2015.07.28 | ニュース

変形性膝関節症の新治療を目指して、幹細胞を磁力で誘導する技術

広島大でミニブタの実験

from The American journal of sports medicine

変形性膝関節症の新治療を目指して、幹細胞を磁力で誘導する技術の写真

変形性膝関節症の治療として、関節を人工関節に置き換える手術のほかにさまざまな方法が試みられています。広島大学の研究班は、骨髄にある幹細胞を磁力で傷ついた場所に集積させて軟骨を修復させる技術を使い、動物実験で効果を示しました。

◆ミニブタの軟骨を治療

研究班は、ミニブタの膝の膝蓋軟骨に傷をつけて、病気のモデルとしました。治療には、骨髄から取り出した「間葉系幹細胞」を磁力で動くように加工した「磁気ラベル間葉系幹細胞」(m-MSC)を使い、m-MCSを関節の中に注射して磁力で傷ついた場所に誘導しました。

 

◆関節鏡の観察でスコア改善

次の結果が得られました。

治療後6週での関節鏡的スコアの平均はM群で10.4±1.10、G群で8.8±0.84、C群で7.4±0.89だった。M群とほかの2群には統計的に有意な差があった。

m-MCSを磁力で誘導する治療を行ったグループで、治療した軟骨を関節鏡で観察して評価したスコアに改善が見られました

研究班はこの実験で得られた結果を、「磁気ラベル間葉系幹細胞は軟骨形成分化において有害事象を起こさず、磁場の処置により誘導した磁気ラベル間葉系幹細胞は軟骨欠損を修復した」とまとめています。

 

広島大学は2015年2月に、実際の患者に対して、磁力で幹細胞を誘導する方法により手術を行ったことを発表しています。非常に患者の数が多く治療が難しい変形性膝関節症の治療に、新しい選択肢が加わるかどうか、今後の進展に期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Articular cartilage repair with magnetic mesenchymal stem cells.

Am J Sports Med. 2013 Jun

 

[PMID: 23605221]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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