[医師監修・作成]脳梗塞の再発を予防する薬(抗血小板薬と抗凝固薬) | MEDLEY(メドレー)
のうこうそく
脳梗塞
脳の血管が詰まって結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 402回の改訂 最終更新: 2022.01.24

脳梗塞の再発を予防する薬(抗血小板薬と抗凝固薬)

脳梗塞の再発予防では、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬または抗凝固薬)が使われます。使い分けとしては、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など非心原性脳塞栓症の場合は主に抗血小板薬が使われ、心原性脳塞栓症の場合は主に抗凝固薬が使われます。ここではさらに詳細を説明します。

1. 抗血小板薬について

アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞などの非心原性脳梗塞の再発を予防するためには、主に抗血小板薬という種類の薬が使われます。抗血小板薬とは、血液が固まる要因となる血小板の働きを抑えることで、血栓ができるのを抑える薬の総称です。

具体的には、アスピリン(商品名:バイアスピリン®など)、クロピドグレル硫酸塩(商品名:プラビックス®など)、シロスタゾール(商品名:プレタール®など)、チクロピジン塩酸塩(商品名:パナルジン®など)といった薬が有効とされています。「脳卒中治療ガイドライン2015」ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールが非心原性脳梗塞の治療において推奨されています。
 
チクロピジンもクロピドグレルと類似した作用の仕組みを持ち、脳梗塞の再発防止に有効であるとされていますが、稀におこる副作用(好中球減少、肝障害など)を考慮して上記の3剤に次いで推奨される薬となっています。
もちろん以前からチクロピジンで相性よくしっかりと治療ができていて、副作用なども問題ない場合ではそのまま薬を継続しますし、クロピドグレルなどを含めて他の抗血小板薬が体質に合わない場合や副作用があらわれる場合においてもチクロピジンの使用が考慮されます。

この他にも、ジピリダモール(商品名:ペルサンチン®など)などの抗血小板薬が使われる場合もあります。

心原性の脳塞栓症においては、後述するワルファリンやNOACと呼ばれる抗凝固薬が再発予防に有効ですが、これらの薬が何らかの理由で使えない場合には、抗血小板薬の使用が考慮されます。抗血小板薬では、従来の同系統の薬に比べ個々の体質による薬の効果の差が少ないとされているプラスグレル(商品名:エフィエント®)という薬が開発され、病気の状態やそれぞれの体質などに合わせた治療薬が選択できるようになってきています。

2. 抗凝固薬について

名前の通り血液が固まる働きを抑えることで、血栓をできにくくし脳梗塞などの発症を防ぐ薬です。特に心原性塞栓症の再発予防において使われる主な薬になります。(心原性脳塞栓症について、詳しくは「脳梗塞の3つの原因と種類とは?アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞について解説」で説明しています。)

長年、ワルファリンカリウム(商品名:ワーファリンなど)が治療薬の中心を担ってきましたが、近年新しく開発された抗凝固薬(Novel Oral AntiCoagulantsを略してNOACと呼ぶ場合もあります)が登場し、治療の選択肢が広がってきています。 (最近では、NOACを「DOAC(Direct Oral AntiCoagulants):直接経口抗凝固薬)」と呼ぶこともあります。)

ワルファリンカリウム(商品名:ワーファリンなど)

抗凝固薬の一つで、現在でも多くの人に使われている薬です。ワルファリンは血液凝固因子(血液を固める要因となる体内物質)に関わるビタミンKの働きを抑えることで抗凝固作用を示す薬です。 

ビタミンKは骨の形成などにも関わるビタミンですが、血液に対してはいくつかの凝固因子の生成を手助けする働きを持ちます。ビタミンKが関わる血液凝固因子はプロトロンビン(第II因子)、第VII因子、第IX因子、第X因子で、これらの生成を抑えることで抗凝固作用や抗血栓作用を持つことになります。

ワルファリンを飲むにあたって最初に必ず説明される注意事項の一つに「ビタミンKを多く含む食品の摂取についての注意」があります。食事などからビタミンKを多く含む食品を過剰に摂ってしまうとせっかくのワルファリンの効果が減ってしまいます。通常の食事で食べるくらいの野菜の量であれば問題ないのですが、納豆やクロレラ、青汁などは多くのビタミンKを含むため、ワルファリンを服用している場合は食べないようにしてください。

ちなみに、よくビタミンKとカリウム(K)について、同じものであると思いがちです。確かに、お互いに「K」という文字を持つため紛らわしいのですが、「ビタミンKはビタミン」「カリウム(K)はミネラル」であって全く異なるものです。カリウム(K)を摂ったとしても直接的にワルファリンの効果を邪魔することはありません(ただし、カリウムは薬の排泄にも関わる腎機能に影響を与える可能性があるため、腎臓の病気で治療を受けている人などは特に注意が必要です)。
 
ビタミンKにはフィトナジオンやメナテトレノンといったように違う名前で呼ばれることがあるため、むしろこちらの方が注意が必要です。特にメナテトレノン製剤(商品名:グラケー®など)は骨粗しょう症の治療薬として使われています。知らず知らずのうちに服用している可能性もあるため、ワルファリン服用中の食事内容などに関しては事前に処方医や薬剤師とよく相談しておくとよいでしょう。
 
ビタミンKの摂取など注意すべきことはありますが、現在でもワルファリンは脳梗塞などに有効な薬として多くの人に使われていて、治療にかかる薬のコストが比較的安価という面からも、メリットがある薬として認識されています。
 
現在(2016年6月時点)、新しい抗凝固薬(NOAC)の1錠(1カプセル)の薬価は100円をゆうに超え、1日の治療コストとして薬価計算で500円を超える場合もあります。一方でワルファリンは1錠の薬価が10円ほどです。仮にワルファリンとして1日7mgや8mgなど比較的高用量使ったとしても薬価として100円にも満たない金額です。この差は健康保険の一部負担金の支払い額としても、国の医療費を考慮したとしてもメリットと言えます。もちろん薬剤は治療に対しての有効性が最も重要視されるところではありますが、総合的に考えてみてもワルファリンは「治療効果が高くコスト面でのメリットも高い薬」と言えます。

ダビガトラン(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)(商品名:プラザキサ®

ワルファリンに次ぐ抗凝固薬として日本ではプラザキサ®の名前で2011年3月から使われている薬です。血液凝固因子の一つ、トロンビン(第IIa因子)を阻害することで抗凝固作用を持ちます。
この薬は通常「1日2回服用」する薬で、腎機能や併用する薬などに問題がなければ1回150mg(75mgのカプセルを2カプセル分)、1日で300mgの薬剤量を服用します。
 
ダビガトランには1カプセルに110mgの薬剤が入った規格もあります。こちらは腎機能の低下が見られる場合や併用する他の薬がダビガトランの作用を過度に高めてしまう可能性がある場合などに使用が考慮され、1回110mgを1日2回、つまり1日220mgの低用量で服用するための調節用の規格になっています。

一般的に薬剤の規格が複数ある場合は、含有量が高い規格がそのまま高用量を使うための規格になることが多いのですが、ダビガトランは含有量が低い規格を複数(75mgを1回に2カプセル)使うことで高用量の薬の使用を実施するという薬なのです。
 
ダビガトランは抗凝固薬の服用中で特に注意すべき事項の一つである脳内出血の発症が少なかったという臨床試験の結果もあり、有用性が高い薬とされています。
 
服薬に関してのマイナス面をあえて挙げると「カプセル剤が大きい」という点かもしれません。プラザキサ®カプセルでは、小さい方の75mgカプセルでも「長さが約18mm・直径が約6mmほど」です。NOACの中でも最も薬剤の大きさが小さいリバーロキサバン製剤のイグザレルト®錠が「直径6mm・厚さ2.8mgほど」で、実際に手に取って見てみると大きさの違いをかなり感じます。もちろん小さければ必ずしも良い・・・というわけではないですが、錠剤やカプセルの大きさが大きいと特に嚥下機能が低下した人にとっては飲みにくいことが予想されます。

また、プラザキサ®カプセルは吸湿性が高いため原則として「1包化調剤」に不向きな製剤です。「1包化調剤」とは、「朝」「夕」など服用時点ごとに複数の薬を一緒に1回ごとにパック(分包)する調剤方法です。同じタイミングで複数の薬を飲まなくてはいけない場合には適切な服薬と飲み間違い防止などの観点から非常に有用な手段となります。

もちろんダビガトランは治療に対しての有益性が高い薬ではありますが「カプセルが比較的大きい」「1包化調剤に不向き」という点は、嚥下機能が低下している人や認知症を患っている人などにとってマイナスであり、日本の高齢化を考えるとこれらマイナス面を改善した製剤の開発が待たれるところでもあります。

リバーロキサバン(商品名:イグザレルト®

日本では2012年4月から使われているNOACです。本剤は血液凝固因子の中の第Xa因子の活性を阻害することによって抗凝固作用を示します。臨床試験の結果からワルファリンに劣らないという有効性が確認され、安全性においては特に頭蓋内出血の危険性が少ないと考えられています。

また本剤は通常「1日1回の服用」で治療が可能な製剤で、飲み忘れ防止などの観点からも有用と言えます。またワルファリンや他のNOACに比べても錠剤の大きさが小型で、喉に引っ掛かりにくいのもメリットです。

アピキサバン(商品名:エリキュース®

日本では2013年2月から使われているNOACです。本剤は血液凝固因子の第Xa因子を阻害することによって抗凝固作用の働きを担います。 

心臓弁膜症を伴わない心房細動(NVAF)を持つ人に対する臨床試験において、ワルファリンよりも有効性が高かったという結果も報告されている薬です。また出血性合併症が少なく、特に頭蓋内出血が少ないとされる点などもメリットと考えられています。

本剤は通常「1日2回」の服用を必要とするため、こと服薬という観点では「1日1回」で治療が可能な抗凝固薬に対してやや劣る側面はありますが、高い有効性や出血性の副作用が少ないとされることなどを考えると有用な薬の一つと言えます。

エドキサバン(エドキサバントシル酸塩水和物)(商品名:リクシアナ®

日本では2011年4月に登場したNOACです。血液凝固因子の第Xa因子を阻害することによって抗凝固作用を示します。

本剤は発売当初は、主に膝関節や股関節の全置換術など下肢の整形外科手術を行った人に対して、静脈血栓塞栓症の発症を抑える目的で使われていた薬でした。その後、臨床試験における結果から非弁膜性の心房細動から引き起こされる脳卒中(虚血性脳卒中)及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓梗塞症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制に対して安全性と有効性が確認され、2014年9月にこれらの保険承認が認可されました。

そのため「脳梗塞の治療に対して使われるようになったNOAC」という見方をすれば、ここで説明している薬の中では一番最後に登場した薬とも言えます。

服用中の大出血や頭蓋内出血が少ないとされていることや、リバーロキサバン同様にこの薬も通常「1日1回の服用」で治療が可能な製剤となっていることもメリットと言えます。

抗凝固薬で注意すること

抗凝固薬は「血液を固まりにくくする薬」ですので、すべての抗凝固薬に共通して出血に対しては注意が必要になります。例えば、ワルファリンではPT-INRという数値を検査で確認することで、薬がどのくらい効いているかを判断します。NOACについてもそれぞれの薬に適した検査や腎機能の状態に合わせた調節などによって、薬の効果が安全かつ適切にあらわれるように治療が行われます。

それでも日常生活における出血への配慮は必要で、例えば以下のような事に気をつけると良いでしょう。

  • けがをする可能性のある作業や運動には気をつける
  • 打撲や打ち身などが出やすい運動には気をつける
  • 歯ブラシは歯茎からの出血を考慮してなるべく柔らかいタイプを使う
  • ヒゲを剃る時はなるべく出血の危険性が少ない電気カミソリを使う
  • バイクなど転倒する危険性がある乗り物の運転には気をつける

このように生活の中で注意しつつ、もし出血してしまった場合は慌てずにタオルなどでしっかりと患部を押さえましょう。この際、通常(抗凝固薬を服用していない場合)よりも血液が止まるまで時間がかかることを覚えておいてください。

もちろんひどい怪我などによる出血やタオルなどで止血しても血が止まらない場合、血尿血便が起こった場合などは病院やクリニックの受診も考慮しつつ主治医へ連絡するなど適切な対処が必要です。

抗凝固薬はワルファリン以外にNOACが加わり治療の選択肢が広がってきましたが、では「新しい薬が良いか?」と言えば必ずしもそうとも言えません。ワルファリンには長い間、臨床現場で使われてきた実績などの蓄積がありますが、NOACにはまだそこまでの蓄積はないため、今後の臨床経験の積み重ねが必要とされています。

病気の状態、併用する薬の種類、食事などの日常生活における習慣などを考慮して、薬が選択されます。抗凝固薬を服用する場合には、自分の飲む薬にどのような特徴があって、どういったことに注意しなくてはならないのかを医師や薬剤師からよく聞いておくことが大切です。