くもまくかしゅっけつ
くも膜下出血
主に脳の表面にある血管が破裂して、くも膜と脳の隙間に出血が起こる脳卒中。突然の激しい頭痛・意識障害などが特徴だが、症状が軽い人もいる
25人の医師がチェック 402回の改訂 最終更新: 2023.08.18

くも膜下出血で知っておきたいこと

くも膜下出血と聞くと、怖い病気だと想像する人もいれば、ピンとこない人までさまざまだと思います。ここでは、くも膜下出血の全体像をつかむために知っておいて欲しいことを説明します。

1.くも膜下出血は何歳くらいの人が多いのか

くも膜下出血は決して高齢者に限った病気ではなく、働き盛りの人にも注意が必要な病気です。男性では、発症した人の半数が55歳以下であったという研究報告があります。比較的少ないですが、20代で発症する人もいます。若い人も他人事とは思わずに正しい知識を得るようにしてください。

参考: A systematic review of Terson's syndrome: frequency and prognosis after subarachnoid haemorrhage. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004 Mar;75(3):491-3.

2.くも膜下出血で死亡することがあるのか?生存率は?

くも膜下出血は命を落とすこともある病気です。研究報告によって少し幅がありますが、死亡率は10−67%とされています。そして、そのなかには発症から短時間で亡くなってしまう人も含まれてます。また、一命をとりとめた場合にも重い後遺症が残ることもあります。

深刻な状態を起こしやすい一方で、軽症でほとんど後遺症を残さずに社会復帰する人もいます。

参考文献
Subarachnoid haemorrhage: diagnosis, causes and management. Brain. 2001 Feb;124(Pt 2):249-78.
Factors affecting outcome after surgery for intracranial aneurysm in Glasgow. Br J Neurosurg. 1991;5(6):591-600.
Outcome after aneurysmal subarachnoid haemorrhage: the use of a graphical model in the assessment of risk factors. Acta Neurochir (Wien). 1998;140(10):1019-27.

3.くも膜下出血は予防できるのか

くも膜下出血に関係している生活習慣や持病は次のものです。

これらの生活習慣や持病がある人は、ない人に比べてくも膜下出血を起こしやすいことがわかっています。くも膜下出血は生命に危険を及ぼすとても怖い病気ですから、少しでも発症の危険性を下げるような取り組みをしてみてください。

喫煙や過度の飲酒は改善できる生活習慣なので、禁酒(または節酒)や禁煙に取り組んでみてください。また、高血圧症も食事療法や運動療法、薬物療法によって治療することができます。

さらに詳しい情報は「くも膜下出血の原因」で説明しているので参考にしてください。

4.くも膜下出血は再出血することはあるのか

くも膜下出血は再出血することがあり、再出血が起こるとその後の経過を悪くすることが知られています。再出血が多いのは発症から24時間以内とされています。この間は特に注意が必要なので、集中治療室などで全身の状態細かく観察されて、必要に応じて治療が行われます。

そして、再出血をしないように出血を起こした部位の治療が重要です。くも膜下出血の80%以上は脳動脈瘤の破裂が原因です。破裂した後も、脳動脈瘤を治療しないと再び出血する危険性が残ります。このため、全身状態がよければ発症から72時間以内に脳動脈瘤の治療をすることが望ましいとされています。脳動脈瘤の治療については「くも膜下出血の治療」で詳しく説明しているので参考にしてください。

5.くも膜下出血になると後遺症は残るのか

くも膜下出血を起こした後には後遺症が残ることがあります。後遺症は大きく分けて次の2つです。

  • 身体の麻痺
  • 高次脳機能障害

身体の麻痺は手や足が動かなくなったり、ものを上手に飲み込めなくなったり、言葉をうまく話せなくなったりと、さまざまな形で現れます。

一方、高次脳機能障害は記憶や注意などの情報処理がうまくできなくなることを指します。このために、記憶障害が起きたり、注意障害、遂行機能障害などが起こります。後遺症に関して詳しい情報は「くも膜下出血の症状」で説明しているので参考にしてください。

この後遺症を軽くするために、リハビリテーションを行います。後遺症は一人ひとりで異なるために、それに応じてリハビリテーションもさまざまな形で用意されます。

リハビリテーションについての詳しい情報は「くも膜下出血の治療」で説明しているので参考にしてください。

6.くも膜下出血になっても社会復帰できるのか

くも膜下出血と一口に言ってもその程度はさまざまなため、社会復帰について一概に言うことはできません。くも膜下出血の程度が軽くすんだ場合には、後遺症なく社会復帰ができることも期待できます。また、後遺症が残った場合であっても、リハビリテーションを行い後遺症が軽くなれば、以前のように社会復帰が可能な場合があります。

くも膜下出血後には重い後遺症が残ることもあり、そのためリハビリテーションも長引くことがあります。リハビリテーションは、積み重ねることによってその効果が徐々に大きくなりますが、日々のリハビリテーションが精神的にも肉体的にも大変だと感じることが出てくるかもしれません。続けるのが辛いと感じたときには、まずはリハビリテーションスタッフにその気持ちを伝えてみてください。無理なく続けられる方法を一緒に考えたりしてくれます。