はくないしょう
白内障
眼の焦点をあわせるためのレンズ(水晶体)が濁る病気。視野が白くかすんだり、光をまぶしく感じる
7人の医師がチェック 129回の改訂 最終更新: 2018.11.14

白内障の治療について:点眼薬(目薬)や手術時間、術後の注意点、費用について

白内障は透明な水晶体が濁ることで見えづらさが現れる病気です。濁った水晶体を取り除いて、眼内レンズを挿入する手術で症状の改善が期待できます。ここでは白内障の手術を中心に詳しく説明します。

1. 点眼薬(目薬):種類や市販薬、副作用について

ものの見え方に大きな支障がない初期の白内障では、点眼薬で治療が行われます。点眼薬の目的は白内障を治すことではなく、白内障の進行を遅らせることです。白内障の人によく使われる点眼薬として、次の2つがあります。

ピレノキシンは白内障の原因の一つであるキノイド物質という物質に作用することで、水晶体が濁るのを防ぎ、白内障の進行を予防します。 グルタチオンはもともと目に存在する成分で抗酸化作用があります。グルタチオンは白内障が進行すると減少することが知られているので、点眼薬として補うと白内障の進行を予防できるとされています。 点眼薬では白内障の進行を遅らせることはできますが、もとの状態に戻せるわけではありません。このため、見えづらさを感じているのにいつまでも点眼薬によって治療を続けるよりは手術をして見えづらさを解消する方がよいという考えもあります。

この後は白内障の手術について説明していきます。

2. 手術(水晶体再建術):方法や眼内レンズの種類、費用、見え方などについて

白内障のものの見えづらさは、手術によって改善が期待できます。手術の具体的な方法や費用、手術後のものの見え方などについて説明します。

手術の具体的な方法:流れや時間

白内障の手術は、点眼薬による局所麻酔で行われることが多く、痛みの心配はほとんどありません。手術室に入りベッドに横になって麻酔薬の点眼が行われます。麻酔が効いたところで、手術が始まります。まず、角膜という黒目の部分にメスで小さな切れ込みを入れます。次に、切れ込みから水晶体を吸い出す装置を挿入して、水晶体を取り除きます。その後、水晶体の代わりになる眼内レンズを挿入して手術が終わります。手術にかかる時間は数十分です。

手術直後の注意点

厳しい生活制限は必要はありませんが、いくつか注意点があります。白内障手術では角膜を切って眼内レンズを挿入しています。角膜の傷は時間の経過とともに閉じますが、すぐに閉じるわけではありません。傷口からは細菌が入り込みやすいので、手術直後は目を触ったり擦ったりしないようにし、洗顔や洗髪も避けてください。手術から数日後には洗髪や洗顔は可能ですが、目にはできるだけ水が入らないようにしてください。特に洗髪は他の人にしてもらうとより安全です。

また、上記の日常生活での注意点に加えて、医療機関で処方された点眼薬も指示通り使ってください。点眼薬には抗菌作用のあるものや炎症を抑えるものが含まれているので、傷を順調に治す助けになります。目の状態が安定する目安は1週間から2週間です。ただし、傷の治りやすさには個人差があるので、いつから普段通りの生活をしてよいかなど、診察の時にお医者さんに確認しておくと確実です。

手術で用いられる眼内レンズの種類

水晶体はカメラでいうレンズの役割を果たす部分で、見たいものの距離に応じて自由に焦点(目のピントが合う位置)を合わせることができます。一方で、白内障手術で用いられる眼内レンズは焦点の位置が決まっているので、焦点から外れた物を見るときにはぼやけてみえます。白内障手術で用いられる眼内レンズには「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」の2つがあります。レンズによって手術後の見え方が違います。

■単焦点レンズ

単焦点レンズは焦点が1つのレンズです。焦点を近くか遠くかどちらか一方に合わせるので、焦点を合わせていない方はぼやけて見えます。具体的に言うと、焦点を近い方に合わせた人は近くはくっきり見えるのに対して、遠くはぼやけてみえます。反対に焦点を遠い方に合わせた人は遠くはくっきり見えるのに対して、近くはぼやけてみえます。焦点が合っていない方をくっきり見るために、メガネが必要になることが多いです。

■多焦点レンズ

多焦点レンズは焦点が2つ以上あるレンズです。焦点が近い方と遠い方の2つあるものがよく利用されています。単焦点レンズとは違い、近い方と遠い方の両方がくっきり見えるので、メガネは必ずしも必要ではありません。ただし、水晶体のように焦点を自由に合わせられるわけではないので、焦点と焦点の間の微妙な距離はぼやけて見えてしまいます。

単焦点レンズに比べて多くのメリットがある多焦点レンズですが、デメリットもあります。まず、現在は保険診療ではなく先進医療という枠組みで治療が行われます。手術にかかる費用は自費になるので、治療費が高額になります。また、焦点が合っている場所の見え方は、単焦点眼内レンズに比べると、ややぼやけて見えるとされており、暗い場所では光を極端に眩しく感じることもあります。

■どちらを選べばよいのか

多焦点レンズはメガネが不要になる点は便利ですが、単焦点レンズより視力がよくなるわけではありません。メガネが不自由だと感じない人は単焦点レンズも十分だという考えもあります。自分の価値観とメリット・デメリットを良く考えてレンズの種類を選んでください。

手術にともなうリスク(合併症)

白内障の手術は視力を回復させるために有効な方法です。一方で、治療にはリスクがあります。リスクは合併症とも呼ばれ、治療や検査にともないある一定の確率で起こる病気のことです。合併症は怖いものですが、理解を深めておくとすばやく対応ができて、軽症で済むことも多いです。

白内障手術で最も注意が必要なものは眼内炎という感染症です。手術の際にできた傷から細菌が侵入して起こります。眼内炎の予防として抗菌薬が入った点眼が処方されます。傷の状態が落ち着いてお医者さんから終了の指示があるまでは、点眼を続けるようにしてください。

また、眼内炎が起こったしても早めに治療をすることで、軽症ですむことがあります。目の痛みやひどい充血など眼内炎を疑われる症状が現れた場合にはすぐに手術を受けた病院を受診してください。

手術の後遺症:手術後のものの見え方など

手術によって白内障のものの見えづらさは改善します。しかし、レンズを挿入したからといって白内障になる前と同じような見え方になるわけではありません。レンズには焦点というものがあり、くっきりとものが見える距離が決まっています。焦点を外れた場所はぼやけて見えるので、ぼやけを補うためにメガネが必要になります。ざっくりいうと、レンズの焦点を近くに合わせると、遠くのものが見えにくくなります。その反対で、レンズの焦点を遠くに合わせると、近くのものが見えにくくなります。

焦点をいくつも持つ多焦点レンズでは遠くも近くも見ることができるので、メガネを使わなくてすむことがあります。とはいえ、どの距離でも焦点を合わせられるわけではないので、どうしてもぼやけて見えることがあります。 手術をすると視力は回復しますが、若いときのような視野に戻るわけではないことを手術の前には理解しておいてください。単焦点レンズと多焦点レンズの違いについては上で説明しているので、合わせて参考にしてください。

手術の費用

手術の費用は「入院の有無」、「片目か両目か」「年齢」などで変わってきます。次で説明する金額はあくまでも目安なので、実際の費用は治療を受ける医療機関で確認してください。

■日帰り手術の場合

日帰り手術の自己負担額は40,000円から100,000円程度です。両目でも同じ日に手術をするか、別々の日に手術をするかで治療費が変わります。

■入院手術の場合

入院手術の場合は、日帰り手術の費用に入院費が上乗せされます。自己負担額の目安は40,000円から150,000円程度です。入院手術でも、両目を同じ日に手術をするか、別々の日に手術をするかで費用が変わります。

3. 白内障の手術に関する疑問や悩み

手術を受けるとなるとどうしても不安になるものです。ここでは患者さんが抱きやすい疑問や悩みについて説明します。手術前の不安の解消に役立ててください。

手術に痛みはあるのか

手術ではメスで目の一部を切開するので「痛み」をみなさん心配されます。手術前には目の表面に点眼薬による麻酔が行われます。麻酔の効果は高いので、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。

レーシック手術後に白内障の手術はできるのか

レーシック手術はレーザーを角膜(黒目を覆う透明な膜)に照射して、角膜の形状の調整することで主に近視を矯正する手術です。一方で、白内障の手術は角膜の奥にある水晶体を取り除いて、眼内レンズに入れ替える手術です。手術をする部位が違うので、レーシック手術を受けた後にも白内障手術は受けることができます。 ただし、レーシック手術後の人は眼内レンズ選びが難しいとされています。レーシック手術を受けている人の場合、角膜の形状を変化させているので、通常の人と同じような基準でレンズを選ぶと思ったような見え方ができないことがあるからです。

レンズ選びの難しさから、レーシック手術後の人が白内障治療を行う場合は、手術の経験数が多い施設で行うことも選択肢の1つです。また、レーシック手術を受けた人は、白内障手術の前に過去にレーシック手術をしたことをお医者さんに必ず伝えるようにしてください。目の状態から経験の多い施設で手術を受けることが望ましいと考えられる場合には、他の施設を紹介してもらうことも可能です。

手術に失敗して失明することはあるのか

白内障の手術の影響で失明することはほとんどありませんが、少ないながらも注意は必要です。手術後に特に注意が必要なのは眼内炎という目の中に起こる細菌感染で、重症化すると失明の危険性があります。眼内炎は、手術後すぐに起こることもあれば、数ヶ月経った後に起こることもあります。眼内炎になったら速やかに治療を始める必要があるので、手術後に目の痛みなどの症状が現れた場合は、手術を受けた医療機関を受診してください。手術のあと、症状が改善したからといって治療が終了したわけではありません。状態が落ち着くまではお医者さんの指示を守って点眼薬や受診を続けることが大切です。

手術後にメガネは必要なのか、いつ頃つくればいいのか

白内障の手術後にメガネが必要な場合があります。手術で挿入される眼内レンズは単焦点レンズと多焦点レンズの2つがあります。保険診療で受けられる単焦点レンズでは、焦点を近くか遠くかどちらか一つに合わせなければなりません。近くに焦点を合わせると遠くがぼやけてしまい、反対に遠くに焦点を合わせると近くがぼやけてしまいます。焦点が合わない場所をくっきりとみるためにメガネが必要になることがあります。

メガネを作れるのは目の傷が落ち着いてからで、手術後1ヶ月程度が目安になります。ただし、傷が大きかったり、白内障が進行していたりした場合は状態が落ち着くのに時間がかかることがあります。メガネの必要性や作る時期について手術を受けた医療機関で十分に相談すると、しっかりと自分にあったものを作れます。

白内障は手術後に再発することはあるのか

白内障は手術後に再発することがあり、後発白内障といいます。後発白内障は手術後しばらく経ってから起こり、白内障と同様にものが見えづらくなります。白内障は透明な水晶体が濁ることで起こる病気なので、治療は濁った水晶体の細胞を取り除いて、その代わりに眼内レンズを挿入します。水晶体の細胞はほとんどが取り除かれますが、一部は残ってしまいます。残った水晶体の細胞が増殖することがあり、白内障の症状が再発します。

後発白内障になっても、再手術をすることは多くはありません。ほとんどの場合はレーザー治療で、ものの見え方は改善します。レーザー治療は短時間ですみ、しかも外来で行うことができます。

眼内レンズに寿命はあるのか

白内障手術で用いられる眼内レンズは耐久性に優れた素材でできています。レンズに寿命はありますが人間の寿命より長いので、交換の必要はありません。ただし、挿入した眼内レンズの度数が合わずに見え方が不十分な場合や、レンズがずれた場合はレンズの交換が必要になりますが、これはレンズの寿命によるものではありません。

眼内レンズはずれることがあるのか

眼内レンズは目の奥に挿入されているので、目をこすった程度の影響ではずれません。しかし、水晶体嚢という目の構造物が縮むことによって、眼内レンズがずれることがあります。白内障は目のレンズの役割を担っている透明な水晶体が濁ることで起こります。水晶体は袋状の構造物に包まれていて、これが水晶体嚢です。 白内障の手術では水晶体を取り除いて、袋にあたる水晶体嚢は残します。そして、残った水晶体嚢の中に眼内レンズを挿入します。水晶体嚢は手術の後に縮んでしまうことがあり、眼内レンズがずれを起こします。眼内レンズはずれても痛みを感じることはありませんが、視野に異常が現れます。視野への影響が強い場合には眼内レンズの位置の調整や交換が必要になることがあります。

白内障の手術は入院せずに日帰りでできるのか

白内障の手術は入院でも日帰りでも行うことができます。

【入院と日帰りのメリットとデメリット】

  入院 日帰り
メリット 合併症が早期発見できる 慣れた環境での生活できる
入院費用がかからない
デメリット 慣れない環境での生活できる 入院費用がかかる こまめな通院が必要になる

入院をすると病院という不慣れな環境で過ごす必要はありますが、医療スタッフの手を借りて生活できるので、本人だけでなく家族の負担も少ないです。また、入院中は手術をした目の異変を感じたときには、すばやい対応が受けられます。

一方で、日帰りは慣れた環境で過ごすことができるので、環境の変化にともなうストレスは少なくてすみます。ただし、点眼薬の管理などを自分でしなければなりませんし、傷の状態が落ち着くまではこまめに通院が必要です。元気で移動に不自由がない人には日帰り手術のメリットが大きいと言えます。白内障の手術の内容は「入院」も「日帰り」も同じです。違いは費用や手術後の過ごし方なので、自分の価値観や心配なことなどを具体的にすると、どちらが自分に向いているかがはっきりとします。もし、自分だけで決めきれない場合はお医者さんや看護師さん、家族に相談してみてください。

白内障治療の名医はいるのか

まず、白内障に限らず、どんな病気においても名医の絶対的な定義はありません。例えば、手術の成功率が極めて高い医師を名医ととらえる人もいれば、病気の説明が上手で人当たりも優しい医師を名医ととらえる人もいます。つまり、どのような医師を名医と考えるかは患者さんの捉え方に大きく影響を受けるので、名医を定義づけることは簡単ではありません。名医と誉れ高い医師に診療を受けても期待外れだったということはよく耳にする一方で、名医とは言われていないけれど満足な診療が受けられたということも耳にします。

名医を探すときには自分にあった医師を探すようにするのは1つの考え方です。具体的に言うと、自分にあった名医を探すにあたっては自分が何を重視するかをはっきりさせておくとよいです。「話やすさを重視する」、「手術の成功率を重視する」、「手術後のフォローの良さを重視する」など名医を選ぶ基準はさまざまです。基準をはっきりさせることによって名医に巡り会える可能性も高くなります。