◆子宮内膜症とは
子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にだけあるはずの子宮内膜が、別の場所に移ってしまった状態です。異常な子宮内膜が周りの臓器と癒着することで痛みが起こると考えられています。
痛みの症状は月経のたびに繰り返し、しだいに強くなることが多いと言われています。卵巣にチョコレート嚢胞という病変ができると、破裂したり感染の原因になることがあります。重症の場合、子宮や卵巣を取り除く手術が必要になることもあります。
診断には内診や経腟超音波検査が使われますが、癒着の場所や程度は腹腔鏡を使ってお腹の中を観察しなければ診断が難しいと言われています。
◆腹腔鏡または手術を受けた473人が対象
研究班は、診断または治療のため、腹腔鏡または開腹手術を受けた18歳から44歳の女性473人を対象として、痛みのある場所などを調べました。
◆周期性、性交時痛、月経時けいれん、排便時痛など
データの解析から次の結果が得られました。
研究コホート全体から、術後の診断に関わらず、高い頻度(≧30%)で慢性および周期性の骨盤痛が報告された。しかし、術後に子宮内膜症の診断を受けた女性では、ほかの婦人科疾患の診断があったか骨盤に異常がなかった女性と比べて、周期性骨盤痛がより多かった(49.5% vs 31.0%、33.1%、P<0.001)。加えて、子宮内膜症があった女性では、骨盤の異常がなかった女性と比べて、慢性の痛み(44.2% vs 30.2%、P=0.04)が多かった。性交時深部痛、月経時けいれん、排便時痛が報告されることは、子宮内膜症がある女性のほうがない女性よりも大幅に多かった(すべてP<0.002)。骨盤に異常がない女性と比べて、子宮内膜症の診断があった女性のほうが高い割合で、腟の痛み(22.6% vs 10.3%、P<0.01)、右の陰唇の痛み(18.4% vs 8.1%、P<0.05)、左の陰唇の痛み(15.3% vs 3.7%、P<0.01)、右または左の下腹部および臍腹部骨盤領域の痛み(すべてP<0.05)が多かった。
子宮内膜症があった人で、ほかの場合よりも多く見られた症状に、周期性の骨盤部分の痛み、性交時の痛み、月経時のけいれん、排便時の痛みなどがありました。
子宮内膜症には鎮痛薬のほかホルモンバランスをコントロールする治療もあります。気になる症状があったとき、ここで挙げられたような特徴が、医師に相談するときの参考になるかもしれません。
執筆者
Pain typology and incident endometriosis.
Hum Reprod. 2015 Aug 11 [Epub ahead of print]
[PMID: 26269529]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。