◆1,840名にCMR検査
心臓は、「心筋」と呼ばれる特殊な筋肉でできています。心筋梗塞で機能が低下した心筋は「瘢痕組織」という組織に変化していきます。瘢痕組織は筋肉ではないので収縮力がなくなり、心臓の機能は低下してしまいます。今世紀に入って広く普及してきたCMRという心臓のMRI検査では、心筋梗塞の痕が瘢痕になっていることがはっきり分かります。今回研究班は、米国在住の心臓や血管の病気を指摘されていない45歳から84歳までの中高年1,840名にCMR検査を行い、心筋瘢痕がどの程度の人に見つかるか、また心筋瘢痕がある人に関連する背景を調べました。
◆心筋瘢痕の有病率が7.9%
心筋瘢痕は7.9%の人に見つかり、そのうち78%が心電図や診察では未診断でした。高年齢・男性・高BMI・高血圧・喫煙・高い冠動脈石灰化スコアが心筋瘢痕と関連していました。
糖尿病の患者さんが心筋梗塞を発症しても自覚症状がない場合があることはよく知られていましたが、今回の結果ではリスク因子には入っていません。以後の検討の大きなテーマになりそうです。
CMR技術の進歩により、無症候性心筋梗塞の有病率はだんだんとはっきりしてきました。この研究の結果から、心筋梗塞を診断されたことがない人の8%ほどが以前に心筋梗塞を経験していて、そのうち80%ほどが症状がなく見つからなかったと考えると、無症状の心筋梗塞は6%強とみられます。2012年に、アイスランド人936名の高齢者を調べて、その有病率が17%にものぼる、という報告もあります。
今回の結果はより低く、こちらの方が確実な数字とも見られますが、どちらにしても無症候性心筋梗塞の有病率は症候性心筋梗塞のそれ(2010年のアメリカで45-64歳の場合7.1%)に近い、つまり、心筋梗塞の半分近くは痛くない、ということになります。
痛くないのは梗塞が小さいから、という可能性もあり、高リスクの人がCMR検査を受けるようになれば、もっと発見されやすくなるでしょう。
執筆者
Prevalence and Correlates of Myocardial Scar in a US Cohort.
JAMA. 2015 Nov
[PMID: 26547466] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26547466※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。