◆過去の研究を統合
研究班は、細菌性髄膜炎の治療としてステロイド薬の効果と安全性を調べた研究を集め、内容を検証し、データを統合しました。
◆聴力低下を予防、発熱の副作用
次の結果が得られました。
4,121人の参加者を含む25件の研究を採用した(参加者の2,511人が小児、1,517人が成人、93人はそれらが混じった集団)。
副腎皮質ステロイドは深刻な聴力低下(リスク比0.67、95%信頼区間0.51-0.88)、すべての聴力低下(リスク比0.74、95%信頼区間0.63-0.87)、神経学的後遺症(リスク比0.83、95%信頼区間0.69-1.00)の率がより低いことと関連した。病原体についてのサブグループ解析から、副腎皮質ステロイドは肺炎球菌による髄膜炎での死亡率を減少させる(リスク比0.84、95%信頼区間0.72-0.98)ことが示されたが、インフルエンザ菌または髄膜炎菌による髄膜炎では死亡率の減少が見られなかった。
副腎皮質ステロイドによる治療は再発する発熱の増加と関連したが(リスク比1.27、95%信頼区間1.09-1.47)、ほかの有害事象とは関連しなかった。
見つかった25件の研究から、4千人あまりの対象者のデータを解析したところ、ステロイド薬を使ったときに、髄膜炎による聴力の低下が起こりにくいという結果でした。また肺炎球菌の感染による髄膜炎に限っては、ステロイド薬を使ったときに死亡率が低くなりました。
ステロイド薬を使ったときに、再発する発熱が多くなっていましたが、そのほかの副作用は統計的には見られませんでした。
研究班は「高所得の国においては、細菌性髄膜炎の患者に対する副腎皮質ステロイドの使用がデータから支持される」と結論しています。
重い感染症の治療でステロイド薬を使うべきかどうかについては複雑な議論がありますが、ここでは細菌性髄膜炎に対して良い結果が示されました。多くの研究を経て、最適な治療法の検討が続けられています。
執筆者
Corticosteroids for acute bacterial meningitis.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 12 [Epub ahead of print]
[PMID: 26362566]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。