はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位。
29人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2018.07.12

肺扁平上皮がんの抗がん剤治療とは?

肺がんの約20%ほどが肺扁平上皮がんです。肺扁平上皮がんの治療で成績が一番良いのは手術です。手術ができない場合の治療や、手術後に加える治療として、抗がん剤を使う化学療法があります。使われる薬の特徴や選び方について説明します。

1. 肺扁平上皮がんの治療にはどんな抗がん剤を使う?

肺扁平上皮がんに対する化学療法で使える薬は、肺腺がんに比べると種類が限られます。以下が主なものになります。

  • プラチナ系抗がん剤
    • シスプラチン
    • カルボプラチン
    • ネダプラチン
  • 第3世代抗がん剤
    • パクリタキセル
    • ナブパクリタキセル
    • ドセタキセル(±ラムシルマブ)
    • ビノレルビン
    • イリノテカン
    • S-1
  • 免疫チェックポイント阻害薬
    • ニボルマブ
    • ペムブロリズマブ

これらの薬を使い分けていくことになります。薬を選ぶときに以下のことは必ず考えなければなりません。

  • 全身の状態
  • がんの進行状況
  • 薬を使うことで予想される副作用の認容性(どのくらい身体が副作用に耐えられるのか)

これらを総合的に考えて最も適した治療薬を選択します。

分子標的薬の中でもEGFR-TKIやALK-TKIと呼ばれる薬は、がん細胞が特定の遺伝子を持っているときに使える薬です。肺扁平上皮がんではEGFR遺伝子変異やEML4-ALK融合遺伝子が存在しないことが多く、それらをターゲットとした薬は使用できないことがほとんどです。

2. プラチナ系抗がん剤(プラチナ製剤)

プラチナ系抗がん剤は、細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の分裂を止め、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導する抗がん剤です。

薬剤の化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むためプラチナ製剤と呼ばれます。

シスプラチン(CDDP)(商品名:ランダ®、ブリプラチン®など)やカルボプラチン(CBDCA)(商品名:パラプラチン®など)、ネダプラチン(NDPまたはCDGP)(商品名:アクプラ®)といった薬があり、病態や年齢などによって適する薬剤が選択されます。

肺がん治療においては扁平上皮がんを含む非小細胞肺がん、小細胞肺がんの両方で使用されることがあり、他の抗がん剤(第3世代抗がん剤など)と併用して使われることも多い薬です。

特にシスプラチンは多くのレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)で使われる薬剤です。例として、シスプラチンと一緒にトポイソメラーゼ阻害薬のイリノテカン(CPT-11)を使う方法をPI療法と言います。同じように、タキサン系微小管阻害薬のドセタキセル(DTX)をシスプラチンと一緒に使うCD療法などがあります。

カルボプラチンもシスプラチンに匹敵する抗腫瘍活性を持つ薬剤です。カルボプラチンも他の抗がん剤と組み合わせて使わることが多く微小管阻害薬のパクリタキセルとのCP療法などがあります。

ネダプラチンも肺がん治療で使われる場合があるプラチナ製剤です。進行もしくは再発の扁平上皮がんに対してドセタキセルとの併用療法が有効であったという報告もあり治療の選択肢になっています。
 

プラチナ製剤で注意すべき副作用に腎障害(急性腎障害など)、骨髄抑制、末梢神経障害、胃腸障害、血栓塞栓症などがあります。その他、難聴・耳鳴り、しゃっくりなどがあらわれることもあります。カルボプラチンはシスプラチンに比べて腎毒性や胃腸障害などの軽減が期待できます。病態などにもよりますが高齢者などに対してシスプラチンの代わりとしてカルボプラチンが使われることもあります。

ネダプラチンもシスプラチンに比べて腎毒性などの軽減ができる薬です。ただし骨髄抑制には注意が必要で、特に血小板減少などは遅れて比較的強くあらわれる傾向もあるため、休薬期間であっても出血傾向や感染症などには十分注意が必要となります。

治療中に水分を摂る量が減ると腎障害の増悪などがおこる可能性があります。医師から治療中の具体的な水分摂取量が指示された場合はしっかりと守ることも大切です。

3. 第3世代抗がん剤

非小細胞肺がんに対する抗がん剤治療の歴史は第1世代抗がん剤による治療からはじまり、現在では分子標的薬を含む第4世代抗がん剤に至ります。

扁平上皮がんの治療で使われるパクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、アムルビシン、S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)は第3世代の抗がん剤に分類される薬です。肺がん治療においては第3世代抗がん剤を単剤で行う化学療法やプラチナ製剤であるシスプラチンやカルボプラチン、ネダプラチンとの併用療法などが行われています。

微小管阻害薬(タキサン系、ビンカアルカロイド系など)

細胞分裂に必要な微小管(びしょうかん)というタンパク質の合成を阻害することによりがん細胞の増殖を抑えやがて死滅させることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。

微小管阻害薬はいくつかの種類に分けられますが、パクリタキセル(PTX)、ナブパクリタキセル(nab-PTX)、ドセタキセル(DTX)などはタキサン系、ビノレルビン(VNR)などはビンカアルカロイド系と呼ばれる種類に属します。詳しくは、「肺がんの抗がん剤治療にはどんな薬を使う?」で解説しています。

副作用として、骨髄抑制などは共通して注意すべきとされます。ほかにもパクリタキセルやナブパクリタキセルやドセタキセルでは末梢神経障害や過敏症、ビノレルビンでの血管刺激性など、個々で特に注意が必要となる症状もあります。

代謝拮抗薬

細胞分裂に必要なDNA合成の過程を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。

扁平上皮がんで使われるゲムシタビン(GEM)、S-1はピリミジン塩基というDNA構成成分に類似した物質を主成分とする薬です。DNA合成阻害などにより抗腫瘍効果をあらわします。

ゲムシタビンはDNA鎖の中に取り込まれることによって細胞の自滅(アポトーシス)を誘発させる作用などによって抗腫瘍効果をあらわします。

ゲムシタビンは扁平上皮がんなどの非小細胞肺がん以外にも膵がん卵巣がん胆道がん乳がん膀胱がんといった多くのがんに保険適用を持つ抗がん剤です。

S-1はピリミジン系の成分であるフルオロウラシル(5-FU)に体内で変換されるテガフールという成分を中心として、他にギメラシル、オテラシルカリウムという3種類の成分からできている配合剤です。細胞増殖に必要なDNAの合成阻害作用やRNAの機能障害作用により抗腫瘍効果をあらわします。

S-1の効果の中心はテガフールによる抗腫瘍効果です。他の2種類の成分がテガフールを補助する役割を果たします。ギメラシルはテガフールの体内で変換された物質である5-FUの効果を高めます。オテラシルカリウムは5-FUの主な副作用である消化器症状(消化管粘膜障害)を軽減する作用をあらわします。

S-1は元々、胃がんの抗がん剤として承認を受け、頭頸部がん、大腸がん、肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん膵がんといったがんに対して追加承認されました。

代謝拮抗薬では骨髄抑制、間質性肺炎肝機能障害、消化器障害などに注意が必要です。

またS-1における色素沈着(皮膚や爪などが黒くなる)などの個々の薬剤ごとで注意すべき副作用もあります。

ペメトレキセドは扁平上皮がんには使えない?

肺がん治療で使われる代謝拮抗薬の一つにペメトレキセド(PEM)(商品名:アリムタ®)という薬があります。ペメトレキセドはDNA合成に必要な葉酸(ようさん)の代謝酵素を阻害することでDNA合成を阻害し抗腫瘍効果をあらわします。

ペメトレキセドの保険適用は悪性胸膜中皮腫と切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)となっていて、肺がんに対して高い効果が得られるとされている抗がん剤の一つです。ただし、臨床試験(第三相試験)などの結果から、扁平上皮がんには十分な効果が得られないことが確認され、現在の国内の肺がん診療ガイドラインでは、扁平上皮がんの治療においてはペメトレキセドの使用は推奨されていません。

トポイソメラーゼ阻害薬

トポイソメラーゼ阻害薬は、細胞分裂が進まないようにする作用により、がん細胞の増殖を阻止することでがん細胞を殺す細胞障害性抗がん剤です。

細胞の増殖は細胞分裂によっておこります。細胞分裂に必要なトポイソメラーゼという酵素があります。トポイソメラーゼ阻害薬はトポイソメラーゼを阻害することで細胞分裂を途中段階で阻害し、抗腫瘍効果をあらわします。

イリノテカン(CPT-11)(商品名:カンプト®、トポテシン®など)は扁平上皮がんなどの非小細胞肺がん以外にも小細胞肺がん、胃がん大腸がんなどの治療で使われる場合があります。

イリノテカンは骨髄抑制、間質性肺炎などの他、特に下痢に対しての注意が必要です。イリノテカンの下痢は薬剤の投与中から直後であらわれる早発性の下痢と投与から数日経ってあらわれる遅発性の下痢の2種類があります。それぞれ下痢に合わせた対処が必要となります。イリノテカンによる下痢は「肺がんの抗がん剤治療にはどんな薬を使う?」でも解説しています。

アムルビシン(抗がん性抗生物質)

扁平上皮がんなどの非小細胞肺がんや小細胞肺がんの治療で使われる場合があるアムルビシン(AMR)(商品名:カルセド®)は抗がん性抗生物質(あるいは抗腫瘍性抗生物質など)と呼ばれ、土壌などに含まれる微生物を由来とした製剤です。「抗生物質」という名前がついていますが、細菌感染症に使われる抗生物質(抗菌薬)とは違う物質です。

アムルビシンはアントラサイクリン系という抗がん性抗生物質に分類されます。がん細胞の増殖に必要なDNAの切断作用やがん細胞などにダメージを与えるラジカル産生作用によって抗腫瘍効果をあらわします。

アムルビシンによる治療は通常、抗がん剤としては単独投与で行われ、吐き気のリスクが中等度(中等度催吐性リスク)になるため、吐き気止め(5-HT3受容体拮抗薬)及び副腎皮質ホルモンなどの併用が推奨されています。

またアムルビシンは投与中(点滴中)に血管痛や血管炎が生じる場合があり注意が必要です。また薬液が血管外へ漏出した際、注射部位に硬結や炎症などがあらわれる場合もあります。

他にも骨髄抑制、間質性肺炎、心筋障害、消化器障害、脱毛などに注意が必要です。

4. 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)

抗がん剤としての分子標的薬はがん細胞の増殖などに関わる特定分子を狙い撃ちにすることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。分子標的薬は肺がん治療においても第4世代の抗がん剤として、分子標的薬のEGFR-TKIやALK-TKI(ALK阻害薬)などが治療の選択肢になっています。

ニボルマブ(商品名:オプジーボ®)、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ®)は分子標的薬の中でも、特定分子に結合するモノクローナル抗体という種類の薬です。

本来体内には、がん細胞などを異物として攻撃するリンパ球T細胞という免疫機能があります。

しかし、がん細胞は自らPD-1リガンドという物質を作り出し、リンパ球T細胞の表面にあるPD-1という受容体に結合させることで、リンパ球の活性化を抑えてしまいます。これにより、がん細胞は免疫反応から回避でき、がん細胞の増殖が行われてしまいます。

ニボルマブは世界初のPD-1に対するモノクローナル抗体です。ニボルマブはPD-1とPD-1リガンドとの結合を阻害し、がん細胞により不応答となっていた抗原特異的T細胞を回復・活性化することで抗腫瘍効果をあらわします。

ニボルマブは日本ではまず2013年に悪性黒色腫に対する抗がん剤として承認されました。次いで2015年には一部の肺がん(切除不能な進行・再発非小細胞肺がん)に対しても保険適用が認められました。また、2016年には腎細胞がんの保険適用も認められました。

ニボルマブは、抗がん剤の中でも高額な薬価(発売当初はオプジーボ点滴静注100mgにおける1瓶の薬価が約73万円)で注目を集め、公的医療保険財政への影響を懸念する声が相次ぎました。こうした背景もあり、2017年2月以降は半額の100mg1瓶あたり約36万5,000円に引き下げられましたが、それでも体重60kgの患者さんに1年間投与を続ければ年間1,800万円という巨額の薬価になるという事実は変わりません。

ニボルマブで注意したい副作用には間質性肺炎甲状腺機能障害、肝機能障害、下痢、1型糖尿病などがあります。またインフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。インフュージョンリアクションの危険性や頻度が高いとされる薬剤を使うときには、解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬などを抗がん剤の前に投与する前投与が行われています。

またニボルマブの使用中は免疫機能が活性化しているため、ワクチン接種を行った際に過度な免疫反応が現れる可能性があります。他にも発疹やかゆみなどの皮膚障害や胃腸障害などにも注意が必要です。

ニボルマブを投与後に、効果があるにもかかわらず腫瘍が大きくなっているようにみえること(Non-conventional response, あるいはPseudo-progression)があります。これはニボルマブによって活性化したリンパ球が腫瘍周囲に集まることで起こる考えられています。そのため、ニボルマブを使ってから腫瘍が大きくなった場合は、薬が効いていない場合と、上記のnon-conventional responseの両方を考慮する必要がありますが、ほとんどの場合は薬が効いていないケースなので、non-conventional responseを期待しすぎて、効いていないニボルマブを漫然と投与し続けるのは避けたいものです。

新しい種類の薬で、値段の高さからもニュースなどでよく取り上げられた薬ですが、決して夢のような薬ではないということには注意が必要です。確かにいったん効き始めると長期間腫瘍の勢いを止めてくれることがあるのですが、そもそも効く人の割合はその他の一般的な抗がん剤と比べて決して勝っているとは言い難い面もあります。

5. 肺扁平上皮がんに放射線療法は行うのか?

肺扁平上皮がんは一般に放射線療法が効きにくいとされます。しかし、状況によって、放射線療法をすることで十分なメリットがあると判断された場合には放射線療法が行われます。

放射線療法には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は直進する性質がありますので、放射線の通り道にある前後の細胞にもどうしても放射線が当たってしまうのです。

正常な細胞になるべく放射線を当てないために、サイバーナイフ治療という方法が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞に当たる放射線を分散させることができます。

サイバーナイフ治療は動くものを狙うことが苦手です。以前は呼吸によって動く肺はサイバーナイフ治療の対象外となっていました。しかし、近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療を行うことができるようになってきています。

6. 扁平上皮がんの治療にも「EGFR」や「ALK」は重要?

近年分子標的薬という薬が開発されています。分子標的薬とは、特定の分子を持った細胞を選んで攻撃する薬です。特に肺がんの治療に使われているのが、EGFR-TKI(EFGRチロシンキナーゼ阻害薬)とALK-TKI(ALKチロシンキナーゼ阻害薬)です。

EGFR-TKIはEGFR遺伝子変異を、ALK-TKIはEML4-ALK融合遺伝子を標的にします。

  • EGFR-TKI
    • ゲフィチニブ
    • エルロチニブ
    • アファチニブ
    • オシメルチニブ
  • ALK-TKI
    • クリゾチニブ
    • アレクチニブ
    • セリチニブ

すでにこれらの薬が発売されており、今後も数が増えていく可能性が高いです。しかし、これらの薬は扁平上皮がんではあまり使用されません。

EGFR遺伝子変異

実は全ての肺がんがEGFR遺伝子の変異を持っているわけではありません。遺伝子解析の一つの報告があるのでご紹介します。

【EGFR遺伝子変異の発現率】

  • 人種による違い
    • 東洋人:32%
    • 非東洋人:7%
  • 性別による違い
    • 男性:10%
    • 女性:38%
  • 喫煙による違い
    • 喫煙者:7%
    • 非喫煙者:47%
  • がんの組織型による違い
    • 腺がん:30%
    • 腺がん以外:2%

まとめると、EGFR遺伝子変異は、東洋人でタバコを吸わない女性の腺がんに多いということになります。腺がん以外の肺がんのほとんどは扁平上皮がんですので、扁平上皮がんの2%程度しかEGFR融合遺伝子は現れないことがわかります。そのため、扁平上皮がんは普通EGFR-TKI以外の薬で治療します。EGFR遺伝子変異を調べないで治療を始めます。

EML4-ALK融合遺伝子

肺がんにEML4-ALK融合遺伝子が存在する場合は、ALK-TKIが使用できます。様々な分析によって、ALK融合遺伝子は若くてタバコを吸っていない腺がん患者に出現しやすいことが分かっています。

しかし、ALK融合遺伝子がある肺がんはごくわずかです。腺がんの中でおよそ5%程度にしかALK融合遺伝子は存在していないことがわかっています。扁平上皮がんでも数%程度です。そのため、基本的に扁平上皮がんではALK融合遺伝子を調べないで、ALK-TKI以外で治療していくことになります。

遺伝子検査は腺がんにしか行わないのか?

EGFR遺伝子変異も、EML4-ALK融合遺伝子も、組織検査などによって肺がんの種類が腺がんと確定した上で検査できれば無駄のない検査になります。しかし、実際には組織検査で小さい組織しか採れなかったなどの理由で、種類をはっきり確定できないこともあります。

そのような場合は、腺がんかそうでないかを問わず、EGFR遺伝子変異とEML4-ALK融合遺伝子の検査をしても良いとされています。

7. 肺扁平上皮がんのステージ別の治療法は?

肺扁平上皮がんの治療はステージによって選択肢が変わってきます。以下にステージごとに説明していきます。

肺扁平上皮がんのステージ1-2の手術療法(外科的治療)

手術が最も成績の良い治療になりますので、手術可能であれば手術を行うことになります。

とはいえ、肺を手術で切り取ると手術後の呼吸機能への影響は大きいです。そこで、腫瘍が2cm以下の場合や2-3cmでもリンパ節転移がない場合は、縮小手術といって小さく切り取ることも検討される場合があります。

手術をするとどれだけ生きられるかは、統計から平均値が出ています。ステージⅠ・Ⅱ期全体の5年生存割合は69.6%です。細かくみると以下のようになります。

(以前のステージ分類でのデータですが、現在のものと概ね同じと考えて良いでしょう)

【ステージごとの5年生存率

ステージ 5年生存率
ⅠA期 82.0%
ⅠB期 66.1%
ⅡA期 54.5%
ⅡB期 46.1%

ステージが進行すればするほど治癒率が下がってしまいます。そのため、手術後に化学療法を行う場合があります。

ステージ1期の術後化学療法

たいていの場合、手術後からテガフール・ウラシル配合剤(UFT)を飲むことになります。(ⅠA期では飲まないことがあります。)飲む期間は1年間か2年間です。2年間のほうが治療効果が高いという報告があるので、副作用に問題がなければ手術後から2年間飲むほうが良いでしょう。ただし扁平上皮がんでは腺がんよりもUFT内服の意義が薄い可能性も指摘されており、他にも超高齢者では飲んで体力を落とすデメリットのほうが大きいと判断されることもあります。したがって、実際にUFTを飲むべきかどうかというのはケースバイケースになります。

ステージ2期の術後化学療法

ステージⅡ期の肺がんを手術した後に化学療法を行う方が成績が良いとされています。手術後の化学療法にはシスプラチンという抗がん剤を含めた2種類の抗がん剤を点滴します。特にシスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)は治療成績が良いので、よく使われます。

シスプラチンを含めた化学療法は3-4週ごとに基本的に4回行います。

ステージ1・2で手術ができない場合の治療

体力の問題や呼吸機能の問題などで手術ができない場合は放射線療法を検討します。放射線療法により肺がんを根絶させることを目指します。

肺扁平上皮がんのステージ3の手術療法(外科的治療)

手術ができる限り手術で治療することになります。ステージⅢA期では手術が検討できますが、もう少し進行したⅢB期やⅢC期では手術を行うことはできません。

手術を行う場合も、手術前に化学療法(抗がん剤)か化学放射線療法(抗がん剤+放射線療法)を行うことがあります。腫瘍をできるだけ小さくしてから切除するのが狙いです。化学療法か化学放射線療法を行った後に手術をしたほうが治療成績が良いという報告もあります。

手術のみの治療と手術前に治療を加える治療を比較したものが下の表になります。

【治療法ごとの5年生存率】

治療法 5年生存率
手術のみ 30.0%
術前治療をしてから手術 38.0%

生存率だけを比べれば、手術前に化学療法や化学放射線療法を行う方が良いと言えます。一方、副作用による身体への負担は増します。そのため体調とがんの勢いを見ながら治療法を決定します。

ステージ3期の術後化学療法

手術後に化学療法を行う場合にはシスプラチンという抗がん剤を含めた2種類の抗がん剤を点滴します。特にシスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)は治療成績が良いので、よく使われます。

シスプラチンを含めた化学療法は3-4週ごとに4回を基本として行います。

ステージ3で手術ができない場合の治療

腫瘍の進展の問題や呼吸機能の問題などで手術ができない場合は、化学療法と放射線療法を行います。化学療法は色々なものを使いますが、多く使われるのは次のものです。

  1.  カルボプラチン(CBDCA)単独
  2.  シスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)
  3.  カルボプラチン+パクリタキセル(CBDCA+PTX)
  4.  シスプラチン+ドセタキセル(CDDP+DTX)
  5.  シスプラチン+S-1 (CDDP+S-1)

また、体調や全身状態から化学療法が使えない場合は放射線療法を単独で行います。この場合の放射線療法は週に5回の治療を6週間ほど続けることが多いです。

肺扁平上皮がんのステージ4の治療

ステージⅣは、肺がんのある側の肺以外に転移がある状態です。ステージⅣになると基本的には治癒を目指した手術をすることはできません。しかし、化学療法を行うと生存率が改善することがわかっています。そこで化学療法を行うことは多いです。使用される薬は、プラチナ製剤と呼ばれるものと第3世代抗がん薬と呼ばれるものです。近年は免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬も有力であることが分かってきています。

  • プラチナ系抗がん剤(白金製剤)
    • シスプラチン(ブリプラチン®など)
    • カルボプラチン(カルボプラチン®など)
    • ネダプラチン(アクプラ®)
  • 第3世代抗がん剤
    • パクリタキセル(タキソール®など)
    • ナブパクリタキセル(アブラキサン)
    • ドセタキセル(タキソテール®など)±ラムシルマブ
    • ビノレルビン(ナベルビン®)
    • イリノテカン(カンプト®など)
    • S-1(ティーエスワン®)

免疫チェックポイント阻害薬としてはニボルマブ(オプジーボ®)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)が2017年4月現在使用できます。ガン細胞のうち50%以上がPD-1リガンドという物質を出しているような腫瘍の場合には、最初に使う抗がん剤としてペムブロリズマブが推奨されています。

薬を選ぶために、全身の状態を評価する必要があります。PS(Performance Status、パフォーマンスステータス)という方法が使われます。PSは0-4の5段階で評価されます。0が最も良く4が最も衰弱した状態です。

【PS】

0:全く問題なく日常生活ができる

1:軽度の症状があり激しい活動は難しいが、歩行可能で、軽作業や座って行う作業はできる

2:歩行可能で自分の身のまわりのことは全て行えて日中の50%以上はベッド外で過ごすが、時に軽度の介助を要することがある

3:自分の身のまわりのことは限られた範囲しか行えず、日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす

4:自分の身のまわりのことは全くできず、完全にベッドか椅子で過ごす

それでは実際にどういった治療をしていくのかを解説していきます。

まだ抗がん剤を受けたことがない、初回治療のケースを考えていきましょう。

■PS 0-1、75歳未満

年齢が若い方では、体力が許せばプラチナ製剤を含んだ複数の抗がん剤を使って治療することができます。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • シスプラチン+ドセタキセル
    • シスプラチン+S-1
    • シスプラチン+ゲムシタビン
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
    • ネダプラチン+ドセタキセル

体調と副作用を考え合わせて、これらの中から最も適した抗がん剤を選びます。

■PS 0-1、75歳以上

75歳以上で全身状態が良い人の治療についてです。年齢よりも身体の状態が重要視されるので、PS 0-1であれば治療法の選択肢は多く残されています。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
    • ドセタキセル

年齢が高い方は抗がん剤の合併症が出てしまうことが多いので、治療中は特に慎重に体調管理する必要があります。

■PS 2

ときに軽度の介助を要するくらい、若干全身状態の悪い患者さんの初回治療です。状態のやや悪めの患者さんなので慎重に治療を選択する必要があります。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
    • ドセタキセル
    • ビノレルビン
    • パクリタキセル
    • ゲムシタビン

■PS 3-4

PSが3や4の人は抗がん剤を投与することで全身状態が悪化することが予想されます。ステージⅣの肺扁平上皮がんで、PS3か4になると積極的な治療はできません。緩和治療が中心になります。「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」をあわせてご覧ください。

参照文献

Int J Cancer. 2002 May 10