◆喫煙者728人のデータから
この研究は、スウェーデンの登録データをもとに、多発性硬化症を診断された時点で喫煙していた人728人を対象として、SPMSに移ることと禁煙の間に関連があるかどうかを調べました。
◆診断後の禁煙でもSPMSが遅くなる
次の結果が得られました。
カプランマイヤー法によるプロットから、診断後に喫煙を続けた患者は禁煙した患者に比べてSPMSへの転化が早く、転化時の年齢が禁煙した患者では56歳だったのに対して喫煙を続けた患者では48歳だった。
解析によりSPMSに移行するときの年齢を計算したところ、多発性硬化症の診断を受けてから禁煙した人では56歳と、禁煙しなかった人の48歳に比べて遅くなっていました。
研究班は「したがって、我々は多発性硬化症の患者が診断を受けたのち、併存症のリスクを小さくするためだけでなく、多発性硬化症に関連する障害の悪化を避けるためにも喫煙をやめるよう助言されるべきであると提言する」と結論しています。
喫煙は多発性硬化症を含めてさまざまな病気のリスクに影響すると言われ、病気の治療の中では多くの理由から禁煙が勧められます。ここで多発性硬化症の経過との関係が見られたことは、さらに理由のひとつとして加わるかもしれません。
ただし、この研究の方法では喫煙による因果関係以外の要因が働いていた可能性も否定できません。多発性硬化症の発症や進行のしくみについてはわかっていない部分も多く、解明が待たれています。
執筆者
Effect of Smoking Cessation on Multiple Sclerosis Prognosis.
JAMA Neurol. 2015 Sep 8 [Epub ahead of print]
[PMID: 26348720]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。