くもまくかしゅっけつ
くも膜下出血
脳血管の一部が破裂して、くも膜と脳の隙間に出血が起こる脳卒中。突然の激しい頭痛・意識障害などが特徴だが、症状が軽い場合もある
25人の医師がチェック 392回の改訂 最終更新: 2018.07.17

くも膜下出血の検査について:CT検査・MRI検査・髄液検査など

くも膜下血腫を疑われるにはまず症状を正確に伝える必要があります。そして、くも膜下出血が疑われた場合には、さまざまな検査が行われて詳しく調べられます。ここでは身体診察や検査などについて説明します。

1.問診:状況の確認

問診とは自覚症状や生活背景について医療者が患者に尋ねる診察です。困っている症状に加えて飲んでいる薬や持病、過去に経験した病気などさまざまなことが聞かれます。

ただ、くも膜下出血が疑われる人は意識がない場合もあります。その場合は問診は家族や周りの人に行われることもあります。

くも膜下出血が疑われる人が医療機関を受診した場合には、以下のような質問を受けることが多いです。

  • 症状について
    • どんな症状を自覚するか
    • 症状はどの程度か
    • 症状はいつ起きたか
    • 症状に変化はあるか
    • 他にも症状はあるか
  • 喫煙はどの程度するか
  • 飲酒はどの程度するか
  • 持病や過去に経験した病気はあるか
    • 通院中の持病
    • 入院歴
    • 手術歴
  • 内服中の薬はあるか
  • 血のつながった家族でくも膜下出血を起こした人はいるか

それぞれの問診についてもう少し詳しく説明します。

症状について

くも膜下出血では頭痛が起こることが多いです。

そして、その頭痛は「突然ハンマーで殴られたような痛み」「人生で最も激しい頭痛」と例えられます。「今までに経験したことがあるか」や「普段から頭痛をよく感じるか」なども伝えるようにしてください。

脳動脈瘤が原因でくも膜下出血が起きた場合、発症後72時間以内に出血を起こした脳動脈瘤を治療することが勧められています。このため、症状を感じた時間はできるだけ正確に伝えるようにしてください。

喫煙はどの程度するか

くも膜下出血は喫煙者に多いことがわかっています。どの程度の喫煙習慣があるのか、またはあったのかを具体的に伝えてください。例えば「30年前から1日20本」などと表現すると伝わりやすいです。

飲酒はどの程度するか

喫煙者と同様に飲酒量が多い人も、くも膜下出血が起きやすいことが知られています。喫煙本数と同様に「1日ビールを2本、ほぼ毎日」と具体的に伝えるようにしてください。

持病や過去に経験した病気はあるか

治療中の病気について詳しく説明してください。持病は、くも膜下出血と関係していたり検査の際に注意が必要であったりします。一見関係なさそうに思える病気でも伝えるようにしてください。

内服中の薬はあるか

薬を定期的に飲んでいる人は、どのような薬を飲んでいるかをもらさずに伝えるようにしてください。服用中の薬の種類によってはできない検査もあります。とはいえ薬をたくさん飲んでいると薬をすべて伝えるのが簡単ではなくなります。その場合にはお薬手帳を使うとよいでしょう。お薬手帳には「薬の種類」や「薬の開始日」、「薬の容量」などが記載されているので、うまく活用して上手に医療者にお薬の情報を伝えてください。

血のつながった家族でくも膜下出血を起こした人はいるか

血のつながった家族にくも膜下出血を起こした人がいると、くも膜下出血を起こしやすいことが知られています。もし家族にいる場合は医療者に伝えてください。

2.身体診察

身体診察では、身体のすみずみを調べて客観的な評価が行われます。くも膜下出血が疑われる場合には主に以下のような診察が行われます。

  • 意識レベルの確認
  • バイタルサインの測定
  • 神経診察

それぞれの診察方法について以下で説明をします。

意識レベルの確認:意識状態の程度

呼びかけや身体への刺激の反応から意識状態が確認されます。くも膜下出血が起きると意識状態に影響を及ぼすこともあれば、正常なこともあります。意識状態はくも膜下出血の重症度を現すグレード分類というものに用いられます。

くも膜下出血のグレード分類はこのページで後述します。

バイタルサインの測定

バイタルサインは「vital signs(バイタルサインズ)」のことを指し、生命徴候という意味です。生命に危険が迫っているとバイタルサインに異常が現れます。バイタルサインは以下の6つを指すことが多いです。

  • 脈拍数
  • 呼吸数
  • 体温
  • 血圧
  • 意識状態
  • 酸素飽和濃度

バイタルサインを確認することで、身体に異常を起こしている原因の見当をつけることができます。くも膜下出血は、発症直後から生命に危険を及ぼすことのある病気です。

そのため、生命への危険性をすばやく知ることができるバイタルサインの測定は、特に重要です。状態が変化することもあるので、バイタルサインは何度も測定されます。

神経診察

神経診察では、脳の異常による身体の動きや機能への影響が調べられます。神経診察はさまざまな方法で行われます。

例えば、脳神経を調べる際には匂いを嗅いだり、目を動かしたり、顔の表情をつくったりして、その様子に異常がないかなどが観察されます。

くも膜下出血の際には、髄膜刺激症状の有無が大事になってきます。髄膜刺激症状についてもう少し詳しく説明します。

■髄膜刺激症状

髄膜とは脳を覆う膜のことで、くも膜もその一部を構成しています。くも膜下出血では、出血が髄膜に刺激を与えて、髄膜刺激症状とよばれる特徴的な症状が現れます。髄膜刺激症状の有無を調べる際にお医者さんが行う診察の方法を紹介します。

  • 項部硬直の有無を調べる診察

首が固くなっているかどうか確かめる診察です。仰向けに寝た患者さんの頭部を持ち上げたときに抵抗があると、項部硬直があると言います。
項部硬直は頭を持ち上げると髄膜が引き伸ばされて刺激が起こる痛みに対して反射的に緊張して抵抗が生じるために現れる症状です。

  • ケルニッヒ徴候

仰向けに寝た患者さんの片足を、膝を曲げた状態で持ち上げて股関節を曲げます。股関節を曲げた状態で膝を伸ばそうとしても膝がのびきらないと、ケルニッヒ徴候が陽性であると判断されます。それ以外にも、膝から下を伸ばしたまま股関節を曲げようとすると膝の関節が曲がってしまう場合もケルニッヒ徴候が陽性だと判断されます。

  • ジョルト・サイン

ジョルト・サインでは1秒間に2−3回首を左右に振ってもらって、振る前に比べて頭痛が強くなるかどうかをみます。頭痛がひどくなる場合はジョルト・サインは陽性、つまり髄膜刺激症状がある疑いが強くなります。

他にもさまざまな方法が神経診察にはありますが、専門的な内容を多く含むのでここでは割愛します。

神経診察を行うことによって「くも膜下出血が起きているか」や「脳や神経に異常が起きているか」をより詳しく調べられます。くも膜下出血の疑いが強いと判断された場合には、画像検査などを行いさらに詳しく調べられます。

3.画像検査

くも膜下出血を調べるための画像検査は、頭部CT検査頭部MRI検査の2つがあります。それぞれの特徴について詳しく説明します。

頭部CT検査

CT検査は放射線を利用して身体の中を画像化する検査です。

激しい頭痛でくも膜下出血が疑われる場合には、頭部CT検査が行われます。頭の中で出血をした場合、頭部CT検査では出血の部分が白く映し出されます。典型的なくも膜下出血の場合、出血した部分が白い五角形の形(ペンタゴンサイン)をしています。

また、造影剤という薬を注射して行うCTアンギオグラフィという検査もあります。CTアンギオグラフィでは、くも膜下出血の原因となっている脳動脈瘤脳動静脈奇形などを見つけることが可能です。

頭部CT検査はくも膜下出血の診断には有効です。また後述するMRI検査と比べて検査時間が短いので、治療を早くはじめられる利点があります。

頭部MRI検査

MRI検査は磁気を利用した検査で、放射線を使うことはありません。このため被曝の心配もありません。頭部MRI検査は、頭部CT検査でくも膜下出血とはっきりと診断ができなかった場合に行われます。

また、頭部MRI検査には、MRアンギオグラフィというCTアンギオグラフィに似た方法もあります。MRアンギオグラフィは血管の形をみる検査で、くも膜下出血の原因になる脳動脈瘤脳動静脈奇形などを見つけることができます。アレルギーや持病のために造影剤を使えない人には、CTアンギオグラフィではなくMRアンギオグラフィが行われることがあります。

MRI検査は、CT検査に比べて詳しい情報を得られることもあるのですが、全員に行われるわけではありません。なぜなら、MRI検査はCT検査に比べて時間がかかるので、全身の状態が悪い場合など一刻を争う状況には向いていないからです。

4.髄液検査

髄液検査は、背骨の間に針を刺して髄液を取り出して調べる検査です。なぜ脳の検査で背骨の髄液を調べるのでしょうか。髄液は、背骨からくも膜のある「くも膜下腔」までつながって満たされている液体です。そのため、背骨からとった髄液からでも、脳で起きていることの手がかりが得られるのです。具体的に言うと、脳動脈瘤の破裂でくも膜下出血が起きると、本来は透明なはずの髄液が橙色(キサントクロミー)になります。

髄液検査は、くも膜下出血が疑われる人全員に行われる検査ではありません。頭部CT検査や頭部MRI検査に比べて身体への負担が大きいので、他の検査でくも膜下出血が否定できないときに行われます。

髄液は腰椎穿刺という方法で取り出されます。詳しい検査の方法は「腰椎穿刺(ルンバール)の目的、方法、合併症」で説明しているので参考にしてください。

5.脳血管造影検査:血管の形を詳しく調べる検査

くも膜下出血が起こったとがわかった後には原因を調べます。くも膜下出血の原因は約80%が脳動脈瘤の破裂で、他には脳動静脈奇形からの出血などがあります。

脳血管造影検査では、主に脳血管の形を調べることができます。脳血管の形は頭部CT検査(CTアンギオグラフィ)や頭部MRI検査(MRアンギオグライフィ)でも調べることができますが、脳血管造影検査は、検査に引き続いて治療ができる点が異なります。

脳血管造影検査の後に引き続いて行われる治療は「くも膜下出血の治療」で詳しく説明しているので参考にしてください。

6.くも膜下出血の重症度分類:グレード分類

くも膜下出血の重症度には幅があります。重症度を現す指標として、グレード分類というものが臨床現場では用いられています。臨床現場で用いられているグレード分類の1つを紹介します。この分類は細かくおぼえる必要はまったくありません。お医者さんはこのような判断基準を用いて最善の方法を考えている、という理解の仕方で問題ありません。

【Hunt and Hess分類】

グレードI 無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる
グレードII 中等度から強度の頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみられない
グレードIII 傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの
グレードIV 昏睡状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害をともなうこともある
グレードV 深昏睡状態で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示すもの

Hunt and Hess分類では、患者さんを身体診察した所見から5段階のグレードに分けられます。グレードの数字が大きいほど、状態が深刻であることを意味しています。

くも膜下出血の発症後は再出血を防ぐために治療が必要です。再出血を防ぐ主な治療は手術もしくはカテーテル治療です。これらの治療は再出血を予防するには有効ですが、負担を伴います。このため、治療に身体が耐えられるかを判断する必要があり、グレード分類はそのためにも用いられます。

参考:

Hunt WE, Hess RM. : Surgical risk as related to time of intervention in the repair of intracranial aneurysms. J Neurosurg. 1968, 28 : 14-20