[医師監修・作成]脳幹梗塞、小脳梗塞、延髄外側症候群について | MEDLEY(メドレー)
のうこうそく
脳梗塞
脳の血管が詰まって結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 399回の改訂 最終更新: 2021.06.14

脳幹梗塞、小脳梗塞、延髄外側症候群について

脳の中には「脳幹」「小脳」と呼ばれる部分があります。脳幹や小脳に脳梗塞が起こると、他の脳梗塞とは違う症状が現れます。

1. 脳幹・小脳とは?

脳の断面の画像。中脳・橋・延髄をまとめて脳幹と言う。小脳は脳幹の近くにある。

脳幹(のうかん)とは脳の一部です。中脳、橋(きょう)、延髄という部分をまとめて脳幹と呼びます。脳幹は覚醒や呼吸といった生命維持のために重要な働きを担っています。

小脳も脳の一部で、脳幹に隣り合った位置にあります。小脳は手足を滑らかに動かす機能や、体のバランス機能などを担っています。

2. 小脳梗塞と延髄梗塞のについて

脳梗塞(のうこうそく)は脳の組織が死んでしまう病気です。

脳梗塞の原因は脳の血管が詰まってしまうことです。血管が詰まると、組織に血液が来なくなります。血液が来ないと、酸素や栄養素が足りなくなって組織が死んでしまうのです。血管が詰まった先の組織が死ぬことを梗塞と言います。ちなみに、心筋梗塞は心臓に起きた梗塞です。

小脳と延髄は近い位置に存在しますが、症状が異なります。

小脳梗塞の症状について

小脳梗塞では次のような症状が現れます。

【小脳梗塞の症状】

  • バランスが取れない(平衡障害)
  • 立てない(起立障害)
  • 座った姿勢(座位)を維持できない
  • めまい
  • 歩くときにふらつく、転ぶ
  • まっすぐ歩いているつもりなのに、片方に寄ってしまう
  • 嘔吐、吐き気
  • 麻痺はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調
  • ろれつが回らない、しゃべりにくい(構音障害
  • 意識障害
    • ぼんやりしている
    • 会話の応答がおかしい
    • 目をつぶって倒れたまま反応がない

また、小脳梗塞の特徴的な症状に「失調」があります。失調とは、麻痺がなく、それぞれの筋肉に力が入るのにもかかわらず、手足が上手く使えないことです。

例えば「机の上に置いてあるペットボトルに手を伸ばす」という動作を思い浮かべてください。健康な人は、ペットボトルまで直線的に手を伸ばします。一方、小脳梗塞の人では、ペットボトルに手を伸ばそうとしても手が遊んでしまい、うまくペットボトルまでたどり着くことができません。これが失調です。

脳幹(中脳梗塞・橋梗塞・延髄梗塞)の症状について

脳幹に起こった脳梗塞を場合を脳幹梗塞と言います。次のように、さらに細かく分けて呼ぶこともあります。

【脳幹梗塞】

  • 中脳梗塞
  • 橋梗塞
  • 延髄梗塞

それぞれで、症状が異なります。

  • 中脳梗塞の症状
    • 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
    • 手足や顔の麻痺(力が入らない)
    • 眼球の動きが悪い、動かない
    • 意識障害
      • ぼんやりしている
      • 会話の応答がおかしい
      • 目をつぶって倒れたまま反応がない
  • 橋梗塞の症状
    • 手足や顔の麻痺(力が入らない)
    • 麻痺はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調)
    • バランス障害(平衡障害)
    • 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
    • 眼球の動きが悪い、動かない
    • 音が聞こえにくい(難聴
    • 意識障害
      • ぼんやりしている
      • 会話の応答がおかしい
      • 目をつぶって倒れたまま反応がない
  • 延髄梗塞の症状
    • 舌が動かない
    • 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
    • めまい
    • 物が二重に見える(複視
    • 飲み込みができない(嚥下障害
    • しゃべりにくい
    • 片方のまぶたが下がる
    • 手足や顔の麻痺(力が入らない)
    • 麻痺はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調)
    • 呼吸停止、心臓の停止
    • 意識障害
      • ぼんやりしている
      • 会話の応答がおかしい
      • 目をつぶって倒れたまま反応がない

また、脳幹の中でも橋は小脳と密に連結しているため、小脳梗塞に特徴的な「失調」は橋梗塞でも現れます。

3. 脳幹梗塞と小脳梗塞の急性期治療

脳梗塞が起こった直後を急性期と言います。脳幹梗塞では、急性期の治療の目的はまず救命です。後遺症を最小限に抑える目的もあります。
脳幹は脳の中でも生命の中枢を担う部分です。脳幹梗塞が起こるとすぐにも命に関わります。できるだけ早く医療機関で治療することが大切です。
まず行われる主な治療に次のものがあります。

【脳幹梗塞と小脳梗塞の急性期治療】

  • 血管の詰まりを解消し、再発を防ぐ治療
    • 血栓回収
    • 血栓溶解療法(rt-PAなど)
    • 抗凝固療法(アルガトロバン、ヘパリンなど)
    • 血小板療法(アスピリン、クロピドグレル、オザグレルなど)
  • 脳保護療法(エダラボンなど)
  • 悪化を防ぐ治療
    • 脳浮腫の改善(マンニトール、グリセロールなど)
    • 手術(開頭外減圧療法)

rt-PAは発症から4.5時間以内にしか使うことができません。このため脳梗塞の発症に一刻も早く気付いて治療を始めることが重要です。

詳しくは、「脳梗塞の手術とは?脳梗塞急性期のカテーテル治療、rt-PA、外減圧術などを解説」で説明しています。

関連記事:脳梗塞再発予防のための抗凝固薬、ダビガトランの効果(参照文献:Lancet Neurol. 2010 Dec
関連記事:日本発の薬、アルガトロバンで脳梗塞発症後48時間以内に治療(参照文献:Semin Thromb Hemost. 1997
関連記事:脳保護療法の効果、脳梗塞発症後72時間以内のエダラボンが有効(参照文献:Cerebrovasc Dis. 2003
関連記事:脳梗塞の発症後4.5時間以内のrt-PA治療の効果(参照文献:N Engl J Med. 2008 Sep 25

脳梗塞が起こった直後を急性期と言います。脳幹梗塞では、急性期の治療の目的はまず救命です。後遺症を最小限に抑える目的もあります。

脳幹は脳の中でも生命の中枢を担う部分です。脳幹梗塞が起こるとすぐにも命に関わります。できるだけ早く医療機関で治療することが大切です。

4. 脳幹梗塞・小脳梗塞の後遺症と回復の見込み(予後)

脳幹梗塞や小脳梗塞で現れやすい後遺症に以下のものがあります。

  • 特徴的な後遺症
    • 運動麻痺
    • 感覚麻痺
    • 嚥下障害(飲み込みが難しくなる)
    • 排尿障害(尿がうまく出せない)
    • 視覚障害
  • 脳梗塞一般にある後遺症
    • 高次脳機能障害
    • 精神障害

それぞれの症状について詳しくは「脳梗塞の後遺症とは?」で説明しているので、参考にしてください。

脳梗塞から回復できるのか

脳梗塞から回復できる見込み(予後)は以下の要因に影響されます。

  • 脳梗塞の重症度
  • 障害された部分
  • 年齢
  • ほかの持病

リハビリによって症状が劇的に回復する人もいます。一方で、重い後遺症が残る人や死亡に至る人もいます。脳梗塞の後遺症や予後は一人ひとりの個人差が大きいと言えます。

5. 脳幹梗塞と小脳梗塞のリハビリテーション

脳幹梗塞や小脳梗塞の後遺症はリハビリテーションで改善する可能性があります

【脳梗塞の主なリハビリテーション】

  • 歩く練習
  • 基本動作の練習
    • 寝返る
    • 起き上がる
    • 座る
    • 立つ
  • 日常生活動作の練習
    • トイレ
    • 入浴
    • 階段の昇り降り
    • 食事
  • 話す、聞く、飲み込むことのリハビリ(言語聴覚療法)
  • バランス練習

特に、小脳梗塞のリハビリとして次のものを行います。

【小脳梗塞で重点的に行われるリハビリテーション】

  • 目的とする動作の反復訓練
  • 患部の安定を確保
  • 体幹トレーニング
  • 治療的電気刺激

詳しくは「めまい、頭痛、吐き気・・・小脳梗塞の症状とリハビリについて解説」をご覧ください。

6. 延髄外側症候群について

ここまで、脳幹と小脳の脳梗塞について説明してきましたが、最期に、特殊な脳梗塞の症状を説明します。
脳幹の中でも、延髄の外側の部分が脳梗塞で障害された状態を延髄外側症候群ワレンベルグ症候群)と呼び、特徴的な症状が現れます。

延髄外側症候群の主な症状】

  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気
  • ふらつき
  • 味覚障害
  • ラテロパルジョン

ラテロパルジョン(lateropulsion)とは、片側に身体が倒れていってしまう症状です。ラテロパルジョンは延髄外側症候群に特徴的です。