[医師監修・作成]脳梗塞の後遺症について | MEDLEY(メドレー)
のうこうそく
脳梗塞
脳の血管が詰まって結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 402回の改訂 最終更新: 2022.01.24

脳梗塞の後遺症について

自分や家族が脳梗塞になったとき「後遺症は残るのか」というのは関心の高いことだと思います。このページでは、脳梗塞の後遺症が残る理由や、後遺症の種類、対処法について説明します。

目次

 

1. 脳梗塞の後遺症が残る理由について

脳梗塞の後遺症で車椅子生活の画像

脳梗塞は、脳の血管の一部が詰まってしまい、そこから先の脳に血液が回らなくなる病気です。血液が行き届かない部分は時間の経過とともに、脳の細胞が死んでいきます。
脳の細胞が死ぬとその脳の部分が担っていた機能を失うか、低下することになります。一度死んだ脳細胞が生き返ることはありません。そのため、死んだ脳の部位やそこにつながっている神経が担う役割を失い、後遺症として残るのです。

人間の体は失った能力を補おうとする

脳の細胞が死んだとしても、人間の体はなんとかそれを補おうとします。
補う方法には主につぎのように2通りあります。

  • 他の脳の部位がその機能を補う
  • 死んだ細胞を介さない新たな神経の通り道を作ることで補う

脳梗塞が起こった部位でも細胞が全て死ぬわけではありません。生き残っていた部分が時間をかけて復活していくということもあります。脳梗塞は風邪とは異なって、じっとしていても失った機能はなかなか良くなりません。失った機能を補う反応を活性化するために、リハビリテーションが大切になってきます。

2. 脳梗塞の後遺症はどのようなものがあるのか

脳梗塞の後遺症は、大きく3つの種類に分けられます。

  • 神経障害
  • 高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)
  • 精神障害

それぞれについて説明していきます。

神経障害

脳梗塞の後遺症として、代表的なもののひとつが神経障害です。神経障害は、脳の細胞や神経がダメージを受けることで起きます。

【神経障害の例】

  • 運動麻痺
  • 感覚麻痺
  • 嚥下障害(飲み込みが難しくなる障害)
  • 排尿障害(尿を出す機能が低下する障害)
  • 視覚障害

運動麻痺や感覚麻痺は、ダメージを受けた脳の反対側の身体に現れることが多く、片側に出るということから「片麻痺」と呼ばれます。
「半身不随」は片麻痺のことを指すことが多いです。
ただし、片麻痺=片側「のみ」の障害というわけではありません。脳には右半球と左半球がありますが、左右で独立しているわけではなく、お互いに情報を交換しあっています。そのため、片側がダメージを受けると、その反対側の脳にも多少なりとも影響があるため、麻痺していないように見える身体も実は手足を動かしにくかったり、力を入れにくかったりといった障害が見られることもあるのです。

運動麻痺として表れる症状は、手足が動かしにくい、しゃべりにくい、手の細かい動き(巧緻性)ができないなどです。感覚麻痺としては、触られている感覚が鈍い、熱い・冷たいの判断ができないなどがあります。これらの症状については「脳梗塞の症状」でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

高次脳機能障害

高次脳機能障害は、脳梗塞の後遺症としても残りやすいもののひとつです。
障害が起きる高次脳機能とは、次のような機能の総称です。

【高次脳機】

  • 記憶
  • 学習
  • 認知(ものごとを捉える機能)
  • 注意
  • 判断
  • 言語

高次脳機能障害が起こると、次のような問題が起こります。

■注意障害

高次脳機能障害の一種で、注意が散乱してしまい、同じことをずっと続けることが難しくなります。
例えば家で洗濯物をたたもうとしても、部屋のホコリが気になって掃除を始めたり、来月の家族旅行のことを思い出して宿の予約を始めたり、夕食の準備のことを考え始めて洗濯物をたたむ手がとまったりします。結果全然ひとつの仕事が進みません。逆にひとつのことをすると他のことに注意が向かないといったことも注意障害に含まれます。料理をしているとき、野菜スープをつくるのに夢中になって、同時に焼いていた魚のことに注意が向かず、真っ黒焦げにしてしまったりもします。

■失行

私たちが普通に行っている行為ができなくなる症状のことです。例えばハサミと紙を渡され、「ハサミで紙を切ってください」と言われても、その言葉の意味はわかっているにもかかわらず、どのように使って良いかわからないのです。

■失認

見たり聞いたりしたものが何かがわからない症状です。視覚は正常で、見えてはいるのに、それが何かを説明できなくなります。人の顔を見分けられない場合を相貌失認と言います。

半側空間無視という症状も失認の一種です。半側空間無視とは、視野の左右どちらか半分の空間が(見えてはいるのに)認知できない状態です。歩いていると左右に偏ってしまったり、見えているはずの障害物にぶつかったりする場合があります。

失認によって、よく知っているはずの場所で迷子になってしまう場合もあります。

失認をともなう特徴的なパターンのひとつに「ゲルストマン症候群」があります。

典型的なゲルストマン症候群は以下の4つの症状から成るとされます。

【ゲルストマン症候群】

  • 手指失認
    • 言われた指を正しく選べなかったり、触れた指がどの指かがわからなかったりする症状です。「身体失認」の一種です。
  • 左右識別障害
    • 左右がわからない症状です。
  • 失書
    • 字を書けないことです。字を見ながら書き写すことはできる場合があります。
  • 失計算
    • 計算ができないことです。

ほかに脳梗塞では記憶や学習といった機能が低下することもしばしば見られ、「昨日練習したことができない」といったことも多いです。そのためなかなかリハビリが進まず、本人や家族がやきもきしてしまうことがあります。同じ練習を何度も繰り返したり、より実践する環境に近い状態で練習するなどの工夫により、カバーできることもあるかもしれません。

精神障害

脳梗塞の後遺症としてあまり知られていないのが、精神障害です。脳の中でも精神状態や心理状態に関連する部位がダメージを受けたり、その部位と神経で連結している部分がダメージを受けると、精神障害が見られます。

比較的知られているのが、脳卒中後のうつです。脳自体のダメージに加えて、脳卒中で自分の手足が動かなくなったりすることに精神的なダメージを受けて、うつになりやすくなると考えられています。脳卒中後うつについて、詳しくは「脳血管性認知症や脳卒中後うつとは何ですか?」で説明しています。

また、脳梗塞を発症した後に家族が気づくことの一つが「性格や人格が変わった」ということです。脳の特定の部位がダメージを受けることで、性格が優しくなったり、逆に怒りやすくなったりと変化することがあります。

3. 脳梗塞の後遺症と上手に付き合うにはどうすればいいのか

脳梗塞を経験すると、どうしてもいくらかの後遺症は残ってしまいます。

脳梗塞の後遺症は細かく分けると非常に多くの種類があります。障害された場所の微妙な違いによって、一人ひとりの症状が違ってきます。このページで説明しきれなかった症状も無数にあります。どんな症状が現れていて、何ができなくなっているのか、何に困るのかを生活の中でよく観察することが、上手く付き合うための第一歩です。

後遺症を抱えて退院し、家庭や社会に復帰するためには、リハビリテーションや、個人の工夫、家族など周りのサポートが大切です。脳梗塞を発症した場合、全身の状態が許す限り、なるべく早くリハビリを始めるようにしてください。