2015.07.22 | ニュース

妊娠中の甲状腺機能低下症、ADHDとの関係は?

オランダ4千家族の観察研究

from JAMA pediatrics

妊娠中の甲状腺機能低下症、ADHDとの関係は?の写真

注意欠如・多動性障害(ADHD)の原因には、遺伝的要因に加え、環境の影響もあると考えられています。オランダの研究で、妊娠早期に母親に甲状腺ホルモンの低値があった場合、子どものADHDの症状がより強い傾向が見られました。

◆オランダの母と子が対象

研究班は、オランダで進行中の大規模追跡調査の参加者のうち、詳しい検査値が得られた3,873組の母と子を対象として、妊娠中の甲状腺ホルモン量と、子どもにADHDがある場合の症状との関連を調べました。

 

◆妊娠早期のホルモン低値と8歳時の症状に関連

データの統計解析から次の結果が得られました。

妊娠早期の母親の低甲状腺ホルモン血症(127人)は、子どもと母親の要因(性、民族、母親の年齢、母親の教育水準、収入)を調整したうえで、子どもが8歳時点でのADHD症状のより高いスコアと関連した(ADHDスコアの増加幅7%、95%信頼区間0.3%-15%)。

母親の妊娠早期に、血液検査で甲状腺ホルモンの低値が見られた場合、子どもが8歳のときのADHD症状のスコアが高くなっていました

研究班は「この結果は、子宮内で甲状腺ホルモンレベルの不足にさらされることが、子どもの神経発達に影響することを示唆している」と推論しています。

 

この研究の方法では、甲状腺ホルモンの不足がADHDの原因に直接関わっているとは断言できません。母親の甲状腺ホルモン量に異常があるときはほかの病気なども伴っていることが考えられ、甲状腺ホルモン量に影響したほかの原因が主にADHDに関わっていた可能性も論理的にはありえます。妊娠中に甲状腺ホルモン補充が重点的に行われるべきかどうかは、別の研究によって検証できるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Maternal Mild Thyroid Hormone Insufficiency in Early Pregnancy and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Symptoms in Children.

JAMA Pediatr. 2015 Jul 6 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26146876]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る