の場合には、これよりも潜伏期間が長くなる傾向があります。

感染力は強くありませんが、潜伏期間中にほかの人にうつることもあります。インフルエンザの症状が出現する(発症する)1日前からすでに、周囲に対する感染力があることも知られています。

参照文献:Lancet 1999 Oct 9, Epidemiology 2009 May

11. インフルエンザかもしれないと思ったら何科を受診するとと良いのか?

インフルエンザは多くの病院やクリニックで診てもらえます。小児科か内科が比較的適しています。このサイトで小児科の病院・クリニック一般内科の病院・クリニックを検索できます。診てもらえるか心配な場合には、受診前に問い合わせておくと安心でしょう。

ただし、本当に受診が必要な状況なのかどうかは再考してみてもよいと思います。もともと特に病気のない若年成人であれば、インフルエンザであっても病院を受診するメリットはさほどありません。

インフルエンザはほとんどのケースで自然に治癒するウイルス感染症です。抗インフルエンザ薬は特効薬ではありません。インフルエンザの症状が出始めてから48時間以内に使用すると効果がありますが、その効果は発熱などの症状がある期間を半日から1日程度短くするだけです。発症から48時間以上経ったインフルエンザを早く治す方法はありません。

冬の混んでいる救急外来に行って、何時間も待って体力を消費するくらいならば、自宅でしっかり休養をとって体力を温存するというのは十分に合理的な選択です。症状が出てから2日以上経っているならばなおさらです。

12. インフルエンザの検査で何がわかる?

インフルエンザの検査キットは、鼻の中の粘液を採取してインフルエンザ感染を判定するためのものです。その日のうちに結果がわかります。しかし、信頼性が高くないので診断に必須ではありません。

インフルエンザの検査が間違う確率は?

検査キットの感度は60-70%前後です。つまり、本当はインフルエンザに感染しているのに見逃してしまう場合が30%以上の割合で発生します。

研究では次の数字が報告されています。

  • 本当はインフルエンザなのに陰性が出る割合:37.7%(感度62.3%)
  • 本当はインフルエンザではないのに陽性が出る割合:1.8%(特異度98.2%)

また、インフルエンザの発症初期ではさらに検査の感度が低下することが分かっています。そのため、発症から12時間(より確実には24時間)以上経過してから検査を行うのが一つの目安となっています。

「インフルエンザの検査キットで陰性だったので、また明日再検査」ということを考える方もいるかもしれませんが、ほとんどのケースでこれはナンセンスです。本当にインフルエンザでなかったならば、冬の混んでいる外来に2度も通って完全な無駄足ですし、むしろそこでインフルエンザをもらってきてしまうかもしれません。仮に本当にインフルエンザだったとしても、インフルエンザの治療薬は発症してから遅くとも48時間以内には使用しないと意味がないので、翌日に再検査をしてから抗インフルエンザ薬を使っても遅いということも多いです。さらに、治療の項でも説明していますが、発症後早期に使ったとしても抗インフルエンザ薬は決して特効薬ではなく、効果は限定的です。

現在の世間一般での認識、日本の医療の現状として、インフルエンザ検査キットと抗インフルエンザ薬を過信している傾向があるのは否めません。若くて健康な方であれば、大して精度の高くない検査キットで陽性を出すことや、特効薬でもない抗インフルエンザ薬を使用することに執着せず、家でしっかり休養をとることは十分に合理的な判断なのです。

参照文献:Ann Intern Med 2012 Apr 3

インフルエンザの検査は痛い?

検査の際には、綿棒のような形をした棒を、片方の鼻の穴から挿入します。かなり細いものではありますが、鼻の穴の一番深い部分まで入れますので少し痛いです。一番奥の部分で5-10秒程度かけて拭い取ってから回収し、それを検査に出します。 鼻の浅いところの鼻水をとってくるだけでは、もともと高くはない検査精度がさらに下がるとされています。検体の採取後の処理が始まってしまえば、そこから結果が出るまでは15分程度です。

検査なしでインフルエンザを診断できる?

すでにインフルエンザが流行しており、また、急な発熱と咳などがあってインフルエンザが強く疑われる場合には、検査キットを使わないで診断される場合があります。これには以下のような理由があります。

  • 検査キットの正確性が高くない
    • 検査キットはインフルエンザの3割以上を見逃します。症状や経過からインフルエンザが強く疑われる場合には、検査キットを使って陰性の結果が出ても、検査キットの見逃しと考えてどのみちインフルエンザと診断するので、検査をする意味がありません
  • 検査の時間や費用がかかる
    • 検査を行うことで院内にいる時間が増えます。すると、待合室にいる患者さんの間で互いに病気をうつしあうリスクにもなります。費用もかかります
  • 流行の程度と症状から推測できる
    • 診断に慣れている医師であれば、検査キットよりも信頼度の高い診断ができる場合も多いです

最近では、後咽頭(喉の奥)に生じるリンパ濾胞と呼ばれる数ミリ程度のつぶつぶがインフルエンザに特徴的であるという意見も見られています。このリンパ濾胞は赤く変色したつぶつぶなので通称「いくらサイン」と呼ばれたりします。

13. インフルエンザに病院でできる治療は?

医療機関でのインフルエンザの治療には、インフルエンザウイルスに対する薬(抗インフルエンザ薬)などがあります。オセルタミビル(商品名:タミフル)などがインフルエンザウイルスに有効です。ウイルスではなく、細菌に効く薬である抗菌薬抗生物質)はインフルエンザには効きません。

インフルエンザで会社や学校は休むべき?いつまで?

学校保健安全法では、インフルエンザにかかった子供は次のすべてを満たすまで出席停止と決めています。

  • 発症から5日が経過
  • 解熱してから2日が経過(幼児の場合には3日)

出席停止は、周囲への感染を防ぐことが目的です。

学校ではなく職場においては、それぞれの出勤可能基準を設けている会社についてはそれに従い、そうでなければ上述の学校保健安全法の考え方に従うことは妥当と考えられます。大人も同じ日数でよいと考えられます。一方で、もっと早く出勤しても良いのではという海外の判断基準も見られており、現段階では確定的な基準はありません。  

インフルエンザは治癒証明をもらうべき?

会社や学校からインフルエンザの治癒証明書を求められたときは、病院が対応に困る場合があります。あらかじめ電話などで相談してから病院に行ったほうがいいかもしれません。

インフルエンザが完全に治癒したことを証明するのは、医学的には困難です。

インフルエンザの検査キットは、インフルエンザが治癒してもしばらく陽性になります。したがって、検査キットではインフルエンザの治癒を判断することはできません

病院によっては治癒証明書を出しているところも無いわけではありませんが、厚生労働省は次のような見解を表明しています。

労働者に対し治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることについては、インフルエンザの陰性を証明することは一般に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける結果になることから、望ましくありません。

このように、会社や学校が治癒証明書の提出を求めることは本来適切ではありません。インフルエンザを発症してから5日が経過し、かつ解熱して2日が経過しているならば、証明書などを要求せずに治癒したとみなすのが妥当です。

参照文献:「新型インフルエンザ(A_H1N1)に関する事業者・職場のQ&A」  

インフルエンザの薬は効く?

抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスに対する薬です。次のものがよく使われています。

  • オセルタミビル(商品名:タミフル)
    • 内服薬、1日2回を5日間
  • ザナミビル(商品名:リレンザ)
    • 吸入薬、1日2回を5日間
  • ラニナミビル(商品名:イナビル)
    • 吸入薬、1日1回を1日間
  • ペラミビル(商品名:ラピアクタ)
    • 点滴薬

発症後48時間以内に使用すれば、抗インフルエンザ薬はインフルエンザによる症状が出る期間を半日から1日程度短くします。また、ウイルスを排出する期間(周囲への感染力をもつ期間)も短くするとされています。

どの薬が他の薬よりも「強くて効果的だ」ということは、点滴製剤を含めても、明らかに認められている差はありません。  したがって、負担と手間のかかる点滴薬は、内服や吸入が難しい患者さんや、重症の入院患者さんにおいてのみ使われることが一般的です。

参照文献:Clin Infect Dis 2010 Nov 15, Antivir Ther 2014 Oct 15, BMJ 2014 Apr 9

インフルエンザの薬が効かない場合には理由がある?

抗インフルエンザ薬は、ウイルスを殺す薬ではなく、ウイルスの増殖を防ぐ薬です。発症から48時間以上が経過して、すでにウイルスにが大量に増殖してしまったあとでは十分な効果が期待できないとされています。

また、薬が効かないインフルエンザウイルスもいます。薬剤耐性ウイルスと言います。

オセルタミビルに耐性をもったウイルスや、ザナミビルに耐性をもったウイルスがこれまでに確認されています。耐性ウイルスはA型、B型両方のインフルエンザウイルスで報告されています。

参照文献:Clin Infect Dis 2011 Feb 15, JAMA 2007 Apr 4, J Clin Virol 2008 Jan, J Infect Dis 2013 Mar 15, J Infect Dis 2014 Oct 15, Pediatr Infect Dis J 2011 Apr

インフルエンザは薬を使わなくてもいい?

生来健康な成人では抗インフルエンザ薬を用いなくても良いです。しんどいときに解熱薬(カロナール)を用いることで別に問題はありません。また、特に重い症状がなく、以下に当てはまる場合には抗インフルエンザ薬の効果が認められない(もしくは、あっても少ない)ことから、使用を避けるべきと考えられます。

  • 症状が回復傾向にある場合
  • 発症から48時間以上が経過している場合

参照文献:MMWR Recomm Rep 2011 Jan 21

インフルエンザの薬は吸入のほうが効く?

内服薬と吸入薬の効果は同等であることが研究によって示されています。

ただし、それは、正しく薬を使用した場合です。吸入薬の中には1回きりの使用で十分に効果を発揮するものもあって、それはメリットでもあるのですが、正しく吸入することができないと効果は半減してしまいます。

深く息を吐いてから大きく吸入し、そして吸入し切ったところでしばらく呼吸を止めるようにします。吸入ボタンを押すタイミングと深呼吸がずれると効果がありませんし、吸入薬も1回分が無駄になってしまいます。特にむせ込みやすい方や、あるいは深呼吸が上手に行える自信のない方は、飲み薬の方をおすすめします。

インフルエンザの薬は点滴のほうが効く?

点滴の抗インフルエンザ薬は飲み薬よりも効果が強いというわけではありません。また、インフルエンザの内服薬や吸入薬が使用できない人に限定して用いられるべきとされています。

タミフルの副作用で飛び降りる?

薬を飲まなくてもインフルエンザは飛び降りなどの異常行動を起こすことがあります。副作用があるかないかに関わらず、インフルエンザにかかった子供は異常行動を起こさないかに注意して見守るべきです。

以前、オセルタミビル(商品名:タミフル)を内服後に高所から飛び降りてしまった若年者の例が広く報道されました。しかし、これらの事例が副作用によるものかははっきりしていません。

タミフルが精神症状を増やすかどうかについては、研究者の間でも意見が分かれています。タミフルによって一定割合で異常行動などの精神症状が出るとする報告も確かに存在します。

さまざまな意見を考慮した結果、薬の説明書にあたる添付文書には「合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除く10歳以上の未成年は、原則として本剤の使用を差し控える」と記載されています。

副作用の有無にかかわらず、「タミフルを飲まなければ異常行動は起きない」という考えは間違っています。また、タミフル以外の抗インフルエンザ薬ならば安全だというわけでもありません。

参照文献:Cochrane Database Syst Rev 2014 Apr 10

インフルエンザに抗生物質は効く?

インフルエンザには抗生物質は効きません。抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は細菌に対する薬です。細菌とウイルスはまったく違います。インフルエンザの原因はウイルスなので、抗生物質は効きません。