2015.07.29 | ニュース

抗生物質を与えられた家畜の肉から、多剤耐性クレブシエラが感染する?

アメリカの患者と食料品店から細菌を分離

from Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America

抗生物質を与えられた家畜の肉から、多剤耐性クレブシエラが感染する?の写真

クレブシエラの感染による細菌性肺炎は抗菌薬で治療されますが、クレブシエラに薬剤耐性があるときは使える薬が限られます。アメリカの研究班が、食料品店で売られていた肉から多剤耐性クレブシエラが見つかる割合が大きかったことを報告しました。

◆肉と患者から細菌を取り出して比較

クレブシエラは普通の環境にありふれた細菌で、健康な人に重い感染症を起こすことはまれですが、免疫が弱くなっている人などに感染して肺炎を起こすことがあります。

研究班は、参加した施設を受診した患者から取り出されたクレブシエラと、食料品店で買った肉から取り出したクレブシエラを対象として、それぞれ薬剤耐性の試験と、遺伝子解析を行いました。

 

◆肉から分離したものに多剤耐性が多い

次の結果が得られました。

肉由来分離株は、臨床的分離株と比べて多剤耐性であること、テトラサイクリンおよびゲンタマイシン耐性であることが有意に多かった。ポリジーン解析から、肉由来分離株と臨床的分離株の間に近縁関係が認められた。

肉から取り出したクレブシエラには、患者から取り出したクレブシエラに比べて、複数の種類の抗菌薬が効かないように変化した多剤耐性が見られることが多くなっていました。また、遺伝子解析によって、肉から取り出したクレブシエラと患者から取り出したクレブシエラは近い系統のものと見られました。

研究班はこの結果が「食肉用家畜の飼育における抗菌薬の使用による選択圧を反映しているかもしれない」と推測しています。家畜を育てるとき、感染症予防の狙いで抗菌薬が家畜に与えられることがありますが、この結果として、家畜に感染した細菌から多剤耐性菌が発生する可能性が考えられます。

その仮定をふまえて、研究班は「この結果は、市販の肉が薬剤耐性の有毒なクレブシエラを食肉用家畜から人間に運ぶ潜在的な媒体であることを示唆する」と述べています。

 

薬剤耐性菌は、抗菌薬の不適切な使い方によって生まれると考えられています。免疫が弱くなった人などに感染したとき、普通の抗菌薬が効かなくなっていることは重要な問題につながります。対策のためには、病院の中だけでなく、あらゆる場面で抗菌薬の使い方を検証することが求められます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Intermingled Klebsiella pneumoniae Populations Between Retail Meats and Human Urinary Tract Infections.

Clin Infect Dis. 2015 Jul 22 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26206847]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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