◆40代でマンモグラフィーを受けたあとの効果
この研究では、イギリスで39歳から41歳の女性が対象となり、48歳になる年まで毎年マンモグラフィーの検査を受けるかどうかによって、乳がんの発症や乳がんによる死亡に違いがあるかどうかが調べられました。
対象者はランダムに、毎年マンモグラフィーを受ける群と通常のケアを受ける群に分けられ、48歳を過ぎたあとも含めおよそ17年間にわたって、経過が追跡されました。
◆診断後10年以内の死亡が減少
次の結果が得られました。
1990年10月14日から1997年9月25日までの間に、160,921人の参加者がランダムに割り付けられ、介入群の53,883人の女性と、通常の医療ケアに割り付けられた106,953人がこの解析に含まれた。
対照群に比べて介入群では、介入フェーズの期間に診断された腫瘍について、診断から最初の10年間での乳がんによる死亡率の有意な減少が見られた(率比0.75、95%信頼区間0.58-0.97)が、その後は差がなかった(率比1.02、0.80-1.30)。介入群と対照群で、17年のフォローアップ期間の乳がん全体の発症率は類似していた(率比0.98、0.93-1.04)。
マンモグラフィーを受ける群で、毎年マンモグラフィーを受けた期間に診断された乳がんによる10年以内の死亡が、通常のケアを受けた群と比べて少なくなっていました。診断から10年を超えての死亡率には違いがありませんでした。
また、乳がんが診断される率にはどちらの群でも違いが見られず、研究班は「累積発症率の数値は、過剰診断が悪く見てもわずかしかないことを示唆している」と解釈しています。
ほかの国で行われた研究では、毎年マンモグラフィーを受けても乳がんによる死亡が減少しなかったという結果のものがあり、マンモグラフィーが死因になりにくいタイプのがんまで過剰に診断してしまうのではないかという意見に結びついています。
研究によって違った結果が出ている理由にはいろいろな可能性が考えられます。国によって病気の頻度に違いがあるためなのか、検査の違いによるのか、統計の手法によって違って見えているのか、詳しく検討することで、マンモグラフィーの意義について議論がさらに深まるかもしれません。
執筆者
Effect of mammographic screening from age 40 years on breast cancer mortality in the UK Age trial at 17 years' follow-up: a randomised controlled trial.
Lancet Oncol. 2015 Sep
[PMID: 26206144]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。