◆48人を対象に分析
今回の研究は、ドイツの研究チームが、アルコール依存症の患者48人を対象に、心拍の変動を見せながら訓練を行うことによる心理的効果を調査しました。対象者は2週間の入院治療とリハビリを継続し、通常のリハビリのみを行う「対照群」と、通常のリハビリに加えて、心拍変動をモニタリングしながら訓練を行う「バイオフィードバック」群に分け、効果を検証しました。
バイオフィードバック群では、心拍の変動の様子をモニター画面に提示し、呼吸を調整しながら心拍数を変動させるというような訓練を行いました。
◆アルコールに対する渇望や不安感が軽減
結果は以下の通りとなりました。
計量的心理テストでの結果は、バイオフィードバック群では介入直後から、アルコールに対する渇望が減少した(強迫的飲酒尺度:バイオフィードバック後8.6±7.9 vs. ベースライン13.7±11.0[平均±標準偏差]、P<0.05)が、対照群では渇望の変化は認めなかった。また、バイオフィードバック群では、退院3週間後と6週間後でも不安感の減少を認めたが、対照群での変化は認められなかった(P<0.05)。
アルコール依存症の人に対して、心拍の変動に注意を促しながらリハビリを行うことで、自律神経のバランス調節能力の改善が期待でき、アルコールに対する渇望(欲求)やアルコールを飲まないことに対する不安感は減少するという結果でした。
今回の研究結果より、心拍数の変動に関するフィードバックが、断酒につながる一歩となり得ることが示唆されました。現在の医療ではアルコール依存症に対しては、断酒以外の選択肢はありません。当たり前かもしれませんが、お酒とは上手に付き合い、適量を嗜む程度が良いのではないでしょうか。
執筆者
Heart rate variability biofeedback in patients with alcohol dependence: a randomized controlled study.
Neuropsychiatr Dis Treat. 2015 Oct 9.
[PMID: 26557753]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。