2015.08.14 | ニュース

パーキンソン病の人で、将来認知症が起こるかを脳脊髄液の検査で予測

128人を追跡

from JAMA neurology

パーキンソン病の人で、将来認知症が起こるかを脳脊髄液の検査で予測の写真

パーキンソン病は運動の障害が主な症状ですが、認知症の原因になることもあります。脳の周りを満たす脳脊髄液の検査から、将来認知症が発症するかどうかを予測する研究が行われました。

◆認知症がないパーキンソン症候群の人を追跡

研究班は、認知症のないパーキンソン症候群の患者128人を対象として、脳脊髄液に含まれる物質の検査を行い、その後の経過と比べて、認知症をともなうパーキンソン病の発症を予測できる要素を探しました。

 

◆3種類の物質で認知症を予測

次の結果が得られました。

128人の研究参加者のうち、早期パーキンソン病の患者104人には、進行性核上性麻痺のある13人の患者と(ベースラインのROC曲線下面積0.87、P<0.0001)、また30人の対照参加者とは異なった脳脊髄液のパターンが見られた(ベースラインのROC曲線下面積0.69、P=0.0021)。

パーキンソン病の患者では、ベースラインでニューロフィラメント軽鎖タンパク質が高く、Aβ1-42が低く、かつ心臓由来脂肪酸結合タンパク質が高いことが、Cox比例ハザード回帰モデルで解析したとき、将来の認知症をともなうパーキンソン病と関連した。これらの早期バイオマーカーを組み合わせることで、認知症をともなうパーキンソン病は、潜在的交絡因子を調整したのち、高い正確さ(ハザード比11.8、95%信頼区間3.3-42.1、P=0.0001)で予言された。

パーキンソン病の患者で、脳脊髄液に含まれるニューロフィラメント軽鎖タンパク質、Aβ1-42、心臓由来脂肪酸結合タンパク質という3種類の物質の量に、その後の認知症の発症と関連が見られました

 

ここで挙げられた3種類の物質から、ほかの対象者集団について実際に認知症を予測できれば、診断としての価値につながるかもしれません。またこの研究では脳脊髄液の検査結果とその後の経過がなるべく一致するように指標を選んでいるため、未知の集団にどの程度当てはまるかは明らかではありません。

パーキンソン病の人で起こる認知症を予防したり早期治療する方法、あるいは認知症が発症しても生活への影響を最小限にとどめる方法が確立されれば、早期診断と組み合わせることで長期的な経過をよくすることができるかもしれません。パーキンソン病に関わる多くの課題に手がかりを与えるかもしれない研究です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Cerebrospinal Fluid Patterns and the Risk of Future Dementia in Early, Incident Parkinson Disease.

JAMA Neurol. 2015 Aug 10 [Epub ahead of print]

[PMID: 26258692]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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