◆抗凝固薬の血栓予防と出血リスク
心房細動が起こると心臓内に血の塊(血栓)が生じることがあり、この血栓が血流に乗って脳へと流れこむと脳梗塞を引き起こします。脳梗塞予防のため、心房細動を起こした患者には抗凝固薬が用いられます。
しかし抗凝固薬は血液の凝固を抑える薬剤であるため、血栓を予防する効果と同時に出血が増加するリスクも生じるため、使用する際はこれら両方の作用のバランスを考えることが重要です。
特に老人の場合、加齢や何らかの病気により内臓機能が低下していることによって、薬剤を分解する能力が低下していることがあります。想定よりも長く薬剤が体内に留まってしまい、予期せぬ大出血に繋がる可能性も存在するため、老人に対する薬の使用には細心の注意を要します。
◆11件の研究データを再解析
研究チームは、75才以上の患者に対する4種の抗凝固薬(DOAC)の効果と出血リスクを、同様に抗凝固作用を持つビタミンK拮抗薬と比較した過去の研究報告11件を集め、データをまとめた解析を行いました。
ビタミンK拮抗薬は、DOACより前から使われている抗凝固薬で、ビタミンKの多い納豆などの食べ物を食べてはいけないなどの制限があります。DOACには食事制限はありません。
◆4種の薬剤のうち、1種に出血リスクとの関連
調査の結果、次のように報告されました。
老齢の患者において各DOACの血栓リスク管理の効果はビタミンK拮抗薬と同等か、より優れていた。
血栓の予防効果はDOACとビタミンK拮抗薬で同等か、DOACの方が優れていることが分かりました。
出血リスクについては次のように報告されました。
ダビガトラン150mg(1.78 , 1.35-2.35)、ダビガトラン110mg(1.40 , 1.04-1.90)処方時に有意に高い胃腸部における出血リスク、ダビガトラン150mg(0.43、0.26-0.72)、ダビガトラン110mg(0.36、0.22-0.61)処方時に有意に低い頭蓋内出血リスクが観察された。
DOACの1つであるダビガトランで胃腸における出血リスクが高く、頭蓋内出血はビタミンK拮抗薬よりも少ないという関連が認められましたが、残りの3つについてはデータが不足していました。
薬剤には必ず副作用がありますが、こうした副作用の研究が進めば副作用を適切にコントロールし、患者の負担を最小限に抑えられるようになるかもしれません。
執筆者
Efficacy and Harms of Direct Oral Anticoagulants in the Elderly for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation and Secondary Prevention of Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis.
Circulation. 2015 Jul 21
[PMID: 25995317]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。