モーツァルトとカート・コバーンに共通の病気とは?
モーツァルトは手紙で下品な言葉をよく使ったほか、作品名でも下品な表現があることが知られています。また、顔や手足が勝手に動いてしまうことがあったとも言われています。これらの症状が、現代の音楽家にも例のある病気によるという説を紹介します。
◆モーツァルトはトゥレット症候群だった?
この論文では、18世紀の作曲家のモーツァルトのほか、20世紀に活躍したロックバンド「ニルヴァーナ」のボーカル・ギター担当だったカート・コバーンがトゥレット症候群の症状を
トゥレット症候群(ジル・ド・ラ・トゥレット症候群)は、不規則で突発的な、意図しない体の動きや発声を繰り返してしまう「チック」という症状の一種と考えられ、他人をののしる、卑猥な言葉を発するといった「汚言」の症状をともないます。
モーツァルトには「俺の尻をなめろ」という題名の作品など、下品な言葉が多かったことが知られています。このことに対して、トゥレット症候群だったとする説は1983年には示されていました。この論文はその説を支持する立場から、汚言については「実際のところ、モーツァルトが示す排泄物に関するわいせつな特徴は、当時の南部ドイツでは許容されると考えられていた話し方を表しているにすぎないと信じる研究者もいる」としつつ、モーツァルトには双極性障害や注意欠如・多動性障害(ADHD)を疑わせる特徴もあったこと、一般にトゥレット症候群にはADHDなどがともなう場合があることにも触れています。
◆カート・コバーンと現代の音楽家
カート・コバーンにもチックの症状があったことが知られています。この論文はコバーンにもトゥレット症候群があった可能性があるとし、日記や歌詞に排泄や性への言及が多いなどの特徴に触れています。
また現代のジャズピアニストであるマイケル・ウォルフ、ピアニストのニック・ヴァン・ブロス、歌手のジェームズ・ダービンが、トゥレット症候群の診断を受けていることで知られる例として挙げられています。
この人たちの例を通じて、研究班は「特に注目に値する点として、トゥレット症候群を診断することには困難がともない、ここで議論された音楽家たちはトゥレット症候群が正しく診断され治療を開始されるまで、長い期間にわたって疾患に苦しんでいる」と述べています。
トゥレット症候群は、日本でどの程度の割合の人に起こるのかも正確にはわかっていません。正しい理解が広がり、症状を見逃さない環境を作ることが、より早く適切な治療に結びつくのかもしれません。
執筆者
Tourette's syndrome in famous musicians.
Arq Neuropsiquiatr. 2015 Oct 6 [Epub ahead of print]
[PMID: 26445123]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。