くもまくかしゅっけつ
くも膜下出血
脳血管の一部が破裂して、くも膜と脳の隙間に出血が起こる脳卒中。突然の激しい頭痛・意識障害などが特徴だが、症状が軽い場合もある
25人の医師がチェック 392回の改訂 最終更新: 2018.07.18

くも膜下出血の治療について:手術・カテーテル治療・リハビリテーション

くも膜下出血の治療には「発症直後の再出血を予防する治療」「出血を起こした原因の治療」「リハビリテーション」の3つがあります。ここではそれぞれについて詳しく説明していきます。

1.くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療は主に次の3つがあります。

  • 発症直後の再出血を予防する治療
  • くも膜下出血の原因の治療
  • リハビリテーション

この文字だけを見ただけでは具体的なイメージが湧きにくいと思いますので、それぞれの治療の役割について以下で詳しく説明していきます。

2.発症直後の再出血を予防する治療

くも膜下出血は、最初の出血の後に再出血することが知られています。

再出血が起きるとその後の経過に悪影響を及ぼすことがわかっているので、できる限り防ぐ必要があります。再出血はちょっとした刺激で起こりかねないので、次の4つが重要です。

  • 安静を保つ:鎮静
  • 痛みをできる限り抑える:鎮痛
  • 血圧を下げる:降圧
  • 脳の周りの圧力を下げる:頭蓋内圧のコントロール

それぞれについてもう少し詳しく説明します。

安静を保つ:鎮静

くも膜下出血による頭痛や吐き気は激しいものがあります。痛みが激しいとじっとしていることができません。このような身体の動きは再出血の原因になりうることが知られています。このため、痛みや吐き気で安静を保てない場合は、痛み止めや吐き気止めに加えて意識をぼーっとさせる薬などを使います。

痛みをできる限り抑える:鎮痛

くも膜下出血による頭痛は「これまでの人生で経験したことがない」と例えられるほど激しいものがあります。この激しい痛みの刺激によっても再出血することが知られています。このため、できるだけ痛みは抑えなければなりません。麻薬性鎮痛剤などを用いて痛みが取り除かれます。

血圧を下げる:降圧

再出血の原因の1つに血圧の上昇があります。

くも膜下出血による激しい頭痛のために血圧が急上昇することがあり、再出血の危険性を高めます。このため、血圧は120-140mmHg(収縮期血圧)を目安に保っておくのが望ましいとされています。血圧を適正な値に保つために、数分おきに血圧を測定して、高い場合には点滴で血圧を下げる薬を投与します。

脳の周りの圧力を下げる:頭蓋内圧のコントロール

くも膜下出血が起こると脳の周りの圧力(頭蓋内圧)が上昇して、脳にダメージを与えることが知られています。圧力を下げるには脳の周りにある髄液を減らすことが有効です。

髄液を減らすために、マンニトールグリセオールという利尿剤が使われます。

3.くも膜下出血の原因の治療

くも膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤の破裂です。ここでは脳動脈瘤破裂が原因の場合の治療について説明します。

脳動脈瘤が破裂した場合には、再出血を防ぐために脳動脈瘤の治療を行う必要があります。治療は主に「手術(脳動脈瘤頸部クリッピング術)」と「カテーテル治療」の2つです。

治療はいつ行われるのか

脳動脈瘤の破裂によってくも膜下出血が起こった場合、脳動脈瘤に対する治療(手術もしくはカテーテル治療)は発症から72時間以内に行われることが望ましいと考えられています。ただし、治療は身体に負担がかかるので、全身状態が治療に耐えられると判断された場合に行われます。

発症から72時間経過している場合には、脳血管攣縮という重い合併症が起こる可能性が高くなることが知られており、治療には向かない時期だと考えられています。そのため、全身状態や出血の程度などを踏まえてしばらく時間をおいてから治療が行われます。

手術:脳動脈瘤頸部クリッピング術

手術では、頭を開いて破裂した脳動脈瘤の根っこに洗濯バサミのような医療用のクリップをかけて、コブへの血流を遮断します。クリップ用いることから脳動脈瘤頸部クリッピング術とよばれます。

脳動脈瘤への血流を遮断することで、再破裂の危険性を下げることができます。

カテーテル治療:脳動脈瘤コイル塞栓術

医療行為に用いられる細い管のことをカテーテルといいます。手や足の血管からカテーテルを挿入して、脳や心臓など離れた場所の血管の治療をすることができます。治療部位を直接切り開くことがないので、身体への負担が軽くてすむ方法です。 脳動脈瘤の治療では、足の付け根の血管から挿入したカテーテルを脳の血管まで到達させて治療を行います。具体的にいうと、カテーテル越しにコイル状の詰め物を脳動脈瘤におくりこんで、コブに詰め物をして血流をなくします。コブへの血流をなくすことで破裂する危険性を下げることができます。

治療法はどのようにして選ばれるのか?

手術とカテーテル治療には2つがあり、患者さんの身体の状態や脳動脈瘤の形・場所をふまえて治療法が選ばれます。

「大きなもの」や「根本が広がったもの」といった形の脳動脈瘤にはカテーテル治療より手術の方が向いていると考えられています。一方で、「脳動脈瘤ができた場所が脳の奥にある場合」や「身体が手術に耐えられない場合」にはカテーテル治療が選ばれます。

4.リハビリテーション

くも膜下出血が起こると後遺症が残ることがあります。

後遺症を軽くして上手に付き合っていくために、リハビリテーションは欠かすことができません。リハビリテーションの目的や実際について説明します。

リハビリテーションの目的

くも膜下出血が起こると、その影響で脳細胞が死んでしまうことがあり、その部分が担っていた役割は失われてしまいます。その結果、「手足の麻痺」や「言葉のしゃべりにくさ」などの症状があらわれます。脳細胞は一度死んでしまうと元通りになることはありません。リハビリテーションの目的は、失われた機能を他の部分で補うことにあります。リハビリテーションが進んで、新しい身体の動かし方を脳が学習すると、少しずつ身体を動かせるようになります。

リハビリテーションの実際

次に、実際のリハビリテーションはどうやって進められるのかを説明します。くも膜下出血と一口に言っても、後遺症は軽い人から重い人までさまざまです。後遺症の状態に合わせて、リハビリテーションもさまざまな形で行われます。

例えば次のようなものがあります。

  • 理学療法
    • 歩く
    • 起きる
    • 座る
    • 立つ
    • 歩く など
  • 作業療法
    • 食事をする
    • 文字を書く
    • 着替えをする
    • 掃除をする など
  • 言語聴覚療法
    • 話す
    • 飲み込む

理学療法では、「歩く」、「起きる」、「座る」など日常生活の基本的な動作のリハビリテーションを行います。作業療法では、「食事をする」、「文字を書く」、「着替えをする」など、より細かな動きが要求される作業が行われます。言語聴覚療法では、話すことに加えてものを飲み込む動作を練習します。リハビリテーションのメニューは、一人ひとりの後遺症の状態に合わせて考えられます。

リハビリテーションは主に施設で行われますが、自宅での生活でも行うことができます。例えば、施設で箸を使う訓練がはじまったのであれば、それを自宅の食卓でも取り入れるのは立派なリハビリテーションの1つです。リハビリテーションのスタッフに、日常生活への組み込み方について相談してみると、より上手にリハビリテーションが行えることが期待できます。

5.くも膜下出血の治療にかかる入院期間はどのくらいか

くも膜下出血と一口にいっても、症状の軽い人もいれば意識がなくなるほど症状が重い人もいます。そのため入院期間も症状によって異なります。

軽症であっても入院は数週間に及ぶことが多いです。それは、くも膜下出血が起きた1−2週間後には、脳血管攣縮という重い合併症が起こりやすいことが知られており、慎重に経過をみる必要があるからです。

くも膜下出血の入院期間は長期に及ぶことが多く、不安のために精神的にもつらい状況に置かれることがあります。もし、精神的なつらさを抱えているのであれば、主治医などに打ち明けて、できるだけ心の重荷を少なくするようにしてくみてください。

6.くも膜下出血の治療ガイドラインはあるのか

診療ガイドラインは、治療成績や安全性の向上などの目的のために作成されています。くも膜下出血は「脳卒中治療ガイドライン」に治療の方針が示されています。

ガイドラインは数年に一回は改訂が行われており、時代の流れの変化にも対応できるようになっています。

お医者さんはガイドラインを中心に治療を組み立てていますが、ガイドライン通りに治療することが正しいこととは限りません。ガイドラインの改訂前に新しい治療が浸透したり、不明だった治療の成績が明らかになって治療法が変わることもありえます。また、ガイドラインは患者さんの細かな身体の状態を反映しているわけではありません。一人ひとりに最適な治療を行えるようにガイドラインはアレンジして使われています。

参考:

脳卒中治療ガイドライン