◆圧迫装置を取り入れた人の蜂窩織炎の発症率を検証
リンパ浮腫の治療法のひとつに、圧迫療法があります。通常は、療法士や看護師の手や弾性包帯を用いて圧迫することが多い一方で、病院によっては圧迫装置を用いることもあります。 リンパ浮腫が起きると、体の組織の中に水分が溜まり循環が悪くなります。通常であれば、水分が循環することにより細菌が侵入しても白血球がやっつけることができるのですが、リンパ浮腫になると細菌が繁殖し、感染症を起こしやすくなります。その感染症のひとつが、蜂窩織炎です。
今回の研究では、アメリカの調査で得られたデータを使い、リンパ浮腫の圧迫装置による治療を取り入れた人が、圧迫装置を使う前と後で蜂窩織炎の発症率に違いがあるか検証しました。
◆圧迫装置の利用と蜂窩織炎の発生率減少に関連性あり
以下の結果が得られました。
どちらのコホートにおいても、APCDの利用は、蜂窩織炎(がんのコホートでは21.1%から4.5%、がんではないコホートでは28.8%から7.3%でどちらもp<.001)、リンパ浮腫に関連した徒手療法(がんのコホートでは35.6%から24.9%、がんではないコホートでは32.3%から21.2%でどちらもp<.001)、外来受診(がんのコホートでは58.6%から41.4%、がんではないコホートでは52.6%から31.4%でどちらもp<.001)の調整済み発生率の類似した減少と関連していた。
圧迫装置の利用と、蜂窩織炎の発症率減少が関連しているという結果でした。
リンパ浮腫による蜂窩織炎から、敗血症など重症の状態が引き起こされることもありえます。こうした研究からリンパ浮腫の有効な治療法が探られることにより、リンパ浮腫の症状だけでなく、危険な病気を予防することにもつながるかもしれません。
執筆者
The Cutaneous, Net Clinical, and Health Economic Benefits of Advanced Pneumatic Compression Devices in Patients With Lymphedema.
JAMA Dermatol. 2015 Oct 7
[PMID: 26444458]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。