2015.11.26 | コラム

鍼灸はどんな作用をもたらすのか?

鍼灸が生体にもたらす治療的作用

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鍼灸治療は様々な効果がありますが、どのような作用によって効果が得られているのでしょうか。鍼灸治療が体にもたらす作用について解説します。

古くから様々な治療に用いられてきた鍼灸ですが、昔の人々は鍼の効果について、生体内で起こる細かな機序の理解というよりも、「色々試した結果、こんな事に効果がある、こんな事が起こる」といった、経験から得られる結果をもとに治療を確立していきました。

現代では、鍼灸の現代医学的な実験研究などにより、その機序が徐々に解明されつつあります。これにより、鍼灸の治療をおこなう事によって、どのような治療的作用があるのかが明らかになってきました。

 

◆調整作用

組織や器官に刺激を与える事によって、機能の調整をする。

  • 興奮作用:知覚(熱い、冷たい、痛いなどの感覚)の減弱や消失、神経の機能減弱(運動麻痺など)、内臓の機能減弱などを興奮させる作用
  • 鎮静作用:痛みや痙攣など、機能が異常に高ぶっている状態を鎮静させる作用

 

◆誘導作用

鍼灸の施術によって、血流を誘導して患部の血流を調節する。

  • 患部誘導法:血行障害に対して、患部への直接施術によって血流を患部に集め、血行の改善を図る
  • 健部誘導法:局所の充血や炎症などに対し、そこから少し離れた部位に施術して血流を分散させるなど、患部の血流を調節する

 

◆鎮痛作用

もともと生体に携わっている内因性鎮痛機構(痛みをコントロールする生体内のシステム)を活性化することにより、脳内物質の働きや神経作用などによって鎮痛効果が得られる。

 

◆免疫作用

施術により白血球やマクロファージなどの免疫に関わる細胞などが増え、生体の防御能力や免疫機能を高める。

 

様々な作用を挙げましたが、まとめると、正常範囲からはみ出た異常な状態を、生体がもともと持つ機能をうまく利用して正常範囲内に戻すような作用が起こる、と説明できます。

これらの作用の機序は非常に複雑で、神経作用や体内物質などが相互に影響し合って出現しています。例えば、鍼を刺すだけで腰痛が改善した、という現象は何とも不思議に思えますが、効く理由があっての効果であることが、研究が進むにつれてますます明らかになっていくでしょう。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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