2015.11.05 | ニュース

エンテロウイルスD68は、どれぐらいの率で急性弛緩性麻痺を起こすのか?

ヨーロッパ1万7千回の検査から

from Journal of clinical virology : the official publication of the Pan American Society for Clinical Virology

エンテロウイルスD68は、どれぐらいの率で急性弛緩性麻痺を起こすのか?の写真

エンテロウイルスD68の感染により、手足が動かないなどの急性弛緩性麻痺が起こる可能性が懸念されています。急性弛緩性麻痺がどの程度の頻度で起こるのか、ヨーロッパでの調査結果が報告されました。

◆ヨーロッパ17か国で呼吸器症状のある子どもを検査

研究班は、2014年7月1日から12月1日の間に、ヨーロッパ17か国にわたる施設で、呼吸器症状のある、主に16歳未満の子どもを対象に、のどなどからサンプルを取り出して検査を行い、エンテロウイルスD68が見つかるかどうかを調べました。

 

◆エンテロウイルスD68は2%、うち急性弛緩性麻痺は3例

次の結果が得られました。

[...]42の施設が17,248件の検体を分析し、389件のEV-D68陽性検体を見出した(2.26%)。

これらの感染は一次性に軽度の呼吸器疾患を起こし、主に喘鳴を呈する子どもと免疫抑制された成人から検出された。

急性弛緩性麻痺に至った3例、死亡に至った1例、限られたICU治療例を除くと、深刻な症例は報告されなかった。

検査が行われたうち、およそ2%にあたる389件でエンテロウイルスD68が見つかりました。そのうち急性弛緩性麻痺が起こった人が3人、死亡した人が1人いました

研究班はこの結果について「[...]2014年の夏から秋にかけてヨーロッパでエンテロウイルスD68が流行し、[...]北米での流行に比べて異なった病原性の特徴を表した[...]」と述べています。

 

このときの流行では、呼吸器症状があり検査でエンテロウイルスD68が見つかった人のうち、急性弛緩性麻痺が起こった人は1%未満という結果でした。アメリカでの流行とヨーロッパでの流行に違った特徴が見られたとされ、また日本で現在報告されている急性弛緩性麻痺が同様の流行によるものかどうかは正確に把握されていませんが、経過を予測する参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

European surveillance for enterovirus D68 during the emerging North-American outbreak in 2014.

J Clin Virol. 2015 Oct

[PMID: 26364237]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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