2015.08.04 | ニュース

エボラを100%防いだワクチン

ギニアのアウトブレイクで7千人に接種した中間解析

from Lancet (London, England)

エボラを100%防いだワクチンの写真

エボラ出血熱の治療は確立されておらず、人間に対して予防効果を示したワクチンもまだありません。試験中のワクチンを、ギニアで流行が発生した地域の人に接種したところ、ワクチンの効果が現れてからの発症をすべて防いだと見られる結果が得られました。

◆リングワクチン接種法で接種時期をランダム化

この研究は報告時点(2015年7月)で続行中であり、この報告はある時点までの中間報告です。

研究班は、エボラウイルスに感染した患者が見つかったとき、患者と接触があったと見られる周りの人にもワクチンを接種する「リングワクチン接種法」を使い、新しいワクチン「rVSV-ZEBOV」の効果と安全性を調べました。

この方法でワクチンを接種するとき、ひとりの患者を中心にした集団(クラスター)ごとに、すぐにワクチンを接種するか、21日間待ってからワクチンを接種するかをランダムに分け、エボラウイルスの潜伏期間に近いと見られる10日後以後の発症があるかを調べました。

クラスターを決めてから10日以内の発症があった場合、クラスターを決めた時点ですでに感染があった可能性が大きく、ワクチンが感染を防ぐ効果があるかないかの判断材料にはならないと考えられます。

 

◆ワクチンで感染を100%予防

次の結果が得られました。

2015年4月1日から2015年7月20日までの間に、7,651人から成る90のクラスターが予定された中間解析に含まれた。このクラスターのうち48集団(4,123人)がrVSV-ZEBOVのワクチン接種をただちに受ける群に、42集団(3,528人)がrVSV-ZEBOVのワクチン接種を遅らせて受ける群にランダムに割り付けられた。ただちに接種する群では、ランダム化のあと少なくとも10日後に症状が現れるエボラウイルスの疾患症例はなかったが、対して遅らせて接種する群では、7集団の16人にエボラウイルス疾患があり、ワクチンの有効性は100%(95%信頼区間74.7-100.0、P=0.0036)と見られた。どちらの群でも、ワクチン接種から6日後以降には、エボラウイルス疾患の新規発症は診断されなかった。

43件の深刻な有害事象が報告された。1件はワクチンと因果関係があると判断された(ワクチン接種を受けた参加者で発熱のエピソードがあり、後遺症なく解消した)。

90のクラスターで、合計7,651人にワクチンが接種されました。すぐにワクチンを接種したクラスターでは、発症はひとりもありませんでした。対して、遅らせて接種したクラスターのうち16人に発症がありました。どちらの場合にも、ワクチンを接種してから6日後以降の発症はひとりもありませんでした

研究班は「この中間解析の結果は、エボラウイルス疾患の予防においてrVSV-ZEBOVが高度に有効であり安全であるかもしれないことを、またエボラウイルス疾患のアウトブレイク中にリングワクチン接種法で接種されたときに人口レベルで有効である可能性が最も大きいことを示す」と結論しています。

 

ワクチンの効果と安全性がより確かになれば、今後のエボラウイルス対策に広く使われるようになるかもしれません。画期的な予防法の登場となるかどうか、続報に期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Efficacy and effectiveness of an rVSV-vectored vaccine expressing Ebola surface glycoprotein: interim results from the Guinea ring vaccination cluster-randomised trial.

Lancet. 2015 July 31 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26248676] http://www.thelancet.com/pb/assets/raw/Lancet/pdfs/S0140673615611175.pdf

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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