はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位。
29人の医師がチェック 227回の改訂 最終更新: 2018.07.12

肺腺がんの治療に使う抗がん剤はどんな薬?

肺腺がんは肺がんの中で最も多いがんです。肺がんの半数前後が肺腺がんです。肺がんの種類は非常に重要で、種類によって性質が大きく違います。このページでは肺腺がんに対する化学療法抗がん剤治療)を中心に説明していきます。

1. 肺腺がんとは?

肺がんの中で肺腺がんは最も多く、約半数を占めています。腺がんとは、体の臓器にある分泌腺にできたがんのことです。肺腺がんは肺の分泌腺に出現したがんのことを指します。

肺腺がんの原因、症状、検査について詳しくは「肺腺がんとは?原因、症状、検査、治療について」のページをご覧ください。

2. 肺腺がんの原因は?

肺腺がんになりやすくなる原因はいくつか考えられています。

タバコは肺腺がんにも悪影響を与えます。報告によって数値は多少違いますが、喫煙することで男性の肺腺がんは約2.8倍になり、女性の肺腺がんは約2.0倍になると考えられています。

タバコの煙には発がん物質が入っているので、がんを予防したい人も治療をしている人も、禁煙することが重要です。

また、受動喫煙も肺がんへの悪影響(発がん率が1.3倍になる)が言われています。

ほかにも次のような原因が知られています。

  • 大気汚染物質
  • アスベスト
  • 女性ホルモン
  • 慢性肺疾患
  • 肺結核

ただ、これらのどれにも当てはまらない人でも肺腺がんは珍しくありません。タバコなどはあくまで原因の一部で、ほかの原因はまだわからない部分が多く残っています。

3. 肺腺がんの検査について

肺腺がんは、症状が出てきたときには進行していることが多いです。そのため、検査によって早くその存在を見つけることが重要になってきます。

肺腺がんを診断するためには主に以下の検査が使われます。

  • 胸部X線検査(肺レントゲン写真)
  • 胸部CT検査
  • 頭部MRI検査
  • PET検査
  • 肺腺がんの腫瘍マーカー
  • 細胞診
  • 組織診

なかでも組織診断が最も確実な検査です。

4. 肺腺がんが進行するとどんな症状が出る?

肺腺がんは症状が出にくい?

肺がんは進行するまで症状が出にくい病気ですが、中でも肺腺がんは症状が出にくいことが多いです。

というのも、肺腺がんは他の肺がんよりも肺の端っこ(末梢側)にできることが多いです。肺の中心部に肺がんがある場合は、空気の通り道の太い部分(中枢側)に影響をおよぼすことが多く、空気を吸いづらかったり咳が出やすかったりします。しかし、肺の端っこにがんができると、かなり大きくなるまで症状が出ない場合が多いのです。

肺腺がんが進行すると下記のような症状が出ます。

  • 咳(咳嗽)
  • 痰(喀痰)
  • 血痰
  • 発熱
  • 息苦しさ(呼吸困難感)
  • 全身倦怠感
  • 体重減少
  • 胸痛

肺腺がんの患者さんでこれらの症状が強くなってくる場合は、肺腺がんが進行している可能性が考えられます。治療法を変更したり緩和治療を強化したりする方が良いかもしれませんので、あまり我慢はしないでかかりつけの医師に相談してください。

5. 肺腺がんの治療は手術?

肺がんの治療には、3大治療法として手術療法(外科的治療)・化学療法(抗がん剤)・放射線療法があります。肺腺がんに対しては、その中でも化学療法と放射線療法は効きにくいことが分かっています。

肺がんの病期(進行度)にあわせて、この3つの治療法から最も適切な治療法を選択することになりますが、中でも手術療法が最も治療成功率が高いため、手術が可能な状態であれば手術が行われることが多いです。

ただし、手術は身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くない状態になる場合もあります。手術を行えるかどうかは慎重に判断する必要があるのです。

6. 手術を受けられない状況ってなに?

手術をすると逆に命を縮めてしまう場合は手術ができません。

以下の場合は手術ができません。

  • 肺以外に遠隔転移のある場合
  • リンパ節転移が遠いところにまで達している場合
  • 手術後に残る肺が非常に少ない場合
  • 腫瘍が周囲の臓器に及んでいて一緒に切除できない場合
  • 体力のない場合
  • 間質性肺炎のある場合

7. 手術ができなかったらどうする?抗がん剤?放射線療法?

手術を行えない場合は、化学療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、化学療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。

肺腺がんに対する放射線療法

肺腺がんは放射線療法が比較的効きにくいことがわかっていますが、全身の状態などから考えて十分メリットがあると判断された場合には放射線療法が行われます。

肺腺がんに対する化学療法

肺がんに対する化学療法は大きくわけて3種類あります。

  • 細胞傷害性抗がん薬
    • プラチナ系抗がん剤(白金製剤)
      • シスプラチン(ブリプラチン®など)
      • カルボプラチン(カルボプラチン®など)
      • ネダプラチン(アクプラ®)
    • 第3世代抗がん剤
      • パクリタキセル(タキソール®など)
      • ドセタキセル(タキソテール®など)
      • ペメトレキセド(アリムタ®)
      • ビノレルビン(ナベルビン®)
      • ゲムシタビン(ジェムザール®など)
      • イリノテカン(カンプト®、トポテシン®など)
      • アムルビシン(カルセド®)
      • S-1(ティーエスワン®など)
  • 分子標的薬
    • EGFR遺伝子に変異のある場合に使う薬(EGFR-TKI)
      • ゲフィチニブ(イレッサ®)
      • エルロチニブ(タルセバ®)
      • アファチニブ(ジオトリフ®)
      • オシメルチニブ(タグリッソ®)
    • EML4-ALK融合遺伝子のある場合に使う薬(ALK-TKI)
      • クリゾチニブ(ザーコリ®)
      • アレクチニブ(アレセンサ®)
      • セリチニブ(ジカディア®)
    • 抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を用いた薬(免疫チェックポイント阻害薬)
      • ニボルマブ(オプジーボ®)
      • ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
      • アテゾリズマブ(テセントリク®)
    • 抗VEGF抗体を用いた薬
      • ベバシズマブ(アバスチン®)
      • ラムシルマブ(サイラムザ®)

これらの多くの薬は状況を見ながら使い分けていくことになります。

特に以下のことは必ず考えなければなりません。

  • 全身の状態
  • がんの進行状況
  • 薬を使うことで予想される副作用の認容性(どのくらい身体が副作用に耐えられるのか)
  • がんの持っている遺伝子の状況

特に分子標的薬は色々な方向から研究が進んでおり日進月歩です。しかし、現状ではがんの患者さんの余命を著しく改善するには至っていません。

また、副作用が出にくいように工夫はされているとはいえ、副作用はあります。

しっかりと主治医と相談し、納得した上で治療方針を決めることが必要になります。

8. 肺腺がんに抗がん剤は効く?

肺腺がんにおける化学療法には手術後の術後化学療法、病期(ステージ)III期における放射線療法との併用、IV期における化学療法などがあります。

主に使われる抗がん剤は次のように分類されるものです。

  • 細胞傷害性抗がん薬
    • プラチナ製剤
    • 第3世代抗がん剤
  • 分子標的薬

全身の状態、がんの進行状態、抗がん剤の副作用に身体がどのくらい耐えられるか、がんの持つ遺伝子の状態などを考慮して、より有効と期待しやすい抗がん剤治療が考慮されます。

プラチナ製剤(プラチナ系抗がん剤)

プラチナ製剤は、細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の分裂を止め、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導する抗がん剤です。

薬剤の化学構造中にプラチナ(白金:Pt)を含むためプラチナ製剤と呼ばれます。

プラチナ製剤に分類される抗がん剤として、シスプラチン(CDDP)(商品名:ランダ®、ブリプラチン®など)やカルボプラチン(CBDCA)(商品名:パラプラチン®など)、ネダプラチン(CDGP)(商品名:アクプラ®)といった薬があります。病態や年齢などによって適する薬剤が選択されます。

プラチナ製剤は、肺がん治療においては肺腺がんを含む非小細胞肺がん、小細胞肺がんの両方で使用されることがあり、他の抗がん剤と併用して使われることも多い薬です。

特にシスプラチンは多くのレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)で使われる薬剤です。例として、シスプラチンと一緒にトポイソメラーゼ阻害薬のイリノテカン(CPT-11)を使う化学療法を「PI療法」と呼びます。ほかにもタキサン系微小管阻害薬のドセタキセル(DTX)とシスプラチンを使うCD療法などがあります。

カルボプラチンもシスプラチンに匹敵する抗腫瘍活性を持つ薬剤です。シスプラチンと同じように、カルボプラチンも他の抗がん剤と組み合わせて使うことが多く、トポイソメラーゼ阻害薬のパクリタキセルとを併用するCP療法などがあります。

プラチナ製剤で注意すべき副作用に腎障害(急性腎障害など)、骨髄抑制、末梢神経障害、胃腸障害、血栓塞栓症などがあります。その他、難聴・耳鳴り、しゃっくりなどが現れることもあります。カルボプラチンはシスプラチンに比べて腎毒性や胃腸障害などの軽減が期待できますが、血小板減少を中心とした血球減少が起こることが多いです。病態などにもよりますが高齢者などに対してシスプラチンの代わりとしてカルボプラチンが使われることもあります。

治療中に水分を摂る量が減ると腎障害が悪化するなどの可能性があります。医師から治療中の水分摂取量を指示された場合はしっかりと守ってください。

微小管阻害薬(第3世代抗がん剤)

微小管阻害薬は、細胞分裂に必要な微小管(びしょうかん)というタンパク質の合成を阻害することによりがん細胞の増殖を抑えやがて死滅させることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。

微小管阻害薬はいくつかの種類に分けられます。そのうち、パクリタキセル(PTX)(商品名:タキソール®など)やナブパクリタキセル(nab-PTX)(商品名:アブラキサン®)やドセタキセル(DTX)(商品名:タキソテール®、ワンタキテール®など)などはタキサン系、ビノレルビン(VNR)(商品名:ナベルビン®、ロゼウス®)などはビンカアルカロイド系と呼ばれます。

肺腺がんを含む非小細胞肺がんの治療ではドセタキセルやビノレルビンにほかの抗がん剤は加えず使う場合も考えられます。あるいは、ドセタキセルやビノレルビンと同時にプラチナ製剤を使う併用療法が行われることもあります。例としてパクリタキセルとカルボプラチンの併用、ドキタキセルとシスプラチン、ビノレルビンとシスプラチンの併用療法などのレジメンがあります。

注意すべき副作用として、骨髄抑制などが共通しているほか、パクリタキセルやナブパクリタキセルやドセタキセルでは末梢神経障害や過敏症、ビノレルビンでは血管刺激性など、個々で特に注意が必要とする症状もあります。

ペメトレキセド(第3世代抗がん剤)

ペメトレキセド(PEM)(商品名:アリムタ®)は葉酸代謝拮抗薬と呼ばれる抗がん剤です。細胞の増殖には遺伝情報を持つDNA合成が必要ですが、葉酸代謝拮抗薬はDNA合成に必要な葉酸(ようさん)の代謝酵素を阻害することでDNA合成を阻害し抗腫瘍効果をあらわします。非小細胞肺がんであれば肺腺がんや大細胞がんに対して効果が期待できます。葉酸代謝拮抗薬は、単剤(ほかの抗がん剤を併用しない方法)やシスプラチンなどのプラチナ製剤との併用で使われています。

ペメトレキセドは葉酸代謝酵素を複数阻害することで高い抗腫瘍効果をあらわします。その一方で、体に必要な葉酸やビタミンB12の不足を招く可能性があります。そのため副作用の軽減を目的として葉酸(通常、パンビタン®末を内服)とビタミンB12製剤の筋注を併用します。

副作用として骨髄抑制、間質性肺炎、皮膚障害、腎障害、神経障害、消化器障害(食欲不振、口内炎、下痢など)などに注意が必要です。

またペメトレキセドを単剤で使用した場合の吐き気のリスクは軽度ですが、特にシスプラチンと併用する場合には吐き気のリスクが高度となるため、制吐薬などをあらかじめ使うことが必要になってきます。

ピリミジン系代謝拮抗薬(第3世代抗がん剤)

ゲムシタビン(GEM)(商品名:ジェムザール®など)やテガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤(以後、S-1)(商品名:ティーエスワン®など)といったピリミジン系代謝拮抗薬は、ピリミジン塩基というDNAの成分に類似した構造を持つ物質を主成分とし、DNA合成阻害作用などにより抗腫瘍効果をあらわす抗がん剤です。

ゲムシタビンは肺腺がんを含む非小細肺がんに対して単剤(ほかの抗がん剤の併用なし)でも使われるほか、シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチナ製剤との併用療法でも使われます。

ゲムシタビンは肺がん(非小細胞肺がん)以外にも膵がん卵巣がん胆道がん乳がん膀胱がんといった多くのがんに保険適用を持つ抗がん剤です。

注意すべき副作用は、骨髄抑制、間質性肺炎、胃腸症状(吐き気、食欲不振など)、肝機能障害などです。また点滴時間が長くなると副作用(骨髄抑制など)の増強がおこる可能性があるため、点滴時間を可能な限り30分程度にするなどの対処がとられます。

S-1はピリミジン系の代謝拮抗薬であるフルオロウラシル(5-FU)に体内で変換されるテガフールという成分を中心として、他にギメラシル、オテラシルカリウムという3種類の成分からできている配合剤で、細胞増殖に必要なDNA合成阻害作用やRNA機能障害作用により抗腫瘍効果を発揮します。

効果の中心はテガフールによる抗腫瘍効果です。他の2種類の成分がテガフールを補助する役割を果たします。ギメラシルはテガフールの体内で変換された物質である5-FUの効果を高めます。オテラシルカリウムは5-FUの主な副作用である消化器症状(消化管粘膜障害)を軽減させます。

S-1は元々、胃がんの抗がん剤として承認を受け、頭頸部がん、大腸がん、肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん膵がんといったがんに対して追加承認されました。

腺がんを含む肺がん治療ではS-1とシスプラチン(CDDP)などのプラチナ製剤との併用療法などが行われています。

副作用としては、オテラシルカリウムによって負担が軽減されているとはいえ、食欲不振、吐き気、下痢、口内炎などの消化器症状には注意が必要です。他に骨髄抑制、肝機能障害、間質性肺炎などにも注意が必要です。また、皮膚や爪などが黒くなる色素沈着や流涙(涙管が狭まり涙があふれ出る)といった症状が現れる場合もあります。

トポイソメラーゼ阻害薬(第3世代抗がん剤)

トポイソメラーゼ阻害薬は、細胞分裂が進まないようにする作用により、がん細胞の増殖を阻止することでがん細胞を殺す細胞障害性抗がん剤です。

細胞の増殖は細胞分裂によっておこります。細胞分裂に必要なトポイソメラーゼという酵素があります。

肺腺がんなどの非小細胞肺がんで使われるイリノテカン(CPT-11)(商品名:カンプト®、トポテシン®など)は、トポイソメラーゼを阻害することで細胞分裂を途中段階で阻害し、抗腫瘍効果をあらわします。プラチナ製剤のシスプラチンとの併用療法などが治療の選択肢になっています。

イリノテカンは非小細胞肺がん以外にも小細胞肺がんなどの治療で使われる場合があります。

イリノテカンの副作用として、骨髄抑制、間質性肺炎などの他、特に下痢に対しての注意が必要です。イリノテカンの下痢は、薬剤の投与中から直後にかけて現れる早発性の下痢と、投与から数日経って現れる遅発性の下痢の2種類があります。それぞれ下痢に合わせた対処が必要となります。イリノテカンによる下痢は「肺がんの抗がん剤治療にはどんな薬を使う?」でも解説しています。

分子標的薬

抗がん剤としての分子標的薬はがん細胞の増殖などに関わる特定分子を狙い撃ちにすることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。

肺腺がんを含む非小細胞肺がんの治療で使われる分子標的薬は、EGFR-TKI、ALK-TKIと呼ばれる種類の薬やベバシズマブ、ラムシルマブ、ニボルマブといった薬です。EGFR-TKIやALK-TKIが使えるかどうか(効果が期待できるかどうか)は、特にがんの持つ遺伝子の状態に左右されます。

EGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)

EGFR-TKIは、EGFRチロシンキナーゼという物質を阻害します。EGFRチロシンキナーゼは、がん細胞の増殖に関わる物質です。EGFR-TKIはEGFRチロシンキナーゼを阻害することによりがん細胞の増殖能を低下させます。

EGFRの遺伝子に変異が確認された(EGFR遺伝子変異陽性)肺腺がんなどの非小細胞肺がんで使われます。

現在(2017年4月)、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ®)、エルロチニブ(商品名:タルセバ®)、アファチニブ(商品名:ジオトリフ®)といった薬が使われています。

EGFR-TKIを使うためには、非小細胞肺がんにおけるEGFR遺伝子の変異が確認されているなど、いくつかの条件が付きます。EGFR-TKIが使える場合では第3世代抗がん剤などより優先してEGFR-TKIを使うことが多くなります。

ゲフィチニブなどのEGFR-TKIによる治療を行っていく上で問題となる点に、治療への抵抗性(耐性)があります。がんが変化してEGFR-TKIが効かなくなってしまうということです。T790M変異という遺伝子変異が原因で耐性ができている場合にはオシメルチニブ(商品名:タグリッソ®)というEGFR-TKIが治療の選択肢となります。

EGFR-TKIはいずれも内服薬(飲み薬)です。多くの場合でほかの抗がん剤を同時に使うことなく単剤で治療できるところもメリットと言えます。一方で薬剤によっては、食事の有無や内容、胃内の酸(胃酸)濃度などによって薬の吸収が変化する可能性があります。

例えば、ゲフィチニブやエルロチニブは胃酸の産生を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害薬)H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)といった薬剤との併用に注意が必要です。

またエルロチニブの服用は通常「食事の1時間以上前または食後2時間以降」に行うことになっています。特に高脂肪・高カロリー食(一般的に、1食あたり1000kcal程)を食べた直後に服用すると、AUC(体内の薬物量)が増加することが報告されています。

似たようなケースですが、アファチニブの服用は通常「空腹時」(原則、食事の1時間以上前または食後3時間以降)に行います。こちらはエルロチニブとは逆に食後間もなく服用することでAUC(体内の薬物量)などが低下することが考えられます。

EGFR-TKIの副作用としては間質性肺炎、下痢などの消化器症状、皮膚障害、肝機能障害などに注意が必要です。下痢(重度な下痢)に対して止瀉薬(下痢止め)を携帯するなど、症状に合わせた対処が必要になる場合もあります。

ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)阻害薬(ALK-TKI)

肺腺がんなどの非小細胞肺がんにおいて、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)という細胞増殖のシグナル伝達に関わる物質の異常がみられる場合があります。ALK遺伝子の転座という現象により、ALKが他の遺伝子と融合することで、この物質に内在するチロシンキナーゼが常に活性化してしまい、がん細胞の増殖が引き起こされます。

ALK-TKIはALKやALK融合タンパク質のチロシンキナーゼを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬です。主にステージ(病期)IVの非小細胞肺がんにおいて使われます。

2012年にクリゾチニブ(商品名:ザーコリ®)、2014年にアレクチニブ(商品名:アレセンサ®)が承認されました。

ただこれらの薬に対して効果不十分であったり、一旦効果があったものの薬に対して耐性ができることで増悪する症例も少なくありません。セリチニブ(商品名:ジカディア®)はクリゾチニブが効かなくなった場合に使用できるALK阻害薬として2016年に承認されました。

ALK阻害薬の副作用としては間質性肺炎、肝機能障害、血液障害(好中球減少症など)、血栓塞栓症、消化器障害(吐き気、下痢、便秘など)、神経障害などがあります。

また薬剤によって頻度などは異なりますが、視力低下や霧視などの視覚異常が現れる可能性から、自動車の運転など危険を伴う操作には十分な注意が必要となります。

ニボルマブ(オプジーボ®)(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)

本来体内には、がん細胞などを異物として攻撃するリンパ球T細胞という免疫機能があります。しかし、がん細胞は自らPD-1リガンドという物質を作り出し、リンパ球T細胞の表面にあるPD-1という受容体に結合させることで、リンパ球の活性化を抑えてしまいます。これにより、がん細胞は免疫反応から回避でき、がん細胞の増殖が行われてしまいます。

ニボルマブ(商品名:オプジーボ®)は世界初のPD-1に対するモノクローナル抗体です。ニボルマブがPD-1とPD-1リガンドとの結合を阻害し、がん細胞により不応答となっていた抗原特異的T細胞を回復・活性化することで抗腫瘍効果をあらわします。

ニボルマブは日本ではまず2013年に悪性黒色腫に対する抗がん剤として承認されました。次いで2015年には一部の肺がん(切除不能な進行・再発非小細胞肺がん)に対しても保険適用が認められました。また、2016年には腎細胞がんの保険適用も認められました。

ニボルマブは、抗がん剤の中でも高額な薬価(発売当初はオプジーボ点滴静注100mgにおける1瓶の薬価が約73万円)で注目を集め、公的医療保険財政への影響を懸念する声が相次ぎました。こうした背景もあり、2017年2月以降は半額の100mg1瓶あたり約36万5,000円に引き下げられましたが、それでも体重60kgの患者さんに1年間投与を続ければ年間1,800万円という巨額の薬価になるという事実は変わりません。

ニボルマブで注意したい副作用には間質性肺炎甲状腺機能障害、肝機能障害、下痢、1型糖尿病などがあります。またインフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。インフュージョンリアクションの危険性や頻度が高いとされる薬剤を使うときには、解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬などを抗がん剤の前に投与する前投与が行われています。

またニボルマブの使用中は免疫機能が活性化しているため、ワクチン接種を行った際に過度な免疫反応が現れる可能性があります。他にも発疹やかゆみなどの皮膚障害や胃腸障害などにも注意が必要です。

ニボルマブを投与後に、効果があるにもかかわらず腫瘍が大きくなっているようにみえること(Non-conventional response, あるいはPseudo-progression)があります。これはニボルマブによって活性化したリンパ球が腫瘍周囲に集まることで起こると考えられています。そのため、ニボルマブを使ってから腫瘍が大きくなった場合は、薬が効いていない場合と、上記のnon-conventional responseの両方を考慮する必要がありますが、ほとんどの場合は薬が効いていないケースなので、non-conventional responseを期待しすぎて、効いていないニボルマブを漫然と投与し続けるのは避けたいものです。

新しい種類の薬で、値段の高さからもニュースなどでよく取り上げられた薬ですが、決して夢のような薬ではないということには注意が必要です。確かにいったん効き始めると長期間腫瘍の勢いを止めてくれることがあるのですが、そもそも効く人の割合はその他の一般的な抗がん剤と比べて決して勝っているとは言い難い面もあります。

ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)

2017年2月に保険適応となった薬で、肺がん領域ではニボルマブの次に承認された免疫チェックポイント阻害薬です。作用や副作用は概ねニボルマブと同様と考えられていますが、薬の投与間隔や、体重に依る用量調整などの点でニボルマブと違いがあります。また大きな違いとして、ニボルマブでは既に他の抗がん剤が投与されていることが使用の必要条件となっていますが、ペムブロリズマブでは細胞のうち50%以上がPD-1リガンドを出しているという条件を満たせば、初めて抗がん剤を使う患者さんでも使用可という適応上の違いがあります。

薬価の面では、一般的な体格の患者さんに使うぶんにはニボルマブとほぼ同額です。しかし、ニボルマブは体重に比例した投与量、ペムブロリズマブは体格に依らない固定量を使用するため、その点で薬価に差が出てくることはあります。

アテゾリズマブ(テセントリク®)(改変型抗PD-L1モノクローナル抗体)

ニボルマブやペムブロリズマブと似た作用を持っていますが、これらPD-1を標的とした薬剤ではなく、PD-1リガンドを標的とした薬剤である点で注目されています。海外では既に使用されている薬剤で、日本でも2017年2月に保険適応の審査が始まっており、今後広く使用されることが期待されています。

ベバシズマブ(アバスチン®)(抗VEGF〔血管内皮増殖因子〕ヒト化モノクローナル抗体)

がん細胞が増殖するには、がんに栄養を送るため新しく血管をつくる必要があります。この作用を血管新生と言います。血管新生や血管内皮の増殖に関わる物質が血管内皮増殖因子(VEGF)です。ベバシズマブ(商品名:アバスチン®)はVEGFと特異的に結合することでがん細胞増殖に必要な血管新生を抑制することなどにより、抗腫瘍効果をあらわします。

肺腺がんの治療ではプラチナ製剤と第3世代抗がん剤の併用療法、あるいはエルロチニブにベバシズマブを加えた治療法などがあります。胸水脳浮腫の改善効果がある可能性も示されており、その効果に期待して使用されるケースもあります。

副作用として血栓塞栓症、高血圧、出血(血痰、粘膜からの出血など)、消化器障害(消化管穿孔など)、タンパク尿、創傷治癒遅延(傷が治りにくくなる)、骨髄抑制(特に他の抗がん剤との併用時)などに注意が必要です。

またインフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。

ベバシズマブは体内で薬物が代謝される時間が比較的長い(血中半減期が約2週間から3週間)こともあり、一度の投与によって現れた有害事象が1ヶ月あまり続く場合も考えられます。日々の血圧測定喀血吐血の有無、腹痛や胸痛の有無、呼吸の状態など日常生活の中での変化を見逃さないようにすることも大切です。

ラムシルマブ(サイラムザ®) (ヒト型抗VEGFR-2モノクローナル抗体)

ベバシズマブと類似した作用、副作用があるとされています。肺がんに対しては基本的にドセタキセルとの併用で用いられます。

9. 肺腺がんで抗がん剤と一緒に使う薬

抗がん剤による化学療法には抗がん剤以外の薬も一緒に使われる場合があります。

例えば、一般的に吐き気のリスクが高いシスプラチンなどの抗がん剤には前もって制吐薬などの前投与が考慮されます。ここでは主に肺腺がんの治療における抗がん剤と一緒に使う抗がん剤以外の薬についてみていきます。

吐き気のリスクが高い抗がん剤への制吐薬など

吐き気は多くの抗がん剤によって現れる副作用の一つです。

そのリスクは抗がん剤によっても程度が分かれ、それぞれの抗がん剤(及び抗がん剤の組み合わせ)によって制吐薬(吐き気止め)などの併用が考慮されます。

肺腺がんを含め肺がん治療の多くのレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)で使われるシスプラチンは高度催吐性リスクに分類されます。つまり、抗がん剤の中でも吐き気が現れやすい薬の一つです。そのため、シスプラチンの点滴投与の前には通常、5‐HT3受容体拮抗薬NK1受容体拮抗薬副腎皮質ホルモン(デキサメタゾンなど)といった3種類の薬剤の投与が考慮されます。( 抗がん剤と吐き気に関しては「肺がんの抗がん剤治療にはどんな薬を使う?」で詳しく解説しています。)また抗がん剤点滴の翌日くらいから数日に渡り現れる遅延性の吐き気に対してもNK1受容体拮抗薬や副腎皮質ホルモンを中心とした対処が行われます。

カルボプラチンやイリノテカンといった薬剤は一般的に中等度催吐性リスクの抗がん剤に分類され、吐き気のリスクが高度ほどでないにしろ、吐き気止めの使用が考慮されます。

特に肺がん治療でみられる複数の抗がん剤の併用療法では個々あるいは片方の抗がん剤の吐き気のリスクがそこまででなくても、抗がん剤の組み合わせによって吐き気のリスクが高度となることもあり、それぞれの治療に合わせて吐き気止めの使用が考慮されています。例えば、第3世代抗がん剤のペメトレキセド自体は吐き気のリスクが比較的軽度ですが、シスプラチンと併用する場合には高度となるため、吐き気止めの使用が考慮されます。

近年では、NK1受容体拮抗薬に代表される新しい吐き気止めの開発、心理状態が大きく関与する予期性の吐き気に対する抗不安薬の使用、胸やけなどを伴う吐き気に対する胃酸抑制薬(PPI、H2受容体拮抗薬)などにより、かなりの割合で抗がん剤による吐き気がコントロールできるようになっています。

ペメトレキセドとビタミン剤

抗がん剤によっては、その薬剤特有ともいうべき副作用が現れる場合があります。肺がん治療で使われるペメトレキセドによる治療ではいくつかのビタミンが不足するため、そのビタミンを補うことで副作用を軽減する方法がとられます。

ペメトレキセドは葉酸代謝酵素を複数阻害することで高い抗腫瘍効果をあらわす薬ですがその一方で、正常な臓器にとっても必要な葉酸やビタミンB12の不足を招く可能性があります。

そのため副作用の軽減を目的として葉酸とビタミンB12製剤の筋注を併用します。

葉酸を含む製剤に関してはいくつかありますが、通常パンビタン末(調剤用パンビタン末) という散剤が使われます。パンビタン末は葉酸の他にもビタミンA、ビタミンB群など多くのビタミンを含むため、食欲低下などによって不足がちになるビタミンの補給ということに関しても一役買えるといえます。ペメトレキセドによる治療を行う場合では通常、ペメトレキセド初回投与の1週間くらい前からパンビタン末を1日1g毎日継続します。

パンビタン末にはビタミンB12も含まれていますが、含まれている量が非常に少ないこともあり、ビタミンB12に関してはパンビタン末とは別に筋肉内注射による補充が主になります。ペメトレキセド初回投与の少なくとも1週間前に1回投与(筋注)し、その後は9週間ごとに1回投与(筋注)していきます。

モノクロナール抗体とインフュージョンリアクションへの対策

モノクロナール抗体は特定物質に結合する抗体として免疫細胞などから造られた物質で、薬剤としては分子標的薬の一つになります。

肺がん治療で使われる分子標的薬の中でも、ニボルマブラムシルマブなどといった薬剤がモノクロナール抗体に含まれます。

モノクロナール抗体では薬剤による過敏症としてインフュージョンリアクション(急性輸注反応)という症状が現れる可能性があります。これは薬剤投与による免疫反応などによりおこる有害事象の総称です。代表的な症状として皮膚のかゆみ、発疹、発熱、悪寒、頭痛、咳嗽、血管浮腫などがあり、場合によってはアナフィラキシー様症状、呼吸困難、気管支痙攣、血圧低下、意識障害などの重篤な症状を引き起こす可能性もあります。

これらの症状が現れる仕組みはまだハッキリとは明らかにされていなく、起こる頻度などが薬剤によっても異なります。

これらの症状に対処するために、あらかじめ解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬などの薬剤を前投与することで、症状の軽減や重篤化の防止などへの配慮がされています。またこれらの薬剤を併用するだけでなく、モノクロナール抗体の投与開始直後から30分程、投与速度を上げてから30分程などは化学療法チームのスタッフが特に注意して経過観察を行います。その後も特に投与開始から24時間以内の経過観察に関してしっかりとした注意喚起が促されるなど、リスク軽減のための配慮が行われています。

その他の薬

以上で解説した以外にも抗がん剤と一緒に使っていく薬は症状などに応じて様々です。

浮腫に対しては利尿剤の併用、パクリタキセルやドセタキセルなどタキサン系薬剤でおこりやすい便秘に対しては下剤の併用、逆にイリノテカンなどの薬剤による下痢には止瀉薬(下痢止め)や漢方薬などを併用することで対処します。

パクリタキセルの点滴にはアルコールが含まれています。このため、アルコールに過敏な体質の人は注意が必要です。

モノクロナール抗体でなくても薬剤によるアレルギー症状を考慮して抗ヒスタミン薬の予防投与を行う場合もありますし、ベバシズマブのように高血圧症状が現れやすい場合には症状に応じてARBACE阻害薬などの降圧薬の併用が考慮されます。

また味覚障害が現れた場合に対する亜鉛含有製剤のポラプレジンク(商品名:プロマック®など)、皮膚乾燥に対するヘパリン類似薬含有製剤(商品名:ヒルドイド®など)や尿素含有製剤(商品名:ケラチナミン®など)、皮膚の亀裂などに対するステロイド外用剤などの薬も使われます。がん化学療法では抗がん剤以外の薬も重要な役割を果たしています。

抗がん剤の副作用として忘れてはならないもの:感染症

抗がん剤を用いると感染症になりやすいです。また肺がんが存在するだけで感染になりやすいことも分かっていますので、抗癌剤を使うときは非常に注意が必要です。詳しくは、がんと感染症のコラムに書いてありますので、参考にしてください。

10. ステージごとの肺腺がんに対する治療法

肺がんのステージとは?

肺がんの進行度はステージを用いて分類します。ステージとは、がんがどれぐらいの範囲まで広がってきているのかを画一的に評価するものです。病気の進行度を評価するのには画一的な基準があることは重要で、ステージを基準としてがんの治療法が決定されます。

ステージはステージⅠからステージⅣまでに分かれます。肺がんではさらに細かくⅠA、ⅠBのように分けます。国際的にはローマ数字(Ⅲなど)で書き表すのが普通ですが、このサイトではアラビア数字(3など)で記載しているところもあります。

ステージの分け方について詳しくは「肺がんのステージとは?」で説明しています。

肺腺がんに対する治療の大前提にあるのは、手術が可能であれば手術をすることです。これは、肺腺がんに対して比較的に化学療法や放射線療法が効果を発揮しにくいからです。

肺腺がんの場合、ステージⅢAまでは手術が検討できます。ステージⅢB以上に進行していると手術はできません。

それでは肺腺がんのステージごとの治療について見ていきましょう。肺がんの治療に関する記載も非常に細かい内容になっていますので、自分に当てはまらない部分は読み飛ばしてください。

肺腺がんのステージ1-2の手術療法(外科的治療)

手術が最も成績の良い治療になりますので、手術可能であれば手術を行うことになります。

とはいえ、肺を手術で切り取ると手術後の呼吸機能への影響は大きいです。そこで、正常な肺をなるべく残せるよう、縮小手術といって小さく切り取る方法があります。がんの大きさが2cm以下のときや、2-3cmでもリンパ節転移がない場合は、縮小手術も可能です。また、ステージがⅠ期の肺がんに対しては、胸腔鏡下の手術(内視鏡手術)も検討できます。

手術をしたあとどれぐらい生きられるかは統計から平均値が出ています。ステージⅠ・Ⅱ期全体の5年生存割合は69.6%です。更に細かくみると以下のようになります。

(以前のステージ分類でのデータなので、現在のステージとは若干の違いがある可能性があります。)

【ステージごとの5年生存率

ステージ 5年生存率
ⅠA期 82.0%
ⅠB期 66.1%
ⅡA期 54.5%
ⅡB期 46.1%

ステージが進行すればするほどどうしても治癒率が下がってしまいます。そのため、手術後に化学療法を行う場合があります。

ステージ1期の術後化学療法

手術後からテガフール・ウラシル配合剤(UFT)を基本的には飲むことになります。飲む期間に関しては1年間か2年間になるのですが、2年間のほうが治療効果が高いという報告があり、副作用に問題がなければ手術後から2年間飲むのが良いと思われます。ただし超高齢者やEGFR遺伝子変異陽性の場合などは投与を避けることもあり、ステージ1期でも特に初期のことでは飲まないこともあるなど、実際の判断はケースバイケースになります。

ステージ2期の術後化学療法

ステージⅡ期の肺がんを手術した後に化学療法を行う方が成績が良いとされています。手術後の化学療法にはシスプラチンという抗がん剤を含めた2種類の抗がん剤を点滴します。特にシスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)は治療成績が良く、多くの人に使われます。

シスプラチンを含めた化学療法は3-4週ごとに4回を原則として行います。

肺腺がんのステージ1-2で手術ができない場合の治療

体力の問題や呼吸機能の問題などで手術ができない場合は放射線療法を行います。放射線療法により肺がんを根絶させることを目指します。

肺腺がんのステージ3の手術療法(外科的治療)

手術を行えるのであれば手術で治療を検討することになります。ステージⅢA期と呼ばれる状態は手術が検討できますが、もう少し進行したⅢB期とⅢC期では手術を行うことはできません。

手術を行う場合も、手術前に化学療法(抗がん剤)か化学放射線療法(抗がん剤+放射線療法)を行うことで、腫瘍をできるだけ小さくして切除することがあります。手術を行う前に化学療法か化学放射線療法を行ったほうが治療成績が良いという下の表のような報告があります。

【治療法ごとの5年生存率(リンパ節転移がN2のもの)】

治療法 5年生存率
手術のみ 30.0%
術前治療をしてから手術 38.0%

この報告では手術前に化学療法や化学放射線療法を行う方が生存率が良いとされていますが、術前治療は身体への負担を増すことも確かです。そのため体調とがんの勢いを見ながら治療法を決定します。

ステージ3期の術後化学療法

手術後に化学療法を行う場合にはシスプラチンという抗がん剤を含めた2種類の抗がん剤を点滴します。特にシスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)は治療成績が良く、多くの人に使われます。

シスプラチンを含めた化学療法は3-4週ごとに4回ほど行います。

肺腺がんのステージ3で手術ができない場合の治療

腫瘍の進展の問題や呼吸機能の問題などで手術ができない場合は、化学療法と放射線療法を行います。化学療法は色々なものを使いますが、多く使われるのは次のものです。

  1. カルボプラチン(CBDCA)単独
  2. シスプラチン+ビノレルビン(CDDP+VNR)
  3. カルボプラチン+パクリタキセル(CBDCA+PTX)
  4. シスプラチン+ドセタキセル(CDDP+DTX)
  5. シスプラチン+S-1 (CDDP+S-1)

また、体調や全身状態から化学療法が使えない場合は放射線療法を単独で行います。この場合の放射線療法は週に5回の治療を6週間続ける、程度のことが多いです。

11. 肺腺がんのステージ4の初回治療(一次療法)

ステージⅣでは、肺がんのある側の肺以外に転移がある状態です。ステージⅣになると手術をすることは基本的にできません。しかし、化学療法を行うと生存率が改善することがわかっており、化学療法を行うことは多いです。

ステージⅣの治療の選び方は非常に複雑です。最初に治療選択の基準とされるポイントを説明しますので、自分に当てはまるものを見つけて読んでください。

治療を選ぶ基準1:PS

薬を選ぶためにPS(Performance Status、パフォーマンスステータス)が基準とされます。PSは全身の状態を数字で表す指標です。0-4の5段階で評価され、0が最も良く4が最も衰弱した状態になります。

  • PS 0:全く問題なく日常生活ができる
  • PS 1:軽度の症状があり激しい活動は難しいが、歩行可能で、軽作業や座って行う作業はできる
  • PS 2:歩行でき身のまわりのことは全て行えて日中の50%以上はベッド外で過ごすが、時に多少の介助を要する
  • PS 3:自分の身のまわりのことは限られた範囲しか行えず、日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
  • PS 4:自分の身のまわりのことは全くできず、完全にベッドか椅子で過ごす

治療を選ぶ基準2:遺伝子検査

ステージⅣの治療は抗がん剤が中心になります。

抗がん剤の中でも、EGFR-TKIやALK-TKIは、がんに含まれる遺伝子検査を行った後に、条件が適合すれば使用可能になります。

現在発売されているEGFR-TKIやALK-TKIが使用できる条件は主に以下の2つです。どちらかに当てはまれば薬を使用することができます。

  • EGFR遺伝子の変異があるときに使える薬(EGFR-TKI)
    • ゲフィチニブ(イレッサ®)
    • エルロチニブ(タルセバ®)
    • アファチニブ(ジオトリフ®)
    • オシメルチニブ(タグリッソ®)
  • ALK融合遺伝子があるときに使える薬(ALK-TKI)
    • クリゾチニブ(ザーコリ®)
    • アレクチニブ(アレセンサ®)
    • セリチニブ(ジカディア®)

EGFR-TKIやALK-TKIは分子標的薬と呼ばれる種類の薬です。ほかの抗がん剤とは働くしくみや副作用などに違った特徴があります。

その他、現状全ての患者さんで調べられているわけではありませんが、ROS-1融合遺伝子変異がある場合には上記のクリゾチニブが有効であることが分かっており、使用されることがあります。

このように、近年はEGFRやALK以外の遺伝子異常と、それらに対する薬剤の開発が肺腺癌の領域では非常にホットな話題となっています。

ステージⅣの肺腺がんの初回治療によく使う抗がん剤

しばしば使用されるのが、プラチナ製剤と呼ばれる薬と、第3世代抗がん薬と呼ばれるものです。

  • プラチナ系抗がん剤(白金製剤)
    • シスプラチン(ブリプラチン®など)
    • カルボプラチン(カルボプラチン®など)
  • 第3世代抗がん剤
    • パクリタキセル(タキソール®など)
    • ドセタキセル(タキソテール®など)
    • ペメトレキセド(アリムタ®)
    • S-1(ティーエスワン®など)

また、これ以外にも2015年12月から使えるようになったニボルマブを皮切りに、使用できる免疫チェックポイント阻害薬が続々と増えてきており、今後も期待されています。2017年2月に保険適応となったペムブロリズマブは、癌細胞の50%以上がPD-1リガンドを出しているような患者さんではプラチナ系抗がん剤と第3世代抗がん剤の組み合わせ治療よりも有効であることも示されており、初回治療で使用されるケースが増えてきています。

それでは実際にどういった治療をするのかを肺がん治療ガイドラインに従って解説していきます。

EGFR遺伝子変異のあるPS 0-1で75歳未満の患者

若くて身体も元気な人の中でもEGFR遺伝子変異のある人については、様々な治療方法が選択肢に挙がります。

以下が主な治療薬になります

  • EGFR-TKI製剤
    • ゲフィチニブ
    • エルロチニブ
    • アファチニブ
  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • シスプラチン+ペメトレキセド
    • シスプラチン+ドセタキセル
    • シスプラチン+S-1
    • シスプラチン+ゲムシタビン
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル(ナブパクリタキセル)

基本的には副作用と効果のバランスを考慮して、EGFR-TKI製剤の方がプラチナ製剤などの点滴抗がん剤よりも優先して使用されます。ただしEGFR遺伝子変異の中でも、変異に関してさらに細かい分類があり、その中にはEGFR-TKI製剤の効きが悪いものもあるので要注意です。

これらの治療に加えて、ベバシズマブを上乗せして使うこともあります。

また、通常の化学療法は3-4週間ごとに4-6回投与することになりますが、特にシスプラチン+ペメトレキセドを投与した場合は、その後にペメトレキセドだけを投与し続けることも検討されます。

EGFR遺伝子変異のあるPS 0-1で 75歳以上の患者

75歳以上であるが身体も元気な人で、EGFR遺伝子変異のある人についてです。現在は年齢よりも身体の元気さを重要視するようになっていますので、この場合も様々な治療方法が選択肢に挙がります。

ただし、年齢が高い場合は抗がん剤の副作用が出ることも多いため、治療しながら慎重に体調を観察するべきです。

以下が主な治療薬になります。

  • EGFR-TKI製剤(アファチニブは基本的に使用しない)
    • ゲフィチニブ
    • エルロチニブ
  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+ナブパクリタキセル
    • カルボプラチン+ペメトレキセド

これらの治療に加えて、全身状態を鑑みてベバシズマブを上乗せして投与することもあります。

上記の治療のうちでは、副作用が比較的軽いゲフィチニブが優先的に使用されるケースが多いです。

また、通常の化学療法は3-4週間ごとに4-6回投与することになりますが、特にカルボプラチン+ペメトレキセドを投与した場合は、その後にペメトレキセドだけを投与し続けることも検討されます。もう一つの手としてプラチナ製剤を含む複数の抗がん剤を最初に短期間使い、そのあとエルロチニブに切り替えて続けるという治療法(レジメン)もあります。(スイッチメンテナンス、あまり行われない)

EGFR遺伝子変異のあるPS 2の患者

状態がやや悪い人(歩行可能で日中の半分以上はベッド以外で生活しているが、時に介助を要する状態の人)の中でもEGFR遺伝子変異のある場合についてです。やや状態が悪い患者なので、副作用に注意して慎重に治療薬を選択することになります。

以下が主な治療薬になります

  • EGFR-TKI製剤(アファチニブは使用しない)
    • ゲフィチニブ
    • エルロチニブ
  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
    • カルボプラチン+ペメトレキセド
    • ペメトレキセド
    • S-1
    • パクリタキセル
    • ドセタキセル
    • ビノレルビン
    • ゲムシタビン

これらの治療に加えて、ベバシズマブを上乗せして投与することもあります。

基本的には副作用と効果のバランスを考慮して、EGFR-TKI製剤の方がプラチナ製剤などの点滴抗がん剤よりも優先して使用されます。ただしEGFR遺伝子変異の中でも、変異に関してさらに細かい分類があり、その中にはEGFR-TKI製剤の効きが悪いものもあるので要注意です。

EGFR遺伝子変異のあるPS 3-4の患者

非常に全身状態の悪い患者さんで、EGFR遺伝子変異がある場合です。PSが3か4の人にとっては化学療法が重い負担になりやすいのですが、EGFR遺伝子変異がある場合は、ゲフィチニブを使用しても良いことになっています。

しかし、ゲフィチニブによる副作用(特に間質性肺炎)が出やすいため慎重に様子を見ていく必要があります。

ALK遺伝子転座のあるPS 0-2の患者

PS 0-2のEML4-ALK融合遺伝子(ALK遺伝子転座)のある患者さんの初回治療についてです。この場合にはALK-TKIという薬が選択肢に挙がります。また、その他にも通常のプラチナ製剤を含めた複数の抗がん剤治療を行うこともできます。

以下が主な治療薬の選択になります。

  • ALK-TKI製剤
    • クリゾチニブ
    • アレクチニブ
  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • シスプラチン+ペメトレキセド
    • シスプラチン+ドセタキセル
    • シスプラチン+S-1
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル

これらの治療に加えて、ベバシズマブという薬を3つ目の抗がん剤として上乗せして投与することもあります。基本的には副作用と効果のバランスを考慮して、ALK-TKI製剤の方がプラチナ製剤などの点滴抗がん剤よりも優先して使用されます。また、やはり副作用と効果のバランスを考慮してクリゾチニブよりはアレクチニブの方が優先して使用されるケースが多いです。

ALK遺伝子転座のあるPS 3-4の患者

非常に全身状態の悪い患者さんです。抗がん薬治療は危険と考えられるケースが多いです。アレクチニブなどの薬はALK遺伝子転座がある場合に適しているのですが、PS3や4では使うべきとは言えません。

EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座がないか不明な状態のPS 0-1で75歳未満の患者

分子標的薬は基本的に使えませんが、若くて身体が元気ですので、プラチナ製剤を含んだ複数の抗がん剤を使って治療することができます。また、がん細胞のうち50%以上がPD-1リガンドを出している場合には免疫チェックポイント阻害薬をまず使用することが推奨されます。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • シスプラチン+ペメトレキセド
    • シスプラチン+ドセタキセル
    • シスプラチン+S-1
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
  • 免疫チェックポイント阻害薬
    • ペムブロリズマブ

これらの治療に加えて、ベバシズマブを3つ目の抗がん剤として上乗せして投与することもあります。

また、通常の化学療法は3-4週間ごとに4-6回投与することになりますが、特にシスプラチン+ペメトレキセドを投与した場合は、その後にペメトレキセドだけを投与し続けることも検討されます。

EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座がないか不明な状態のPS 0-1で75歳以上の患者

75歳以上で全身状態が良い人の治療についてです。遺伝子検査の結果、基本的には分子標的薬は使えません。年齢よりも身体の状態を重視して治療方法を決めるべきですので、治療法の選択肢は多く残されています。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+nab-パクリタキセル
    • ドセタキセル
    • ペメトレキセド
    • S-1

どうしても抗がん剤の合併症が出てしまうことがあるので、治療中は特に慎重に体調管理する必要があります。

EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座がないか不明な状態のPS 2の患者

全身状態が悪いながらほぼ自立した生活を送れている人の治療についてです。遺伝子検査の結果、分子標的薬は使えません。

  • プラチナ製剤を含む2種類の抗がん剤あるいは単剤
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • カルボプラチン+S-1
    • カルボプラチン+パクリタキセル
    • ドセタキセル
    • ビノレルビン
    • ペメトレキセド
    • パクリタキセル
    • S-1
    • ナブパクリタキセル

どうしても抗がん剤の合併症が出てしまうことがあるので、治療中は特に慎重に体調管理する必要があります。PS2で軽度の介助を要する程度には全身の状態が悪い患者さんなので、単剤での治療を行うことが多くなってきます。

EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座がないか不明な状態のPS 3-4の患者

全身状態が悪い中さらに状態を悪化させる可能性が高いので、化学療法は行わないほうが良いです。

1度治療した後に行える肺がん治療(二次治療以降)

初回治療後、ある程度時間が経つと基本的に腫瘍は再び大きくなってくるものです。そもそも初回治療で腫瘍が全く小さくならないこともあります。そのときには二次治療へと進んでいきます(二次治療に進めるだけの体力が残っていなければ緩和ケアに専念することになります)。二次治療以降になると、一次治療で使った抗がん剤の蓄積疲労を考えなくてはなりません。そのため、基本的にはプラチナ製剤を使った強い抗がん薬治療は行えません。しかし、一次治療で分子標的薬を使用した場合はプラチナ製剤を用いることができます。

二次治療以降の三次治療、四次治療・・・は非常に煩雑になりますのでここでは全てを述べることはできませんが、簡単にポイントを記します。

  • 一次治療でEGFR-TKIを使った場合
    • 癌細胞そのもの、あるいは血液から腫瘍細胞を検出して、T790M変異という新たな変異が検出された場合にはオシメルチニブの投与が推奨される。検出されなければ全身状態をみつつその他の抗がん剤を検討していく。
  • 一次治療でALK-TKIの中でクリゾチニブを使った場合
    • アレクチニブ或いはセリチニブを使用を検討する。
  • 一次治療でALK-TKIの中でアレクチニブを使った場合
    • 全身状態に応じてその他の抗がん剤を検討していく。
  • 一次治療でプラチナ製剤を含む抗がん剤を使った場合
    • EGFR遺伝子変異あるいはALK融合遺伝子の存在があれば、それに適した分子標的薬を使用する。
    • EGFR遺伝子変異あるいはALK融合遺伝子の存在が不明あるいはない場合は、プラチナ製剤を含まない抗がん剤など、体力と病状に応じて検討していく。
  • 一次治療で免疫チェックポイント阻害薬を使った場合       
    • プラチナ製剤などのその他の抗がん剤を全身状態に応じて使用していく。

転移の治療

肺がんは肺内の他部位や脳、骨、肝臓、副腎を中心に転移を起こします。中でも脳転移は症状が特徴的であること、骨転移は骨折の危険があり痛みも強いことから要注意であります。転移が起こった際の治療について簡単に説明します。

脳転移の治療

脳転移が起こった場合は、放射線療法を行うことがあります。転移の個数や位置によって治療法は変わってきますが、大まかな説明を記します。

■脳内に転移が多数ある場合

脳内に多数の転移がある場合はひとつひとつを狙って放射線療法することは難しいです。そのため、全脳照射と言って、脳全体に放射線を当てることを行います。

全脳照射はどうしても正常な脳細胞にも影響が出てしまうので、極力避ける方向にありますが、転移が多数ある場合は脳内のがんが大きくなって症状が出ないように脳全体に放射線療法を行うことがあります。

■脳内に4個以下ですべて3cm以下の転移がある場合

定位照射と呼ばれる、がんのある部位のみを狙った放射線療法を行います。最近では、ガンマナイフ治療やサイバーナイフ治療と言った、全方位から放射線を少しずつ照射することで正常脳細胞に極力影響が出ないように配慮した治療も行われています。

骨転移の治療

痛みが出ていたりしびれが出ていたりする場合や骨破壊が進んで骨折しそうな場合は、積極的に放射線療法を行います。また、骨を丈夫にする目的で、ゾレドロン酸(ゾメタ®)やデノスマブ(ランマーク®)という薬を注射します。

副腎転移の治療

副腎に転移した場合は、手術や放射線療法の効果がはっきりわかっていません。実際には手術が行われている場合もあります。

12. 肺腺がんでステージ4と言われたら?

がんの病期分類でステージⅣというと末期状態と思われる方も多いと思います。しかし、ステージⅣということはがんが転移しているということを指しますが、決して末期ということではありません。治療も行うことができます。

ステージ4の肺腺がんで余命はどれぐらい?

ステージⅣは最も進行したステージです。

余命は個人差があるのでその人その人の余命を正確には当てられませんが、平均でいうとステージⅣの肺がんに化学療法を行って1年生存する確率は50-60%と言われています。

ステージ4の肺腺がんに何ができる?

ステージⅣの肺腺がんは手術することはできませんが、化学療法を行うことができます。また、痛みや呼吸困難感などの苦痛は緩和医療を用いて和らげることができます。

緩和医療はステージⅣに限った話ではありませんが、上手に治療することで生活のしやすさが格段に変わってきます。

効果の怪しい「治療」に気を付けて!

ここでは敢えて効果の怪しいと書いていますが、肺がんの補助療法は色々と行われています。具体的には、温熱療法や高濃度ビタミンC点滴療法、断食療法、アガリクスといったサプリメントなど枚挙に暇がありません。これらはもちろん今後医学的にも認められる可能性はありますが、現段階では科学的に効果の認められた治療ではありません。中には不当に高価な治療費が請求される場合もありますので、治療に臨まれる前にきちんとその内容と効果を確認して下さい。たとえばビタミンCの点滴剤は2gで82円ですので、これを大量に100g点滴した場合でも4100円しかかからないはずです。

また、近年「免疫療法」という言葉が独り歩きしていることがあります。現段階(2017年4月)で、医学的に認められている肺がんの免疫療法はニボルマブ(オプジーボ®)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)だけです。アテゾリズマブ(テセントリク®)が加わる見込みですが、これ以外に肺がんの免疫療法は医学的に認められていません(2017年4月現在)。これ以外の免疫を高める治療法のようなものは盲信しないようにしてください。それらは保険適応外で、高額なものであることもしばしばです。

わらをもすがる思いに付け入った、営利目的で悪意のあるものも少なくないので注意が必要です。真剣に迷われている方は、一度がんの主治医に相談してみた方が良いです。

参考文献

J Thorac Oncol. 2011 Jul

Ann Thorac Surg. 2014 Aug

J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr LBA109)